小田の藁塚あち見こち見に傾きぬ
ひつじ田へ降りて畦道譲りけり
弧なる畦真直ぐなる畦曼珠沙華
畦といふ畦塗りつぶし曼珠沙華
浄土へと続く道なれ曼珠沙華
ま青なる天が下なる曼珠沙華
曼珠沙華踏むまじと畦脱線す
曼珠沙華浄土の里に寝仏寺
黄昏の影纏ひそむ曼珠沙華
秋水に嬲られて歯朶揺れやまず
大砲のレンズを据えて秋の人
白砂なる州浜を洗ふ秋の水
秋惜しめとぞ漣す心字池
秋水の逸りて躍るさざれ石
黄色帯ぶ欅並木の秋日影
真ん中に秋水を噴く鏡池
階をなせる水苑ひつじ草
民芸館陶の一壺に草の花
石畳こぼるる萩を穢となさず
萩の屑払ひ師の句碑存問す
清浄な箒目に萩こぼれけり
萩むらに小さき夫婦道祖神
短冊はなべて虚子門萩の寺
茶室へと飛石づたひ草の花
墨薄き絶筆三句子規祀る
大紋幕金風孕み膨らみぬ
大樟の千手を翳す天高し
新涼の空にぺちやくちや大ポプラ
連綿とアルプスなして雲の峰
野路愉し侍者のごとくに蜆蝶
散り散りに多島海めく秋の雲
機影より遅れて音や秋澄める
相聞のごと二タ筋の秋の雲
山の幸目当てと峡へ秋の人
鍔広の母子が仰ぐ夏木立
丹精の盆景鉢や窓涼し
盆提灯吊るしてひさぐなんでもや
二つ瀬の落合ひてより水澄める
根上りに坐して大樹の秋を聞く
昨夜雨の粒が煌めく花野かな
朴広葉身震ひやまぬ渓の秋
秋思ふと瀬石に絡むレジ袋
山荘の千草をせせる秋の蝶
高鳴れと瀬音を囃す法師蝉
絶叫のあとの沈黙法師蝉
布袋尊灼けても笑みを絶やさざる
石壁を見せて切り立つ夏の山
灼熱を糧にアメリカ芙蓉咲く
赤土を敷く山小屋の土間涼し
白日傘ポプラ並木の幹隠れ
黄槿を見て幸せの黄と思ふ
車椅子へと径譲る避暑散歩
歩一歩金剛杖や法師蝉
就中楡の大樹の陰涼し
身も心も洗へとしぶく大瀑布
不揃ひな椅子卓並べ瀧見茶屋
滝風に逆巻き天降る飛沫かな
梅雨滝の壷は荒磯のごと騒ぐ
滝壺の坩堝を抜けて水寧し
百丈の巌に玉砕梅雨の滝
盤石の苔を絞りて滴れる
万緑を深くぞ抉り渓激つ
池の面の蝶漣に紛れけり
瀬飛沫を浴びて艶ます濃紫陽花
楓林の洩れ日を浴びて濃紫陽花
瀬の石を射抜く洩れ日や苔の花
瀬の石を猿とびもし避暑散歩
木洩れ日を縮緬揉みす沢涼し
盤石を抱く走り根渓涼し
十重二十重渓空覆ふ青楓
つくばひの全身覆ふ苔涼し
作り滝七段落ちや苔涼し
梅天へコンビナートは煙吐く
梅雨の沖潮目もなにもなかりけり
引き潮の渚を綴る石蓴かな
浮沈する礁の頭や青葉汐
老漁夫のむかしを語る青岬
築堤は工楽と記す青岬
砲台の跡と碑のたつ青岬
蜃気楼めく島影や青岬
送電塔仰ぎ泰山木開く
カーチェイスさながら鬩ぐあめんぼう
濁り田に浮沈してをるカブトエビ
脱ぎ捨てし襤褸のごとくに竹の皮
ジェット機の青嶺貫くやに離陸
菖蒲田の条里をなせる歩板かな
菖蒲池迷路パズルのごと歩板
ミアミスは横恋慕かも塩蜻蛉
扇状に綾なす谷戸の植田かな
車座に大行厨やうまごやし
梅雨雲の千切れて尾根を急ぎけり
梅雨じめりしたる句帳に文字滲む
五月雨に砂躍りをるにはたづみ
梅雨の門錆びて開かぬとその園閉鎖
梅雨の森傘がなくても歩けさう
梅雨の峡百鳥声をひそめけり
切株を車座に置くキャンプ場
梅雨合羽着て余念なき園丁ら
白無垢を広げしごとく山法師
ジプシーのごとくに園の薔薇めぐる
苑の薔薇見てよ見てよとみな笑顔
白薔薇の百花あたりを払ひけり
朝日燦昨夜の緑雨のにはたづみ
ほむらめく真紅の薔薇の一屯
森涼し楓の葉擦れの音もまた
天辺に青空透けるバラアーチ
一婦人沈思黙考バラアーチ
夏木立塚は要をなせりけり
松天へ伸びて飛燕に触れなんと
注連古りて大緑陰をなせりけり
神馬像駈けだしさうや薫風裡
草引女宮司の内儀とは知らず
春潮の楽の満ちくる雁木かな
宮若葉改元で混む御朱印所
百代の松抽んでし宮若葉
老松の自由奔放夏空へ
両袖に松の緑や能舞台
盤石に神と一と文字万緑裡
羽衣のごと藤纏ふ大樹かな
天つ藤あたりを払ふ樫大樹
ごところぶ風倒大樹苔の花
日の斑洩る森の一隅著莪浄土
棚の藤虻の頭突きに屑こぼす
万葉の歌碑へと天降る百千鳥
絵図になき禰宜の細道竹の秋
春昼の直哉旧居に句座ひらく
茶庭いま萌黄襖に芽吹きけり
山つつじ潜りくぐりて岨辿る
山湖へと残る桜を温ねつつ
草引女茶庭撫でつつ膝行す
甲山先兵として笑ひけり
紋白蝶黄花葎を好みけり
春光の苑の一水手に掬ひ
翠黛や群青湛ふ水源地
天網の如くに渓の若楓
磊々の汀一擲黄鶺鴒
水陽炎映ゆ水亭の深庇
旧邸の甍へ挿頭す大桜
水亭は大正ロマン春灯
蜷の道なきやと屈む水辺かな
石人の金壺眼春憂ふ
花堤人へ絶叫選挙カー
芽木に透くレンガ造りの美術館
一と本の辛夷池塘に佇つごとし
啓蟄の大地穿ちて雨垂れす
啓蟄の汀やあぶく吐くは何
啓蟄を促す雨と思ひけり
点描のごと雨霧らふ梅の丘
薄紅に萌黄にと芽木芳しき
巡拝す七堂伽藍芽木の山
身に入むや水子地蔵の祈願絵馬
芽木秀枝指呼しつバードウオッチング
万蕾のふふむ夙川春の雨
啓蟄の大地踏んまえ樟大樹
うつ向くは何の憂ひぞ落椿
満開の梅侍らせて曽根の松
もつれあふ放物線や枝垂梅
白梅の極みと仰ぐ空ま青
枝絡む日の瑞々し梅真白
園児らの無垢の瞳に梅真白
園児らの電車繋ぎに梅の苑
園児らの唄に喝采梅の衆
門に吊る三輪の御札や寒造
桶の縁斯く摺り減りし寒造
利き酒の蔵を梯子す寒造
寒造剣のごとき蔵の屋根
売店も蔵屋根造り新走
辛口を宗とす蔵や寒造
温かや天地返しに樽造り
裸木や鞠のごとくに群雀
河口でて潮となりぬ春の水
爆発のごとき藤棚剪定す
カトレアがフレームの香を席巻す
フレームにお喋りをして花を見ず
干る間なくフレームの土間潤ひぬ
枯山の天辺だけに射す日かな
燦と日の射して蝋梅上機嫌
日翳りてより蝋梅の鬱つのる
広芝の仄といろづく春隣
かくれんぼしてをる母子花菜畑
左義長の火に扁額の文字揺らぐ
焚べられし御幣高舞ふ福火かな
鳩たちも遠巻きに寄る福火かな
福火とて太巻きのごと人垣す
投銭のごと火にくべて飾焚く
凍て硬貨山と積まるる遥拝所
それぞれに夢一つ述べ初句会
緋毛氈床几にならべ福箕売る
福だるま飾り老舗の暖簾守る
香煙の巻舒見よやと冬日射す
手を翳しては膝撫づる宮焚火
大榾の不機嫌さうに燻ぶりぬ
宮焚火守る老禰宜の苦労皺
大榾の鼎に組まれ一つ火に
榾の火の坩堝の中に舌躍る
宮焚火育ててをるは消防団
宮焚火囲む誰彼知己のごと
うつし身を裏表なく宮焚火
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