2011年の作品
2011年の作品
わが庵の狭庭に余る小春かな
ホバリングしてをる虻や石蕗日和
ぼろぼろの蜘蛛囲に縋る主かな
釣果などどうでもよろし日向ぼこ
一条の日矢に水底紅葉燃ゆ
やや疲れ見せたるもあり賞の菊
虻たちの宴たけなはや石蕗日和
紅葉狩グルメ目めての妻が供
喜びを相頒かちあふ温め酒
灘五郷蔵し六甲山粧ふ
もの見して枯木の烏啼きにけり
炎上のごとき夕日の櫨紅葉
利き酒に饒舌となる木の葉髪
あつあつのうどんを所望紅葉冷
山錦して舎利塔を荘厳す
シスターのベールに触れて銀杏散る
友禅を晒す水面の散り紅葉
水ナ上へハの字ハの字や鴨の水脈
闘志なく枯蟷螂の慈眼かな
蟷螂の裳裾はいまだ枯れてをらず
枯蟷螂といへど碧眼もてりけり
老い吾を相哀れむか枯蟷螂
わが庵の居心地如何枯蟷螂
縋る枝よりも枯れゐし蟷螂かな
斯く枯れてなほ鎌挙ぐる蟷螂かな
枯れし頸かしげ吾を見る蟷螂かな
琅玕に玉の日絡む小春かな
苑小春和服美人の一と屯
玉のごと小春日まろぶ小川かな
冬日いま悲恋の塚を抱擁す
竹林の風に縺るる秋日影
秋澄むや水琴窟の音もまた
苔庭へ錐揉み落つる竹落葉
草庵の侘びさぶ秋を聴きにけり
穂高嶺の山襞しるき秋日影
手庇に遠嶺の秋を惜しみけり
木道は二本丸太や秋山路
ガイド指す主峰忽ち霧隠れ
抽ん出し主峰は雪を被きけり
澄む水に裳裾を映す主峰かな
いま下りて来しと秋嶺指されけり
立ち枯れとして澄む湖に直立す
峡谷の大吊橋に秋惜しむ
木隠れに仰ぐ岩頭滝落つる
滝壺は天降る木洩れ日もみにけり
呂に律に奏づ瀬音や滝の道
百丈の岩を研ぎつつ滝落つる
切り岸に雪崩るる風の歯朶涼し
噴水のラインダンスや遊歩道
春陰のカメラは無聊野鳥待つ
たもとほる百万本のバラの香に
水底に日の斑のをどる泉かな
所化僧ら総出で磴の雪を掻く
ゆくりなく雪の濁世や涅槃変
読経いま寝釈迦覚めよと堂に満つ
虎も威をうち捨てて哭く涅槃絵図
裾の辺に異な虫の這ふ涅槃絵図
所化僧の絵解き怪しき涅槃かな
飛簷より喝と落ちたる雪解かな
殉国者慰霊塔たつ雪間かな
ベンチみな深雪を積みてやくたたず
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