2023年2月の記事

2023年2月26日

今日の添削から

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我庭の狼藉昨夜の春嵐

原句:我庭を縦横無尽春嵐

現在進行形を具体的に写生するのは難しいし説明になりがち。俳句は瞬間を捉えたほうが良い。

見晴台ここよここよと囀る

原句:先客のあまた囀る見晴台

先客の…は理屈。囀は賛美なので詩的に捉えるといい句が授かる。

日溜まりの此処に行厨犬ふぐり

原句:日溜まりを独り占めして犬ふぐり

独り占めして…は主観。努力してこれを封印してほしい。

スキップを踏みて歩かむ春風裡

原句:しなやかにリズム踏みけり春の風

しなやかに…は説明。何のリズムを踏んでいるのかも見えてこない。

新調の長靴なれど春の泥

原句:新調の長靴履くや春の雨

春の雨…は季語動く。

2023年2月23日

写生は楽しいもの

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もう少し補足しましょう。

覚悟がいるのは、考えて作るという悪癖を完全に封印できるか否かであって、写生そのものは決して難しくありません。理屈、説明、主観を封印するだけだからです。

一例を挙げてみましょう。

原句:シャリシャリと音美しき水菜鍋 → シャリシャリと音たてて食ぶ水菜鍋

原句は鍋に入れた具材の水菜が美しい音を立てている…という句になっています。もしそうなら「??」ですね。水菜の食感がシャリシャリ…というならまだ同意できます。

「美しき」という中途半端な主観を押しつけたがためにかえって曖昧な句になりました。

もし後者の意図なら、「音たてて食ぶ」と素直に写生すればいいのです。

説明や主観を省くことで文字数に余裕が生まれるぶんより具体的に写生できるのです。この「具体的に写す」訓練のために一日一句の添削は機能しているのです。

頭で考えて句をひねっている間は、写生句がどれほど力強いかということに気づくこともまた難しいです。

2023年2月22日

写生句を貫く覚悟

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考えて作る…式の俳句ライフを続けていると必ず行き詰まります。この悪癖が染み付いてしまうと吟行に行っても句が詠めないという重症に陥るのです。それを払拭するには写生の訓練しかありません。

結社ひいらぎで学んでいる頃、紫峡師の指導で男性だけの一泊吟行鍛錬会をしました。1泊2日で10句出句の句会を4回実施するというハードな企画でした。

手持ち句は持参しないこと…という先生からの指示があったのですが、「考えて作る」タイプのひとりの教員OBの方は、吟行が苦手なので全没を恐れてひそかに数十句を事前に考えて予備にもってこられていたそうです。

実践されたら解ることですが、手持ち句があると集中できないので吟行していても句が詠めません。結局その教員OBは1回目から3回目までみごとに全没、手持ちの尽きた4回目ではじめて2句選ばれたのです。

師曰く「考えて作った句か感じて詠んだ句かはすぐ見分けられる」と。

いくら巧みに作っても虚構の句には必ず嘘が見え隠れし命がありません。そのような作品で互選の高点を得たとしても偽善感が残るだけで本当の喜びはありません。俳句は言葉遊びの点取りゲームではないからです。

「感動を写生して詠む」ことは簡単なことではありませんが、みのるに騙されたと思って覚悟を決め、写生を貫いて一年間頑張ってみてください。必ず本物の喜びに出会えます。

2023年2月21日

素直な感覚、感性を養う

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今日の没句は総じて度の過ぎた比喩や形容が多かった。奇をてらった表現は理屈、それを我慢して「素直に、平明に」と唱えながら写生の訓練に徹してほしい。

入選句は俳句として捉えるべき感覚が間違っていたので矯正した。季語の本質を理解して正しく斡旋することが重要。

蕗の薹散歩の山に見つけけり

原句:蕗の薹朝は知らずに散歩せり

朝散歩では気づかなかったが夕散歩で見つけた…という意図かも知れないが考えて作ったまわりくどい報告。見つけたときの瞬間の感動を素直に捉えるのが正しい俳句感である。

春寒し弾く人のなき駅ピアノ

原句:浅春の弾く人を待つ駅ピアノ

浅春、中春、晩春などは時候を説明する季語なので動きやすい。出来るだけ平明で直感的な季語を斡旋したい。「弾く人を待つ」は主観、それを隠すように工夫するのが写生。

写角から溢れむばかり花ミモザ

原句:写角から溢れん黄色花ミモザ

「溢れむ」と「溢れむばかり」では微妙に意味が違ってくる。曖昧な措辞を使うと句意も中途半端になる。「花ミモザ」と詠めば「黄色」は不要。

啓蟄のチャペル出張書店出づ

原句:教会に出張書店うららけし

「うららか」は主として屋外の季感、屋内で使うのは難しい。啓蟄の季語を当てると俳諧味のある句となる。「啓蟄」は時候の季語として詠むことも出来るので歳時記で復習してほしい。教会=堅苦しい印象、チャペル=親しみやすい印象、名詞も使い方で詩情が変わるので句意によって使い分けるとよい。

引潮の砂嘴に見つけし桜貝

原句:引き潮に浚われゆける桜貝

桜貝は目こぼししてしまうほど小さくかつ貴重なもの。見つけたのに見過ごすことはまずないと思うので「浚われていく」という感覚、捉え方には違和がある。発見したときの驚きや喜びを素直に写すのが正しい季感だと思う。

2023年2月20日

今日の添削から

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老犬も駈けだしてゆく春野原

原句:老ひ犬の尻尾ふりつつ春野原

尻尾ふりつつ…でも悪くはないが景が間延びする。瞬間写生に推敲することで句の切れ味が鋭くなる。

春立ちて広場に子らの声弾む

原句:春立ちて空へ弾ける子らの声

場所が写生できていないので絵として連想できない。作者の季語を優先して添削したが、空へ弾ける…を強調したければ「野遊びの空へ弾ける子らの声」という感じになろうかと思う。写生は絵として描けるように…が基本。

おらが山見おろす郷の麦あおむ

原句:連山の見おろす郷に麦あおむ

連山…だと遠景感がでてしまい「見下ろす」の措辞と調和しない。郷に…だと「郷」も主役になり焦点が二分される。郷の…にすれば、カメラのズームが徐々に絞られてきて最後に「麦畑」に焦点が合う。

蒼天を指す徒長枝や梅の丘

原句:曇天を突き刺す枝の梅の園

突き刺す…は無理。実際は曇天であっても作品としては美しく推敲してほしい。うち仰いだ景のほうが句意にふさわしいので「梅の丘」にした。

逆さ富士映して水の温みけり

原句:水温む水面に揺るる逆さ富士

水温む…と詠めば「水面」は不要。揺るる…は風を感じさせてしまうのでこの句の場合はかえって邪魔。いろんなことを言い過ぎるとかえって句意が散漫になる。

2023年2月18日

入選句と報告の違い

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「きちんと写生しているつもりなのになぜ報告?」と納得できないことが多いでしょうね。でもそれはあたり前、その違いが解るようになればもう一人前だからです。

そこで、ちょっと息抜きして 俳句合評 / 今週の秀句 の記事を読んでみてほしいのです。

どれも平明な写生句ですが、合評や選評を読めば写生に隠れて作者の情が滲み出ているのに気づかされるはずです。つまりそれは情景を写生するよりも前に、先に作者の心が揺さぶられて感動しているからなのです。

理屈や知識で捉えた対象をいくら巧みに写生してもそれはただの報告です!

写生の学びというのは、理論やテクニックを覚えることではなく「感動を捉える訓練」のことです。みのる選の取捨は表現の巧拙とは全く無関係、本物の感動の有無だけです。

知識や理屈の色眼鏡は、見えるはずの感動を隠します。幼子のような無垢の心と瞳で自然と対峙しないと彼らからのメッセージを受けとることはできないのです。簡単なようですがこれが難しく、だから写生の訓練が必要なのです。

理論やテクニック、ことばなどは覚えようと努力しなくても忍耐、継続していれば勝手に身についていきます。みのる自身の体験ですから100%保証できます。

2023年2月17日

今日の添削から

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今日みのる選に採った作品を例題として少し説明します。誤解があると困るのですが決して佳句だから採択されたのではなく、反省点を明らかにし今後の句づくりの指針にしてほしいという意図で選びました。

薄雪の解けて顔出す竜の玉

原句:薄雪やラピスラズリの実を隠し

隠れた実は見えないので写生としては矛盾します。「あったはずの実が見えない」という意図かも知れませんが、それだと写生ではなく報告です。添削句は厳密には季語が2つになるので季重なりですが、同季の季語であることと句の焦点がしっかりと竜の玉に絞られているので許容できます。

吟行の家苞古都の草の餅

原句:待つ妻に草餅土産帰りけり

原句の下五だと「草餅を買って帰ってきたよ」にはならず、「土産の草餅が帰ってきたよ」の意になり推敲不足です。奈良とか京都など由緒ある場所へ吟行にゆき家人のお土産に地産の草餅を買ったよ…と具体的に表現してほしい。

夜明空なほ凛として月冴ゆる

原句:凛として冴ゆる月影夜明け前

月影は、月の光にてらし出された人や物の陰影…のことなので何の影なのかが解るように詠まないと意味不明になる。17文字でそれを表現するのは至難。凛としていた寒月が、明けそめた空になお寒々しく輝いているよ…と素直に平明に詠めばいいと思う。

2023年2月15日

感想をお寄せください

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一日一句が始まって三ヶ月が経ちました。裏情報?によると毎日句会のメンバーや参加はされていないけれど見てる…という方がかなりいらっしゃるとは聞くのですが、具体的に反応が見えないので実感がありません。

読者のみなさまからのコメントやフィードバックがあると大いに励みになりますしみのるの力にもなります。ときどきでいいのでぜひエールを送ってください。

2023年2月14日

鉄は熱いうちに打て

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優しく楽しくが建前ではあるのですが、今が大事と考えてあえて厳しいことを書きます。

写生の修練を志して本気で一日一句と向き合う…という覚悟で参加されている方限定ですが、最低限のチェックは自分でするように課し習慣づけなければ、百句、千句と詠み重ねても永久に自立できません。

  • 575の正調に整っているか:安易な字余り、字足らずが多すぎる。
  • 季語が複数になっていないか:気になる時は必ず歳時記で確認する。
  • 理屈になっていないか:見て感じて…の励行を厳守する。

たったこれだけのことです。

句歴のある人ほど自覚に欠けているように思う。自己流で重ねてきた悪癖と決別するために覚悟を新たにしてほしい。

あと一点、「決して借り物のことばを使わないこと」を肝に銘じてほしい。寸法の合わない衣をまとっても直ぐに化けの皮が剥がれます。自分の言葉で平明に詠む…ことが写生訓練の基本中の基本だからです。

季語が命である俳句では、季語が動くかどうかは最も重要なチェックポイントです。でもそれを判断するには経験が要ります。本来添削はそのお手伝いをしているのです。

あまりに不調が続く作者の場合、正しい捉え方を示唆すために大きく句意を変えて添削することもあります。ただこれは作者の代わりに指導者が感じて詠んでいるのと同じなので厳密には添削とは言えません。進むべき道を示すために止むなくしていることだと理解してほしい。

頑張って書いても読んでいただけなければ水疱に帰すだけ、虚しさがうち重なると指導のポテンシャルも下がりがちで悪循環です。忍耐と継続ということばは重いですね。

2023年2月11日

真剣に学ぶ覚悟

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写生を励行して詠まれた作品と頭で考えて想像で作られた句とはすぐに判別できます。

真剣に取り組まれた句は未熟であっても添削して採ろうとしますが、そうでない作品は類想が多く合格点であっても選べません。一日一句はそういう場所ではないからです。

必ず、見て、感じて十七文字に写す。

その覚悟で実践しなければいつまでたっても自分を変えることはできません。真剣に学ぼうとされている人もいるのであえて厳しいことを書きました。ぜひご理解ください。

2023年2月6日

なぜ主観がだめなのか

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俳句でいうところの感動とは主観のことなので、「主観の句は俳句に非ず」という意味ではありません。もしそういうふうに誤解を与えていたらお詫びします。

初学段階では、どうしても主観がもろにでて独りよがりの作品になります。そこで主観を客観で包み隠せるような技術を習得するために、ひとまずは主観を封印して写生の訓練をいたしましょう…ということなのです。

毎日句会なら主観句でもいいの?となりそうですね。「客観写生からにじみ出る主観句」なら大丈夫です。でも、そのような句を詠むためにはやはり写生の訓練が必要…というふうに堂々めぐりになるのです。

主観描写を省き、焦点を絞り、理屈を言わず、平明な言葉で且つ具体的に

詠めるようになれば、出そうと意識せずとも自ずからそこには作者の主観がにじみ出るのです。

2023年2月3日

実景を詠みましょう

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みのる選をしていて残念なのは、記憶の抽斗からひっぱり出して詠んだと思われる句、誰かの想を真似た二番煎じの句が多いということです。実感が曖昧なので矛盾も見え隠れしますし、何よりも添削していて虚しいです。

原点にかえって写生の学びをしようという覚悟であれば、この種の詠み方は一切封印して、「実景を五感で感じて詠む」スタイルに徹しなければ何も変わりません。

写生=風景、という誤解がそうさせているようにも思うのですが、写生の定義は、

俳句は、 や風景をよく観察し、そのありさまを絵のように…

なので、風景画にこだわらず、静物画や身辺寸景のスケッチでもいいのです。

厨俳句、食卓俳句、庭俳句、畑俳句、闘病俳句、介護俳句、子育て俳句、孫俳句、吾妹俳句、ベランダ俳句、散歩俳句等々、雑念を払いリラックスして観察していれば、いくらでも句材は見つかるはずです。

虚構の句を詠み溜めても喜びは得られません。実感で捉えた身辺句のほうが遥かに価値があると思いませんか。

言うは易し…なので、吟行でしか詠めなかった私もいま、波出石品女さんの句集を読み返しては身辺句に挑戦して毎日句会に投句しています。一緒に頑張りましょう。

2023年2月2日

絵に描けるかをチェック

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俳句は物や風景をよく観察し、そのありさまを絵のように17文字の中に写し取る文芸だと言われます。

このような俳句の作り方を 写生/客観写生と呼びます。

今日詠まれた作品を自分自身で一枚の絵としてキャンバスに描くことが出来ますか?

心象や主観は絵に落とせないですよね。

描かれた絵から感動が伝わってきたら合格、何も感じない絵は報告です。つねにその意識で推敲しましょう。

2023年2月1日

詩嚢を肥やす

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バラエティー番組「プレバト」を見て俳句に興味を得たので初めてみよう…という人は多いと思う。きっかけは何でもいいので、俳句普及を目指して奉仕している私達にはありがたいことです。

ところが、基本を学ぶことなくいきなり句を詠み、投稿されるので90%は箸にも棒にも…の類となり、「こんなはずではなかった」と躓かれてせっかくのご縁が果ててしまうというパターンが多いのです。

俳句の基本(考えて作らず写生して詠むこと、575の正調に整えること)を覚えることは常識ですが、上達のために HOWTO本を読み漁るのは愚かです。

初学の人がもっとも簡単に早く上達するための 式勉強法!!

それは句集を読むということです。熟読ではなく早読みです。寸暇をみつけては何度も何度も繰返し読む(10回、20回…100回と)のが重要なのです。

何度も読み返すことでふと琴線に触れた句が、つぎつぎと詩嚢に蓄えられ諳んじて口に出るくらいになります。こうして蓄えられたものはやがて作者の感性としても昇華されていくのです。

この方法は、みのる自身が体験会得したことですから、間違いなく上達の近道になることを保証できます。騙されたと思って試してください。教材となる句集は、ホームページの下記ページ(保管書庫)からダウンロード出来ます。

 会員の句集データー

メンバーの句集もたくさんありますが、もっともおすすめなのは、以下の句集です。

『四季別俳句集』やまだみのる 『風の翼』小路紫峡 『ななかまど』波出石品女

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