物芽でて切つ先立てし水際かな
花筏今や早瀬にさしかかり
子ら駈けて広場の落花とどまらず
春光の水掬ひけり洗面器
彩窓のイエスに遅日果てんとす
遠足のしんがりへ喝とびにけり
助手席の首ががくりと目借時
空耳と思ふ春雷二度聞かず
転舵して真向く外海風光る
最澄の一碑立ちたる雪間かな
福音の使ひのごとく初蝶来
啓蟄やマンホールから電話工
天狗杉武者震ひして雪落とす
田一枚げんげ浄土のまま打たず
露天湯へ矢印の立つ雪間かな
島バスのめぐる七浦風光る
ふらここに吾子と未来の夢語る
コンテナの野積みの山や菜種梅雨
春泥に立ち往生のダンプカー
湖晴れて立春の鳶高舞へり
助手席の無口となりし目借時
胎教の楽を聞きつつ春眠し
ゴルゴダの丘の永き日思ひけり
雨晴れてきたりと揚がる雲雀かな
存問に交はす汽笛や沖のどか
下萌に碑あり宮水発祥地
学問の宮に掬む水温みけり
初恋の思い出花の母校訪ふ
古都巡る大路小路に山笑ふ
モナリザの微笑み春の愁ひあり
不夜城はナース詰所の春灯
存問のごと啓蟄に対しけり
春愁や窓際族の夕ごころ
我らには十七字あり囀れる
まつすぐに帰る気はなし日脚伸ぶ
靴跡に起ち直りたる物芽あり
蹲り水子に祈る老遍路
囀りて天なる神を讃ふべし
鈴なりの祈願の絵馬に梅固し
春愁のコーヒー冷めてしまひけり
縦走の尾根の道ゆき風光る
啓蟄の大地漫画の描かれけり
春禽の煌めき翔ちぬ汀石
旅の春惜しむ間もなく機上人
花屑の虜となりて水漬く舟
卒業や無垢の涙をな忘れそ
楼門を凌ぐ老松鳥雲に
ウインドに額づく母子雛選ぶ
塵取りも箒も落花まみれかな
日永ビル窓にテナント募集中
膝行し雛の私語を聞くべかり
高嶺雲春の嵐を呼びにけり
窓の日に背伸びしてをるシクラメン
異な芽吹く薬草園の一と屯
波止の灯の等間隔に朧かな
山笑ふ大吊り橋の揺れに揺れ
うららかや左見右見して風見鶏
天恵の日に萌えて草芳しき
健康がなによりの幸野に遊ぶ
障子穴かと見紛ひし春の蝿
セコイアの鉾を立てたる芽吹きかな
句碑の建つ場所はこの辺地虫出づ
山桜天狗颯に吹雪きけり
雨垂れの序破急に春惜しみけり
踏青子ヒマラヤ杉を仰ぎけり
花吹雪アスレチックの子供等に
屋形船眺めの茶屋や桜餅
九輪へと高舞ふ落花仰ぎけり
異人館通りの落花畳みかな
錐揉むと否との遅速落花舞ふ
巣立鳥マリアの像の辺にあそぶ
春空に開業祝ふ気球群
四旬節投句を休む訳にゆかず
四阿は落書だらけ春愁ふ
碧落に比翼の舞や春の鳶
律川の調べや花の遊歩道
春風が滲みると涙かくしけり
垂れ紐と見紛ふ蔓の芽吹きけり
庭雀ぺちやくちや春の天が下
磊々に逸る飛沫や雪解川
吾を呼びし声に振り向く朧かな
日の翳り黄泉も斯くやと黄沙降る
落暉燃ゆ浦曲の春を惜しめとぞ
松籟に高舞ふ須磨の落花かな
街遅日プラネタリウム館を出て
雛屏風連理の鶴を描きけり
乱帙に春の愁ひのありにけり
騒ぎてはやむ竹秋の風気侭
縺れつつ錐揉む落花二三片
春陰の焼却炉いま火の坩堝
凭れあふ羅漢に永き日なりけり
身じろがず祈りのさまの地虫かな
夕蛙田ごとのエール交はしそむ
春憂しと妻のわたしに言はれても
一陣の柳絮高舞ふ池塘かな
汐遠く引きたる砂嘴に春惜しむ
海苔ひびの方千畳に朝日射す
岩田帯授かるによき梅日和
偕老の二人と見たり花堤
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