着ぶくれの行列なせる豚まん屋
道へ湯気たてて豚まん商へる
華燭して南京町もクリスマス
スクランブル交差点満つ師走人
青信号フライングせる師走人
尻と尻ぶつかりあへる蚤の市
歳の市セールの赤が氾濫す
街師走なれど牛歩の吟行子
アーケード赤が席巻クリスマス
存問や冬たんぽぽにうづくまり
舞ひ落ちし枯葉にあらず冬の蝶
満天星の紅葉火屑をこぼしけり
陣なさず鳰はてんでんばらばらに
陣解いて汀の鴨となりにけり
池心へと末広がりに鴨の陣
番鴨不即不離なる葦がくれ
石庭の島々つつむ冬日かな
曼荼羅をなせる水底紅葉かな
嵯峨に食ぶ善哉能勢の栗といふ
野々宮へ女人列なす小春かな
錦繍の底ひにトロッコ列車駅
吉野窓繰ればさやけし竹の春
茅葺門燃えうつりさう照紅葉
天辺はほむら立つやに照紅葉
抽んでて天空に燃ゆ照紅葉
建仁寺垣をはみ出す照紅葉
白拍子現れよ苔庭紅葉燃ゆ
つながむと手をさしのぶる苑小春
句ともがらうち揃ひたる秋天下
できたかと句帳のぞきに秋蝶来
蔦紅葉して朱の欄となせりけり
二タ三言交はし湖畔の秋惜しむ
照紅葉庭滝涸るること知らず
一渓のかそけき水の秋惜しむ
鬼ごつこしてをる池の小春波
渓空の葉づれさやけし金風裡
タンカーのしざるかと見ゆ卯浪かな
鯉のぼり息を吐かせてたゝみけり
木道に湿原の春惜しみけり
吊橋の半ばに渓の春惜しむ
蒲公英の桟敷に野球応援す
遠足の列一笛に解かれけり
晩鐘の一打に牡丹崩れけり
江戸文字の金看板や桜餅
鯉のぼり標高千の牧場に
ひろげ干す傘春風に走り出す
天狗岩落つこちさうや山笑ふ
花吹雪かつて軍馬のかけし谷
池塘いま花回廊といひつべし
松の秀へ高舞ふ須磨の落花かな
蝶もつれ一の谷へと落ちにけり
燕来るうだつの残る古町に
夜桜に須磨の老松黒子めく
囀りの樹下に佇む白杖子
ものの芽の一つ一つにある遅速
石切場絶壁みせて山笑ふ
うららかや空缶汐の波まくら
舌頭にホ句育てつつ踏青す
貝寄風の浜に敦盛悼みけり
春光や落合ひてより水迅し
航跡の真一文字に風光る
まどかなる春月浮かべ須磨凪ぎぬ
かげろふに指差喚呼せる駅手かな
灯籠みな絆と記す阪神忌
黎明に一柱立ちしどんどかな
人日や昭和の御世も語りぐさ
夜焚火の影に魑魅も紛るべし
敗者いま息白く天仰ぎけり
不夜城は救急病棟結露窓
寒造り樽は百寿の吉野杉
掌を出しぬ辻占の寒灯に
寒椿蕾の先のおちよぼ口
雪嶺の一刀彫のごとき襞
初日さす沖にエールの汽笛かな
舳先いま初凪の浦二タ分に
一刷けの瑞雲染めて初明り
孫二人合唱のごと御慶のぶ
投扇の遊びを飾る老舗かな
師の寿ぎ句記して日記始とす
息白き言ひ訳嘘とわかりけり
めくばせで女給を仕切るマスクかな
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