女性ならではの感覚の作品でとてもユニークである。華やいだ時間を楽しんだあとの余韻に浸るまもなく主婦としての現実がまっている。ため息がでるという気分ではなく、両方とも大事だと考えていて上手に気持ちを切り替えているのである。品女さんの句集の序文に青畝先生はこう書いておられる。『品女さんは自由に自分の見聞を句に仕上げる才能がある。型にとらわれることなく感動が型を創めて作る。だから新しくなる』と、全く同感である。
句意は実に明晰で説明の必要はない。ことばの魔術師といわれた青畝師らしい実に省略の効いたみごとな作品である。「谷戸」という措辞でおおよその風景が見える。次に「落椿又落椿」とあるので恐らく山懐の空谷の小径であることが連想できる。吟行の場合、つい具体的な場所名をいいたくなるが、俳句ではよほどのことがなければ省略して、鑑賞する人の連想に委ねた方がよい。ぼくはこの作品から能勢の里山吟行でみた迷路のような山路を思い出す。
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