2024年7月の日記

2024年7月2日

17音のストーリー

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親睦を目的とした新生月例句会は、席題でスタートすることになりました。

頑なに自然賛美を提唱している が「何故いまさら席題なの?」と云われそうですが、これを説明するには、俳諧の歴史「連歌と俳諧と連句」について触れる必要があります。

俳句の起こりは「俳諧の連歌」つまり連句の最初の五・七・五を独立させたものです。連歌は五・七・五だけではなく、五・七・五を発句として次に七・七をつけ、この繰り返しを三十六回行う「連句」だったのです。

  • 発句:575 正客の座。季語と切れ字を詠み込む。
  • 脇句:77  亭主の座。発句と同季同所同時刻を原則とする。
  • 第三:575 発句・脇句の世界から離れ、丈高く詠むことを要する。
  • 平句:4句目から挙句の前まで、575の長句と77の短句を繰り返す。
  • 挙句:77  前句と同季。めでたく巻き納める。

座に招かれた正客が挨拶代わりの発句をたて、座を主催した宿主が脇句で迎えます。第三句からはシーンを一変して新しい展開が始まり、車座に集まった連衆が輪番に平句を繰り返しつつ連句を巻いていくのです。

共同で一巻の物語を創作するという遊びなので、粛々とストーリーが展開していく必要があります。つまり「前句の内容に憑きすぎないように詠み進むこと」が何よりも大事なのです。

ゆえに連句には、機知に富む想像力や連想力が求められ、熟達した経験も必要になります。初心者が安易に極められるものではありませんが、その面白さ嵌ると中毒になるとも云われています。

即興で掛け合いの面白さを楽しむ連歌は、風流人たちの高貴なことば遊びの座であったのでしょう。

連歌の発句には季語を入れるのがマナーとされていたので、俳句でも季語を入れることが必須となりました。俳句には、座の文芸としての連句の伝統が根強く残っており、席題俳句もまた連句を詠む要領に似ているのです。

席題で詠む俳句はある意味虚構です。上級者には抽斗が沢山あるので写生風に創作出来ますが、連想力が未熟な初学者は得てして季語の説明になりやすいです。常識的な類想を避けるために次のことを意識して作句してみて下さい。

  • 季語を説明しないこと、できるだけ季語から離れて詠む(とり合せの句に仕立てる)
  • 理屈を云わないこと、観念や常識、俗から離れる

小説のワンシーンを切り取ったかのようにドラマチックに創作する

と言ったほうがイメージしやすいですかね。小説家になった気分で挑戦すると楽しいですよ。

座の協調が必要な連句では長考できませんから即吟が求められます。限られた時間内で詠む席題俳句も同じです。でもこうした訓練の成果は写生句を詠むときにもよい傾向となって現れます。

恥ずかしい…という思いを払拭しなければ挑戦できない世界です。

席題句会で秀作を授かるのはまぐれでない限り難しいです。でも言葉巧みにこねくり回して作るよりも即吟で素直に詠んだ作品のほうが遥かに佳句となる確率が高く、それはそれで楽しいものです。

2024年7月1日

半夏生

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しよぼしよぼの雨にうなづく半夏生

みのる庵の庭の半夏生が色づきました。緑の葉が白変するのかと思っていたのですが違うようで、花穂が揚がると同時に白く半化粧した葉っぱが出てくるみたいです。

今年は6月21日が夏至(ウツボグサが枯れだす)、そして今日7月1日が半夏生、7日が小暑(温かい風が吹き始める)、23日が大暑と続き、8月7日には早くも立秋となります。

実際にはまだまだ猛暑のさなかで厳しい残暑と続くのですが、気分だけでも季節を先取りして心を遊ばせることのできるのは俳人の特権ですね。

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