2024年の作品

2024年12月15日

枚方宿


寒禽の藪に呼びあふ古墳山

起伏野のごとたたなづく紅葉山

いまし火の坩堝といはむ庭紅葉

怪獣の凍てしごと立つ椋大樹

冬帝へ巨幹をよじる椋大樹

舟宿の雁木跡鎖す木戸寒し

資料館寒し千両箱は似非

たとふれば花柊は淑女の香

極月の路地へはみだす小商ひ

2024年12月

2024年09月28日

月の須磨


海凪ぎて土竜叩きに鯔の飛ぶ

月の須磨武者の如くに松の影

閉づと聞く老舗の洩らす秋灯

墨痕のかすれ涼しき大書かな

ひぐらしや杉の奈落に一末社

乱帙をわが城とせる昼寝かな

搾りたて牛乳避暑の牧至福

露の玉東雲あかり宿しけり

曼珠沙華山田錦の里埋む

2024年9月

2024年08月24日

流灯


ゆき悩む流灯を手で促しぬ

流灯の帯となりゆく遅速かな

水替へて吐息新たや水中花

鎮魂の海へ散華す大花火

白靴をぬぎて渚に遊びけり

時刻表枕に昼寝無人駅

朝蝉の調べは秋やデボーション

藍涼し真白き帯を胸高に

端切れめく水着の値札疑ひぬ

2024年8月

2024年07月25日

消息雑詠


連理して大緑陰をなせりけり

透明度百パーセント瀞涼し

目に涼し宇治の早瀬よ水音また

川風が攫ひし宙の糸とんぼ

青海波なす段丘の濃紫陽花

風涼し老舗暖簾の字の合はず

岩清水ひきて蹲踞奏でしむ

一条の日の輪のをどる泉かな

蓮の池車軸の雨に寧からず

5月〜7月

2024年05月07日

銀竜草


竹秋に透けてぽつんと一山家

草ぐさに憂さ癒やさるる春山路

岩窪の祠ほとけは銀竜草

熊谷草咲くと秘境を一万歩

囀の天降りやまずよ杉美林

緑雨なる深山の道は傘要らず

岩噛んで瀬しぶきに耐ふ瑠璃蜻蛉

沢蟹の爪見えてをる岩間かな

代田水満ちて蛙の唄ひだす

5月6日能勢グループの案内で能勢初谷渓谷を吟行しました。

2024年01月14日

伏見郷


閼伽の水溢れ春光こぼしけり

おはじきのごと日溜まりへ寒雀

庭雀冬日失せればゐずなんぬ

水郷に刎ねる日差しや柳の芽

春水の底より吐息主は誰

口づけのごと寒紅の酒を利く

寒づくり淡路瓦の簷連ね

路地懐かし餅の花咲く伏見宿

志士の魂宿る寺田屋冬座敷

1月9日大阪小グループ吟行(伏見郷、伏見宿)

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