2021年の作品

2021年12月14日

師走


着ぶくれの行列なせる豚まん屋

道へ湯気たてて豚まん商へる

華燭して南京町もクリスマス

スクランブル交差点満つ師走人

青信号フライングせる師走人

尻と尻ぶつかりあへる蚤の市

歳の市セールの赤が氾濫す

街師走なれど牛歩の吟行子

アーケード赤が席巻クリスマス

12月度定例句会@三宮元町界隈

2021年12月3日

冬たんぽぽ


存問や冬たんぽぽにうづくまり

舞ひ落ちし枯葉にあらず冬の蝶

満天星の紅葉火屑をこぼしけり

陣なさず鳰はてんでんばらばらに

陣解いて汀の鴨となりにけり

池心へと末広がりに鴨の陣

番鴨不即不離なる葦がくれ

石庭の島々つつむ冬日かな

曼荼羅をなせる水底紅葉かな

12月度落穂句会@市ノ池公園

2021年11月27日

照紅葉


嵯峨に食ぶ善哉能勢の栗といふ

野々宮へ女人列なす小春かな

錦繍の底ひにトロッコ列車駅

吉野窓繰ればさやけし竹の春

茅葺門燃えうつりさう照紅葉

天辺はほむら立つやに照紅葉

抽んでて天空に燃ゆ照紅葉

建仁寺垣をはみ出す照紅葉

白拍子現れよ苔庭紅葉燃ゆ

2021年11月26日@嵯峨野独り吟行

2021年11月16日

秋天下


つながむと手をさしのぶる苑小春

句ともがらうち揃ひたる秋天下

できたかと句帳のぞきに秋蝶来

蔦紅葉して朱の欄となせりけり

二タ三言交はし湖畔の秋惜しむ

照紅葉庭滝涸るること知らず

一渓のかそけき水の秋惜しむ

鬼ごつこしてをる池の小春波

渓空の葉づれさやけし金風裡

2021年11月16日定例句会@北山緑化植物園

※コロナ禍が緩み約2年ぶりに定例句会を再開

2021年5月8日

鯉のぼり


タンカーのしざるかと見ゆ卯浪かな

鯉のぼり息を吐かせてたゝみけり

木道に湿原の春惜しみけり

吊橋の半ばに渓の春惜しむ

蒲公英の桟敷に野球応援す

遠足の列一笛に解かれけり

晩鐘の一打に牡丹崩れけり

江戸文字の金看板や桜餅

鯉のぼり標高千の牧場に

2021年5月度近詠

2021年4月13日

花の須磨


ひろげ干す傘春風に走り出す

天狗岩落つこちさうや山笑ふ

花吹雪かつて軍馬のかけし谷

池塘いま花回廊といひつべし

松の秀へ高舞ふ須磨の落花かな

蝶もつれ一の谷へと落ちにけり

燕来るうだつの残る古町に

夜桜に須磨の老松黒子めく

囀りの樹下に佇む白杖子

2021年4月度近詠

2021 年 3 月 2 日

春光


ものの芽の一つ一つにある遅速

石切場絶壁みせて山笑ふ

うららかや空缶汐の波まくら

舌頭にホ句育てつつ踏青す

貝寄風の浜に敦盛悼みけり

春光や落合ひてより水迅し

航跡の真一文字に風光る

まどかなる春月浮かべ須磨凪ぎぬ

かげろふに指差喚呼せる駅手かな

2021年3月度近詠

2021 年 2 月 15 日

寒造


灯籠みな絆と記す阪神忌

黎明に一柱立ちしどんどかな

人日や昭和の御世も語りぐさ

夜焚火の影に魑魅も紛るべし

敗者いま息白く天仰ぎけり

不夜城は救急病棟結露窓

寒造り樽は百寿の吉野杉

掌を出しぬ辻占の寒灯に

寒椿蕾の先のおちよぼ口

2021年2月度近詠

2021 年 1 月 12 日

初凪


雪嶺の一刀彫のごとき襞

初日さす沖にエールの汽笛かな

舳先いま初凪の浦二タ分に

一刷けの瑞雲染めて初明り

孫二人合唱のごと御慶のぶ

投扇の遊びを飾る老舗かな

師の寿ぎ句記して日記始とす

息白き言ひ訳嘘とわかりけり

めくばせで女給を仕切るマスクかな

2021年新春の須磨

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