みのる選:2021年10月度
2021年10月30日 | |
目鼻なき切られ地蔵に虫の声 | なつき |
蔦紅葉港の見える丘の家 | よし子 |
秋うららロバの瞳に我の顔 | はく子 |
百歳の健康自慢とろろ汁 | かかし |
病室で授業受く児ら黄落期 | むべ |
色変へぬ松を侍者とす文殊堂 | 凡士 |
露の世のメール一通なる別れ | わかば |
一片の紅葉を栞るヨブ記かな | むべ |
卒寿てふ特別賞の菊あるじ | かかし |
ゆかしさよ糺の森の薄紅葉 | よし子 |
剥落の激しき仁王そぞろ寒 | 宏虎 |
黒猫に赤のバンダナハロウイン | 素秀 |
こすもすの風ぐずる児の頬撫づる | よう子 |
菊花展奨励賞がひと並び | 素秀 |
鄙の宿柿の彩葉を膳に添へ | はく子 |
子に寄り来るロバの機嫌や秋たかし | はく子 |
句帳手に持っているだけ紅葉狩 | よし子 |
餌台の雀に混じり色鳥来 | 素秀 |
古書の市落葉払へどまた落葉 | よう子 |
2021年10月23日 | |
止まり木の二合に酔うて赤い羽根 | 素秀 |
暮れなずむ嶺に夕づつと匕首の月 | はく子 |
写し絵の夫に好物栗おこわ | むべ |
放水のアーチ高々飛騨の秋 | 凡士 |
行く秋や思ひ人来ぬ同窓会 | なつき |
海の日のつるべ落しや密柑山 | 宏虎 |
穂薄や画架立ち並ぶ運河沿ひ | なつき |
秋潮がテトラポッドの苔撫づる | 更紗 |
秋耕へ覆ひくる影大江山 | 凡士 |
秋潮の引きて磯蟹四散せり | 凡士 |
悠然と輪を描く鳶や秋の峰 | わかば |
秋空へ弦引き絞る斜張橋 | はく子 |
宵闇や墨匂ひたつ写経堂 | 愛正 |
海渡る車窓に瀬戸の島は秋 | 素秀 |
紅葉渓棹一本を操りて | かかし |
鐵工所槌音に伍し鵙高音 | 素秀 |
観覧車いま天辺や秋高し | よう子 |
絵手紙のクレヨン匂ふ秋灯下 | 素秀 |
すがれ虫夕べ鳴きつぐ河川敷 | はく子 |
2021年10月16日 | |
稔り田の広ごる郷にケアホーム | はく子 |
木の実落つ磴に音せる古刹かな | よし子 |
文化財なりし母校や小鳥来る | なつき |
軒下の干柿添へて農家カフェ | かかし |
山襞に隠る棚田や落し水 | 凡士 |
蹲に水輪いくたび銀やんま | 素秀 |
望郷の碑たつ丘の上草紅葉 | よし子 |
柿簾夕日に映える里の道 | かかし |
残る蚊の幽けき翅音払ひけり | 素秀 |
古城趾の大木の松色変へず | こすもす |
石段を五線譜とびに木の実落つ | よう子 |
薄紅葉谷の吊り橋揺れやまず | よし子 |
句碑歌碑をめぐる寺苑の萩の中 | はく子 |
紫蘇の実をしごく両手の香りかな | よう子 |
身に入むや亡夫宛に届く文 | むべ |
行先は足の向くまま秋高し | わかば |
能勢の里烟らせ栗の毬を焼く | よう子 |
2021年10月9日 | |
減便のローカル電車秋惜しむ | こすもす |
スーパーを出るに出られぬ大夕立 | なつき |
蟷螂のダンスとも見ゆ威嚇かな | うつぎ |
くるぶしの露を舐めつつ猫帰る | 素秀 |
拾ふなら菩提樹の実の百八つ | うつぎ |
鎮守社へ辿る畦道豊の秋 | はく子 |
秋冷や修道院へつづら折り | むべ |
大栗の飛び出しさうな毬の中 | よう子 |
野路行けば草の実草の花楽し | はく子 |
島へ伸ぶ橋まつすぐに秋澄める | よし子 |
鯊二尾を釣りて大漁気分かな | なつき |
瞬きも似たる日焼けの双子かな | なつき |
分校の下校の鐘や秋の暮 | よし子 |
小鳥来るよきおとずれと覚えけり | わかば |
稲の香に混じる土の香刈田風 | うつぎ |
秋蝶や耶蘇禁制の高札場 | うつぎ |
2021年10月2日 | |
山映す尾瀬の池塘や秋澄める | 愛正 |
水引が明るうしたる池畔かな | むべ |
盃にあふれさせたる今日の月 | 素秀 |
曼殊沙華一本群れを離れ咲く | よう子 |
一面の雲を眼下にケルン積む | 素秀 |
柔らかき狗尾草の尾に遊ぶ | よう子 |
県境の霧の峠を越ゆ帰郷 | 素秀 |
考へる蟷螂ならむ首傾ぐ | うつぎ |
星月夜親子五人で寝るテント | なつき |
隠れん坊鬼が迷子の芒原 | かかし |
秋草を車窓に愛でつドライブす | わかば |
古都の旅湯あがりに見ゆ十三夜 | こすもす |
銀漢を掴めさうなる山ホテル | 凡士 |
山の端をひよいと離れて小望月 | はく子 |
肩越しに本覗きたる赤蜻蛉 | むべ |
誰彼と鳴子を引きて郷の道 | うつぎ |
信濃路の一茶街道走り蕎麦 | かかし |
野仏のほとりを埋む曼珠沙華 | 宏虎 |