2012年の作品
2012年の作品
蒼天に万華鏡なす庭紅葉
枝絡む日に甦る冬紅葉
散紅葉しとねに祇王祇女の墓
紅葉影去来の墓に余りけり
堆き落葉籬に去来墓
落柿舎の広縁借りて日向ぼこ
底抜けに青き空あり木守柿
落柿舎にいとま心や添水打つ
錦秋の嵐峡つつむ夕帷
ロープウエイ指呼の奈落に一瀑布
ゴンドラはガラスの箱や山粧ふ
大楠に凭れて杜の秋を聴く
広芝の丘の天辺秋桜
コスモスの丘にパノラマ港町
コスモスの丘を統べゐる大風車
行く雲に心通はせ秋惜しむ
白杖に秋思のベンチ譲りけり
秋バラの疎なるがよろしカフェテラス
秋天下鳥語にまさる子らの声
万葉苑歌碑を愛でつつ萩芒
句を拾ふ径にどんぐり拾ひけり
雲一朶なき蒼天を小鳥来る
風に舞ふ木っ葉にあらず秋の蝶
玉の日に誘はれ出でし冬の蝶
庭雀らにありあまる小春かな
空真澄水色絵の具塗りしごと
木の実独楽いまはのきはの震へかな
稲刈れば四散す蝗虫はた蛙
雲晴れてより上機嫌稲刈り機
稲掛くる吾に目つぶしの落暉かな
稲架隠れ盗賊鴉うろうろす
雁行に似たる麓田の稲架襖
稲掛けを終へて老骨棒となる
老い母が落穂拾ひす夕まぐれ
と見る間に昏れゆく谷戸の稲架襖
稲架昏れて山の端出づる一つ星
大秋晴一朶の雲も行かしめず
岩鼻を踏んまへて立つ秋の人
照り翳る山路の秋の日は気まま
みちをしへ日の斑の径に紛れけり
山上のダム湖へ岨のみちをしへ
下山子とすれ違ひたるみちをしへ
木洩れ日を縫ひて機嫌やみちをしへ
吟行子たちを導くみちをしへ
遣水の細りし苑に秋惜しむ
一会なる雨もまたよし古都の秋
夢殿の軒に樋なし秋驟雨
な滑りそ秋雨そぼつ石畳
直角に根性曲がる糸瓜あり
稔田の真ん中凹みゐるは何
雨の糸切っては返すつばくらめ
早稲晩稲グラデーションや千枚田
豊の秋塚を要となせりけり
大和路の葛襖なる切り通し
画架立てて絵を描くでなし秋の人
石投げて秋思うべなふ湖畔かな
老い母の杖ともなりて避暑散歩
幾重にも起伏野綴る花野かな
夕日いま主峰を染むる花野かな
白樺の林を縫ひてあきつ群る
天国も斯くやと巡る花野かな
クラークの右手指す天の高きかな
機窓涼し百万ドルの灯を翼下
迷路めく金魚田の畦めぐりけり
金魚田の汀を恋へる糸蜻蛉
金魚田の静寂間遠に牛蛙
金魚田の畦たもとほる白日傘
金魚田の風青田へと移りけり
金魚田のほどよき濁りかと思ふ
金魚田の里に傾く電車かな
金魚田に鉛色射す梅天下
過疎化して富むとは見えぬ金魚村
谿わたる風にぺちゃくちゃ若楓
大庇なせる巌や滝の道
滝の道落合橋に岐れけり
みどり児のごと小さき手や山椒魚
口あけばアンパンマンや山椒魚
大き口開けば真白山椒魚
この川の透明度みよ山椒魚
岩鼻に孤独うべなふ滝見人
春陰に不即不離なる番鴨
摩天楼ビル屹立す花堤
船頭の指呼に天守や花見舟
句仇ら呉越同舟花見舟
刻告ぐる大噴水や中之島
花万朶数多の杖に支えられ
水上バス末広がりに水脈涼し
橋半ば水都の春を惜しみけり
ギャルどちら美脚なげだす花筵
とゆきかく池駈け巡り風光る
たもとほる水上橋に風光る
芽柳に遠山はまだ覚めやらず
春風や錦水亭へ綺羅の波
椎大樹要としたる梅の丘
句輩ぺちゃくちゃ梅のベンチかな
抽ん出し塔の九輪や芽吹き山
梅林へ矢印恃む奥社道
うららかや杭と見えしは亀の首
雛屏風連理の鶴を描きけり
雛屏風花鳥諷詠散らしたる
眉薄き有職雛の気品かな
骨董を趣味とす雛の宿あるじ
斯く古りて寝乱れ髪の雛もあり
私語やめて聞かむ雛の囁きを
座ることなきが定めや立ち雛
憂い皺一筋もなき古雛
灯ともりてより雛の間の艶めきぬ
2024 | 2023 | 2022 | 2021 | 2020 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016 | 2015 | 2014 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010