みのる選:2022年5月度
2022年5月28日 | |
並々と古茶をピカソのマグカップ | なつき |
国境の大河越えゆく揚羽蝶 | 素秀 |
雨意兆す渓の若葉のざわめきて | はく子 |
農家カフェ食後に庭のハンモック | かかし |
無住寺の墓石を縫ひて夏の蝶 | なつき |
沢登り岩肌撫づる谷若葉 | 愛正 |
茅花みな呆けて海へ靡きけり | こすもす |
翼翳す如く若葉や椋大樹 | なつき |
海の橋宙に浮かべて夏霞 | わかば |
亀池へ枝翳しをる花樗 | ぽんこ |
外出より我が家がよろし新茶汲む | たか子 |
母の日の似顔絵の口紅赤し | なつき |
弔いの煙ひとすぢ若葉冷 | むべ |
2022年5月21日 | |
推敲に倦みていつしか三尺寝 | 素秀 |
柿若葉雨の上がりし散歩道 | こすもす |
川下る棹の捌きや新樹光 | かかし |
木漏れ日と鳥語に和む夏館 | たか子 |
鳥語降り注ぎやまずよ夏木立 | よう子 |
夏木立歩みをとめて鳥語聴く | かかし |
苔庭に影打ち重ね若楓 | わかば |
葛餅や宇治十帖の和歌の皿 | なつき |
老いてなほ夢をつながむ更衣 | 宏虎 |
庭にでて月命日の薔薇を剪る | なつき |
噴煙を呑み込まんとす夏の雲 | 愛正 |
亡き夫の郷降りたてば若葉風 | むべ |
神苑の杜明るうす若葉雨 | 愛正 |
新茶いれ昔馴染みの輪の和む | たか子 |
悉くヒマラヤ杉や木下闇 | はく子 |
南禅寺見渡すかぎり青楓 | よう子 |
祠へと続く小道は竹の秋 | わかば |
鳥語降る下闇深く義士の墓 | ぽんこ |
月涼し闇より黒き喪服かな | むべ |
水際に松風通ふ植田かな | 素秀 |
2022年5月14日 | |
鶯の鳴きつぐ道を奥院へ | わかば |
新緑や一直線に御所通り | ぽんこ |
ひらがなのスコアボードやこどもの日 | かかし |
退院の家居安らぐ夏初め | たか子 |
太陽の軌道正しく夏の海 | 宏虎 |
ご開帳合はす手解かぬ媼かな | なつき |
漣の代田にゆがむ山の影 | こすもす |
苑めぐるどの道とるも若葉萌ゆ | はく子 |
行厨は風車の丘の薫風裡 | はく子 |
暮れなずむほどにしるきは鉄線花 | むべ |
配達夫来て子燕のへの字口 | 素秀 |
風薫る野外授業の黄色帽 | 愛正 |
心字池ふちどりて燃ゆ躑躅かな | わかば |
新樹光高層ビルの窓に映ゆ | ぽんこ |
編み込みの子の大人びし新樹影 | 素秀 |
癒えてゆく日にち薬や花は葉に | たか子 |
山藤を揺らし入線一両車 | 愛正 |
ミルトスの花まつ白やみどりの日 | むべ |
石段にジャンケンポンや柿若葉 | よう子 |
2022年5月7日 | |
囀の途切れぬ森のミュージアム | わかば |
水底に命育む蝌蚪の紐 | わかば |
園児らの稚鮎放流村起し | かかし |
新緑へ魚板一打す僧若し | よう子 |
青空へ光返して若楓 | わかば |
屹立すセコイア並木若葉風 | はく子 |
藤棚の下を占領ゲームの子 | たか子 |
クローバー花冠の落とし物 | はく子 |
街路樹の侍者のごとくに芥子の花 | ぽんこ |
まひまひの水輪重ねし心字池 | よう子 |
田水張る目の輝やける老夫婦 | かかし |
蝶ひらひら猫の目線を翻弄す | こすもす |
足生えし蝌蚪二筋の土煙 | なつき |
宮守のごと黒猫や著莪の花 | ぽんこ |
造り滝なるも豪快苑若葉 | はく子 |
水口に泳ぎて傾ぐ余り苗 | 素秀 |
退院日までの日数の穀雨かな | たか子 |
新樹光眩しセコイア並木道 | はく子 |
青蘆の中洲は鳥のサンクチュアリ | むべ |
2022年4月30日 | |
せせらぎの綺羅に紛れて糸蜻蛉 | ぽんこ |
研ぎ師いま軽き音立て青葉影 | なつき |
奏でゐる園の一水蝌蚪の池 | ぽんこ |
画材屋のテント庇に燕来る | むべ |
懸り藤仰ぐ大樹の名を知らず | 愛正 |
小手毬の垣根を揺らしすれ違ふ | よう子 |
病窓に街動き出す音おぼろ | たか子 |
庭石に触れなんとする藤の房 | わかば |
蒲公英のグランド蹴つてキックオフ | こすもす |
針刺されゐること忘れ春眠し | たか子 |
春憂しやナースをオイと呼ぶ輩 | たか子 |
男どち野球論戦躑躅燃ゆ | よう子 |
理髪師の剃刀頬に目借り時 | 素秀 |
囀れるクレッシェンドを繰り返へし | むべ |
繋ぎし手ほどきて蝶に駈け出す子 | なつき |
朧なる世界へ深く麻酔吸ふ | たか子 |
藤の香に酔ひたるごとく虻群るる | はく子 |
五彩なし里の山々笑ひけり | こすもす |
リハビリの歩数を延ばす若葉風 | かかし |
志賀直哉旧居の庭に春惜しむ | 宏虎 |
神名備を統ぶる大樹や懸り藤 | はく子 |
古民家に語り部を聞く春の宵 | むべ |