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2024年09月28日

月の須磨


海凪ぎて土竜叩きに鯔の飛ぶ

月の須磨武者の如くに松の影

閉づと聞く老舗の洩らす秋灯

墨痕のかすれ涼しき大書かな

ひぐらしや杉の奈落に一末社

乱帙をわが城とせる昼寝かな

搾りたて牛乳避暑の牧至福

露の玉東雲あかり宿しけり

曼珠沙華山田錦の里埋む

2024年9月

2024年08月24日

流灯


ゆき悩む流灯を手で促しぬ

流灯の帯となりゆく遅速かな

水替へて吐息新たや水中花

鎮魂の海へ散華す大花火

白靴をぬぎて渚に遊びけり

時刻表枕に昼寝無人駅

朝蝉の調べは秋やデボーション

藍涼し真白き帯を胸高に

端切れめく水着の値札疑ひぬ

2024年8月

2024年07月25日

消息雑詠


連理して大緑陰をなせりけり

透明度百パーセント瀞涼し

目に涼し宇治の早瀬よ水音また

川風が攫ひし宙の糸とんぼ

青海波なす段丘の濃紫陽花

風涼し老舗暖簾の字の合はず

岩清水ひきて蹲踞奏でしむ

一条の日の輪のをどる泉かな

蓮の池車軸の雨に寧からず

5月〜7月

2024年05月07日

銀竜草


竹秋に透けてぽつんと一山家

草ぐさに憂さ癒やさるる春山路

岩窪の祠ほとけは銀竜草

熊谷草咲くと秘境を一万歩

囀の天降りやまずよ杉美林

緑雨なる深山の道は傘要らず

岩噛んで瀬しぶきに耐ふ瑠璃蜻蛉

沢蟹の爪見えてをる岩間かな

代田水満ちて蛙の唄ひだす

5月6日能勢グループの案内で能勢初谷渓谷を吟行しました。

2024年01月14日

伏見郷


閼伽の水溢れ春光こぼしけり

おはじきのごと日溜まりへ寒雀

庭雀冬日失せればゐずなんぬ

水郷に刎ねる日差しや柳の芽

春水の底より吐息主は誰

口づけのごと寒紅の酒を利く

寒づくり淡路瓦の簷連ね

路地懐かし餅の花咲く伏見宿

志士の魂宿る寺田屋冬座敷

1月9日大阪小グループ吟行(伏見郷、伏見宿)

2023年12月08日

泉涌寺


京ことばもて大涅槃解かれけり

舎利殿の白骨格子冬日燦

庭清浄白砂と苔と散紅葉

雨粒を綺羅とやどせる著莪葎

苔の面を覆ひかつ散る庭紅葉

息を呑む御座所の庭の照紅葉

紅葉且つ黄葉御座所を荘厳す

官女の間とて絵屏風と緋毛氈

錦繍の御座所にアブストラクト展

12月6日能勢、枚方、大阪小グループ納会吟行

今熊野観音寺


秀枝洩る日の目潰しや寺紅葉

山気満つ朝まだきなる紅葉寺

疎に密に峪へしぐるる散紅葉

朱の欄の足下八重なす峪紅葉

着膨れて菩薩に念ずぼけ封じ

たたら踏むほど磴埋む散紅葉

ひれ伏して撮る苔庭の散紅葉

句ともがら寄りて宴や枯木宿

琅玕に綺羅の日あそぶ竹の春

12月6日能勢、枚方、大阪小グループ納会吟行

2023年11月21日

庭紅葉


白亜なるトラピスチヌへ紅葉坂

たらちねの抱擁に似し日向ぼこ

豪邸のパノラマなせる庭紅葉

玉の日や冬帝われを洗礼す

天辺に陽の絡みをる谷紅葉

我ここにありと大王松落葉

一穢なき冬天支ふ大王松

錦繍の梢に透きて空ま青

出現の聖母を染めて庭紅葉

11月定例句会:宝塚黙想の家(修道院)

2023年10月05日

有岡城跡


古城址の秋を聞けとぞ松騒ぐ

秋風や城址といへど土塁のみ

秋草の土塁は子らの秘密基地

此処にまた鬼貫の碑や郷の秋

鬼貫の大盤石碑より秋の声

塚なせる秋天高く忠魂碑

古塚を虜としたる藪枯らし

異な千草おまんは誰ぞ野路愉し

別れの手翳し振り向く秋の人

10月度有志吟行

2023年10月05日

柿衞文庫


虚子門の女流ギャラリー文字涼し

露けしと佇つ石庭の白洲かな

石庭の陸なすところ苔の花

柿衞翁偲ぶお庭は柿の秋

酒蔵の今昔縷々と笑みさやか

焼杉の家並み清かや伊丹郷

路地さやか一直線に石畳

秋灯下和む酒蔵レストラン

爽やかや励ます方が励まされ

10月度有志吟行

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