2010年の作品

泥神楽あげたるはなに池小春

敗残の陣さながらに蓮枯るる

水鏡して紛らわし枯蓮

蓮枯るる鉛色なる空沈め

ただ無為に佇つ枯蓮の池塘かな

佇める人みな寡黙枯蓮

この池の栄枯盛衰蓮枯るる

錦秋を統ぶる寺苑の大公孫樹

大き尻でんぐりかへり鴨潜る

お竈突さん並ぶ三和土の温かし

自家製の味噌が味噌てふ芋煮会

芋煮会大家さんにもお裾分け

機嫌よき炉火に鍋の具踊りだす

炉の茶釜意気軒昂と湯気を噴く

炉の炭火機嫌の舌をのばしをり

相互ひ昔語りに炉辺和む

饒舌組寡黙組あひ炉辺に酌む

育ててつつ炉火に心の通ひけり

大案山子谷戸の棚田を統べにけり

ロン毛なる飛鳥美人の案山子かな

吟行子ぺちやくちや案山子は不言

首傾げ天を仰ぎし案山子かな

峠田の昏れて案山子の影法師

賞競ふ案山子は贅や靴を履く

厚化粧褪せて崩れし案山子かな

呆け顔してメタボなる案山子かな

十字架のイエスを思ふ案山子あり