天王寺さんへ寄り道年の市
仏具屋でお茶を相伴年の市
年の市長蛇をなせる列は何
小銭入だして一施や慈善鍋
路地へだて托鉢僧と社会鍋
煤逃げや動物園へ孫連れて
凩に吹つ飛んでいくレジ袋
園丁ら松よ竹よと門飾る
探鳥舎めく四阿や枯木立
末広の水脈重ねつつ番鴨
錦繍の山よこたはる鏡池
浮雲の進むともなき小春かな
綿雲のひつかかりたる枯木かな
空真澄なんきん櫨の実を散らし
息継ぎの間もあらばこそ鳰潜る
ほらあそこよと指されたる鳰遠し
野あそびのごと縺れあひしじみ蝶
しじみ蝶野の日翳ればゐずなんぬ
枝絡む玉の日差しや小鳥来る
紅葉燃ゆ比翼のごとく枝重ね
嵩なしてなだるる磴の散紅葉
万華鏡なす池の面の散もみぢ
白亜なる舎利塔そめて法紅葉
散尽くすかと打ち仰ぐ大銀杏
枯れ果てて金釘折れの蓮かな
枯蓮黄泉も斯くやと眺めけり
水没すいまはのきはの枯れ蓮
畝楚々と修道院の冬菜畑
錦繍の樹下黙想の椅子並ぶ
錦繍の森に白亜のトラピスト
玉砂利のごと木の実踏む杜の道
一と刷けの風が誘ふ木の葉雨
神苑の祈りの道の落葉踏む
禊場の神さぶ秋を聞きにけり
帰るさの宮の裏道竹の春
竹春の藪を貫き日矢とどく
二タまたに道しるべ立つ露葎
ちかみちと里人の指す露の道
天に宝積めと皇帝ダリア咲く
移り気の蝶落ちつかず花ダリア
蜜蜂にくすぐつたさう花ダリア
背高のダリアの毬とハイタッチ
一枚はコスモス咲かす棚田かな
しばらくは馬柵に凭れて秋惜しむ
吟行の句友は宝秋天下
萩寺の貫主なかなか俳句通
お茶席へ矢印の立つ萩小径
連理の碑こぼれし萩を花衣
萩屑を零すと見ればしじみ蝶
疾風にのけぞる萩の秀枝かな
萩の屑片よせて汲む手水かな
露の碑に短命の子規悼みけり
子規の句碑丈余の萩を籬とす
行き違ふには狭すぎる萩小径
句を拾ふどころではなし栗拾ふ
秋惜しむ大きな栗の木の下で
おちとこち相呼応して法師蝉
序破急と鳴き継ぎ絶句法師蝉
いわし雲串刺しにして飛行雲
風に舞ふ羽衣に似て秋の雲
秋耕の畝に離散す蟻の国
芝庭にホバリングしてあきつ群る
コスモスの園ジプシーす孤蝶かな
べた凪となりてヨットの帆は無聊
逸る帆に舫ひ解かるるヨットかな
舷をノックしてをる波涼し
貝殻館涼し法螺貝試し吹き
貝殻に耳あてて聞く浜の秋
箱庭に世界の小貝集めたる
大玻璃にかげらふ影や泉殿
舘涼し玻璃窓三百六十度
端居して視線は沖つ帆にあそぶ
モノレール宙進むごと窓涼し
雨垂れが太鼓打ちせる蓮広葉
蕭々と広葉を打ちて蓮の雨
大桟橋広き蓮池二タ分けす
万目の緑を洗ふ驟雨かな
鯉のボスさすが貫禄水脈涼し
あめんぼう鯉の吐息に追はれけり
涼しげな雨の水輪や心字池
せせらぎを右に左に避暑散歩
風いなしつつくつがへる蓮広葉
とゆきかくさまよふ風や蓮の花
風に耐ふいまはのきはの蓮の花
うろうろと池塘を巡る蓮見かな
蓮大輪たがのゆるびし亭午かな
白無垢を脱ぎすてしごと蓮散華
ひとひらに余命つなぎて蓮散華
蓮散華して水漬きたる葉陰かな
はな散りてより腰まがる蓮の茎
田の蛙バステノールと雨に和す
水遁の術のごと蝌蚪泥神楽
雲切れて青天井や蝌蚪の国
漣の消ゆれば現るる蝌蚪の国
犇めきて一塚なせる濃あぢさゐ
あぢさゐの相凭れあひ雨重し
身に入むや災禍を縷々と水難碑
猪名野なる青嶺をさして飛機離陸
カーチェイスさながら進む水馬
小つむじにそつぽ向きたる落椿
ウエルカムとも谺せる初音かな
石つぶて否とびこみし蟇
葉桜のよきかげ落とす遊歩路
百千鳥天降る古墳の奈落径
締め縄の巌に笑窪苔の花
よくもまあこれだけの松亭涼し
峡空の間遠となりぬホトトギス
車前草の起ち直りをる轍かな
天辺に銀嶺見えて山笑ふ
春天へ抽んでてをる雪嶺かな
蒼天をはらふ大樹の花ミモザ
園児らの散歩道なる梅の丘
石柱を並べ欄とす梅の丘
風光る桜大樹の万蕾に
木漏れ日のスポットライト落椿
日翳ると忽ち鬱や落椿
藪椿鵯の一矢に落ちにけり
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