参道へ湯気遊ばせておでん売る
もみぢ茶屋守り偕老を言ひにけり
蓮田枯れ浮かぶ細根の切れつ端
冬陽失せたちまち鬱や池の面
冬ざれてゐても園丁余念なく
天降る日に千手を翳す大枯木
公園を俯瞰してをる大枯木
空谷の風の序破急木の葉雨
石切の絶壁見せて山粧ふ
戦国の屋敷跡てふ枯野かな
筒抜けの店誰もゐぬ寒さかな
着膨れて迷ひし路地は行き止まり
旧家には似つかぬ外車うそ寒し
寒さうな旧家の三和土罅走る
絵屏風に連理の鶴や奥座敷
床の間に家宝の秘刀冬座敷
太梁に震禍の亀裂身にぞ入む
冬ともし煤びかりせる太梁に
二タ三筋トラピスチヌの冬菜畑
瞑想のベンチにやまぬ木の葉雨
風狂の心地に浴びる木の葉雨
イエス手を広げて招く紅葉影
日矢燦と祈りの道の枯木影
冬木立祈りの道としるべ立つ
一穢なき十字架の空鳥渡る
手を翳すパワースポット宮小春
小祠もついで詣でや神の留守
イベントの木の葉プールに子らはしやぐ
おしゃべりをしつつ地団駄紅葉冷
ハイカーも牛歩となりぬ紅葉坂
紅葉坂数珠つながりの駐車かな
元気出せ勇気出せよと紅葉燃ゆ
洩れ日さす紅葉時雨の小径かな
珠玉の日洩らす天蓋紅葉かな
ぎんなんを家苞に買ふ留守詣
焼芋を頬ばりながら姦しき
秋さぶや小蘭亭の藪騒も
石庭に秋思然たる老画伯
雨に伏す秋草叢も園の興
雨晴れて園の八千草起ち直る
苑至福曲水の斯く澄めりけり
王羲之の書なる一碑に時雨傘
はく息のため息に似て時雨冷
ハイカーの休み処にきのこ展
極彩が自己主張せるきのこ展
雨粒のつきて蜘蛛の囲役立たず
倒れんと傾く紫苑一と括り
風いなしては起ち直る紫苑かな
傾きて驟雨に耐ふる紫苑かな
紅葉狩降りみ降らずみ亦愉し
田一枚手つかずのまま草紅葉
野路愉し草の実黒く亦赤く
蔓ひけば異な草の実も道づれに
築地塀越えてたわわに柿実る
能勢電車一駅ごとに秋深む
鷺の嘴宝さがしす刈田かな
小田うずむ狗尾草の朝日影
枯蟷螂睨むまなこはエメラルド
産土神へ千種の畦をジグザグに
秋晴の主峰孤高の鳶放つ
秋灯や雑木隠れに一末社
毬割れて豊頬の栗顔だしぬ
地団駄の靴に腑抜けや虚栗
入れかはり立ちかはりして道をしへ
飛石をひとつとばしに道をしへ
押せばあく園の奥扉や道をしへ
絵図になき怪しき岨へ道をしへ
小流れを越ゆに橋なし道をしへ
セラピーの森と標やみちをしへ
憩へとぞ森の汀へみちをしへ
斯く群れてとんぼう木々にぶつからず
風折れの枝が道塞く秋山路
背高のコスモス風にハイタッチ
千切れたり合体したり秋の雲
斯く灼けてゐても石人笑み湛へ
ゆく雲の迅さにしざる秋の嶺
法師蝉序破急唱へ一と休み
風紋の駈けめぐりをる稲田かな
浮草の花に蜻蛉の恋生る
秋草の籬に駐車里の茶屋
険磴を跨ぐ山門天高し
ハンモック深海のごと山毛欅樹林
暑に耐へむサイコロステーキ二つ三つ
避暑散歩二の足が出ぬかずら橋
東雲の空気うましと避暑散歩
稲の露朝日を弾きはじめけり
落ち合ひて早朝散歩月見草
口中に飴玉あそぶ避暑散歩
光陰を語り草とす樹下涼し
団栗で創る小トトロ大トトロ
山巓のティアラと見しは避暑ホテル
牧涼し自家製ミルク一気飲み
反芻の牛と目の合ふ秋思かな
行く雲に遊ぶは玻璃の秋の蝿
高牧の起伏をなぞる飛燕かな
秋草を分けて先師の碑に見ゆ
摩耶涼し佛母の寺に寛ぎぬ
降臨のごと霧まとふ天上寺
かなかなや焦土の寺跡訪ふ山路
滝道の起点の歌碑は定家卿
滝落ちてきし水瀞に憩ひをり
瀞涼し簾となりて堰落つる
嬲られて滝つぼ出でぬ芥かな
歌碑あれば誦して存問滝の道
天霧らふ岩頭を見よ飛滝神
千畳の岩二タ裂きに滝落つる
茶屋の窓額縁として滝落つる
滝しぶき浴びて機嫌やたかつむり
クハと声残しとびこむ大蛙
梅雨茸洩れ日に傘を広げけり
梅雨茸苔のなぞへに里づくり
天地人なして団結梅雨茸
樹液垂る幹幾筋も蟻の道
隠沼の砦となせる夏の草
浮草の花浄土より亀の首
木道を一閃せしは瑠璃蜥蜴
梅雨濁りすれど生きとし生けるもの
岩に描く矢印はなに登山道
神籬のてつぺんだけが青嵐
育苗のポットが並ぶ木下闇
吊橋の涼しと欄に一と並び
緑化園猪垣の扉の押せば開く
沢涼し瀬石踏んまへ渡りけり
一片の病葉宿す瀬石かな
葉洩れ日を揉むせせらぎの波涼し
天網のごとく楓樹や沢涼し
天狗岩抽んでてをる青嶺かな
一刷けの白雲かずく青嶺かな
泰然と主峰裾野は青嵐
噴水を囲む花壇はゴッホの黄
島嶼なすうき草畳池広し
もがくごと水掻く四肢や亀涼し
漣を縫ひゆく鯉の影涼し
さながらに桃源郷やさつき展
片陰に石人ならぶ石工小屋
ハプニング楽し迂回の野路うらら
茅花みなわれに辞儀する野路愉し
魁は白の屯やしょうぶ池
池広し砦のごとく夏木立
喬木の覆ふ奈落の道涼し
小さき虻居眠るごとし未草
三尺寝族が四阿占領す
大砲のレンズを据ゑし木下闇
片陰に数珠なす人や美食店
沖遠く黄砂に消ゆる巨船かな
漁夫で混む一膳飯屋襤褸テント
林立す発電風車島涼し
蛸をかしトロ箱逃げて叩かるる
水槽の狭しと跳ねる糶の鰤
糶佳境びしよ濡れとなる土間涼し
五指をもて丁々発止糶涼し
汀石洗ひては引く波涼し
橋涼し明石大門を一跨ぎ
尻餅のしるきあとある苜蓿
ジョギングの土堤を綴りて苜蓿
縱橫に幾何学模様畝涼し
水難碑代田一望せる丘に
目潰しの日矢うち仰ぐ夏木立
森閑として喬木の樹下涼し
脳天を射んと錐揉む竹落葉
竹落葉忍者のごとく藪駈くる
夏草の宝庫や猪名の川堤
朽木めく老幹なれど芽を吹きぬ
試歩の腰伸ばして仰ぐ青嶺かな
根上りもベンチとなりぬ遠足子
野に遊ぶ一人駈ければ我も我も
遠足子声をかければハイタッチ
園児らの黄色い声や山若葉
もこもこと隆起せるごと山若葉
つばくらめ一閃白くまた黒く
大鳥居貫きながら燕来る
起伏野の天辺四方の風薫る
起伏野を駈けて転んで子ら遊ぶ
春愁ふなぞへに美脚なげだして
先生の両手取りあふ遠足子
そら窓のある四阿や山桜
箍ゆるみ風に崩るるチューリップ
菖蒲の芽芥だたみを出でにけり
汝れ悼む逍遥の道余花にあふ
自ずから序破急風の花吹雪
茎立ちて風いなしをる花菜かな
そっぽ向き見えぬ値札や植木市
花菜畑越しに手をふる笑顔かな
宝殿の岩山濡らす春の雨
草青む池塘の水の色もまた
群落といへど粗密やたんぽぽ黃
歳問へど媼は花下に笑ふのみ
釣り上げし大魚を青む土堤の上に
にはたずみ桂馬跳びもす春堤
神木の深き洞よりもの芽出づ
茎立を突つつき散らす鵯のボス
落椿禰宜の熊手に掃かれけり
黒ぼこの畝にしみこむ春の雨
芽ぐまんとして仁王立つ御神木
降り続く雨の重さに椿落つ
神木に凭れて杜の春惜しむ
政所跡と碑のたつ樹下涼し
橋涼し足下に奏づ瀬音また
鎖樋ドレミドレミと春奏づ
花屑をとれば機嫌や鎖樋
ほとばしる春の息吹や鎖樋
鎖樋落つる水音も早春賦
春雨の唄ふがごとし鎖樋
芽木の枝綺羅星のごと雨滴
梅の園とゆき巡りて汝れ悼む
閻王にひれ伏し祈る老遍路
一杓の春水手向く水子仏
空濠に天を仰ぎし落椿
空濠に降り立てば草芳しき
下萌えにでんぐり返る猫の野良
紋白蝶花菜浄土をジプシーす
切岸の横つ腹から春の水
高鳴りて筧を落つる春の水
花菜畑迷路のごとくたもとほり
蒼天へ春禽散らす秀枝かな
日射すとき土堤のたんぽぽみな笑顔
遺品なる手ずれの聖書あたたかし
みことばを記す一碑に草萌ゆる
オルガンの楽堂に満つ淑気かな
彩窓の春日ピエタに届きけり
聖堂の堅き木椅子に春愁ふ
聖堂に額づきをれば百合匂ふ
歌うたひ出せば聖堂寒からず
磔像に点すチャペルの春灯
懺悔室出ても春愁はらひえず
園の門に立つや蠟梅匂ひけり
探梅や野鳥の森と標立つ
禿山の天辺に湧く春の雲
フレームに入りて目鼻の潤ひぬ
速歩組おしゃべり組や踏青子
足弱の妻の侍者とし青き踏む
目白来てアクロバットす梅の枝
梅盛る紅白岨に対峙して
漣のひたよす汀もの芽出づ
鴨をかし尻を突つつきあひにけり
日向鴨嘴をぺちやくちや居眠りぬ
吾に媚びて寄りくる鳩と日向ぼこ
阪神忌人のきづなをな忘れそ
ハイカーも碑に黙祷す阪神忌
語り部の彼も老いたり阪神忌
碑の霊の寧かれと訪ふ阪神忌
被災地の碑に佇てば草芳しき
復興の町や如何にと登高す
小春日の山路をバードウオッチング
ほ句談義しつつ山路の梅探る
雲切れて冬日ひろごる池の面
風倒樹水漬きし池塘冬ざるる
落葉嵩分けて顔出す物芽あり
海光にシルエットなる枯木立
池塘なるわれらに鴨の陣遠し
日射すみち網目模様に枯木影
焼痕の禿山なれど草萌ゆる
2025 | 2024 | 2023 | 2022 | 2021 | 2020 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016 | 2015 | 2014 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010