みのる選:2011年3月度

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2011年3月29日

3月20日~26日

毎日句会みのる選は、いつも二回見直して決定していますが、今回は四度見直しました。 とても残念なことですが、吟行句ではない心象句、理屈の句が目立ちます。そうした作品の多くは季感が動いて作品として選べないのです。

毎日欠かさず投句を続けることは苦しいことですが、苦しさのあまり妥協した句作りを続けているとかえって悪い癖がついて吟行で句が詠めなくなります。 毎日句会は、「俳句で遊ぶゲームセンター」ではありません。少し厳しい表現かもしれませんがどうかお許しください。 どうぞ基本は吟行という精神を心がけてください。日ごと吟行して努力を重ね、着実に上達しておられる方も少なくありません。選句しておられる皆さんにもそれはおわかりだと思います。それぞれいろいろな生活事情があるので毎日吟行に出かけるのは到底無理・・という方もおられるでしょうね。吟行でなくても生活身辺でも句を詠むこともできます。 大切なことは、頭で考えるのではなく、必ず心を動かして句作りをすると言うことですね。

みのる選

2011年03月26日
花烏賊の風に干上がる漁師町    よし女
身の丈の水車回して苗代田     なつき
芽柳の土手尻振って競歩人     うつぎ
麦青む明日香の風に波たちて    明日香
みほとけのたなごころなる落椿   菜々
清浄の水のた走る山葵沢      宏虎
鯉と鴨餌を取り合ふ修羅場かな   なつき
春落葉五百羅漢の寧かれと     はく子
2011年03月25日
草萌ゆる明智贔屓の里訪へば    うつぎ
東風の藪隅に小さき十字墓     満天
うち仰ぐ丹塗りの社殿風光る    ひかり
少将の通ひしといふ路おぼろ    菜々
2011年03月24日
新しきミシン好調春うらら     はく子
囀りや踏むゆく雨後の石畳     とろうち
一古墳要としたる花菜畑      宏虎
水底の影はめだかの学校か     ぽんこ
2011年03月23日
一山路椿浄土といひつべし     三刀
鵯どちの囃し立てをる椿谷     よし女
白毫の暗きに光り堂冷ゆる     うつぎ
一と所絨緞となる落椿       よし女
2011年03月22日
ほつほつと干潟に残る漁師舟    ともえ
尼の寺よりいかなごを炊く匂ひ   よし子
春風の川面に揺るるなまこ壁    うつぎ
2011年03月21日
放生の池へと挿頭す梅紅し     菜々
水脈のごといかなご船に蹤くかもめ うつぎ
春光の縮緬波を船が往く      うつぎ
先生の語尾震へをる卒業日     とろうち
延命水一口ふふみ老の春      よし女
2011年03月20日
チャリティーの大道芸や花万朶   せいじ
涅槃図の咫尺に屈む吟行子     菜々

2011年3月22日

3月13日~19日

教会関係の奉仕が続いたのと持病の腰痛が出て、みのる選が遅れてしまいました。 おゆるしください。

大震災のショックがあまりに大きかったせいでしょうか、皆さんの作句意欲が低下しているようです。 この現状下では、ゆっくりと心を遊ばせるというのは至難ですから、 私自身も例外ではなく詮無きことですが、被災地の方々のために祈りつつ休まずに作句を続けましょう。

地震の句は想像で作るのではなく、ほんとうに心が動かされた思いや光景を写生します。 やもすると、「地震」という前提で鑑賞しなければ理解できない作品になりがちなので注意しましょう。 「地震」というのと「震災、被災」というのでは意味が違ってきますから、 これらの措辞も正確に使い分けないと意味不明の句になります。

ようやく温かくなってきました。できるだけ野外に出て句を詠むようにお互いにがんばりましょう。

[選評]

  • 校舎背にスクラム卒業写真撮る  なつき

    卒業子たちの希望にあふれた表情が見えるようですね。

  • 春しぐれ路地を駆けゆく下駄の音 菜々

    季語の説明をしないで、その本質がよくにじみ出た佳句ですね。

  • 卒業子袴の裾にブーツ見ゆ    明日香

    見慣れてしまうと違和感もなく、一つのファッションになりました。

みのる選

2011年03月19日
花菜畑埋もれては見ゆ少女かな  ともえ
紺碧の水面を渡る春の蝶     三刀
校舎背にスクラム卒業写真撮る  なつき
2011年03月18日
観梅へをみならのバス喧し    雅流
前列に赤札並ぶ植木市      つくし
被災地の瓦礫を覆ふ春の雪    よし子
被災地を想へば春の月滲む    菜々
置き薬使ふことなく彼岸入り   よう子
2011年03月17日
霊水を掬ふ柄杓に風光る     満天
岩穴の仏を洗ふ春の潮      なつき
清水の舞台はなやぐ春の雪    菜々
法皇のご廟の御前落椿      うつぎ
春しぐれ路地を駆けゆく下駄の音 菜々
2011年03月16日
裏山の禽獣かこち春田打つ    雅流
涙眼で見つめている子流し雛   治男
一面の花菜明りに道の駅     三刀
盆点ての一服外は春の雪     こすもす
卒業子袴の裾にブーツ見ゆ    明日香
募金箱へ一灯ともし卒業す    よし女
春の園時報奏でるハンドベル   なつき
2011年03月15日
せせらぎに鈴振るごとく花あしび 菜々
耕しの妻に鍬の柄長かりし    雅流
街ゆくはヅカガールらし春帽子  うつぎ
草萌ゆる聖ザビエルの布教井戸  よし女
2011年03月14日
ガス灯のともる街路や春の宵   わかば
満開の椿を揺らすは憎き鵯    満天
春光や棚田の畝の潦       明日香
ホワイトデー即興義援コンサート なつき
2011年03月13日
観梅の手作り弁当みせあひて   雅流
被災地へこの春日和届けかし   明日香
走り根の磴のぼりゆく彼岸寺   よし女

2011年3月22日

3月6日~12日

[選評]

  • 病名を知らず逝かれし夜寒かな   雅流

    癌告知でしょうか、わびしい気持ちのなかに安堵もあります。

  • 地震禍に灯り無き街冴え返る    とろうち

    すざましい地震禍の惨状は身を覆いたくなりますね。

  • 菜の花や沖の巨船の航遅々と    うつぎ

    洋々と広がる沖の景色と作者の立ち位置ととが上手に立体表現できてた佳句ですね。 海の青さと菜の花の黄との色の対比も見えてきます。

  • 道普請穴の中より荒ぶ声      つくし

    作者独特のとらえ方でいつも感心させられます。「啓蟄」の雰囲気もあって滑稽感があります。

[みのる選]

2011年03月12日
参道の老舗名代の草の餅      雅流
春寒し集へば地震のことばかり   満天
春寒や祈るほかなし大震災     三刀
黙祷に始まるコーラス春の冷    有香
被災地の衝撃映像春憂ふ      こすもす
病名を知らず逝かれし夜寒かな   雅流
湯に通す若布一変さみどりに    満天
地震禍に灯り無き街冴え返る    とろうち
2011年03月11日
パンジーが描く国体マスコット   よし女
尻並べ蛸壺乾く波止日永      菜々
囀や寺の広縁独り占め       わかば
埋め戻す発掘遺跡草青む      なつき
被災地の安否こもごも余寒かな   ぽんこ
2011年03月10日
うららかや軸足変ふるフラミンゴ  宏虎
千度石百度石へと春の雨      小袖
咲き満つる梅天蓋に蜂巣箱     うつぎ
被災地へ安否訪ひゆく余寒かな   なつき
煙突の煙直立春うらら       よし子
木漏れ日の磴に小紋の落椿     わかば
歴代の藩主の墓所や名草の芽    菜々
洞ばかりなる老梅の盛りかな    とろうち
菜の花や沖の巨船の航遅々と    うつぎ
手品めく和布蕪は青く豹変す    せいじ
相輪に引っ掛かりたる春の雲    よし女
東風の灘一望したる梅の丘     雅流
のどけしや時報のチャイム童歌   花茗荷
探梅や雅号の名札合点し      あさこ
2011年03月09日
予後いまだ食欲なしと春憂ふ    はく子
道普請穴の中より荒ぶ声      つくし
春の雪透かして余呉の湖遥か    わかば
雨意知らすごと沈丁の濃く匂ふ   満天
堤防に一声のこし雉翔てり     英子
だみ声の猫が媚びくる園うらら   ひかり
バス停は菜の花畑の黄の中に    よし子
浦里の田の一枚は花菜畑      雅流
長閑しやリボンつけたる介護犬   せいじ
禅寺の龍の目にある余寒かな    花茗荷
春疾風テニスボールはあらぬへに  ぽんこ
2011年03月08日
春隣栞をはさむ時刻表       三刀
春うらら湖面を走る光あり     花茗荷
脱稿の目を芽柳に移しけり     菜々
荒海に似て大琵琶の春嵐      わかば
老どちらみんな笑顔や春ショール  英子
パソコンとにらめっこする春炬燵  はく子
梅宮の翁の句碑にまみえけり    わかば
あんぐりと口開く古墳梅の丘    うつぎ
飛び石は向う岸まで水温む     かれん
2011年03月07日
麗かやからくり人形時奏づ     菜々
抽出しを雛段とせる骨董屋     うつぎ
病む父の悪振るたばこ春愁     なつき
燈籠のここより城下青き踏む    菜々
亀の首勢揃ひして水温む      ぽんこ
木の芽吹く枝に御籤を結びけり   わかば
春一番下校の子等が駆けていく   花茗荷
淀殿の自刃の地とや落椿      百合
海苔粗朶の方千畳に夕日映ゆ    よし子
ふらここの子の背を押せし日を想ふ とろうち
一水の音へ連翹なだれむと     きづな
2011年03月06日
校倉の少し傾ぎて草萌ゆる     百姓
ベランダのプランターにも地虫出づ はく子
うららかや大道芸に大笑ひ     なつき
春泥を撥ね奔りゆくスポーツカー  つくし
出づる日に比良の冠雪煌々と    百合
銀山の廃坑跡に地虫出づ      うつぎ
如月の神鼓に昇る灰神楽      菜々
武の神へ磴又磴や冴返る      菜々
な滑りそ春雨の中露天湯へ     きづな
茎立の畝の狼藉もぐらもち     雅流
春雨の山門にほ句推敲す      よし女
喘ぎゆく峠頭上に初音かな     明日香
紅白の梅をくぐりて宮参り     こすもす
春一番路地にバケツのころぶ音   あさこ
街路灯春のしぐれに滲みけり    すずかぜ

2011年3月7日

2月27日~3月5日

今週も個性的な作品を中心に抜き取りました。 俳句の場合は、アベレージヒッターではなく、ホームランか三振かというような作風のほうが個性がはぐくまれます。 最近、毎日句会でも新しさを追求された作品が目立ってきて、とてもうれしいです。 実力があってもそれに甘んじて、想像や言葉だけでつくろった作品を詠んで高点を得ても、 結局自分自身に充実感がありません。 たとい表現力は稚拙でも実感のある作品づくりをつづけていれば必ず個性が輝いてきます。 どうか、そのことを覚えて頑張りましょう。

[選評]

  • 盗人は誰仏壇の桜餅        花茗荷

    あれ??という驚きが面白いですね。子供たちの仕業でしょうか・・・

  • 読みがたき金釘文字や苗木売る   なつき

    金釘文字という言葉の措辞がうまいですね。観察の成果ですね。

  • 菜の花や廃止決まりし路線バス   有香

    互選でも高点を得た作品ですが、季語の説明はしないで実感を捉えていると思います。

  • 手のひらに温めてより雛納む    かれん

    雛を大事にしている人の優しい気持ちが伝わってきますね。

  • 園児らの歌に送られ雛の舟     うつぎ

    流し雛の句は類想句が生まれがちですが、園児らに焦点を持っていったことで新しさが出ました。

  • たんぽぽにま青き空の無限大    菜々

    無限大という堅苦しい措辞をうまく配して雄大さが出ましたね。

  • うららかやローカル線の扉は手動  きづな

    着眼点がよいと想います。句意にもっともふさわしい季語を選ぶということを学びましょう。

  • 申告の用紙書き終へうそ寒し    明日香

    正直に書いているんですが・・・俳諧的なユーモアが隠れた作品ですね。この作品も季語選びが命です。

  • 春時雨フランスパンを胸に抱き   つくし

    フランスパンが面白いです。個性的だと想いませんか。まず類想はないでしょうね。

  • 芽吹きの枝うち裂く汝れは何者ぞ  ぽんこ

    垣根から道路へはみ出した芽吹き枝を誰かが折って盗んだのでしょうか。小説のような雰囲気がありますね。

  • 紅梅の枝に物干竿掛かる      よう子

    里山の風景でしょうか。面白い発見ですね。

[みのる選]

2011年03月05日
春眠し胃カメラ麻酔まだ覚めず   せいじ
老いてなお夢追ふ余生しゃぼん玉  治男
啓蟄のデパ地下に人あふれけり   満天
落椿雨に打たれて艶ませる     すずかぜ
石仏の頭撫でもし青き踏む     つくし
久闊の宴は佳境春の宵       せいじ
笊へ摘む蓬にのこる日の匂ひ    雅流
盗人は誰仏壇の桜餅        花茗荷
セコイヤのレースごとき芽吹きかな 菜々
ブランコに靴飛ばしあふ兄妹    うつぎ
鴨川のきらめきに映ゆ糸柳     はく子
梅東風に安産祈願の鐘を衝く    菜々
霞立ちのぼる山容神々し      明日香
読みがたき金釘文字や苗木売る   なつき
いと迅き魚影は若き鮎の群れ    宏虎
梅の前佇みをれば鳥語洩る     百合
春宵の街けたたまし緊急車     こすもす
2011年03月04日
日矢一閃紅梅の艶増せりけり    明日香
ワイパーの軽くあしらふ春の雪   こすもす
雛飾る商家旧家や町おこし     はく子
手のひらに温めてより雛納む    かれん
霞より機影現はる滑走路      なつき
菜の花や廃止決まりし路線バス   有香
手の平にころがされ生る桜餅    ともえ
春潮に身を任せゐる舫ひ舟     あさこ
雛の宴手作り寿司に舌鼓      英子
仏頭に小銭積まるる初大師     なつき
門川は雪解の水音城下町      菜々
2011年03月03日
新しき古墳出づとや青き踏む    明日香
園児らの歌に送られ雛の舟     うつぎ
農道の先に富士見ゆ春の空     とろうち
ドリーネの奈落へ野火の走りけり  よし女
雛らにまぶしき窓の夕日かな    つくし
風紋の砂丘を駈ける春一番     花茗荷
たんぽぽにま青き空の無限大    菜々
な踏みそ吾が散歩路の落椿     ひかり
老二人なれど雛の日を祝ふ     はく子
2011年03月02日
立ち並ぶ武人の埴輪春愁ふ     有香
蕗の薹ひとつ散歩のポケットに   うつぎ
大いなる夢を語りて卒業す     よし女
春の灯を連ね島影昏れなんと    わかば
囀や露座の観音おほどかに     きづな
チューリップ親指姫の蘂ふたつ   せいじ
金縷梅の笑みを湛へし万朶かな   うつぎ
亡き母の俤に似し古雛       ぽんこ
看板の墨痕太く蓬餅        宏虎
黒ぼこを持ち上げゐるは貝母の芽  あさこ
農小屋の逢瀬の声や恋の猫     とろうち
うららかやローカル線の扉は手動  きづな
末黒野はまだ火の匂ひ今朝の雨   よし女
明日香路の土筆を摘みて家苞に   明日香
2011年03月01日
申告の用紙書き終へうそ寒し    明日香
雅号みな個性豊かや梅の園     有香
春時雨フランスパンを胸に抱き   つくし
未黒野の岩に炎の煤残る      三刀
練習の校歌洩れくる卒業期     満天
まなじりに時世の名残り古雛    ともえ
圧巻や天段の雛飾られて      明日香
髪長き乙女となりて卒業す     はく子
嫗らの句座かしましき桃の酒    うつぎ
晩学に卒業はなし春灯       あさこ
未黒野の岩がこれほどあろうとは  よし女
湖覆ふ三角波や比良八荒      宏虎
2011年02月28日
露天湯の吾が肩を撫づ雪解風    うつぎ
法要の済みし墓前に山笑ふ     あさこ
紅梅の枝に物干竿掛かる      よう子
夜半刻む振り子時計や雛眠る    つくし
横町の道小走りに春時雨      菜々
上り簗飛沫隠れに魚のかげ     宏虎
長電話遠き春雷聴きながら     満天
春障子修二会支度の僧の影     雅流
還暦の吾妹にとどく雛あられ    せいじ
数独のなかなか解けず目借時    はく子
雪残る広き駐車の一隅に      こすもす
末黒野の真っ只中に身を置きぬ   三刀
山裾に煙幕を張る雪解靄      花茗荷
塔頭の残る寒さの写経かな     ぽんこ
恋猫の通い路ならむ垣の穴     よし子
2011年02月27日
野遊びのポニーテールの子の弾む  つくし
吾の机辺さながら獺の祭りかな   百姓
春眠し舟漕ぎそめし子守役     有香
走り根をしとねとしたる落椿    よう子
芽吹きの枝うち裂く汝れは何者ぞ  ぽんこ
焼かれたる土手黒々と起立せり   英子
昇龍に似たる雲居や春うらら    こすもす
春光をはじきて鴨の羽ばたきす   とろうち

 

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