みのる選:2021年12月度
2021年12月24日 | |
小さきベル揺るる垣根の聖樹かな | なつき |
連弾の姉妹の頬に聖夜の灯 | 凡士 |
聖夜いま燭から燭へ火をうつし | むべ |
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2021年12月23日 | |
鉢巻も泥だらけなり蓮根堀 | せつ子 |
しまひ湯のふやけし柚子を愛しみ | 千鶴 |
みせまじき不覚の涙月冴ゆる | 明日香 |
冬至粥亡夫のくれし橅の匙 | むべ |
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2021年12月22日 | |
柚子揉みて軟らぎし湯に肩沈め | ぽんこ |
置き去りにされて星見す雪だるま | 素秀 |
湯あがりの髪の匂へる柚子湯かな | むべ |
ガラス戸のなきやに磨く年用意 | 董雨 |
古希間近真赤なカーディガンを買ふ | もとこ |
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2021年12月21日 | |
雀どち浮きつ沈みつ枯葎 | 明日香 |
小剣士面から洩るる息白し | 素秀 |
狼藉は芽芋狙ひの猪の穴 | 千鶴 |
捨てられぬ贔屓力士の古暦 | こすもす |
しぐれ雲稜線越えて雪崩落つ | 智恵子 |
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2021年12月20日 | |
登校の子らの地団駄初氷 | 凡士 |
生駒山靄を裳裾に眠りけり | はく子 |
手水舎は人感センサー宮小春 | せいじ |
介護靴新調するも年用意 | やよい |
ハーモニー手話も加はり降誕歌 | むべ |
裸木となりて苔美しき | 満天 |
チェンソー唸る杣山冬支度 | 智恵子 |
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2021年12月19日 | |
尖塔の十字影嵌む冬の望 | むべ |
明日検査寒満月に祈りけり | なつき |
木枯しに耳裏がへるピーグル犬 | たか子 |
気の早い凧上がりをり年の暮 | うつぎ |
畳一面に版画の賀状乾す | 智恵子 |
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2021年12月18日 | |
乾杯のグラスに揺るるペチカの火 | たか子 |
砕けよとテトラポットへ冬怒濤 | 宏虎 |
箸焦がし鰯焼きゐる朝市女 | なつき |
大公孫樹天へ直立して枯るる | 素秀 |
茎漬や軋む町家の箱階段 | 凡士 |
2021年12月17日 | |
大欠伸して憚らぬマスクかな | 千鶴 |
煤逃げの夫の丸き背な咎めそ | たか子 |
ナンクロと格闘しをる炬燵かな | あひる |
雪ばんば薪割る山の一軒家 | やよい |
キャタピラの土塊落とす冬田道 | せいじ |
剪定に広ごりし庭寒椿 | みきえ |
足早の人に抜かるる師走かな | たか子 |
石庭のしるき紋様冬日燦 | せいじ |
五代像見下ろす商都師走くる | もとこ |
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2021年12月16日 | |
一鍬に土よみがへる寒起こし | 千鶴 |
鯛焼の鰓から割れば餡の湯気 | 素秀 |
髪染めて若づくりなる毛糸売 | なつき |
着膨れて恵比寿顔なる巡査かな | 智恵子 |
秒針と氷雨の音を独り聞く | あひる |
一筋の日矢に煌めき銀杏散る | ぽんこ |
真夜の能登どかんとの沖の鰤起し | 凡士 |
メモになき物に迷へる歳の市 | 満天 |
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2021年12月15日 | |
弾痕の古りし石柱注連縄を張る | 凡士 |
着膨れて電飾街の人波に | たか子 |
腐葉土を脱ぎて顔だす実生の芽 | 豊実 |
ガジュマルを聖樹としたる島のカフェ | もとこ |
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2021年12月14日 | |
瞬くと見るや流れし枯木星 | むべ |
手套脱ぎ手話の二人は饒舌に | 素秀 |
枯山の天辺焦がし朝日出づ | 隆松 |
日照るとき枯山躁となりにけり | 明日香 |
伸び縮みせる艫綱に冬鴎 | 凡士 |
海光の絣模様に冬凪ぎぬ | うつぎ |
冬ざれの浜に朽ちたる手漕ぎ船 | 智恵子 |
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2021年12月13日 | |
杣人の拓きし道や滝涸るる | 素秀 |
手袋にちやうど良き穴スマホ繰る | あひる |
カレンダーメモだらけにす年用意 | たか子 |
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2021年12月12日 | |
滔々の川面へ伸びし冬木の芽 | ぽんこ |
小春日に鋏のはずむ園手入れ | 明日香 |
家中の断捨離に凝る師走かな | やよい |
友厚像睨む北浜十二月 | たか子 |
気は急けど手足動かぬ煤払 | 満天 |
ダミ声のとびてアメ横年の暮 | 智恵子 |
6Bをすこし寝かせて描く枯野 | 凡士 |
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2021年12月11日 | |
凩や屏風岩背に塞の神 | うつぎ |
息白く吾子の駆け来る川堤 | たかを |
冬ぬくし落ちて尻もちパンダの仔 | 凡士 |
無違反の免許返納して温し | みきお |
2021年12月10日 | |
台杉の秀へかんざしに散り紅葉 | 明日香 |
さざ波を揺りかごとして浮き寝鳥 | せつ子 |
陣解きてよりゆるゆると鴨遊ぶ | もとこ |
出棺の空に褪せゆく冬の虹 | なつき |
老松の迫り出す崖へ冬怒濤 | 宏虎 |
磯の香を腹まで吸ふてひじき刈る | 千鶴 |
日向ぼこ小いさくなりし夫の背ナ | やよい |
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2021年12月09日 | |
闘病の部屋の奥まで冬日燦 | やよい |
小春波川面のビルのふにやふにやに | 明日香 |
枯菊といへど仄かに香りけり | 満天 |
三和土まで射し届きたる冬至の日 | みきお |
スプーンを添へて熟柿を老い母へ | あひる |
手を振るや水都をめぐる遊船に | もとこ |
打たせ湯のごと肩に置く冬日差 | たか子 |
海光の眩しき沖に鰤漁船 | 千鶴 |
冬凪の浦一面に朝日燦 | 千鶴 |
自販機の吐き出すコイン星凍る | 素秀 |
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2021年12月08日 | |
干柿を揉む甘くなれ柔くなれ | やよい |
薄氷割りて掬ひし手水かな | 智恵子 |
白菜を漬けてはみ出す桶の縁 | ぽんこ |
歳晩や多めに貰ふ処方薬 | せいじ |
父知らぬ人生を生き開戦日 | たか子 |
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2021年12月07日 | |
師走とて天井裏も賑々し | せいじ |
太梁の築百年の隙間風 | 千鶴 |
露天湯の岩に張りつく紅葉かな | せつ子 |
介護メモ読み返しゐる炬燵かな | なつき |
新暦先づは家族の誕生日 | 智恵子 |
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2021年12月06日 | |
引力に負けて地に落つ冬の蝶 | 明日香 |
隼人瓜もらふ里山ハイキング | むべ |
湖涸れて古銭うち上ぐ遙拝所 | 隆松 |
海鳥の白き骸や冬の浜 | 素秀 |
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2021年12月05日 | |
顔見世の桟敷彩る芸舞妓 | 凡士 |
北風におでこぶつけてペダルこぐ | あひる |
丹精の小菊を剪りて棺へと | なつき |
納棺の父の軽さや菊白し | なつき |
立て看板ドミノ倒しに空つ風 | たか子 |
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2021年12月04日 | |
猪鍋は夫の十八番の味噌仕立て | 千鶴 |
新藁を敷きし厩舎に仔馬起つ | 凡士 |
焼芋屋買ひ迷ふうち行き過ぎね | 満天 |
2021年12月03日 | |
冬雷と思ふや否や震度四 | 千鶴 |
竹さやぐたび山茶花の紅見ゆる | もとこ |
吹き抜けの庭貫きて大聖樹 | 智恵子 |
暗闇の沖につんざく鰤起こし | 宏虎 |
鴎群る牡蠣打殻のボタ山に | 凡士 |
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2021年12月02日 | |
菓子を置く懐紙代はりに散紅葉 | むべ |
鴟尾掴み一声二声寒鴉 | もとこ |
日向ぼこ明るき愚痴に大笑ひ | あひる |
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2021年12月01日 | |
菩提寺の甍を染めて黄落す | こすもす |
ぬくぬくの焼芋父の袂から | はく子 |
蒼天へみな万歳す冬木立 | 満天 |
菊焚いて墓石に香手向けけり | 智恵子 |
遠近と鴨の水尾引く日の出時 | 隆松 |
冬日燦元禄と彫る寄墓に | ぽんこ |
弾むほど落葉の袋ぎゅう詰めに | 凡士 |
寒風とおしくらをせし肩の凝 | たか子 |
蚤の市買ふ気で値切る指輪かな | なつき |
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2021年11月30日 | |
鵙の贄めきて梢に軍手刺す | 豊実 |
老い母にいつもの五年日記買ふ | せいじ |
あるなしの風に残りの紅葉散る | 明日香 |
背中から魑魅も寄りくる焚火かな | 素秀 |
あかつきにうちひろげたる氷魚網 | 隆松 |
枯葉馳す駅構内を急ぎ足 | もとこ |
夕日背に麦踏む人の影法師影 | みきお |
耳遠き老い母と居て冬ぬくし | あひる |
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2021年11月29日 | |
大枯木支ふ蒼天昼の月 | せつ子 |
柿とどく郷の夕陽を想ひけり | あひる |
突と吹く風意地悪や落葉掃く | 宏虎 |
鈴生りの一枝お辞儀す実南天 | 董雨 |
石柱を虜としたる蔦紅葉 | ぽんこ |
落葉道ふかふかを知る土踏まず | せいじ |
焼き芋の湯気もろともに頬張りぬ | はく子 |
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2021年11月28日 | |
仄と色残し四方山眠り初む | 満天 |
福耳がはみ出してをる冬帽子 | もとこ |
仰向けになりて糶らるる松葉蟹 | 凡士 |
一燭を火点し待降節に入る | むべ |
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2021年11月27日 | |
大根干す藁葺屋根の深庇 | かかし |
星一つ布の聖樹の天辺に | むべ |
水輪いま不即不離なる二羽の鳰 | 豊実 |
四歳のマリヤ頑張れ聖夜劇 | あひる |