2018年の作品
2018年の作品
斯く敷きてなほ降りやまぬ落葉道
一詩人木の葉時雨に身じろがず
鬼ごつこしてをる園の風落葉
烈風に逆巻く木の葉時雨かな
と見る間に青空失せる冬山路
土踏まずにも感触や落葉道
大魔神仁王立つごと大冬木
風騒の吾を洗礼す木の葉雨
傷心の靴先が蹴る落葉道
ぺちやくちやと荒神さんへ道小春
荒神へ味見のはしご店小春
黄落の大樹仰ぎて南無阿弥陀
一穢なき蒼天黄落日和かな
高舞ふと見しは錯覚黄落す
対峙して黄落競ふ大公孫樹
黄落の洗礼受けて礼参り
小春日に布袋の臍も笑むごとし
広前に余る小春の日差しかな
菊の虻日差し翳ればゐずなんぬ
対峙して居向き確かむ菊あるじ
結界に迫り出して愛づ賞の菊
玉の日に大菊威儀を正しけり
直立す大菊に吾も背筋伸ぶ
堵列して背比べめく賞の菊
虻忙し懸崖菊を上へ下へ
盆菊の古木百態雅を競ふ
日面は虻の天国菊花展
幽谷をと行きかく行き秋惜しむ
塞く岩に七折れ八折れ水の秋
岩走る水音に溪の秋惜しむ
二タ分れして静と動秋の川
覗き見る溪の底ひの秋深し
照り翳るたび万華鏡溪紅葉
一条の日矢が貫く溪紅葉
中腹の湖に一服秋山路
どこまでも真澄の空や山近し
千手の枝翳して木の実降らせけり
秋蝶は気紛れといふカメラマン
とりどりの色の草の実野路愉し
豊の田を喜び撫づる風を見よ
ゆく雲の遅速に窓の秋惜しむ
のろしめく白雲立ちし秋の峰
野菜くず残りし畑に紫苑立つ
八千草を活けて緑の相談所
大鳥居うち仰ぐ天高きかな
こぼるるを句帳に栞るしだれ萩
こぼれてもこぼれても萩無尽蔵
しじみ蝶丈余の萩をのぼりつめ
短冊の揺らぎて萩の風生まる
師の句碑に佇みをれば萩の風
萩叢の高みに仰ぐ子規の句碑
存問の虻にうなづくしだれ萩
草の花添へて絶筆三句の書
風あそぶ丈余の萩の天辺に
禿山の尾根越えて来る秋の声
風に舞ふ木つ葉に非ず秋の蝶
縺れつつ不即不離なる蜆蝶
やんま来て隠沼の面席巻す
切株に蔓からませて草の花
法師蝉千手ひろげし樟大樹
高窓を過りては行く秋の雲
溝萩の屏風立せる池塘かな
喬木に手をあてて聞く秋の声
谿川の七折れ八折れ秋の声
秋の声残念石のうしろより
水漬きたる風倒木の秋の声
瀬波いま瀞に鎮まる秋の声
山影の襞深きより秋の声
白骨化せし立枯の秋の声
橋半ば谿深きより秋の声
楓林の風の序破急秋の声
水豊かなる沢音に避暑心地
瀞にきて鎮まる沢の楽涼し
空谷の風病葉を降らしけり
空谷の樹間を縫ひて黒揚羽
激つ瀬に常濡れとなる岩涼し
一条の洩れ日にをどる羊歯涼し
降り立てば沢吹く風に汗引きぬ
谿深く降りゆくほどに濃紫陽花
瀬しぶきに毬揺れやまぬ濃紫陽花
けもの道めきて嵩なす竹落葉
菖蒲池古都の条理に似し歩板
歌膝にしやがんで愛づる花野かな
梅雨雲の厚きに籠る飛機の音
梅雨雲へ猪突猛進飛機離陸
異な虫も浮沈してをる蝌蚪の国
イナバウワーして風いなす早苗かな
掌に受けてみる鈴なりの小判草
小槌振るごとくに風の小判草
百蝶の憩ふがごとし山法師
山峡の暗さを払ふ山法師
迫り出して水漬く池塘の茂りかな
万緑の広さ深さよ池鏡
時鳥どのへんかしら山襖
遊歩道唄ふごとくに若葉影
わが陰に憩へと仁王立つ大樹
霧吹いてあげやうかしら花菖蒲
相会釈コスモス畑のあちとこち
門川へ卯の花こぼす垣根かな
高梯子江戸火消しめく松手入
築地塀右に左に門涼し
贅尽くす邸の緑や築地塀
華語韓語溢れ南大門暑し
片陰や二月堂へと築地塀
欄涼し古都の翠黛パノラマに
袋角いのちの色を宿しけり
偕老の手をつなぎゆくバラアーチ
バラアーチ潜る園児とハイタッチ
根上りを埋むばかりに夏落葉
緑陰の此処がよろしとベンチ混む
薔薇大輪呵々大笑の汝れ悼む
青蔦を総身に仁王立つ大樹
蔦葎千古の遺構埋もれしと
蔦葎ついと揺れしは魑魅ならむ
涼風におしやべりやまぬ楓の森
朱の欄に梅見の女人ひとならび
梅の丘攻めあぐるごと人の影
梅の丘雲居をいゆくごと巡る
碑を一太刀に切る梅の影
陣分けて紅白鬩ぐ丘の梅
閻王の秤かたむく春の塵
閻王と眼のあひてより彼岸寒
啓蟄の蟻はや秀つ枝めざしけり
啓蟄の穴うた膝に存問す
美人画を抜けきしやうな女雛かな
をみなみな少女の顔に雛愛づる
金屏に四川の山河展けけり
冠纓のゆるびあやうき古雛
貝合はす遊びを伝へ雛飾る
部屋中に赤が氾濫雛の宿
マッチばこ高御座とす豆雛
七福の神々そろふ豆雛
黒檀の床柱ある御殿雛
歌碑百基玉垣なせる梅の宮
身に入むや霊松殿に枯死の幹
玉垣にしだれて屑をこぼす梅
百様の梅の遅速を愛でにけり
しだれ梅放物線の傘ひらく
万蕾の重しと辞儀す枝垂れ梅
馥郁と香に満つ宮居梅日和
天地人なす枝ぶりやしだれ梅
梅まつりとて結界を開放す
寺門でて春光の海パノラマに
明石の門波の子もなく風光る
指呼の沖しるき潮目に風光る
子午線の沖にいかなご漁れる
国生みの島青むかと遠眼鏡
仇討の悲願籠りし梅ひらく
子午線が海へ貫く梅の山
一女性長き祈りや梅の宮
金婚の一碑に宮の梅香る
蛸必死糶られながらも逃げんとす
糶の鱏口尖らせて不満あり
高値呼ぶ糶の鱸の跳ねにはね
着膨れて糶呼のおじさん強面
叱咤せるごとく糶呼の息白し
革ジャンで隠して糶の指サイン
糶負けて破れかぶれに春愁ふ
糶佳境熱き白息とび交ひて
糶果てて人気減りたる寒さかな
堰落つる町川春を唄ひけり
春光のとどく川底砂をどる
亀甲の石床あらふ春の川
下萌に膝つき祈る震災碑
黒汐の風に南高梅香る
早春の空指す竿やはねつるべ
舌頭にまろばせて利く新走
下戸の吾にあふ甘口の新走
春霞指呼の六甲まだ覚めず
庭師いふ松に聞きつつ手入れすと
鴨進む連理の水尾を重ねつつ
ほらそこと指されし方に鳰をらず
鳰潜る連鎖反応見て飽かず
水走りして鳰突進何事ぞ
水遁の術を見よやと鳰潜く
イエス在さば歩かむ池の薄氷
日溜まりの薄氷岸を離れけり
萌ゆるかと手で分けて見る枯葎
流木をあつめて足りる浜焚火
浜焚火命拾ひし話など
朝散歩ちよつとより道浜焚火
酒気帯びの呂律怪しき浜焚火
煙草に火つけて戻しぬ焚火屑
裏表なく身を焦がす焚火かな
時化の沖指してため息浜焚火
浜焚火漁師志願といふ子らも
トロ箱も腰掛けとなる浜焚火
水鳥のしやくる嘴より玉 しずく
榾の火に翳さしたる手で顔擦る
榾の火の坩堝覗けば舌あそぶ
凸凹の薬缶湯気立つ番所かな
山眠る大火の傷のなほ癒えず
末広に立つ工場の初煙
広池に満つ御降の水輪かな
部活女子菓子頬ばりつ初詣
部活女子急磴一気初詣
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