みのる選:2022年8月度
2022年8月27日 | |
灘に散る漁船の影や秋夕焼 | 素秀 |
老いてなほ父母恋し虫時雨 | よし子 |
山影へ一の矢二の矢流れ星 | 愛正 |
手覆ひに炎傾く万灯会 | ぽんこ |
朝涼し水路の調べ呂に律に | むべ |
台風の眼なる静寂ただならず | むべ |
蜩の間遠となりし夕まぐれ | 素秀 |
数へもす夫の行年秋曇 | むべ |
茶畑の人に手をふる帰省かな | 更紗 |
病む姉の話相手に盆帰省 | なつき |
幾山河越えきし谷の水澄めり | わかば |
なめらかに進むペン先涼新た | 更紗 |
正論のあとの本音や生身魂 | 宏虎 |
水郷をめぐる小舟や行々子 | よし子 |
とんぼうと共に揺れをり土手の草 | はく子 |
2022年8月20日 | |
秋気満つ渓二タ分けにロープウェイ | 素秀 |
盆波に舳先を浮かす手漕ぎ舟 | 素秀 |
子の逝きて五十年なる墓洗ふ | はく子 |
糠床の馴染みて茄子の紺の艶 | わかば |
セピアなる写し絵の父敗戦日 | ぽんこ |
街灯に負けぬ明るさ盆の月 | こすもす |
暦年の梅酒の並ぶ水屋かな | 愛正 |
赤子抱く如くに店主新豆腐 | かかし |
無縁塚砦のごとく夾竹桃 | ぽんこ |
をちこちに案山子散らば棚田かな | かかし |
語りつきざりし悲劇よ終戦日 | こすもす |
照り返す海に白帆や秋暑し | わかば |
天窓を早足に行く秋の雲 | 素秀 |
2022年8月13日 | |
刃を入るや否や弾ける大西瓜 | わかば |
ドーム映す夜の川面や原爆忌 | むべ |
浮子ひとつ波に浮沈す夏の果 | むべ |
馬の背に見ゆる人影秋初め | わかば |
鞘堂の褪せし鈴の緒夏深し | よう子 |
施設での暮らしにも慣れ夏の逝く | はく子 |
日付書く一升瓶の梅酒かな | 愛正 |
盆踊りペディキュアの下駄軽やかに | はく子 |
呼ばれたる夢の返事す昼寝覚 | なつき |
カリヨンの涼しき音洩る校舎より | むべ |
草いきれ分け入る先の飼畜小屋 | 愛正 |
城跡の崩れし土塁残る虫 | かかし |
2022年8月6日 | |
帰省子の過密予定の三日間 | こすもす |
天窓を突き抜けて洩る蝉時雨 | むべ |
釣り宿の軒網に干す鯖子かな | むべ |
薄めたる黒酢を飲んで暑に耐ふる | なつき |
黒子めく楠の大樹の黒揚羽 | ぽんこ |
滴りのリズムに合はす呼吸かな | 素秀 |
墓守が手遊びに植うミニトマト | なつき |
葉先いまメトロノームや川蜻蛉 | 愛正 |
風蘭の香り待たるる夕べかな | わかば |
秋近し山から通ふ風にきく | よし子 |
写し絵はいつも笑顔や夜の秋 | はく子 |
ラムネ飲む昭和の味の懐かしく | 宏虎 |
踏切の灼けしレールを跨ぎけり | よう子 |
畑のもの黄ばみ初めたる大暑かな | なつき |
カーブする鉄路の先の陽炎ひぬ | よう子 |
朝採れの庭のトマトを供へけり | なつき |
蝉時雨田舎ダイヤのバスを待つ | かかし |
足湯して森林浴や蝉時雨 | かかし |