2019年の作品
2019年の作品
小田の藁塚あち見こち見に傾きぬ
ひつじ田へ降りて畦道譲りけり
弧なる畦真直ぐなる畦曼珠沙華
畦といふ畦塗りつぶし曼珠沙華
浄土へと続く道なれ曼珠沙華
ま青なる天が下なる曼珠沙華
曼珠沙華踏むまじと畦脱線す
曼珠沙華浄土の里に寝仏寺
黄昏の影纏ひそむ曼珠沙華
秋水に嬲られて歯朶揺れやまず
大砲のレンズを据えて秋の人
白砂なる州浜を洗ふ秋の水
秋惜しめとぞ漣す心字池
秋水の逸りて躍るさざれ石
黄色帯ぶ欅並木の秋日影
真ん中に秋水を噴く鏡池
階をなせる水苑ひつじ草
民芸館陶の一壺に草の花
石畳こぼるる萩を穢となさず
萩の屑払ひ師の句碑存問す
清浄な箒目に萩こぼれけり
萩むらに小さき夫婦道祖神
短冊はなべて虚子門萩の寺
茶室へと飛石づたひ草の花
墨薄き絶筆三句子規祀る
大紋幕金風孕み膨らみぬ
大樟の千手を翳す天高し
新涼の空にぺちやくちや大ポプラ
連綿とアルプスなして雲の峰
野路愉し侍者のごとくに蜆蝶
散り散りに多島海めく秋の雲
機影より遅れて音や秋澄める
相聞のごと二タ筋の秋の雲
山の幸目当てと峡へ秋の人
鍔広の母子が仰ぐ夏木立
丹精の盆景鉢や窓涼し
盆提灯吊るしてひさぐなんでもや
二つ瀬の落合ひてより水澄める
根上りに坐して大樹の秋を聞く
昨夜雨の粒が煌めく花野かな
朴広葉身震ひやまぬ渓の秋
秋思ふと瀬石に絡むレジ袋
山荘の千草をせせる秋の蝶
高鳴れと瀬音を囃す法師蝉
絶叫のあとの沈黙法師蝉
布袋尊灼けても笑みを絶やさざる
石壁を見せて切り立つ夏の山
灼熱を糧にアメリカ芙蓉咲く
赤土を敷く山小屋の土間涼し
白日傘ポプラ並木の幹隠れ
黄槿を見て幸せの黄と思ふ
車椅子へと径譲る避暑散歩
歩一歩金剛杖や法師蝉
就中楡の大樹の陰涼し
身も心も洗へとしぶく大瀑布
不揃ひな椅子卓並べ瀧見茶屋
滝風に逆巻き天降る飛沫かな
梅雨滝の壷は荒磯のごと騒ぐ
滝壺の坩堝を抜けて水寧し
百丈の巌に玉砕梅雨の滝
盤石の苔を絞りて滴れる
万緑を深くぞ抉り渓激つ
池の面の蝶漣に紛れけり
瀬飛沫を浴びて艶ます濃紫陽花
楓林の洩れ日を浴びて濃紫陽花
瀬の石を射抜く洩れ日や苔の花
瀬の石を猿とびもし避暑散歩
木洩れ日を縮緬揉みす沢涼し
盤石を抱く走り根渓涼し
十重二十重渓空覆ふ青楓
つくばひの全身覆ふ苔涼し
作り滝七段落ちや苔涼し
梅天へコンビナートは煙吐く
梅雨の沖潮目もなにもなかりけり
引き潮の渚を綴る石蓴かな
浮沈する礁の頭や青葉汐
老漁夫のむかしを語る青岬
築堤は工楽と記す青岬
砲台の跡と碑のたつ青岬
蜃気楼めく島影や青岬
送電塔仰ぎ泰山木開く
カーチェイスさながら鬩ぐあめんぼう
濁り田に浮沈してをるカブトエビ
脱ぎ捨てし襤褸のごとくに竹の皮
ジェット機の青嶺貫くやに離陸
菖蒲田の条里をなせる歩板かな
菖蒲池迷路パズルのごと歩板
ミアミスは横恋慕かも塩蜻蛉
扇状に綾なす谷戸の植田かな
車座に大行厨やうまごやし
梅雨雲の千切れて尾根を急ぎけり
梅雨じめりしたる句帳に文字滲む
五月雨に砂躍りをるにはたづみ
梅雨の門錆びて開かぬとその園閉鎖
梅雨の森傘がなくても歩けさう
梅雨の峡百鳥声をひそめけり
切株を車座に置くキャンプ場
梅雨合羽着て余念なき園丁ら
白無垢を広げしごとく山法師
ジプシーのごとくに園の薔薇めぐる
苑の薔薇見てよ見てよとみな笑顔
白薔薇の百花あたりを払ひけり
朝日燦昨夜の緑雨のにはたづみ
ほむらめく真紅の薔薇の一屯
森涼し楓の葉擦れの音もまた
天辺に青空透けるバラアーチ
一婦人沈思黙考バラアーチ
夏木立塚は要をなせりけり
松天へ伸びて飛燕に触れなんと
注連古りて大緑陰をなせりけり
神馬像駈けだしさうや薫風裡
草引女宮司の内儀とは知らず
春潮の楽の満ちくる雁木かな
宮若葉改元で混む御朱印所
百代の松抽んでし宮若葉
老松の自由奔放夏空へ
両袖に松の緑や能舞台
盤石に神と一と文字万緑裡
羽衣のごと藤纏ふ大樹かな
天つ藤あたりを払ふ樫大樹
ごところぶ風倒大樹苔の花
日の斑洩る森の一隅著莪浄土
棚の藤虻の頭突きに屑こぼす
万葉の歌碑へと天降る百千鳥
絵図になき禰宜の細道竹の秋
春昼の直哉旧居に句座ひらく
茶庭いま萌黄襖に芽吹きけり
山つつじ潜りくぐりて岨辿る
山湖へと残る桜を温ねつつ
草引女茶庭撫でつつ膝行す
甲山先兵として笑ひけり
紋白蝶黄花葎を好みけり
春光の苑の一水手に掬ひ
翠黛や群青湛ふ水源地
天網の如くに渓の若楓
磊々の汀一擲黄鶺鴒
水陽炎映ゆ水亭の深庇
旧邸の甍へ挿頭す大桜
水亭は大正ロマン春灯
蜷の道なきやと屈む水辺かな
石人の金壺眼春憂ふ
花堤人へ絶叫選挙カー
芽木に透くレンガ造りの美術館
一と本の辛夷池塘に佇つごとし
啓蟄の大地穿ちて雨垂れす
啓蟄の汀やあぶく吐くは何
啓蟄を促す雨と思ひけり
点描のごと雨霧らふ梅の丘
薄紅に萌黄にと芽木芳しき
巡拝す七堂伽藍芽木の山
身に入むや水子地蔵の祈願絵馬
芽木秀枝指呼しつバードウオッチング
万蕾のふふむ夙川春の雨
啓蟄の大地踏んまえ樟大樹
うつ向くは何の憂ひぞ落椿
満開の梅侍らせて曽根の松
もつれあふ放物線や枝垂梅
白梅の極みと仰ぐ空ま青
枝絡む日の瑞々し梅真白
園児らの無垢の瞳に梅真白
園児らの電車繋ぎに梅の苑
園児らの唄に喝采梅の衆
門に吊る三輪の御札や寒造
桶の縁斯く摺り減りし寒造
利き酒の蔵を梯子す寒造
寒造剣のごとき蔵の屋根
売店も蔵屋根造り新走
辛口を宗とす蔵や寒造
温かや天地返しに樽造り
裸木や鞠のごとくに群雀
河口でて潮となりぬ春の水
爆発のごとき藤棚剪定す
カトレアがフレームの香を席巻す
フレームにお喋りをして花を見ず
干る間なくフレームの土間潤ひぬ
枯山の天辺だけに射す日かな
燦と日の射して蝋梅上機嫌
日翳りてより蝋梅の鬱つのる
広芝の仄といろづく春隣
かくれんぼしてをる母子花菜畑
左義長の火に扁額の文字揺らぐ
焚べられし御幣高舞ふ福火かな
鳩たちも遠巻きに寄る福火かな
福火とて太巻きのごと人垣す
投銭のごと火にくべて飾焚く
凍て硬貨山と積まるる遥拝所
それぞれに夢一つ述べ初句会
緋毛氈床几にならべ福箕売る
福だるま飾り老舗の暖簾守る
香煙の巻舒見よやと冬日射す
手を翳しては膝撫づる宮焚火
大榾の不機嫌さうに燻ぶりぬ
宮焚火守る老禰宜の苦労皺
大榾の鼎に組まれ一つ火に
榾の火の坩堝の中に舌躍る
宮焚火育ててをるは消防団
宮焚火囲む誰彼知己のごと
うつし身を裏表なく宮焚火
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