みのる選:2011年5月度
みのる選:2011年5月度
[みのる選]
2011年05月28日 屋上のエコ農園も風薫る 有香 郭公の声みずうみに谺しぬ 三刀 急カーブなほ続きをる木下闇 こすもす 挿菊に立つる名札を確かめつ きづな 吊り橋は空中散歩峪わかば うつぎ ほととぎう峡田に水の満ちわたり とろうち 2011年05月27日 後ろ手に植田見廻る老ひの背な 花茗荷 旅一日緑雨の湖畔たもとほり なつき 歌いっぱい唄ひしあとのソーダ水 はく子 大噴水穂先は空の色となり うつぎ 絵仲間と尽きぬ話は薔薇公園 満天 白南風や手の届きさう茅渟の海 宏虎 木下闇無縁仏を堆く よし女 銀の穂を珠と散らすや大噴水 菜々 2011年05月26日 閉園の蛍の光薔薇夕べ はく子 満開の薔薇を描く人写す人 宏虎 下闇に隠れ耶蘇てふ夫婦墓 有香 馬車道の坂ゆるやかに万緑裡 菜々 松涼し海へ坂なす離宮道 うつぎ 緑陰の三線の音に誘われ ひかり 2011年05月25日 大楠の広げし枝に風薫る 満天 亦一つ音なく落ちし沙羅の花 ともえ 2011年05月24日 前山のなきがごとくに夏霞 ともえ 黒揚羽杉の美林を縫ひにけり 有香 斯く小さき池を天下や水馬 こすもす
最近、やや類想傾向の作品が目立つように思います。 みのる選に採れる作品もありましたが、類句、類想と思われる句は落としました。ごめんなさい。 高点句の措辞や言い回しを真似ることは決して悪いことではありませんが、句の内容(句意)そのものを真似るのはマナーに反します。
無意識に類想句が生まれることはあります。 考えて作るという作句姿勢傾くと特にその落とし穴にはまりやくなりますから注意しましょう。 俳句の学びで最も大切なのは、誰にもマネの出来ない個性的な感性です。 必ず吟行して詠むこと。常識的な概念を捨てて自然の営みに、また四季の移ろいに心を遊ばせる訓練を続けること。昨年の明日香で汗をかきながら必死に作句したあの姿勢を忘れないで下さいね。
[みのる選]
2011年05月21日 目に涼しブナの林は緑世界 花茗荷 山寺の堂縁涼し俄句座 うつぎ 石仏の背なにクルスや木下闇 よし子 堂縁に分け合ふ昼餉滝涼し せいじ 2011年05月20日 辻一つ間違え探す町薄暑 満天 はじまるを待つときめきや薪能 宏虎 2011年05月19日 うちわ撒く一つは隅の老いの手へ 菜々 みどりさす八一の歌碑の平仮名に 雅流 2011年05月18日 滝壺を一閃せしは魚影かな 菜々 松蝉や大学艇庫閉じしまま きづな 竹皮を脱ぎて撓へる高さかな 雅流 空谷に響く瀬音や滝の道 わかば 靴脱ぎて駆け出す子らや芝青む せいじ 右近碑の深き十字に緑さす うつぎ 寺屋根の反りへ飛翔の夏燕 雅流 2011年05月17日 盛り上がる山腹はみな椎の花 せいじ 茶処へ渡る歩板や水芭蕉 つくし 杉玉の古りたる軒に燕来る こすもす 名水を引きて白玉売る茶店 ともえ 滝現れてロックガーデン出発点 はく子 斯く深き夏落葉踏む行者道 菜々 畜魂碑おほふ丈余の夏の草 よし女 2011年05月16日 代田満つ鎮守の森を要とし うつぎ 2011年05月15日 長屋門くぐる一歩に風薫る 菜々 二の腕に迷ひし蟻をひと吹きに なつき 溝浚ひせずにおしゃべりしてばかり 満天
今週は特にがんばって採りました(^.^)
[みのる選]
2011年05月14日 潮風にのりて海行く夏の蝶 よし女 右左お尻を振りて草刈機 こすもす ぶな林の涼しまだらの木漏れ日に ともえ キッチンの窓にさ揺らぐ若葉影 きづな 天を突くメタセコイアの芽吹きかな 満天 保育園四方に代田のひろがりて なつき 草いきれまき散らしをる草刈機 はく子 蜑の道浜豌豆の花盛り よし女 水嵩の増したる川面つばくらめ せいじ 2011年05月13日 散り際を潔く剪る牡丹守 有香 鐘楼を包むがごとき緑樹かな わかば 門川に鯉遊びをる涼しさよ はく子 哲学の道は貸し切り余花の雨 きづな これ以上の青空はなし鯉幟 よし子 水明に青葉若葉の南禅寺 菜々 太陽の塔の顔にも黄砂ふる 小袖 雨意兆す空に牡丹の愁ひあり 満天 2011年05月12日 葉桜の舗道を濡らす小糠雨 つくし 新緑に風も色づくかと思ふ 宏虎 就中際立つ無垢の白牡丹 うつぎ 人気なき哲学の道花は葉に ぽんこ 間遠なる読経の声や若葉雨 わかば 風に揺れ谷へなだるる濃山吹 とろうち 青時雨大和三山滲ませて 明日香 筋塀に疎水高鳴る路地涼し 菜々 2011年05月11日 一村を湖底に沈め峪若葉 花茗荷 棚藤を揺らしゆきしは千の風 かれん 植木屋の一服長し囀れる とろうち 大いなる神の石抱き山笑ふ 明日香 デパートのウインドウはや夏本番 雅流 神宿る飛鳥の奇岩木下闇 明日香 大き泡吐きて浅利の小さきこと なつき 一花一花覗きて雨の牡丹守 うつぎ 地下街を出でて眩しき新樹光 宏虎 お不動の先客まるは青毛虫 よし女 修験者の法螺万緑に響きけり わかば 2011年05月10日 新茶摘む音小気味よきリズムかな 小袖 改札口白を吐き出し夏来る 菜々 わがグルメ白きとろろに麦の飯 ぽんこ よろこんで腹を見せゐる鯉のぼり とろうち 躑躅燃ゆ庭へ全開大広間 満天 カーナビの案内怪しき木下闇 きづな さざ波の韋駄天走る植田かな こすもす 筍の鍬いれどころ合点す よう子 明日植ゑむ苗箱畦に代田澄む 雅流 新緑を浴びて活力賜りぬ 宏虎 立杭の窯の寝姿風薫る ともえ ここにある蔵元館竹の秋 なつき 涙目をして伐られゐる袋角 宏虎 筍の切っ先リュックはみ出しぬ 有香 杉の秀のかかる高きに天つ藤 明日香 身じろがず葉裏に眠る蝸牛 あさこ 万緑や七堂伽藍鎮もりて わかば 2011年05月09日 襖絵は枯山水や堂涼し 満天 朴若葉三角点を目指す道 雅流 大甕に贅といふほど濃山吹 とろうち 万事休筍の先剥きすぎて ともえ 大神輿踏切一気とはゆかず よし子 子らは皆道草が好き葱坊主 はく子 ギヤマンのレトロな器冷奴 花茗荷 回廊はうぐひす張りや若葉風 満天 廃校となりし校庭つつじ燃ゆ きづな 立杭の土器薫風に乾きをり 小袖 道外れここは蛙の国ならむ うつぎ 汲み置きの水並びをる金魚店 なつき さざ波の代田に夕日落ちんとす 有香 御手洗に猫横たわる薄暑かな ぽんこ 交番の灯ともりどきや夕蛙 うつぎ 竹の秋墓地の開発なほ奥へ きづな 山裾に遊ぶ風あり竹の秋 雅流 囀りやモールス符号めくは何 よし女 新緑の園に総玻璃レストラン 宏虎 異種新種華麗を競ふ薔薇の園 明日香 風やめばちょっと一息鯉幟 こすもす 山々の襞際やかに夏立ちぬ はく子 2011年05月08日 薪能果てても火照りさめやらず 宏虎 母の日のうれし祖母にはなれずとも 明日香 天つ藤原生林の天辺に わかば 豆の花貸農園のあちこちに 菜々 苗代茱萸あらば摘まんで棚田道 うつぎ 里若葉単線電車折り返す 雅流 薫風や橋脚潜る櫂捌き 花茗荷 つつじ燃ゆ丘の上に海展けけり ぽんこ 新樹燃ゆ山並み幾重にもつづき 治男 早苗田や衛士さながらに立つは鷺 せいじ 万緑や薪堆く陶の郷 ともえ 緑映ゆ伏見の清水手に掬ふ うつぎ 隧道を出でて仰げば懸り藤 かれん 苑涼し日の斑の揺らぐ石畳 わかば 訪ひくれば一面著莪や奥の院 こすもす 祭りの子お守り袋腹掛けに なつき
遅くなりました。取り急ぎみのる選のみ発表いたします。
[みのる選]
2011年05月07日 鳥声を枕に庭のハンモック よし女 新緑に磨きをかけし日照雨かな 有香 常夜燈灯る末社の五月闇 つくし さながらに水田を泳ぐ鯉のぼり とろうち ゆるやかに芭蕉玉解く日和かな 明日香 川沿ひに残る山家や桐の花 菜々 湧く雲のごとくに杜の新樹かな わかば 夕闇に浮かぶ紫色は山の藤 こすもす 植田風入れむと車窓全開す せいじ 2011年05月06日 筍の礼状一筆挿絵つき よう子 自転車でめぐる明日香路風涼し 明日香 駈け馬の武将は茶髪楠若葉 よし子 年金に恃むたつきよ更衣 雅流 門跡の高き土塀や桐の花 きづな 新緑の歓喜や風の雑木山 明日香 浜祭あきたる子らは砂遊び なつき 喬木を仰げば藤や山の道 英子 2011年05月05日 すれ違ふベビーカーにも鯉幟 つくし ケーブルカーいま新緑のトンネルに 有香 傘寿吾になほある未来更衣 三刀 日曜日家族総出で田を植うる ともえ 2011年05月04日 野仏の供花を摘むべく野に遊ぶ 有香 よなぐもり養鶏場は昼灯す 雅流 庄屋跡残る水路にめだか群る きづな 太き竿しならせ元気鯉のぼり とろうち 畦道の愉し草笛吹きながら はく子 登り窯抱き里山笑ひけり ともえ 鯉幟林立せるが陶器市 せいじ 花心なほ熾きの赫さや夕牡丹 うつぎ 霾るや六甲連山なきごとく 有香 ふくよかなマリアの像や薔薇五月 宏虎 三川の落ち合ふ夏野空展け よし子 雲のごと見下ろす畠に梨の花 あさこ 樟若葉萌ゆる社の土俵入り わかば 田水張る水口おしゃべりするごとし 雅流 鯉のぼり連ね大川跨ぎけり 小袖 愛犬をカートに散歩風薫る ぽんこ カラフルに子らの散らばる潮干狩 なつき 大和川跨ぎ機嫌の鯉のぼり 百合 2011年05月03日 賀茂川の中洲めて菜の花黄 満天 霾や水平線のなくなりぬ わかば 首飾り髪かざりよとれんげ摘む はく子 寧かれと祈れば廻る風車 よし女 春惜しむ能勢の民話の峠みち 雅流 高足を組むマネキンや夏来る 宏虎 虎杖のはみ出す子等のリュックかな うつぎ 2011年05月02日 雉一声山の鳥語を統べにけり うつぎ 麗かや足裏に文字の嬰並ぶ 百合 迷路めく芽吹きの深山道をゆく こすもす 東山三十六峰よなぐもり 満天 2011年05月01日 白山の晴れて加賀路の田植時 花茗荷 古民家の土間筒抜けに若葉風 わかば 富士臨む小さき祠すみれ草 とろうち 花筏疎水狭しと犇めきて ともえ 遠山の白きを望み春田打つ こすもす 春惜しむワンデイチケット乗り継ぎて 満天 風力計元気いっぱい新緑風 ぽんこ 五月晴れセコイヤ鉾を立てにけり 菜々 葛城をそびらに笑ふ畝傍山 明日香 盆梅の実と思われぬ大きさに わかば 雨晴れてぺちゃくちゃ唄ふ朝つばめ ひかり 行く春を豪華ロビーに惜しみけり 雅流
[選評]
今週は季語の説明ではないのですが、季語がよく効いている作品を抽出してみました。 作ろうという意識が働くとどうしても季語の説明になりがちです。 心を無にして思いをめぐらせるとき、ふと心が動くときがありますね。 そうしたプロセスを経て佳句が授かるのです。
大空に元気に大空を泳ぐ鯉のぼりに勇気を与えられる。
初夏の田園風景が広がります。
いつまでも綺麗でいたいという願う女性の想いが現れています。
季節の移ろいの中にも老後の母に思いを馳せ、いつまでも元気でいて欲しいと祈る。
早く元気なりたいと願いつつも何となくもどかしい気持ちが春愁を誘う。
燕の説明は全くしていませんが瀬をかすめる燕の姿もきらめいています。
ゆっくりとした太極拳の動き、そして数人の一の動きが揃っていてのどかさを感じさせます。
みのる選
2011年04月30日 元気出せよと大空の鯉幟 ぽんこ 花嫁のベールへいまし若葉風 かれん 初蝶の風に乗りたる高さかな うつぎ 牡丹やおんなざかりは疾くと過ぎ 菜々 右手左手五彩の緑春山路 三刀 筍の土間に転がる厨かな 花茗荷 つばくろや泥こぼし行く耕耘機 とろうち 大けやき息ふきかえすごと芽吹く 有香 切り岸に注ぐ残花の薄明かり わかば 日差し失せ藤房の蜂居ずなりぬ よし女 杉美林裳裾は著莪の花浄土 よし女 筒抜けの山の駅舎や燕来る 小袖 2011年04月29日 木々芽吹く空にゆっくり白い雲 ひかり 新調のめがね快適若葉径 よし女 風はらみメタボとなりし鯉のぼり ともえ 2011年04月28日 旗竿の花に白蝶まぎれけり よし子 軒先に燕出入りす骨董屋 花茗荷 2011年04月27日 惜春の旅の一句を多羅葉に 菜々 たんぽぽの絮の行方は風が知る ぽんこ 2011年04月26日 灯台の岬を埋む花菜畑 花茗荷 行く春の雲を写して池広し はく子 花は葉にホームの母の恙なく 雅流 2011年04月25日 春愁や麻痺覚めざる右手さすり 英子 木の芽風太極拳の一と屯 百合 2011年04月24日 落合ひにきらめく瀬波初燕 うつぎ 御手洗の杓が掬ひし桜蘂 よし女 蝶追ふて子が駆け母が後追ふて 百合 空模様一転快晴イースター せいじ 逆縁の四十年や花は葉に はく子 朝戸繰る日ごと前山笑ひけり 明日香 房の先くすぐり合ひて藤盛る なつき