みのる選:2021年1月度
2021年1月30日 | |
寒満月天狗ゐさうな鞍馬寺 | 凡士 |
寒暁の海を見たくて夫誘ふ | よう子 |
南紀かな冬田に早もトラクター | よう子 |
人恋うる馬の眸に風花す | うつぎ |
籠り居の油断が呼びぬ春の風邪 | うつぎ |
薄氷踏みもし池塘散歩かな | わかば |
笹鳴きとおぼしき声や藪の道 | こすもす |
寒天干す四囲の山垣砦とし | よし子 |
おいでやす京の老舗の箱火鉢 | かかし |
枯れ尽くしたる河川敷人を見ず | はく子 |
懐かしき夫の癖字や寒灯下 | むべ |
塀越しの枝の先なる冬至梅 | 愛正 |
大瀞も奇岩も隠す今朝の雪 | 素秀 |
土手走る白き道着は寒稽古 | 素秀 |
寒の水飲んで六腑を清めんと | 宏虎 |
と見る間に綿雪を吸ふ舗装路 | せいじ |
勝浦の湯巡り船や湯治旅 | よう子 |
初天神恋の御籤をひいてみる | よし子 |
足踏みしバス待つ園児霜の朝 | 凡士 |
蕗の薹でたと施設の母に文 | 小袖 |
京菓子の模様あれこれ女正月 | 小袖 |
マスクして同じ顔なる姉妹 | うつぎ |
寒風にかき消されたる昼の月 | むべ |
冬の鷺大堰堤に仁王立 | 素秀 |
2021年1月23日 | |
つつがなく在りし日思ひ小豆粥 | むべ |
炭窯の天辺に臍煙吐く | うつぎ |
火と煙捩れて猛る大とんど | うつぎ |
炭窯の白煙噴きて人寄せず | 小袖 |
一日一訓六波羅蜜と新暦 | うつぎ |
黒帯を目指し熱気の寒稽古 | かかし |
水脈消えしところが境池凍る | せいじ |
しぐるるやビルの狭間のなまこ壁 | 凡士 |
母の忌に約束のごと梅開く | 素秀 |
ととのひて白息消ゆる弓始 | なつき |
自分史の句集ひもとく冬籠 | かかし |
炭焼きの煙隠れに杣の影 | うつぎ |
尺八をこぼるる息の白きかな | 素秀 |
小夜更けて厨芳し生姜湯 | むべ |
ゆくりなく散歩の途次の冬さくら | はく子 |
海峡の暗きを打てる寒の雨 | わかば |
千枚田酒を吹きかけ鍬始 | かかし |
あの鴨は逆立ち好きと見たりけり | せいじ |
2021年1月16日 | |
初日の出高層ビルのすき間より | よし子 |
残んの世夫の分まで老の春 | はく子 |
退院のあるじを迎ふ寒紅梅 | むべ |
廃校舎あとに老松色変えず | よし子 |
大架橋影絵となりし寒夕焼 | せいじ |
明けやらぬ空に一と声初鴉 | わかば |
天空に結ぶ噴煙初淺間 | 愛正 |
所在なく糸のさすらふ懸凧 | よう子 |
駅ピアノ演奏中や松の内 | かかし |
狂言に笑ひ誘はれ明の春 | うつぎ |
書初や硯の陸の薫り立つ | わかば |
ふつふつと味噌桶ならぶ冬灯 | なつき |
雪間いまホルスタインの模様めく | こすもす |
のど飴を舌にまろばせ寒に耐ふ | よし子 |
マッチ擦る役を賜り初竈 | 素秀 |
広芝に敵味方なく御慶かな | こすもす |
朝市の客寄せとなる焚火かな | うつぎ |
初霞へと漕ぎ出せる渡舟かな | 素秀 |
2021年1月9日 | |
蹲に浮かびて一つ龍の玉 | 素秀 |
漣に滑るが如く浮寝鳥 | こすもす |
初春の野に翻る凧 | せいじ |
百歳の母の音頭で屠蘇祝ふ | かかし |
枯蘆の原に広がる夕日かな | せいじ |
健の文字添へてぞ写経筆始 | かかし |
廃校となりし分校山眠る | よし子 |
新しき鉛筆削り初日記 | よう子 |
湯豆腐の鍋煮えてきて膝行す | よし子 |
刃物研ぎ大繁盛す年の市 | なつき |
コロナ禍や予約でとどく福袋 | そうけい |
粉雪をしばし留めてソフト帽 | 素秀 |
古日記母の看取りの記録かな | わかば |
福寿草黄金びかりす日の窓辺 | わかば |
古時計刻きざむ音去年今年 | よし子 |
淀晴れて雪の比叡を遥拝す | せいじ |
狐火の噂立ちたるつづら坂 | 素秀 |
2021年1月2日 | |
冬銀河はやぶさ号も紛るべし | かかし |
ダム涸れて蛇腹めきし地肌見ゆ | うつぎ |
行く程に深雪となりぬ山路かな | こすもす |
宝殿の羨道奥処まで冬日 | はく子 |
城濠の狭しとせめぐ鴨の陣 | わかば |
冬麗や大手門へと松並木 | はく子 |
石蕗黄なり庭に袖垣四ツ目垣 | はく子 |
音冴ゆる鎮守の杜の砂利踏めば | 愛正 |
飛行雲一引き過る寒天田 | よう子 |
探鳥の双眼鏡に冬木の芽 | かかし |
木喰仏守る末寺の冬菜畑 | よう子 |
寒天干す空に一筋飛行雲 | うつぎ |
一人居の誰に憚らむ大嚔 | うつぎ |
神鶏の鳴声長く寒旱 | 素秀 |
冬ぬくし電話受診の医師の声 | そうけい |