2013年の作品
2013年の作品
庄屋門ハローウインのかぼちゃ笑む
風折れの一枝杖とす秋山路
な滑りそ出水の後の秋山路
ボロボロの蜘蛛の囲かかる獣道
秋草を砦としたる農具小屋
どの畦も参道となる村まつり
能勢なれや鎮守の神饌に栗供ふ
鵙猛る湯立神事の湯煙に
ここもまた猪の狼藉畦凹む
空蝉をまろばせてをる掌
間延びして音の谺す遠花火
揚花火見せ場なりしに煙邪魔
花火師の黒子めきたる中州かな
盆僧の経はしょりしをな咎めそ
郷関を出でし長子の墓洗ふ
機窓涼し雲の巻舒をパノラマに
原爆忌被爆二世の妻も老い
サングラスとれば慈顔の好々爺
まず美脚でて外車よりサングラス
ホルスタイン連鎖して啼く牧涼し
高牧を蛇行して延ぶ馬柵涼し
火に墨をぶちまけしごと梅雨夕焼
避暑日記一期一会を記しけり
背に主峰前に樹海や避暑ホテル
刑務所の塀の片陰拾ひゆく
次のバスまで地下街を避暑散歩
恋蛍高舞ふ谷戸の山襖
縺れつつ樹間を縫へる恋蛍
ゴルフ場窓に展けし避暑ホテル
百態の赤松林避暑散歩
句敵の布団はもぬけ明易し
無為という至福の時や縁涼し
一幅を風が持ち上ぐ夏座敷
石灯籠涼し総身苔衣
疲れたる足なげだして夕端居
万緑へ投げ入れしごと修験堂
蟻地獄大中小と揃ひけり
百代の輪塔深き木下闇
子蜥蜴の吾を一瞥して逃ぐる
能勢路いまどの道とるも栗の花
注連古りて大緑陰をなせりけり
大けやき谷戸の梅天支へをり
足跡のハの字ヘの字や田草取り
源流の青嶺へ畳む棚田かな
カルストの岩の疎密や青野原
起伏野を浮沈して往くバス涼し
展望台涼しカルストパノラマに
万緑の底ひの道をドライブす
なぞへなす玉垣涼し御用邸
踏青子行き交ふインクラインかな
新緑へ水かげろふや水路閣
高欄の足下を埋む寺若葉
ガイド指す京都五山や欄涼し
緑陰にママチャリ止めて立ち話
ルンペン氏花のベンチを独り占め
ルンペン氏襤褸を纏へど花衣
蒲公英の黄のなだれ咲くなぞへかな
池塘人思ひ思ひに春惜しむ
池の面の蒼天へ舞ふ落花かな
鳩翔ちて落花畳を乱しけり
余花白し園も奥なる一隅に
落花屑吹き寄せられし汀かな
キャンパスの茶庭は今し竹の秋
雨意兆す暗さ山茱萸黄なりけり
黒ぼこの畠にひともと山茱萸黄
花の雲聖母の丘に展けけり
試歩の汝に聖母の丘の草青む
赤松の樹間を綴る山つつじ
俳句にはうとしと笑ふ桜守
女生徒ら駈け下りていく花の坂
幾たびも振りかへり見る花の坂
糶果てし土間に散らばる若布屑
舷に陽炎ふ波の影うらら
波止日永蛸壺山と積みしまま
根釣人テトラポットを天狗とび
庇なす芽木の梢やビオトープ
稚魚群れて春の日躍るビオトープ
泥神楽たてたるはなに池温む
木洩れ日のスポットライト目高群る
浦凪ぎて刃がねびかりや春日燦
渡御雛陶の小舟に傾きぬ
豆雛ルーペがあればなと思ふ
カメラマン土下座して撮る豆雛
ともしらがなる偕老の豆雛
道化師のつどふがごとく豆雛
豆雛うち揃ひたる手盆かな
乱れ髪なほすすべなし古雛
首少し傾ぎて愁ふ古雛
まつすぐに立つは至難や古雛
日向鴨呪文のごとく嘴うごく
陣乱す浮気な鴨のをりにけり
震災を知るもをるべし昆陽の鴨
丿乀と居向きばらばら鴨浮寝
逍遥す池塘に鴨の陣遠し
西行の一碑に見ゆ枯野径
園児らの桃色帽子野に遊ぶ
唄口にあてがふ朱唇ひょんの笛
てのひらに愛でてうぐひす餅食ぶる
谷崎碑囲むわれらに春の雪
裏山の覚めよと奏づ春の川
踏青や句仲間といふ宝物
幾重にも堰落ちて水温みけり
水際石動くと見れば春の鴨
春愁の青鷺となりかたまりぬ
陶房の人みな寡黙春の昼
春昼の陶房女人ばかりなる
春陰の石人はいま瞑想裡
水仙郷へとドライブす渚道
ヘアピンの岨また岨や水仙郷
千万の金壺まなこ水仙郷
玩具めく奈落の駐車水仙郷
杖二本水仙郷も苦にならず
焼芋を頬ばりもしてフルムーン
春の海大玻璃窓に昏れなんと
鳥雲に海を見下ろす露天風呂
道の駅あれば寄り道旅うらら
岩戸鎖すさまの炭窯燻りぬ
盤石を鎧ひ炭焼く巨大窯
絶やさじと炭の窯守る気骨翁
生涯を炭焼きに賭す為人
茸榾砦と組みし山家かな
全身が洞となりたる大枯木
百態の台場くぬぎの枯れ姿
風倒木ごと横たはり河涸るる
峡空へ朽木の尖る冬河原
石塔の傾ぐは震禍初戎
逸りがちなる火をなだめどんど守る
仮名文字の釘と曲がりてどんど燃ゆ
左義長の玄人筋とみたりけり
停車場ホーム越しなる御慶かな
蔵の門大蛇のごとき注連飾る
舌頭にまろばせて利く新走り
利き酒や指で拭きたる紅のあと
と見る間に失せる日差しや白障子
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