みのる選:2011年3月度
みのる選:2011年3月度
毎日句会みのる選は、いつも二回見直して決定していますが、今回は四度見直しました。 とても残念なことですが、吟行句ではない心象句、理屈の句が目立ちます。そうした作品の多くは季感が動いて作品として選べないのです。
毎日欠かさず投句を続けることは苦しいことですが、苦しさのあまり妥協した句作りを続けているとかえって悪い癖がついて吟行で句が詠めなくなります。 毎日句会は、「俳句で遊ぶゲームセンター」ではありません。少し厳しい表現かもしれませんがどうかお許しください。 どうぞ基本は吟行という精神を心がけてください。日ごと吟行して努力を重ね、着実に上達しておられる方も少なくありません。選句しておられる皆さんにもそれはおわかりだと思います。それぞれいろいろな生活事情があるので毎日吟行に出かけるのは到底無理・・という方もおられるでしょうね。吟行でなくても生活身辺でも句を詠むこともできます。 大切なことは、頭で考えるのではなく、必ず心を動かして句作りをすると言うことですね。
みのる選
2011年03月26日 花烏賊の風に干上がる漁師町 よし女 身の丈の水車回して苗代田 なつき 芽柳の土手尻振って競歩人 うつぎ 麦青む明日香の風に波たちて 明日香 みほとけのたなごころなる落椿 菜々 清浄の水のた走る山葵沢 宏虎 鯉と鴨餌を取り合ふ修羅場かな なつき 春落葉五百羅漢の寧かれと はく子 2011年03月25日 草萌ゆる明智贔屓の里訪へば うつぎ 東風の藪隅に小さき十字墓 満天 うち仰ぐ丹塗りの社殿風光る ひかり 少将の通ひしといふ路おぼろ 菜々 2011年03月24日 新しきミシン好調春うらら はく子 囀りや踏むゆく雨後の石畳 とろうち 一古墳要としたる花菜畑 宏虎 水底の影はめだかの学校か ぽんこ 2011年03月23日 一山路椿浄土といひつべし 三刀 鵯どちの囃し立てをる椿谷 よし女 白毫の暗きに光り堂冷ゆる うつぎ 一と所絨緞となる落椿 よし女 2011年03月22日 ほつほつと干潟に残る漁師舟 ともえ 尼の寺よりいかなごを炊く匂ひ よし子 春風の川面に揺るるなまこ壁 うつぎ 2011年03月21日 放生の池へと挿頭す梅紅し 菜々 水脈のごといかなご船に蹤くかもめ うつぎ 春光の縮緬波を船が往く うつぎ 先生の語尾震へをる卒業日 とろうち 延命水一口ふふみ老の春 よし女 2011年03月20日 チャリティーの大道芸や花万朶 せいじ 涅槃図の咫尺に屈む吟行子 菜々
教会関係の奉仕が続いたのと持病の腰痛が出て、みのる選が遅れてしまいました。 おゆるしください。
大震災のショックがあまりに大きかったせいでしょうか、皆さんの作句意欲が低下しているようです。 この現状下では、ゆっくりと心を遊ばせるというのは至難ですから、 私自身も例外ではなく詮無きことですが、被災地の方々のために祈りつつ休まずに作句を続けましょう。
地震の句は想像で作るのではなく、ほんとうに心が動かされた思いや光景を写生します。 やもすると、「地震」という前提で鑑賞しなければ理解できない作品になりがちなので注意しましょう。 「地震」というのと「震災、被災」というのでは意味が違ってきますから、 これらの措辞も正確に使い分けないと意味不明の句になります。
ようやく温かくなってきました。できるだけ野外に出て句を詠むようにお互いにがんばりましょう。
[選評]
卒業子たちの希望にあふれた表情が見えるようですね。
季語の説明をしないで、その本質がよくにじみ出た佳句ですね。
見慣れてしまうと違和感もなく、一つのファッションになりました。
みのる選
2011年03月19日 花菜畑埋もれては見ゆ少女かな ともえ 紺碧の水面を渡る春の蝶 三刀 校舎背にスクラム卒業写真撮る なつき 2011年03月18日 観梅へをみならのバス喧し 雅流 前列に赤札並ぶ植木市 つくし 被災地の瓦礫を覆ふ春の雪 よし子 被災地を想へば春の月滲む 菜々 置き薬使ふことなく彼岸入り よう子 2011年03月17日 霊水を掬ふ柄杓に風光る 満天 岩穴の仏を洗ふ春の潮 なつき 清水の舞台はなやぐ春の雪 菜々 法皇のご廟の御前落椿 うつぎ 春しぐれ路地を駆けゆく下駄の音 菜々 2011年03月16日 裏山の禽獣かこち春田打つ 雅流 涙眼で見つめている子流し雛 治男 一面の花菜明りに道の駅 三刀 盆点ての一服外は春の雪 こすもす 卒業子袴の裾にブーツ見ゆ 明日香 募金箱へ一灯ともし卒業す よし女 春の園時報奏でるハンドベル なつき 2011年03月15日 せせらぎに鈴振るごとく花あしび 菜々 耕しの妻に鍬の柄長かりし 雅流 街ゆくはヅカガールらし春帽子 うつぎ 草萌ゆる聖ザビエルの布教井戸 よし女 2011年03月14日 ガス灯のともる街路や春の宵 わかば 満開の椿を揺らすは憎き鵯 満天 春光や棚田の畝の潦 明日香 ホワイトデー即興義援コンサート なつき 2011年03月13日 観梅の手作り弁当みせあひて 雅流 被災地へこの春日和届けかし 明日香 走り根の磴のぼりゆく彼岸寺 よし女
[選評]
癌告知でしょうか、わびしい気持ちのなかに安堵もあります。
すざましい地震禍の惨状は身を覆いたくなりますね。
洋々と広がる沖の景色と作者の立ち位置ととが上手に立体表現できてた佳句ですね。 海の青さと菜の花の黄との色の対比も見えてきます。
作者独特のとらえ方でいつも感心させられます。「啓蟄」の雰囲気もあって滑稽感があります。
[みのる選]
2011年03月12日 参道の老舗名代の草の餅 雅流 春寒し集へば地震のことばかり 満天 春寒や祈るほかなし大震災 三刀 黙祷に始まるコーラス春の冷 有香 被災地の衝撃映像春憂ふ こすもす 病名を知らず逝かれし夜寒かな 雅流 湯に通す若布一変さみどりに 満天 地震禍に灯り無き街冴え返る とろうち 2011年03月11日 パンジーが描く国体マスコット よし女 尻並べ蛸壺乾く波止日永 菜々 囀や寺の広縁独り占め わかば 埋め戻す発掘遺跡草青む なつき 被災地の安否こもごも余寒かな ぽんこ 2011年03月10日 うららかや軸足変ふるフラミンゴ 宏虎 千度石百度石へと春の雨 小袖 咲き満つる梅天蓋に蜂巣箱 うつぎ 被災地へ安否訪ひゆく余寒かな なつき 煙突の煙直立春うらら よし子 木漏れ日の磴に小紋の落椿 わかば 歴代の藩主の墓所や名草の芽 菜々 洞ばかりなる老梅の盛りかな とろうち 菜の花や沖の巨船の航遅々と うつぎ 手品めく和布蕪は青く豹変す せいじ 相輪に引っ掛かりたる春の雲 よし女 東風の灘一望したる梅の丘 雅流 のどけしや時報のチャイム童歌 花茗荷 探梅や雅号の名札合点し あさこ 2011年03月09日 予後いまだ食欲なしと春憂ふ はく子 道普請穴の中より荒ぶ声 つくし 春の雪透かして余呉の湖遥か わかば 雨意知らすごと沈丁の濃く匂ふ 満天 堤防に一声のこし雉翔てり 英子 だみ声の猫が媚びくる園うらら ひかり バス停は菜の花畑の黄の中に よし子 浦里の田の一枚は花菜畑 雅流 長閑しやリボンつけたる介護犬 せいじ 禅寺の龍の目にある余寒かな 花茗荷 春疾風テニスボールはあらぬへに ぽんこ 2011年03月08日 春隣栞をはさむ時刻表 三刀 春うらら湖面を走る光あり 花茗荷 脱稿の目を芽柳に移しけり 菜々 荒海に似て大琵琶の春嵐 わかば 老どちらみんな笑顔や春ショール 英子 パソコンとにらめっこする春炬燵 はく子 梅宮の翁の句碑にまみえけり わかば あんぐりと口開く古墳梅の丘 うつぎ 飛び石は向う岸まで水温む かれん 2011年03月07日 麗かやからくり人形時奏づ 菜々 抽出しを雛段とせる骨董屋 うつぎ 病む父の悪振るたばこ春愁 なつき 燈籠のここより城下青き踏む 菜々 亀の首勢揃ひして水温む ぽんこ 木の芽吹く枝に御籤を結びけり わかば 春一番下校の子等が駆けていく 花茗荷 淀殿の自刃の地とや落椿 百合 海苔粗朶の方千畳に夕日映ゆ よし子 ふらここの子の背を押せし日を想ふ とろうち 一水の音へ連翹なだれむと きづな 2011年03月06日 校倉の少し傾ぎて草萌ゆる 百姓 ベランダのプランターにも地虫出づ はく子 うららかや大道芸に大笑ひ なつき 春泥を撥ね奔りゆくスポーツカー つくし 出づる日に比良の冠雪煌々と 百合 銀山の廃坑跡に地虫出づ うつぎ 如月の神鼓に昇る灰神楽 菜々 武の神へ磴又磴や冴返る 菜々 な滑りそ春雨の中露天湯へ きづな 茎立の畝の狼藉もぐらもち 雅流 春雨の山門にほ句推敲す よし女 喘ぎゆく峠頭上に初音かな 明日香 紅白の梅をくぐりて宮参り こすもす 春一番路地にバケツのころぶ音 あさこ 街路灯春のしぐれに滲みけり すずかぜ
今週も個性的な作品を中心に抜き取りました。 俳句の場合は、アベレージヒッターではなく、ホームランか三振かというような作風のほうが個性がはぐくまれます。 最近、毎日句会でも新しさを追求された作品が目立ってきて、とてもうれしいです。 実力があってもそれに甘んじて、想像や言葉だけでつくろった作品を詠んで高点を得ても、 結局自分自身に充実感がありません。 たとい表現力は稚拙でも実感のある作品づくりをつづけていれば必ず個性が輝いてきます。 どうか、そのことを覚えて頑張りましょう。
[選評]
あれ??という驚きが面白いですね。子供たちの仕業でしょうか・・・
金釘文字という言葉の措辞がうまいですね。観察の成果ですね。
互選でも高点を得た作品ですが、季語の説明はしないで実感を捉えていると思います。
雛を大事にしている人の優しい気持ちが伝わってきますね。
流し雛の句は類想句が生まれがちですが、園児らに焦点を持っていったことで新しさが出ました。
無限大という堅苦しい措辞をうまく配して雄大さが出ましたね。
着眼点がよいと想います。句意にもっともふさわしい季語を選ぶということを学びましょう。
正直に書いているんですが・・・俳諧的なユーモアが隠れた作品ですね。この作品も季語選びが命です。
フランスパンが面白いです。個性的だと想いませんか。まず類想はないでしょうね。
垣根から道路へはみ出した芽吹き枝を誰かが折って盗んだのでしょうか。小説のような雰囲気がありますね。
里山の風景でしょうか。面白い発見ですね。
[みのる選]
2011年03月05日 春眠し胃カメラ麻酔まだ覚めず せいじ 老いてなお夢追ふ余生しゃぼん玉 治男 啓蟄のデパ地下に人あふれけり 満天 落椿雨に打たれて艶ませる すずかぜ 石仏の頭撫でもし青き踏む つくし 久闊の宴は佳境春の宵 せいじ 笊へ摘む蓬にのこる日の匂ひ 雅流 盗人は誰仏壇の桜餅 花茗荷 セコイヤのレースごとき芽吹きかな 菜々 ブランコに靴飛ばしあふ兄妹 うつぎ 鴨川のきらめきに映ゆ糸柳 はく子 梅東風に安産祈願の鐘を衝く 菜々 霞立ちのぼる山容神々し 明日香 読みがたき金釘文字や苗木売る なつき いと迅き魚影は若き鮎の群れ 宏虎 梅の前佇みをれば鳥語洩る 百合 春宵の街けたたまし緊急車 こすもす 2011年03月04日 日矢一閃紅梅の艶増せりけり 明日香 ワイパーの軽くあしらふ春の雪 こすもす 雛飾る商家旧家や町おこし はく子 手のひらに温めてより雛納む かれん 霞より機影現はる滑走路 なつき 菜の花や廃止決まりし路線バス 有香 手の平にころがされ生る桜餅 ともえ 春潮に身を任せゐる舫ひ舟 あさこ 雛の宴手作り寿司に舌鼓 英子 仏頭に小銭積まるる初大師 なつき 門川は雪解の水音城下町 菜々 2011年03月03日 新しき古墳出づとや青き踏む 明日香 園児らの歌に送られ雛の舟 うつぎ 農道の先に富士見ゆ春の空 とろうち ドリーネの奈落へ野火の走りけり よし女 雛らにまぶしき窓の夕日かな つくし 風紋の砂丘を駈ける春一番 花茗荷 たんぽぽにま青き空の無限大 菜々 な踏みそ吾が散歩路の落椿 ひかり 老二人なれど雛の日を祝ふ はく子 2011年03月02日 立ち並ぶ武人の埴輪春愁ふ 有香 蕗の薹ひとつ散歩のポケットに うつぎ 大いなる夢を語りて卒業す よし女 春の灯を連ね島影昏れなんと わかば 囀や露座の観音おほどかに きづな チューリップ親指姫の蘂ふたつ せいじ 金縷梅の笑みを湛へし万朶かな うつぎ 亡き母の俤に似し古雛 ぽんこ 看板の墨痕太く蓬餅 宏虎 黒ぼこを持ち上げゐるは貝母の芽 あさこ 農小屋の逢瀬の声や恋の猫 とろうち うららかやローカル線の扉は手動 きづな 末黒野はまだ火の匂ひ今朝の雨 よし女 明日香路の土筆を摘みて家苞に 明日香 2011年03月01日 申告の用紙書き終へうそ寒し 明日香 雅号みな個性豊かや梅の園 有香 春時雨フランスパンを胸に抱き つくし 未黒野の岩に炎の煤残る 三刀 練習の校歌洩れくる卒業期 満天 まなじりに時世の名残り古雛 ともえ 圧巻や天段の雛飾られて 明日香 髪長き乙女となりて卒業す はく子 嫗らの句座かしましき桃の酒 うつぎ 晩学に卒業はなし春灯 あさこ 未黒野の岩がこれほどあろうとは よし女 湖覆ふ三角波や比良八荒 宏虎 2011年02月28日 露天湯の吾が肩を撫づ雪解風 うつぎ 法要の済みし墓前に山笑ふ あさこ 紅梅の枝に物干竿掛かる よう子 夜半刻む振り子時計や雛眠る つくし 横町の道小走りに春時雨 菜々 上り簗飛沫隠れに魚のかげ 宏虎 長電話遠き春雷聴きながら 満天 春障子修二会支度の僧の影 雅流 還暦の吾妹にとどく雛あられ せいじ 数独のなかなか解けず目借時 はく子 雪残る広き駐車の一隅に こすもす 末黒野の真っ只中に身を置きぬ 三刀 山裾に煙幕を張る雪解靄 花茗荷 塔頭の残る寒さの写経かな ぽんこ 恋猫の通い路ならむ垣の穴 よし子 2011年02月27日 野遊びのポニーテールの子の弾む つくし 吾の机辺さながら獺の祭りかな 百姓 春眠し舟漕ぎそめし子守役 有香 走り根をしとねとしたる落椿 よう子 芽吹きの枝うち裂く汝れは何者ぞ ぽんこ 焼かれたる土手黒々と起立せり 英子 昇龍に似たる雲居や春うらら こすもす 春光をはじきて鴨の羽ばたきす とろうち