2016年の作品
2016年の作品
天王寺さんへ寄り道年の市
仏具屋でお茶を相伴年の市
年の市長蛇をなせる列は何
小銭入だして一施や慈善鍋
路地へだて托鉢僧と社会鍋
煤逃げや動物園へ孫連れて
凩に吹つ飛んでいくレジ袋
園丁ら松よ竹よと門飾る
探鳥舎めく四阿や枯木立
末広の水脈重ねつつ番鴨
錦繍の山よこたはる鏡池
浮雲の進むともなき小春かな
綿雲のひつかかりたる枯木かな
空真澄なんきん櫨の実を散らし
息継ぎの間もあらばこそ鳰潜る
ほらあそこよと指されたる鳰遠し
野あそびのごと縺れあひしじみ蝶
しじみ蝶野の日翳ればゐずなんぬ
枝絡む玉の日差しや小鳥来る
紅葉燃ゆ比翼のごとく枝重ね
嵩なしてなだるる磴の散紅葉
万華鏡なす池の面の散もみぢ
白亜なる舎利塔そめて法紅葉
散尽くすかと打ち仰ぐ大銀杏
枯れ果てて金釘折れの蓮かな
枯蓮黄泉も斯くやと眺めけり
水没すいまはのきはの枯れ蓮
畝楚々と修道院の冬菜畑
錦繍の樹下黙想の椅子並ぶ
錦繍の森に白亜のトラピスト
玉砂利のごと木の実踏む杜の道
一と刷けの風が誘ふ木の葉雨
神苑の祈りの道の落葉踏む
禊場の神さぶ秋を聞きにけり
帰るさの宮の裏道竹の春
竹春の藪を貫き日矢とどく
二タまたに道しるべ立つ露葎
ちかみちと里人の指す露の道
天に宝積めと皇帝ダリア咲く
移り気の蝶落ちつかず花ダリア
蜜蜂にくすぐつたさう花ダリア
背高のダリアの毬とハイタッチ
一枚はコスモス咲かす棚田かな
しばらくは馬柵に凭れて秋惜しむ
吟行の句友は宝秋天下
萩寺の貫主なかなか俳句通
お茶席へ矢印の立つ萩小径
連理の碑こぼれし萩を花衣
萩屑を零すと見ればしじみ蝶
疾風にのけぞる萩の秀枝かな
萩の屑片よせて汲む手水かな
露の碑に短命の子規悼みけり
子規の句碑丈余の萩を籬とす
行き違ふには狭すぎる萩小径
句を拾ふどころではなし栗拾ふ
秋惜しむ大きな栗の木の下で
おちとこち相呼応して法師蝉
序破急と鳴き継ぎ絶句法師蝉
いわし雲串刺しにして飛行雲
風に舞ふ羽衣に似て秋の雲
秋耕の畝に離散す蟻の国
芝庭にホバリングしてあきつ群る
コスモスの園ジプシーす孤蝶かな
べた凪となりてヨットの帆は無聊
逸る帆に舫ひ解かるるヨットかな
舷をノックしてをる波涼し
貝殻館涼し法螺貝試し吹き
貝殻に耳あてて聞く浜の秋
箱庭に世界の小貝集めたる
大玻璃にかげらふ影や泉殿
舘涼し玻璃窓三百六十度
端居して視線は沖つ帆にあそぶ
モノレール宙進むごと窓涼し
雨垂れが太鼓打ちせる蓮広葉
蕭々と広葉を打ちて蓮の雨
大桟橋広き蓮池二タ分けす
万目の緑を洗ふ驟雨かな
鯉のボスさすが貫禄水脈涼し
あめんぼう鯉の吐息に追はれけり
涼しげな雨の水輪や心字池
せせらぎを右に左に避暑散歩
風いなしつつくつがへる蓮広葉
とゆきかくさまよふ風や蓮の花
風に耐ふいまはのきはの蓮の花
うろうろと池塘を巡る蓮見かな
蓮大輪たがのゆるびし亭午かな
白無垢を脱ぎすてしごと蓮散華
ひとひらに余命つなぎて蓮散華
蓮散華して水漬きたる葉陰かな
はな散りてより腰まがる蓮の茎
田の蛙バステノールと雨に和す
水遁の術のごと蝌蚪泥神楽
雲切れて青天井や蝌蚪の国
漣の消ゆれば現るる蝌蚪の国
犇めきて一塚なせる濃あぢさゐ
あぢさゐの相凭れあひ雨重し
身に入むや災禍を縷々と水難碑
猪名野なる青嶺をさして飛機離陸
カーチェイスさながら進む水馬
小つむじにそつぽ向きたる落椿
ウエルカムとも谺せる初音かな
石つぶて否とびこみし蟇
葉桜のよきかげ落とす遊歩路
百千鳥天降る古墳の奈落径
締め縄の巌に笑窪苔の花
よくもまあこれだけの松亭涼し
峡空の間遠となりぬホトトギス
車前草の起ち直りをる轍かな
天辺に銀嶺見えて山笑ふ
春天へ抽んでてをる雪嶺かな
蒼天をはらふ大樹の花ミモザ
園児らの散歩道なる梅の丘
石柱を並べ欄とす梅の丘
風光る桜大樹の万蕾に
木漏れ日のスポットライト落椿
日翳ると忽ち鬱や落椿
藪椿鵯の一矢に落ちにけり
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