みのる選:2021年12月度
2021年12月25日 | |
容赦なき冬将軍を迎ふ朝 | 素秀 |
庭の霜踏めば地球の啼くごとし | よし子 |
冬凪や国産み島へ渡る橋 | うつぎ |
むづかしや家族五人に切る聖菓 | なつき |
焚火果て星降る空となりにけり | 宏虎 |
電飾の昼は侘びしき冬木立 | わかば |
粥啜るほかに音なき冬至の夜 | 凡士 |
着ぶくれて長蛇の列やレジ遠し | よう子 |
からからと車輪ころげす朴落葉 | むべ |
夜の雪に白変したるボンネツト | 素秀 |
風呂吹に一本つけて老の膳 | うつぎ |
病院の窓の人影冬銀河 | よう子 |
最終電車降りて家路へ枯野星 | よし子 |
2021年12月18日 | |
結びたる口に寒紅死化粧 | 素秀 |
己が囲に縋りしままに蜘蛛凍つる | うつぎ |
寒禽の賑はひ森に一頻り | わかば |
招き揚げ京の師走の幕上がる | 凡士 |
土の香のまだ新しき猪の跡 | うつぎ |
いただきし鰤一本をもてあます | 凡士 |
雀どち上を下へや大冬木 | はく子 |
鴨浮寝メタセコイヤの濃き影に | はく子 |
マスクして声なき葬や灯の冴ゆる | なつき |
家計簿に一筆主婦の日記果つ | なつき |
大公孫樹撒き散らすごと黄落す | はく子 |
恙なき偕老謝して年惜しむ | 宏虎 |
薬食ひ尽きぬ獣害話かな | よう子 |
昔日の渡し場跡に枯尾花 | むべ |
大公孫樹枯れを尽くして仁王立 | うつぎ |
境内に並ぶ落葉の袋詰め | こすもす |
廃校跡子らの声無く枯れすすき | よし子 |
冬の朝水平線の模糊として | わかば |
言ひ訳の嘘とわかりし息白し | よし子 |
涙染みひとつ蒲団に寝ずの番 | 素秀 |
ゆくりなく山門脇に冬至梅 | 愛正 |
2021年12月11日 | |
宅配夫夕を小走り十二月 | 小袖 |
宿木の緑際立つ冬木立 | はく子 |
流木を拾ひあつめて浜焚火 | 小袖 |
大いなる枯野の中に朱雀門 | 宏虎 |
焼芋は新聞がみのなかにこそ | はく子 |
落葉掃く音大仰に竹箒 | うつぎ |
日矢のさす沖にエリ漁の杭延ぶる | 凡士 |
放棄田を覆ひ尽くして枯尾花 | かかし |
寒の菊翳重ねあひ花あまた | 素秀 |
年の市鈴つく鍵の落し物 | なつき |
タンカーの動くともなく沖春凪 | よう子 |
炊き込んで家族を待てるおでん鍋 | わかば |
頬かむり解きて漁村の喫茶店 | うつぎ |
迫りだして水漬くばかりや照紅葉 | むべ |
落葉焚き今が佳境と手招きす | 小袖 |
通夜の客窓開けて見る冬の虹 | なつき |
と見る間に芝生白変あられ降る | こすもす |
子らに聞く大いなる夢暖炉燃ゆ | うつぎ |
2021年12月4日 | |
農家カフェ暖簾ともなる柿簾 | かかし |
広島弁姦し浜の牡蠣打女 | 凡士 |
稜線にいま日の出づる冬木立 | うつぎ |
船頭のユーモア楽し紅葉晴 | はく子 |
大皿は柿右衛門とや河豚料理 | よし子 |
冬雲の覆ひし街の昼灯 | むべ |
シュトーレン仕込みて過ごす待降節 | むべ |
お尻に根紅葉疲れのカフェの椅子 | よう子 |
綿虫のふわと散歩の犬に背に | むべ |
息子の手頼みに老い年用意 | こすもす |
隙間風だらけの家を独り守る | うつぎ |
予備校生銀輪の背に冬銀河 | かかし |
あたたかし母の遺愛の冬帽子 | うつぎ |
老犬と隣りて仰ぐ寒の望 | むべ |
楽しみの一つと言ふて落葉掃く | わかば |
寒風にメタセコイヤは鉾翳す | はく子 |