庄屋門ハローウインのかぼちゃ笑む
風折れの一枝杖とす秋山路
な滑りそ出水の後の秋山路
ボロボロの蜘蛛の囲かかる獣道
秋草を砦としたる農具小屋
どの畦も参道となる村まつり
能勢なれや鎮守の神饌に栗供ふ
鵙猛る湯立神事の湯煙に
ここもまた猪の狼藉畦凹む
空蝉をまろばせてをる掌
間延びして音の谺す遠花火
揚花火見せ場なりしに煙邪魔
花火師の黒子めきたる中州かな
盆僧の経はしょりしをな咎めそ
郷関を出でし長子の墓洗ふ
機窓涼し雲の巻舒をパノラマに
原爆忌被爆二世の妻も老い
サングラスとれば慈顔の好々爺
まず美脚でて外車よりサングラス
ホルスタイン連鎖して啼く牧涼し
高牧を蛇行して延ぶ馬柵涼し
火に墨をぶちまけしごと梅雨夕焼
避暑日記一期一会を記しけり
背に主峰前に樹海や避暑ホテル
刑務所の塀の片陰拾ひゆく
次のバスまで地下街を避暑散歩
恋蛍高舞ふ谷戸の山襖
縺れつつ樹間を縫へる恋蛍
ゴルフ場窓に展けし避暑ホテル
百態の赤松林避暑散歩
句敵の布団はもぬけ明易し
無為という至福の時や縁涼し
一幅を風が持ち上ぐ夏座敷
石灯籠涼し総身苔衣
疲れたる足なげだして夕端居
万緑へ投げ入れしごと修験堂
蟻地獄大中小と揃ひけり
百代の輪塔深き木下闇
子蜥蜴の吾を一瞥して逃ぐる
能勢路いまどの道とるも栗の花
注連古りて大緑陰をなせりけり
大けやき谷戸の梅天支へをり
足跡のハの字ヘの字や田草取り
源流の青嶺へ畳む棚田かな
カルストの岩の疎密や青野原
起伏野を浮沈して往くバス涼し
展望台涼しカルストパノラマに
万緑の底ひの道をドライブす
なぞへなす玉垣涼し御用邸
踏青子行き交ふインクラインかな
新緑へ水かげろふや水路閣
高欄の足下を埋む寺若葉
ガイド指す京都五山や欄涼し
緑陰にママチャリ止めて立ち話
ルンペン氏花のベンチを独り占め
ルンペン氏襤褸を纏へど花衣
蒲公英の黄のなだれ咲くなぞへかな
池塘人思ひ思ひに春惜しむ
池の面の蒼天へ舞ふ落花かな
鳩翔ちて落花畳を乱しけり
余花白し園も奥なる一隅に
落花屑吹き寄せられし汀かな
キャンパスの茶庭は今し竹の秋
雨意兆す暗さ山茱萸黄なりけり
黒ぼこの畠にひともと山茱萸黄
花の雲聖母の丘に展けけり
試歩の汝に聖母の丘の草青む
赤松の樹間を綴る山つつじ
俳句にはうとしと笑ふ桜守
女生徒ら駈け下りていく花の坂
幾たびも振りかへり見る花の坂
糶果てし土間に散らばる若布屑
舷に陽炎ふ波の影うらら
波止日永蛸壺山と積みしまま
根釣人テトラポットを天狗とび
庇なす芽木の梢やビオトープ
稚魚群れて春の日躍るビオトープ
泥神楽たてたるはなに池温む
木洩れ日のスポットライト目高群る
浦凪ぎて刃がねびかりや春日燦
渡御雛陶の小舟に傾きぬ
豆雛ルーペがあればなと思ふ
カメラマン土下座して撮る豆雛
ともしらがなる偕老の豆雛
道化師のつどふがごとく豆雛
豆雛うち揃ひたる手盆かな
乱れ髪なほすすべなし古雛
首少し傾ぎて愁ふ古雛
まつすぐに立つは至難や古雛
日向鴨呪文のごとく嘴うごく
陣乱す浮気な鴨のをりにけり
震災を知るもをるべし昆陽の鴨
丿乀と居向きばらばら鴨浮寝
逍遥す池塘に鴨の陣遠し
西行の一碑に見ゆ枯野径
園児らの桃色帽子野に遊ぶ
唄口にあてがふ朱唇ひょんの笛
てのひらに愛でてうぐひす餅食ぶる
谷崎碑囲むわれらに春の雪
裏山の覚めよと奏づ春の川
踏青や句仲間といふ宝物
幾重にも堰落ちて水温みけり
水際石動くと見れば春の鴨
春愁の青鷺となりかたまりぬ
陶房の人みな寡黙春の昼
春昼の陶房女人ばかりなる
春陰の石人はいま瞑想裡
水仙郷へとドライブす渚道
ヘアピンの岨また岨や水仙郷
千万の金壺まなこ水仙郷
玩具めく奈落の駐車水仙郷
杖二本水仙郷も苦にならず
焼芋を頬ばりもしてフルムーン
春の海大玻璃窓に昏れなんと
鳥雲に海を見下ろす露天風呂
道の駅あれば寄り道旅うらら
岩戸鎖すさまの炭窯燻りぬ
盤石を鎧ひ炭焼く巨大窯
絶やさじと炭の窯守る気骨翁
生涯を炭焼きに賭す為人
茸榾砦と組みし山家かな
全身が洞となりたる大枯木
百態の台場くぬぎの枯れ姿
風倒木ごと横たはり河涸るる
峡空へ朽木の尖る冬河原
石塔の傾ぐは震禍初戎
逸りがちなる火をなだめどんど守る
仮名文字の釘と曲がりてどんど燃ゆ
左義長の玄人筋とみたりけり
停車場ホーム越しなる御慶かな
蔵の門大蛇のごとき注連飾る
舌頭にまろばせて利く新走り
利き酒や指で拭きたる紅のあと
と見る間に失せる日差しや白障子
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