2023年の作品

2023年12月08日

泉涌寺


京ことばもて大涅槃解かれけり

舎利殿の白骨格子冬日燦

庭清浄白砂と苔と散紅葉

雨粒を綺羅とやどせる著莪葎

苔の面を覆ひかつ散る庭紅葉

息を呑む御座所の庭の照紅葉

紅葉且つ黄葉御座所を荘厳す

官女の間とて絵屏風と緋毛氈

錦繍の御座所にアブストラクト展

12月6日能勢、枚方、大阪小グループ納会吟行

今熊野観音寺


秀枝洩る日の目潰しや寺紅葉

山気満つ朝まだきなる紅葉寺

疎に密に峪へしぐるる散紅葉

朱の欄の足下八重なす峪紅葉

着膨れて菩薩に念ずぼけ封じ

たたら踏むほど磴埋む散紅葉

ひれ伏して撮る苔庭の散紅葉

句ともがら寄りて宴や枯木宿

琅玕に綺羅の日あそぶ竹の春

12月6日能勢、枚方、大阪小グループ納会吟行

2023年11月21日

庭紅葉


白亜なるトラピスチヌへ紅葉坂

たらちねの抱擁に似し日向ぼこ

豪邸のパノラマなせる庭紅葉

玉の日や冬帝われを洗礼す

天辺に陽の絡みをる谷紅葉

我ここにありと大王松落葉

一穢なき冬天支ふ大王松

錦繍の梢に透きて空ま青

出現の聖母を染めて庭紅葉

11月定例句会:宝塚黙想の家(修道院)

2023年10月05日

有岡城跡


古城址の秋を聞けとぞ松騒ぐ

秋風や城址といへど土塁のみ

秋草の土塁は子らの秘密基地

此処にまた鬼貫の碑や郷の秋

鬼貫の大盤石碑より秋の声

塚なせる秋天高く忠魂碑

古塚を虜としたる藪枯らし

異な千草おまんは誰ぞ野路愉し

別れの手翳し振り向く秋の人

10月度有志吟行

2023年10月05日

柿衞文庫


虚子門の女流ギャラリー文字涼し

露けしと佇つ石庭の白洲かな

石庭の陸なすところ苔の花

柿衞翁偲ぶお庭は柿の秋

酒蔵の今昔縷々と笑みさやか

焼杉の家並み清かや伊丹郷

路地さやか一直線に石畳

秋灯下和む酒蔵レストラン

爽やかや励ます方が励まされ

10月度有志吟行

2023年09月19日

盗人萩


相聞の歌碑誦してより秋思憑く

槙野師に負けじと野路の秋探る

万葉の歌碑もとほれば残る虫

露の歌碑犬飼節の聞こえずや

歌碑に添ふ万葉園の千草かな

猛々しく盗人萩の咲く野かな

園荒れて盗人萩が席巻す

野路の秋名草醜草あひ睦み

樹下通ふ風に寛ぐ残暑かな

9月度定例句会:西田公園・万葉園

2023年07月18日

避暑散歩


一渓へつづら折るみち濃紫陽花

瀬の楽にこころ洗はれ避暑散歩

どことなく渦巻いてをる瀞涼し

目高の子躍如す瀞のみぎはかな

堰く岩に七折れ八折れ渓涼し

大岩に二タ分れして渓涼し

岩走りては瀞となる渓涼し

一水の奈落を走る渓涼し

瑠璃の尾をひるがへし消ゆ蜥蜴かな

歩をとめて吾を訝しむ蜥蜴の子

7月度定例句会:北山緑化植物園

2023年07月07日

畑天満宮


磴一歩一歩に迫る青嶺かな

力石涼し白玉砂利の上に

御手洗の涼し那智黒へと溢れ

奥宮の涼し山気に満てりけり

天鵞絨の苔潤すは岩清水

神の鹿辞儀繰りかへし草を喰む

鹿垣の内なる神の若木かな

屁糞葛親のかたきと引かれけり

紅殻の小堂神の緑陰に

宮の木々トトロの森のごと茂る

山気に満ちていて、ゆくりなく鹿とも出会う

池田城址


建学の旨彫りし碑や門涼し

橋涼し奈落は木下闇の径

茶庭涼し見得切つてをる五葉松

芝涼し湖面のごとく刈り込まれ

景石の多島海めく芝涼し

瓢の笛吹き比べしつ吟行す

歌口に添はす朱唇や瓢の笛

高櫓涼し蔀戸全開す

高欄の涼し城下をパノラマに

浮舞台涼し水面に雲あそぶ

よく整備された城址公園で広々した芝庭が印象的

逸翁美術館


大梁涼しと仰ぐ長屋門

邸涼し壁に大きな肖像画

逸翁の終の住処ぞ諸所涼し

プロペラの回る高天井涼し

貴賓椅子涼し高足組んでみる

歴代のヅカガール笑む壁涼し

二の足や冷房の扉を出づるとき

捩花に触るる汝は左巻き

躙口涼し茶室は二畳の間

冷房の茶房お尻に根が生える

仕事で何度か訪ねていたが吟行したのは初めて、新鮮な感動を得た

2023年06月21日

梅雨晴間


ヘリの音太鼓打ちせる梅雨晴間

白拍子めく神奈備の梅雨きのこ

梅天を持ち上げてをる神の楠

神の岩侍る巨木の樹下涼し

白杖の佇ちあふぎゐる百千鳥

暑気祓ふやに打ち響く宮太鼓

泥神楽刎ねて躍如や梅雨の鯉

神の池島嶼模したる岩涼し

ひしめきて万華を描く錦鯉

6月度定例句会:西宮神社

2023年05月16日

薔薇爛漫


白薔薇の花芯のしべは檸檬色

薔薇小径網代模様に煉瓦敷く

らんまんの香に包まれて薔薇に佇つ

老骨に秘むる闘志や薔薇燃ゆる

大緑陰塚を要となせりけり

箍ゆるむ大輪の薔薇寧からず

機影いまはがねびかりす五月晴

ひろげ見る謎の古墳の落し文

散華せし薔薇剪る鋏潔し

5月度定例句会:大井戸公園

2023年02月25日

中山寺の涅槃会


朱の堂の要に金ンの寝釈迦かな

獣みな四肢折りて哭く涅槃絵図

寝釈迦いままどろむさまに腕枕

月まどか涅槃の釈迦の寧かれと

涅槃の図衆生の嘆き封じ込め

涅槃図の迦陵頻伽は唄ふやに

塗り忘れかも涅槃図の象真白

涅槃の図頭北面西教へけり

涅槃像御目あけませ風花す

2月度定例句会吟行:中山寺

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