みのる選:2020年12月度
2020年12月26日 | |
産土の臥龍の松も菰巻きす | なつき |
電飾の映る川面に鴨浮寝 | 素秀 |
吹き抜けのビルのロビーに大聖樹 | よう子 |
すれ違ふ車新雪堆く | こすもす |
縄張りのあるごとく鴨陣分かつ | せいじ |
手をおけば芯まで凍る力石 | 小袖 |
柚子風呂に肩の重荷の抜けるごと | うつぎ |
枯葎半ば埋もれて丁目石 | はく子 |
初雪やふるさと便の届きたる | よし子 |
しぐるるや明智の郷は穴太積 | うつぎ |
百選の棚田を抱く枯木山 | よう子 |
年の暮動く歩道を駆くる人 | かかし |
寒禽の声飛礫めく神の杜 | なつき |
楼門の紅葉を仰ぐ結願寺 | よし子 |
時として反す木霊や山眠る | わかば |
薄日さす明智の寺の冬桜 | うつぎ |
道幅を狭め商ふ歳の市 | わかば |
石切場秀枝を剪りて松迎へ | 素秀 |
2020年12月19日 | |
冬の蟻長き影ひく石畳 | 小袖 |
別腹と言ひ焼藷を頬張りぬ | 宏虎 |
梢みな珠光りせる霜の朝 | わかば |
落暉映へ炎たつごと山紅葉 | よし子 |
呼び声の道に飛び交ふ師走市 | わかば |
寒禽の鋭声が射抜く力石 | よう子 |
農学部休耕田に麦を蒔く | かかし |
撫で牛に木の実時雨の容赦無し | うつぎ |
月冴えて母子観音の白しろと | そうけい |
力石木の実時雨を弾きをり | うつぎ |
獅子岩の吐きだす朝の冬日かな | 素秀 |
連綿摂津連山紅葉晴 | よし子 |
無人駅柵に真白な干大根 | 愛正 |
コロナ禍の月日を重ね早師走 | わかば |
枯野いまドクターヘリが頭上過ぐ | こすもす |
仏花にと冬菊剪つて呉れにけり | はく子 |
黄ばみたる書を読みなほす漱石忌 | かかし |
2020年12月12日 | |
降りしきる深雪に祈る羅漢の掌 | 素秀 |
船影もなく冬凪の水平線 | よし子 |
回廊を駈けをる風の落葉かな | 愛正 |
レシピ付き菊芋並ぶ無人店 | せいじ |
寒椿凛と白磁のつるくびに | かかし |
魔法の杖あらばと仰ぐ冬銀河 | うつぎ |
着膨れて恙もあらず白寿の賀 | うつぎ |
閉店を告げる張り紙路地寒し | よし子 |
大島の手作りマスク気品あり | はく子 |
極月やコロナ禍なれど小買物 | わかば |
喜寿祝ぎて十年日記買ひにけり | かかし |
工程は濡れ手ばかりや紙漉女 | 小袖 |
咲き揃ふ日を思ひつつ球根植ふ | 菜々 |
焼栗の試食マスクの動きをり | なつき |
咲いてよし散ってなほよし姫つばき | よし子 |
音もなく時雨るる嵯峨の石畳 | よし子 |
一苦労して立ち上がる炬燵かな | うつぎ |
紙漉きの捩れ波打つ水の筋 | 宏虎 |
2020年12月5日 | |
枯蓮自信の持てぬ骨密度 | よし子 |
葛湯掻くコツは湯かげん混ぜかげん | よし子 |
逞しき蘭の花芽や冬ぬくし | はく子 |
短命の手相の筈が日向ぼこ | うつぎ |
風捉え風をいなして芒の穂 | よし子 |
千枚田天地返しに落葉鋤く | かかし |
茅葺に飛び火せんとて紅葉燃ゆ | うつぎ |
万歩計ノルマも兼ねて医者通ひ | 宏虎 |
鈍色の冬空覆ふ畜舎かな | なつき |
出で立ちは鬼滅の刃七五三 | こすもす |
短日や島の灯早もひとくさり | わかば |
切通し抜けて藪道笹子鳴く | 素秀 |
工場の灯の点滅に浮寝鳥 | 素秀 |
夕ばえの波うち際に島千鳥 | 素秀 |
鳴き砂の鳴かずに乾く冬の浜 | 小袖 |
秋惜しむ琵琶湖周遊船の旅 | よう子 |
炭焼の煤けし顔の八重歯かな | かかし |
小春日や裾野の煙狼煙めく | 愛正 |