2017年の作品
2017年の作品
参道へ湯気遊ばせておでん売る
もみぢ茶屋守り偕老を言ひにけり
蓮田枯れ浮かぶ細根の切れつ端
冬陽失せたちまち鬱や池の面
冬ざれてゐても園丁余念なく
天降る日に千手を翳す大枯木
公園を俯瞰してをる大枯木
空谷の風の序破急木の葉雨
石切の絶壁見せて山粧ふ
戦国の屋敷跡てふ枯野かな
筒抜けの店誰もゐぬ寒さかな
着膨れて迷ひし路地は行き止まり
旧家には似つかぬ外車うそ寒し
寒さうな旧家の三和土罅走る
絵屏風に連理の鶴や奥座敷
床の間に家宝の秘刀冬座敷
太梁に震禍の亀裂身にぞ入む
冬ともし煤びかりせる太梁に
二タ三筋トラピスチヌの冬菜畑
瞑想のベンチにやまぬ木の葉雨
風狂の心地に浴びる木の葉雨
イエス手を広げて招く紅葉影
日矢燦と祈りの道の枯木影
冬木立祈りの道としるべ立つ
一穢なき十字架の空鳥渡る
手を翳すパワースポット宮小春
小祠もついで詣でや神の留守
イベントの木の葉プールに子らはしやぐ
おしゃべりをしつつ地団駄紅葉冷
ハイカーも牛歩となりぬ紅葉坂
紅葉坂数珠つながりの駐車かな
元気出せ勇気出せよと紅葉燃ゆ
洩れ日さす紅葉時雨の小径かな
珠玉の日洩らす天蓋紅葉かな
ぎんなんを家苞に買ふ留守詣
焼芋を頬ばりながら姦しき
秋さぶや小蘭亭の藪騒も
石庭に秋思然たる老画伯
雨に伏す秋草叢も園の興
雨晴れて園の八千草起ち直る
苑至福曲水の斯く澄めりけり
王羲之の書なる一碑に時雨傘
はく息のため息に似て時雨冷
ハイカーの休み処にきのこ展
極彩が自己主張せるきのこ展
雨粒のつきて蜘蛛の囲役立たず
倒れんと傾く紫苑一と括り
風いなしては起ち直る紫苑かな
傾きて驟雨に耐ふる紫苑かな
紅葉狩降りみ降らずみ亦愉し
田一枚手つかずのまま草紅葉
野路愉し草の実黒く亦赤く
蔓ひけば異な草の実も道づれに
築地塀越えてたわわに柿実る
能勢電車一駅ごとに秋深む
鷺の嘴宝さがしす刈田かな
小田うずむ狗尾草の朝日影
枯蟷螂睨むまなこはエメラルド
産土神へ千種の畦をジグザグに
秋晴の主峰孤高の鳶放つ
秋灯や雑木隠れに一末社
毬割れて豊頬の栗顔だしぬ
地団駄の靴に腑抜けや虚栗
入れかはり立ちかはりして道をしへ
飛石をひとつとばしに道をしへ
押せばあく園の奥扉や道をしへ
絵図になき怪しき岨へ道をしへ
小流れを越ゆに橋なし道をしへ
セラピーの森と標やみちをしへ
憩へとぞ森の汀へみちをしへ
斯く群れてとんぼう木々にぶつからず
風折れの枝が道塞く秋山路
背高のコスモス風にハイタッチ
千切れたり合体したり秋の雲
斯く灼けてゐても石人笑み湛へ
ゆく雲の迅さにしざる秋の嶺
法師蝉序破急唱へ一と休み
風紋の駈けめぐりをる稲田かな
浮草の花に蜻蛉の恋生る
秋草の籬に駐車里の茶屋
険磴を跨ぐ山門天高し
ハンモック深海のごと山毛欅樹林
暑に耐へむサイコロステーキ二つ三つ
避暑散歩二の足が出ぬかずら橋
東雲の空気うましと避暑散歩
稲の露朝日を弾きはじめけり
落ち合ひて早朝散歩月見草
口中に飴玉あそぶ避暑散歩
光陰を語り草とす樹下涼し
団栗で創る小トトロ大トトロ
山巓のティアラと見しは避暑ホテル
牧涼し自家製ミルク一気飲み
反芻の牛と目の合ふ秋思かな
行く雲に遊ぶは玻璃の秋の蝿
高牧の起伏をなぞる飛燕かな
秋草を分けて先師の碑に見ゆ
摩耶涼し佛母の寺に寛ぎぬ
降臨のごと霧まとふ天上寺
かなかなや焦土の寺跡訪ふ山路
滝道の起点の歌碑は定家卿
滝落ちてきし水瀞に憩ひをり
瀞涼し簾となりて堰落つる
嬲られて滝つぼ出でぬ芥かな
歌碑あれば誦して存問滝の道
天霧らふ岩頭を見よ飛滝神
千畳の岩二タ裂きに滝落つる
茶屋の窓額縁として滝落つる
滝しぶき浴びて機嫌やたかつむり
クハと声残しとびこむ大蛙
梅雨茸洩れ日に傘を広げけり
梅雨茸苔のなぞへに里づくり
天地人なして団結梅雨茸
樹液垂る幹幾筋も蟻の道
隠沼の砦となせる夏の草
浮草の花浄土より亀の首
木道を一閃せしは瑠璃蜥蜴
梅雨濁りすれど生きとし生けるもの
岩に描く矢印はなに登山道
神籬のてつぺんだけが青嵐
育苗のポットが並ぶ木下闇
吊橋の涼しと欄に一と並び
緑化園猪垣の扉の押せば開く
沢涼し瀬石踏んまへ渡りけり
一片の病葉宿す瀬石かな
葉洩れ日を揉むせせらぎの波涼し
天網のごとく楓樹や沢涼し
天狗岩抽んでてをる青嶺かな
一刷けの白雲かずく青嶺かな
泰然と主峰裾野は青嵐
噴水を囲む花壇はゴッホの黄
島嶼なすうき草畳池広し
もがくごと水掻く四肢や亀涼し
漣を縫ひゆく鯉の影涼し
さながらに桃源郷やさつき展
片陰に石人ならぶ石工小屋
ハプニング楽し迂回の野路うらら
茅花みなわれに辞儀する野路愉し
魁は白の屯やしょうぶ池
池広し砦のごとく夏木立
喬木の覆ふ奈落の道涼し
小さき虻居眠るごとし未草
三尺寝族が四阿占領す
大砲のレンズを据ゑし木下闇
片陰に数珠なす人や美食店
沖遠く黄砂に消ゆる巨船かな
漁夫で混む一膳飯屋襤褸テント
林立す発電風車島涼し
蛸をかしトロ箱逃げて叩かるる
水槽の狭しと跳ねる糶の鰤
糶佳境びしよ濡れとなる土間涼し
五指をもて丁々発止糶涼し
汀石洗ひては引く波涼し
橋涼し明石大門を一跨ぎ
尻餅のしるきあとある苜蓿
ジョギングの土堤を綴りて苜蓿
縱橫に幾何学模様畝涼し
水難碑代田一望せる丘に
目潰しの日矢うち仰ぐ夏木立
森閑として喬木の樹下涼し
脳天を射んと錐揉む竹落葉
竹落葉忍者のごとく藪駈くる
夏草の宝庫や猪名の川堤
朽木めく老幹なれど芽を吹きぬ
試歩の腰伸ばして仰ぐ青嶺かな
根上りもベンチとなりぬ遠足子
野に遊ぶ一人駈ければ我も我も
遠足子声をかければハイタッチ
園児らの黄色い声や山若葉
もこもこと隆起せるごと山若葉
つばくらめ一閃白くまた黒く
大鳥居貫きながら燕来る
起伏野の天辺四方の風薫る
起伏野を駈けて転んで子ら遊ぶ
春愁ふなぞへに美脚なげだして
先生の両手取りあふ遠足子
そら窓のある四阿や山桜
箍ゆるみ風に崩るるチューリップ
菖蒲の芽芥だたみを出でにけり
汝れ悼む逍遥の道余花にあふ
自ずから序破急風の花吹雪
茎立ちて風いなしをる花菜かな
そっぽ向き見えぬ値札や植木市
花菜畑越しに手をふる笑顔かな
宝殿の岩山濡らす春の雨
草青む池塘の水の色もまた
群落といへど粗密やたんぽぽ黃
歳問へど媼は花下に笑ふのみ
釣り上げし大魚を青む土堤の上に
にはたずみ桂馬跳びもす春堤
神木の深き洞よりもの芽出づ
茎立を突つつき散らす鵯のボス
落椿禰宜の熊手に掃かれけり
黒ぼこの畝にしみこむ春の雨
芽ぐまんとして仁王立つ御神木
降り続く雨の重さに椿落つ
神木に凭れて杜の春惜しむ
政所跡と碑のたつ樹下涼し
橋涼し足下に奏づ瀬音また
鎖樋ドレミドレミと春奏づ
花屑をとれば機嫌や鎖樋
ほとばしる春の息吹や鎖樋
鎖樋落つる水音も早春賦
春雨の唄ふがごとし鎖樋
芽木の枝綺羅星のごと雨滴
梅の園とゆき巡りて汝れ悼む
閻王にひれ伏し祈る老遍路
一杓の春水手向く水子仏
空濠に天を仰ぎし落椿
空濠に降り立てば草芳しき
下萌えにでんぐり返る猫の野良
紋白蝶花菜浄土をジプシーす
切岸の横つ腹から春の水
高鳴りて筧を落つる春の水
花菜畑迷路のごとくたもとほり
蒼天へ春禽散らす秀枝かな
日射すとき土堤のたんぽぽみな笑顔
遺品なる手ずれの聖書あたたかし
みことばを記す一碑に草萌ゆる
オルガンの楽堂に満つ淑気かな
彩窓の春日ピエタに届きけり
聖堂の堅き木椅子に春愁ふ
聖堂に額づきをれば百合匂ふ
歌うたひ出せば聖堂寒からず
磔像に点すチャペルの春灯
懺悔室出ても春愁はらひえず
園の門に立つや蠟梅匂ひけり
探梅や野鳥の森と標立つ
禿山の天辺に湧く春の雲
フレームに入りて目鼻の潤ひぬ
速歩組おしゃべり組や踏青子
足弱の妻の侍者とし青き踏む
目白来てアクロバットす梅の枝
梅盛る紅白岨に対峙して
漣のひたよす汀もの芽出づ
鴨をかし尻を突つつきあひにけり
日向鴨嘴をぺちやくちや居眠りぬ
吾に媚びて寄りくる鳩と日向ぼこ
阪神忌人のきづなをな忘れそ
ハイカーも碑に黙祷す阪神忌
語り部の彼も老いたり阪神忌
碑の霊の寧かれと訪ふ阪神忌
被災地の碑に佇てば草芳しき
復興の町や如何にと登高す
小春日の山路をバードウオッチング
ほ句談義しつつ山路の梅探る
雲切れて冬日ひろごる池の面
風倒樹水漬きし池塘冬ざるる
落葉嵩分けて顔出す物芽あり
海光にシルエットなる枯木立
池塘なるわれらに鴨の陣遠し
日射すみち網目模様に枯木影
焼痕の禿山なれど草萌ゆる
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