みのる選:2021年3月度
2021年3月27日 | |
炙られて鰭ちりちりと干鰈 | 素秀 |
燕来る里の駅舎に丸ポスト | 小袖 |
蹴り損ねボール転転うららけし | せいじ |
墓の場所問ひて小さき春日傘 | 素秀 |
春宵の白き巨船に旅ごころ | 凡士 |
田楽の串に重たき堅豆腐 | 素秀 |
初花や夫と子の墓訪ふ道に | はく子 |
木蓮の落花掃かるる朝の路地 | むべ |
芽柳に触れつつ進む高瀬舟 | 愛正 |
夕まぐれ瀬戸は菜の花明りかな | 凡士 |
小舟ちらばりて山湖のうららけし | よし子 |
軽トラに上着を放り春田打つ | 凡士 |
ゆくりなく初花にあふ車椅子 | わかば |
東北を悼めと潤む春の星 | むべ |
潮騒の間遠となりぬ笹鰈 | 凡士 |
青空へ箍をゆるめし牡丹の芽 | よう子 |
故郷の水の匂ひの蕨餅 | 素秀 |
2021年3月20日 | |
逝きし人辛夷の空に悼みけり | よう子 |
靴先に春塵乗せて配達夫 | 素秀 |
春雨や合羽目深に渡し守 | 素秀 |
佐保姫をいざなふ寺のライブかな | 凡士 |
城跡の空濠埋む落椿 | 宏虎 |
正門に十五の春を送り出す | 小袖 |
里山は近くて遠し木の芽道 | 愛正 |
チューリップ風車の丘を埋め尽くし | せいじ |
一両車いまし野梅の窓となる | うつぎ |
春匂ふ緑インクのエアメール | 素秀 |
摘むことの出来ぬ古墳の土筆かな | 小袖 |
老夫婦初音に鍬を休めをり | かかし |
廃線に朽ちし駅舎や山笑ふ | なつき |
野地蔵の頭をなづる枝垂れ梅 | 愛正 |
掛筒の椿一花に座の和む | わかば |
つくしんぼ袴脱がされ裸んぼ | はく子 |
置きざりに見開き雑誌春炬燵 | 小袖 |
卒寿翁感謝のことば暖かし | わかば |
山笑ふ麓の竹にくすぐられ | 菜々 |
2021年3月13日 | |
何処ゆくも夫唱婦随や山笑ふ | うつぎ |
陽炎の中より電車現れぬ | 宏虎 |
金継ぎの夫婦湯呑や春炬燵 | かかし |
無造作に山独活くるむ新聞紙 | 素秀 |
部屋中に香りを広ぐ蕗の薹 | わかば |
揚雲雀空の深さを思ひけり | 小袖 |
阿羅漢の泣くも笑ふも春埃 | うつぎ |
牛車の輪はずれしままに雛飾る | よし子 |
春光や寺に跡継ぎ誕生す | はく子 |
孔のみの埴輪のまなこ春寒し | はく子 |
強剪定されて棒がし潔し | せいじ |
啓蟄やカルチャー講座申込む | よう子 |
朝散歩ちよつと道草蓬摘む | こすもす |
啓蟄や木の根あらはに切通し | はく子 |
燕来る日なり新居に若夫婦 | 素秀 |
真すぐなる雨まつすぐに名草の芽 | よし子 |
本棚に紙雛飾り立子の忌 | よし子 |
菜の花の丘に沖向く忠魂碑 | よう子 |
前髪を垂らし遍路の顔見せず | なつき |
春光のせせらぎ沿ひに通院す | むべ |
客として訪ふ生家彼岸寒 | うつぎ |
磐座へ辿る岨道落椿 | わかば |
2021年3月6日 | |
樹間洩る陽の径ゆけば春の湖 | よう子 |
隧道を出れば海峡風光る | うつぎ |
裸婦像の肩が気に入り雀の子 | よし子 |
荒東風の架橋ハンドル盗られまじ | うつぎ |
クロッカス咲かせ引戸の時計店 | 素秀 |
ひとときを梅花に舞ひて風花す | はく子 |
剪定を終えたる庭に日差し満つ | よし子 |
蕗味噌や白きが眩し割烹着 | 凡士 |
竹筒に百円硬貨春野菜 | かかし |
豪商の軒に古巣の長屋かな | なつき |
梅日和昨夜の雨溜む鎖樋 | こすもす |
山茱萸の黄を抱擁す日差しかな | わかば |
防火用バケツを倒す春疾風 | せいじ |
芹の水掬ひ心も洗はるる | むべ |
杖数多され百寿てふ梅満開 | かかし |
微笑せるごと木蓮の開きそむ | せいじ |
引鶴の松原抜けて脚揃ふ | 素秀 |
春雨や男根に似し道祖神 | なつき |
竿立てて客待つ船頭湖おぼろ | よう子 |
ゆくりなき初音に次の声を待つ | わかば |
小流れのささやき初めし犬ふぐり | うつぎ |
手櫛もてなほす雛の乱れ髪 | なつき |
供花浸す閼伽桶の水温みけり | 素秀 |