みのる選:2021年2月度
2021年2月27日 | |
春風や大瀬戸渡る波の綺羅 | わかば |
節分草足首埋まる腐葉坂 | 愛正 |
ゆくりなき初音に辺り見渡せり | 小袖 |
春疾風三角波を研ぎにけり | わかば |
参道を行けば囀り天降るごと | こすもす |
鉢にぶら下がる苺の二三粒 | はく子 |
霞む日の暮れて眉山の電波塔 | 素秀 |
人住まぬけはいの庭に梅匂ふ | よし子 |
魚屋の口上長き遅日かな | むべ |
薄氷を踏みし園児の列乱れ | かかし |
蔵元を訪へば梅が香満ちにけり | 小袖 |
春うらら池塘を亀のずり落ちぬ | せいじ |
ビル風に立ちて人待つ春ショール | よう子 |
天を衝くセコイア並木芽吹きそむ | せいじ |
息触るるほどに膝行涅槃絵図 | うつぎ |
海苔粗朶の市松模様風光る | うつぎ |
廃業の酒屋の軒の古巣かな | なつき |
玻璃磨く春の山河を撫づるごと | 凡士 |
幾万歩踏みし古道や山笑ふ | 凡士 |
手をつなぐ偕老に山笑ひけり | うつぎ |
ダイヤ婚寿ぐ金盃に桃の酒 | 宏虎 |
2021年2月20日 | |
うららかや犬と主のペアルック | はく子 |
コロナ禍のマスク近づく寝釈迦かな | うつぎ |
老夫婦今年限りと耕せり | かかし |
飛石に屈み掬へば水温む | せいじ |
陣敷きて伏兵然と浮寝鴨 | うつぎ |
桜湯に嫁となる娘の笑顔かな | よう子 |
真つ先に芽吹く醜草抜かれけり | うつぎ |
春一の風の和らぐ昼下がり | わかば |
助手席に洩るる寝息は受験生 | むべ |
コロナ禍の窓あけ入るる春の風 | こすもす |
盆梅の白散りてよし緋毛氈 | なつき |
カルストの主峰に四囲の風光る | 素秀 |
不易なる淀の流れや春の鴨 | はく子 |
下萌えにスキップで来るおさげの子 | 宏虎 |
レコードの針音懐かし春の昼 | かかし |
語り部の物の怪めきて冴返る | 凡士 |
たんぽぽのぽつと顔出す河川敷 | はく子 |
涅槃図の雲居馳せるは摩耶夫人 | 小袖 |
2021年2月13日 | |
園長の太鼓一打に豆を撒く | かかし |
海峡に若布刈りゐる親子船 | 素秀 |
干されゐし漁網の匂ふ春の浜 | こすもす |
摘みし手に香の移りたる蕗の薹 | わかば |
鷺と鵜の尻向け合うて砂州長閑 | うつぎ |
がに股で小躍りしたる追儺鬼 | なつき |
春潮の満ちて廃船洗ひけり | 素秀 |
提琴の音伸びやかや春立ちぬ | むべ |
風光る仏舎利塔の白燦と | はく子 |
雪つぶて爺の背中に容赦なく | なつき |
かいつぶり潜りしままにゐずなんぬ | はく子 |
湖の綺羅敷き延べて風光る | うつぎ |
寒夕焼瀬戸いつときの熾火かな | 凡士 |
礎石のみ残る廃寺や木々芽吹く | せいじ |
暖かやパン種のよく発酵す | むべ |
巣立ちゆく部屋に一輪水仙花 | よう子 |
娘木偶角を隠して阿波の春 | 素秀 |
焼き立てパン匂ふ店先春隣 | よし子 |
2021年2月6日 | |
ハミングもでて軽やかに蒲団干す | むべ |
朝市の声の威勢に目刺買ふ | なつき |
一斉に水面を駈けて鴨翔ちぬ | せいじ |
マッサージされゐる背なに初音聞く | 素秀 |
見え隠れしつつ一渓春奏づ | せいじ |
雪の宿上がり框に自在鉤 | 凡士 |
狼星を見上げ十年の夜警かな | 凡士 |
蛇行して大河は海へ春霞 | せいじ |
雪しまく洞に雀の一家族 | かかし |
老大樹薄紅色の冬芽満つ | 凡士 |
白鷺の冬日纒ひて飛来せり | はく子 |
一株は鳥に残して耕せり | よう子 |
探梅や行き交ふ人と二三言 | 素秀 |
顔洗ふ寒九の水に火照りけり | うつぎ |
窓四温ひつくり返す砂時計 | 素秀 |
陽光を刎ねし尾びれや寒の鯉 | 小袖 |
暖かき日差しに背筋伸ばしけり | わかば |
潜つても浮いても一羽ダムの鳰 | うつぎ |
節分草我が誕生日知りて咲く | うつぎ |
春めくや墨絵ぼかしに淡路島 | 宏虎 |