みのる選:2020年9月度
2020年9月26日 | |
林泉の風のさざなみ秋の声 | わかば |
柿太る不作不作と言はれつつ | はく子 |
渡船場の貸し傘借りる秋時雨 | なつき |
身にしむや遠き昭和の捨て火箸 | 小袖 |
秋風が筒抜けてゆく通し土間 | せいじ |
落人の開墾地てふ蕎麦の花 | かかし |
とんぼうと秋つばめとの空は別 | うつぎ |
軒の巣に残る羽毛や燕去ぬ | よう子 |
鵙猛るここら能勢氏の城の跡 | 小袖 |
藍深く潮の目著き秋の海 | わかば |
投句箱溢れんばかり獺祭忌 | かかし |
2020年9月19日 | |
満月のわが吾影を踏む散歩かな | 宏虎 |
畦道の散歩稲穂に触れもして | はく子 |
能勢路いま刈田稔田農繁期 | よう子 |
潜り戸にやんちや坊主萩括る | かかし |
蜘蛛の囲の潮風孕む札所かな | なつき |
神木の洞深きより秋の声 | はく子 |
秋暑しあらぬへを向く道路橋 | せいじ |
爽やかに百四歳の笑顔かな | わかば |
山祇に落とす賽銭つくつくし | うつぎ |
磴走る宮司の裾の爽気かな | そうけい |
旅立の近しと並ぶ秋つばめ | こすもす |
2020年09月12日 | |
虫の音を野辺に拾ひつ車椅子 | せいじ |
コーヒーの水にこだはる生身魂 | よう子 |
青栗のたわわやトンネル出た途端 | こすもす |
大甕に溢る秋草道の駅 | わかば |
ふと我に返れば庭の虫しげし | うつぎ |
とんぼうが先客なりしベンチかな | かかし |
せせらぎに秋の声きく初音川 | よし子 |
2020年09月05日 | |
見回りの神官腰に蚊遣り香 | よう子 |
新涼の朝一番の熱きお茶 | はく子 |
神鏡の中まで灯り万燈会 | うつぎ |
蟷螂の振り向きざまの殺気かな | 素秀 |
夏バテやイケメン医師に脈とられ | よし子 |
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2020年08月29日 | |
短冊に五歳の願ひ星祭 | よし子 |
開くたびに熱風どつと自動ドア | せいじ |
立話してゐるだけで汗滂沱 | 菜々 |
木漏れ日に現れては消ゆる蜘蛛の糸 | うつぎ |
日盛りや自動運転モノレール | 更紗 |
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2020年08月22日 | |
梅花藻の花屑掬ふ茶屋主 | よう子 |
自転車の吾と併走す赤とんぼ | せいじ |
朝窓の枝移りする鳥涼し | そうけい |
朝の間に用事を済ます残暑かな | 小袖 |
稗一本早稲の穂波を抜きん出て | うつぎ |
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2020年08月15日 | |
廃校の低き蛇口や日輪草 | かかし |
長兄の一人生家に生身魂 | はく子 |
瓦斯燈の灯る街角夜の秋 | わかば |
竹落葉褥に力石二つ | うつぎ |
ローマ字の表札の家秋簾 | うつぎ |
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2020年08月08日 | |
雨乞ひの宮に数多の蝉の穴 | なつき |
栞して漱石横に大昼寝 | うつぎ |
駅ホーム茶畑見えて宇治涼し | はく子 |
雨晴れてより梢降る蝉時雨 | ぽんこ |
妙見山の水は豊かや青田波 | よし子 |