みのる選:2021年5月度
2021年5月29日 | |
案内はおはぐろ蜻蛉隠れ沼 | むべ |
水満ちて蛙鳴き交ふ千枚田 | かかし |
おしやれより大き鍔選る夏帽子 | なつき |
子に摘ます爺丹精の露地苺 | うつぎ |
苔むせる合掌屋根や柿若葉 | 凡士 |
明易し波音やまぬ旅枕 | よし子 |
山路いま高鳴る梅雨の瀬音かな | こすもす |
大麦の藁がストロー園児たち | かかし |
唐破風の湯屋に藍染め夏暖簾 | 凡士 |
巫女衣装脱いで祭の子となれり | なつき |
苔むせる墓石に松の落葉嵩 | 愛正 |
一斉の茶摘みに村はがらんどう | うつぎ |
鳥居越し観音崎の大夕焼 | 素秀 |
若楓透けて清しき朝日さす | わかば |
終着駅まるごと囲む麦の秋 | 宏虎 |
つぴつぴと雲間より洩る四十雀 | むべ |
学舎は煉瓦造りや楠若葉 | 凡士 |
梅雨晴間なれば槌音良く響く | よう子 |
香水のほのかや吾娘の親離れ | なつき |
大淀の広しと揚がる雲雀かな | はく子 |
2021年5月22日 | |
内海を隔つ島影夏霞 | わかば |
写経せん窓全開に若葉風 | かかし |
烏賊釣火へつほつ壱岐の沖あたり | 凡士 |
燈台へ千畳敷の卯浪立つ | 凡士 |
水口に伸びて傾く余り苗 | 素秀 |
落とし文拾ふ老にも恋心 | はく子 |
万緑に巡礼鈴を響かせて | よう子 |
山湖まで喘ぐ岨道余花に会ふ | わかば |
みずすまし流されて居て流されず | 宏虎 |
石像のみ衣となる歯朶若葉 | 愛正 |
花うつぎ山路の雨に零れたる | 素秀 |
キャンパスに女生徒のこゑ蔦若葉 | 更紗 |
山々の彩り深む緑雨かな | わかば |
青蔦が蔵の白壁虜とす | むべ |
むさぼりし昼寝の後の濃珈琲 | うつぎ |
豌豆剥き手伝ふ夫と仲直り | よう子 |
ネモフィラの千畳敷や聖五月 | 更紗 |
芥子の花会釈のやうに風に揺れ | よし子 |
集団登校急かせる茅花流しかな | こすもす |
潮満ちて蟹のさ走る通し土間 | 素秀 |
万緑の底ひの古道鎌倉へ | なつき |
2021年5月15日 | |
新緑を水面に揺らす舟下り | 素秀 |
南風寄せて河口にたちし波頭 | 素秀 |
干し鰈吊るす洗濯鋏みかな | うつぎ |
国旗社旗ならびて掲ぐ鯉幟 | 凡士 |
母の日やタンスに残る肩揉み券 | 小袖 |
万太郎忌電波時計の狂ひなし | かかし |
花嫁のヴェールの揺るる若葉風 | よう子 |
茶摘とて媼もっとも若やげる | うつぎ |
コロナマスク下げて新茶の香を利けり | うつぎ |
卯波蹴り浚渫船の淀下る | はく子 |
夏霞相呼応せる沖汽笛 | わかば |
対岸の津の嶺の模こと夏霞 | はく子 |
窓べりに物見の猫の昼寝かな | こすもす |
あまどころ辞儀す古道の道標 | なつき |
茶摘女の白々と指長きかな | よう子 |
2021年5月8日 | |
春惜しむバス降りてより浜の路 | 凡士 |
夏めくや松浜抜けて海の風 | わかば |
潮の香を乗せて五月の来たりけり | 更紗 |
里若葉鎮守の神馬散歩中 | よう子 |
リハビリの歩け歩けと若葉風 | かかし |
端艇漕ぐ二十四の腕風青し | 凡士 |
千手なす寺宝の松の緑立つ | うつぎ |
新緑に包まれてをる大伽藍 | わかば |
連弾の駅前ピアノ春の宵 | うつぎ |
大木の姿を借りて懸かり藤 | こすもす |
観光船を鷭一列に横切りぬ | なつき |
郭公の声の谺す石切場 | 素秀 |
吊り橋の一歩一歩に谿若葉 | はく子 |
あご飛んで海の青さよどこまでも | よし子 |
少年に帽子拾はれ青嵐 | むべ |
豌豆の花蝶のごと風に舞ふ | かかし |
しみじみと卒寿噛み締め春惜しむ | 宏虎 |
激つ瀬に水鞠飛びて夏来る | 愛正 |
祝日や春闌の花時計 | 更紗 |
2021年5月1日 | |
未だ見えぬ瞳きよろきよろ稚日永 | はく子 |
藤揺れて飛蚊の止まぬ目玉なり | なつき |
免許返納空き家の車庫に燕来る | よう子 |
春耕の堆肥に隣る鐵工所 | 素秀 |
さざ波が寄せ風が来て杜若 | うつぎ |
青白く真夜の浜染む蛍烏賊 | 凡士 |
のどけしや里曲にコイン精米機 | よう子 |
青空へ透ける大樹の樟若葉 | わかば |
さへづりや茶室に杢の香の満ちて | なつき |
豪快に尿する馬や春の昼 | よう子 |
若葉風葵紋彫る歩道橋 | なつき |
八重桜鏡光りす墓石かな | 素秀 |
菜園の支柱に小さき鯉幟 | うつぎ |
春灯下火花の走る造船所 | 素秀 |
鐘霞む村を眼下に峠道 | 愛正 |
尺取りを手に踊らせる幼かな | こすもす |
白きもの白く洗ひて夏兆す | 更紗 |
田水張り終えて安堵の笑顔かな | かかし |
御神馬のやんちや盛りや春の泥 | うつぎ |
孔雀どちそれぞれ選ぶ新樹蔭 | わかば |
桜蘂降り敷く寺領鐘一打 | かかし |
葦の芽の伸びてさ揺らぎそめにけり | はく子 |
春時雨百万石の城下町 | 宏虎 |