2021年の作品
2021年の作品
着ぶくれの行列なせる豚まん屋
道へ湯気たてて豚まん商へる
華燭して南京町もクリスマス
スクランブル交差点満つ師走人
青信号フライングせる師走人
尻と尻ぶつかりあへる蚤の市
歳の市セールの赤が氾濫す
街師走なれど牛歩の吟行子
アーケード赤が席巻クリスマス
存問や冬たんぽぽにうづくまり
舞ひ落ちし枯葉にあらず冬の蝶
満天星の紅葉火屑をこぼしけり
陣なさず鳰はてんでんばらばらに
陣解いて汀の鴨となりにけり
池心へと末広がりに鴨の陣
番鴨不即不離なる葦がくれ
石庭の島々つつむ冬日かな
曼荼羅をなせる水底紅葉かな
嵯峨に食ぶ善哉能勢の栗といふ
野々宮へ女人列なす小春かな
錦繍の底ひにトロッコ列車駅
吉野窓繰ればさやけし竹の春
茅葺門燃えうつりさう照紅葉
天辺はほむら立つやに照紅葉
抽んでて天空に燃ゆ照紅葉
建仁寺垣をはみ出す照紅葉
白拍子現れよ苔庭紅葉燃ゆ
つながむと手をさしのぶる苑小春
句ともがらうち揃ひたる秋天下
できたかと句帳のぞきに秋蝶来
蔦紅葉して朱の欄となせりけり
二タ三言交はし湖畔の秋惜しむ
照紅葉庭滝涸るること知らず
一渓のかそけき水の秋惜しむ
鬼ごつこしてをる池の小春波
渓空の葉づれさやけし金風裡
タンカーのしざるかと見ゆ卯浪かな
鯉のぼり息を吐かせてたゝみけり
木道に湿原の春惜しみけり
吊橋の半ばに渓の春惜しむ
蒲公英の桟敷に野球応援す
遠足の列一笛に解かれけり
晩鐘の一打に牡丹崩れけり
江戸文字の金看板や桜餅
鯉のぼり標高千の牧場に
ひろげ干す傘春風に走り出す
天狗岩落つこちさうや山笑ふ
花吹雪かつて軍馬のかけし谷
池塘いま花回廊といひつべし
松の秀へ高舞ふ須磨の落花かな
蝶もつれ一の谷へと落ちにけり
燕来るうだつの残る古町に
夜桜に須磨の老松黒子めく
囀りの樹下に佇む白杖子
ものの芽の一つ一つにある遅速
石切場絶壁みせて山笑ふ
うららかや空缶汐の波まくら
舌頭にホ句育てつつ踏青す
貝寄風の浜に敦盛悼みけり
春光や落合ひてより水迅し
航跡の真一文字に風光る
まどかなる春月浮かべ須磨凪ぎぬ
かげろふに指差喚呼せる駅手かな
灯籠みな絆と記す阪神忌
黎明に一柱立ちしどんどかな
人日や昭和の御世も語りぐさ
夜焚火の影に魑魅も紛るべし
敗者いま息白く天仰ぎけり
不夜城は救急病棟結露窓
寒造り樽は百寿の吉野杉
掌を出しぬ辻占の寒灯に
寒椿蕾の先のおちよぼ口
雪嶺の一刀彫のごとき襞
初日さす沖にエールの汽笛かな
舳先いま初凪の浦二タ分に
一刷けの瑞雲染めて初明り
孫二人合唱のごと御慶のぶ
投扇の遊びを飾る老舗かな
師の寿ぎ句記して日記始とす
息白き言ひ訳嘘とわかりけり
めくばせで女給を仕切るマスクかな
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