みのる選:2022年1月度
2022年1月29日 | |
宝塔の屋根に集ひて寒雀 | なつき |
冬の日の光芒ひろぐ凪の海 | わかば |
寒月や猫の密会ガラス越し | 素秀 |
あひ互い声かけそびるマスクかな | 凡士 |
朝詣で供花のバケツの厚氷 | よう子 |
指先で山崩し選る初みくじ | なつき |
北風に押されてかへる家路かな | むべ |
朝日出づ霜のダイヤを散りばめて | うつぎ |
雪しまく五重の塔のシルエット | よう子 |
寒禽の声に研がるる力石 | うつぎ |
風花や高灯籠の苔むして | はく子 |
霰打つ打たるる儘に万歩計 | うつぎ |
と見る間にそらかき曇り風花す | わかば |
冬凪の沖は補陀落かと思ふ | 素秀 |
力石四角三角宮四温 | はく子 |
さざんかの花びら載せて力石 | はく子 |
雪時雨人影のなき直売所 | 愛正 |
風花が向かってくるよ一両車 | よし子 |
タイヤ跡S字を描く雪の朝 | こすもす |
浮き玉の一つ一つに冬鴎 | 素秀 |
2022年1月22日 | |
体育館凍つに健康体操す | はく子 |
寒風にたてがみなびく御崎馬 | 素秀 |
吉書揚花丸の書もをしみなく | かかし |
洞に在す無縁仏に初日影 | うつぎ |
駄菓子屋にバス待つ子らへ冬日燦 | 素秀 |
水仙郷ダイヤ通りにバスは来ず | よし子 |
本堂の影を正せる寒の月 | よし子 |
新しき眼鏡の向かう寒茜 | むべ |
リハビリの足を延ばしぬ探梅行 | 素秀 |
恙なく笑みて跨ぎぬ去年今年 | 宏虎 |
検問の灯の弧を描く寒風裡 | うつぎ |
福寿草出でて白砂を零しけり | よう子 |
寒林に出会ふ郵便配達夫 | うつぎ |
大粒の苺供へて父悼む | なつき |
初売の抽選会は外れなし | かかし |
懐手せしままに聴く訃報かな | うつぎ |
あたたかや鳥語ゆたかに宮の森 | わかば |
寒稽古小さき拳が板を割る | 小袖 |
降る雪や丹後に古し天主堂 | 凡士 |
大鳥居くぐりてよりの淑気かな | こすもす |
鰭酒の熱きを吹きて香に酔ひぬ | よう子 |
姉希望妹きぼう書初す | よう子 |
竹割るる音谺せり夜の雪 | 凡士 |
広縁へさす老松の初日影 | 愛正 |
2022年1月15日 | |
追伸に雪の深さを知らす文 | 素秀 |
マスクして福娘みな同じ顔 | 凡士 |
遠嶺に茜広ごる初景色 | はく子 |
風花の触れては消ゆる辻地藏 | うつぎ |
老妻へ感謝の御慶申しけり | 宏虎 |
法螺貝に続く僧列淑気満つ | はく子 |
御神籤を冬芽の枝に結びけり | 素秀 |
修正会の法鼓の音堂を震はしむ | はく子 |
初暦明るき日々を記したく | わかば |
羽子板をラケットに替へ負けまじく | よう子 |
気に入りの服の毛玉を取る七日 | なつき |
年賀状喪中の吾に寅吠ゆる | なつき |
湯治場の炉辺を囲める国訛り | 凡士 |
生かされて初風呂に酔ふ卒寿かな | 宏虎 |
亡夫眠る西の方より風花す | むべ |
息白くみな連れ立ちて産土神へ | うつぎ |
句敵ら今日は仲良く女正月 | うつぎ |
温むる思ひあれこれ初湯殿 | わかば |
2022年1月8日 | |
餅食べて戦後の日々を語り草 | 宏虎 |
焚初の菊炭窯に神酒注ぐ | 凡士 |
初稽古片肌脱ぎに弓を射る | 凡士 |
歳末やパズルの様な駐車場 | よう子 |
晦日蕎麦お疲れさまと二人卓 | かかし |
菰巻かれ老松天へ傾きぬ | 愛正 |
モノクロの夢より醒めて雪明り | うつぎ |
数独に耽けて跨ぎぬ去年今年 | こすもす |
ねんねこの母のうなじに涎あと | よう子 |
ヘアサロン百寿の母に年賀状 | 凡士 |
信楽や狸の首に門飾 | 素秀 |
指示棒の気象予報士まず御慶 | うつぎ |
寄す波に堪ゆる礁の夕千鳥 | 素秀 |
花鋏研いでそれから年用意 | むべ |
初鶏の鳴くをうつつに二度寝かな | 素秀 |
投句日記す花丸暦果つ | かかし |
2022年1月1日 | |
ぼろ市の大風呂敷を風除けに | うつぎ |
果大師見かけぬ香具師案じけり | なつき |
財布抱き買ふ気の客や果大師 | なつき |
流木を井桁に組みて磯焚火 | 凡士 |
ぼろ市の刀商ふお姉さん | うつぎ |
極楽門の内外違はず年の市 | はく子 |
蔦紅葉走りて渓の岩襖 | 素秀 |
どう見てもガラクタばかり蚤の市 | はく子 |
冬霞模糊と浮ぶは八ヶ岳 | 愛正 |
太子会の読経そびらに年の市 | はく子 |
町家かと見れば交番京小春 | うつぎ |
口閉じてふかぶか浸かる柚子湯かな | むべ |
盲導犬吐く息白し霜の朝 | 凡士 |
笹鳴のこれより奥は獣道 | かかし |
ぼろ市の古びし布に雅あり | 小袖 |