冬深む日当たり求め猫そろり | 愛正 |
寒緋桜の写真添えたるメールかな | こすもす |
冬凪の舟屋に波のひと飛沫 | 素秀 |
蛸壺に水仙活けて海人の家 | うつぎ |
冬の蠅朝刊に乗り動かざる | うつぎ |
冬服のポッケトにのこる覚書 | よし子 |
冬ざれの山裾赤き一両車 | よう子 |
雪時雨点滅如き里灯り | 愛正 |
朝市に蝋梅出たる日曜日 | うつぎ |
卓球のやうなディベート日脚伸ぶ | 凡士 |
白樺の肌より白し霧氷林 | 愛正 |
雪女化粧も無しで澄まし居り | 宏虎 |
高層のビルの底方の出初式 | 素秀 |
蔀戸を上げて冬日の堂内へ | はく子 |
松原を抜ける海辺の四温晴 | わかば |
寒鴉右派左派別れ電線に | 宏虎 |
ユリカモメとぶ茅渟の海初景色 | 宏虎 |
見上げれば空いっぱいの冬樹の芽 | よし子 |
トタン屋根叩くアラレに目覚めけり | こすもす |
笹鳴きに出勤の顔ほころびぬ | むべ |
凍て星を夫待つ駅の連れとして | よう子 |
穴太積む里坊の道梅ほのか | 凡士 |
退院の干されし蒲団大の字に | かかし |
三輪車ひとつ置きざり冬の園 | むべ |
さみどりを魁として蕗の薹 | わかば |
探梅のいつしかバードウォッチング | 凡士 |
ビオトープ親子連れにて池普請 | かかし |
霊場のベンチのマット毛糸編む | なつき |
選びしは無糖のど飴初句会 | こすもす |
水涸れて蹲に日の吹きだまる | むべ |
郷町の杉玉大小風光る | 小袖 |
待春の城址に風の抜けにけり | 小袖 |
薄氷の波打つ池や撓むなり | わかば |
印結ぶ堂の仏の御手冴ゆる | よう子 |
人違ひなりしマスクの目元似て | なつき |
はぐれ鴨一声のもと飛び立てり | わかば |
ささやかに花柊のひなた道 | 素秀 |
冬日受けもろ手を挙げん女神像 | はく子 |
一輪の水仙真夜も香りけり | よし子 |
冬日燦眼差しやさし観音へ | はく子 |
吟行バッグ友とお揃ひ春を待つ | うつぎ |
左義長や半紙書きたる火の泳ぐ | 宏虎 |
買い替えし充電コード冬夕焼 | こすもす |
寒中の禊の海へ白越中 | 素秀 |
川床の石は淡黒寒の鯉 | 愛正 |
渇筆も余白も書てふ書初展 | かかし |
日の当たるなぞえに溢る水仙花 | わかば |
切り株に名だけ残して大冬木 | よし子 |
本読みのうたた寝したる春隣 | むべ |
水仙の丘の彼方に瀬戸潤む | 凡士 |
大寒の家赤赤と救急車 | うつぎ |
旋回す空は早春パラグライダー | 素秀 |
悴みて掴みにくしや釘袋 | 愛正 |
漂流物は中洲のオブジェ冬ざるる | なつき |
一村の雪の名残やいよよ過疎 | よし子 |
2022年1月29日 | |
初ゴルフ体感は氷点下なり | なつき |
初場所のまわし富士鷹茄子の三つ揃い | こすもす |
廃校の碑の陰長し冬深む | 愛正 |
安けしや犬と眠れる冬の夜 | むべ |
宝塔の屋根に集へり寒雀 | なつき |
冬深し漬物石の数減らす | 愛正 |
舞扇ひらりと開く室の梅 | よし子 |
買初の褪せし表紙の山頭火 | 凡士 |
冬の日の光芒ひろぐ凪の海 | わかば |
初弘法猫背の店主威勢よし | よう子 |
寒月や猫密会はガラス越し | 素秀 |
お互いに声かけそびれマスク顔 | 凡士 |
寺の屋根切絵にしたる寒茜 | うつぎ |
しずり雪知らぬ存ぜぬ池の鷺 | よう子 |
大師像供花のバケツの厚氷 | よう子 |
指先で山崩し選る初みくじ | なつき |
コンサート果つ式台に散る室の花 | よし子 |
北風に押されてかへる家路かな | むべ |
朝日出づ霜にダイヤを散りばめて | うつぎ |
不二の水賜ばる一杓宮四温 | はく子 |
悴める手に二つ目の蜜柑かな | 愛正 |
院展へ寒の水磨る水墨画 | 凡士 |
雪しまく五重塔のシルエット | よう子 |
船影の多き海峡冬の浪 | わかば |
独り寝の夢から覚むる霜夜かな | むべ |
鷽替えて替えて一打の最後鷽 | よし子 |
着膨れて通院の日や重き足 | わかば |
寒禽の声に磨かれ力石 | うつぎ |
書き込みの増ゆる俳句書冬籠 | 凡士 |
淡墨の寒鯉鈍し川の底 | 愛正 |
風花や高灯籠の苔むして | はく子 |
大寒や厚手下着を買い足せり | なつき |
薔薇の芽も若枝も赤みなぎりぬ | むべ |
寒卵こつんと朝のぶっかけ御飯 | よし子 |
予約席に届く琴の音冬の月 | こすもす |
霰打つ打たるる儘に万歩計 | うつぎ |
縮緬の機音冴ゆる与謝郡 | 凡士 |
一瞬の暗き雲行き風花す | わかば |
冬凪の沖は補陀落潮の道 | 素秀 |
詣で道に石の欄干川涸るる | はく子 |
宮四温三角四角の力石 | はく子 |
北風通る橋の影なる河川敷 | 素秀 |
五重塔大き雫を潜り入る | よう子 |
さざんかの花びら載せて力石 | はく子 |
雪時雨人影みえぬ直売所 | 愛正 |
千両や門に実こぼす廃病院 | 素秀 |
底冷えす八十八の石踏みて | なつき |
湯冷めして終に出てこぬ探しもの | うつぎ |
風花が向かってくるよ一両車 | よし子 |
遠ざかる湯屋の瀬音や寒の月 | むべ |
タイヤ跡二本くっきり雪の朝 | こすもす |
浮き玉の一つに一羽冬鴎 | 素秀 |
霜の朝畑真白に日の光 | わかば |
2022年1月22日 | |
雪見障子作務衣行き交ふ広庇 | 愛正 |
参拝記帳の列の長さや風花す | こすもす |
普段着の昔遊びに小正月 | 小袖 |
夕されば色濃くなりぬ冬の川 | はく子 |
暖房の部屋に読経の子守唄 | なつき |
初景色吾の住む町俯瞰して | 宏虎 |
風唸る納骨の手の悴めり | なつき |
体育館凍つに健康体操す | はく子 |
いざなふる秘境の湯宿炬燵船 | 凡士 |
炉語りも佳境に遠野物語 | 凡士 |
寒風にたてがみ分ける御崎馬 | 素秀 |
故郷と呼びたき伊豆やあをさ汁 | むべ |
薬袋のいつしか減りぬ福寿草 | よう子 |
花丸も添削の書も吉書揚 | かかし |
温そうな夕日に染まる冬の川 | はく子 |
臘梅の香り仄かに部屋に満つ | わかば |
洞に在す無縁仏に初日影 | うつぎ |
駄菓子屋にバス待つ子らを冬日燦 | 素秀 |
嫁が君家族写真の一人増え | よう子 |
三十分遅れのバス待つ水仙郷 | よし子 |
本堂の影を正せる寒の月 | よし子 |
新しき眼鏡の向かう寒茜 | むべ |
リハビリの杖の遠出や探梅行 | 素秀 |
初松籟香煙絶えぬ常香炉 | 愛正 |
バター焼き帆立に寒の夕餉かな | 小袖 |
茶の席へふふみ続けと寒牡丹 | わかば |
中尊石陰影長き初日かな | 愛正 |
仏壇にお雑煮供へお経せり | 宏虎 |
積雪の法面滑る子供たち | かかし |
恙なく与へる笑みや去年今年 | 宏虎 |
広縁の僧侶の影や白障子 | 愛正 |
サラダにも数の子入っていたりけり | こすもす |
雪掻きのされぬ一棟解体待つ | むべ |
寒風や検問の灯の弧を描く | うつぎ |
暮六つや風花白く舞ひにけり | よし子 |
見馴れをる里山なれど雪景色 | かかし |
風垣や砂に埋もれて迷路なる | 素秀 |
卒寿来て正座の出来ぬ去年今年 | 宏虎 |
女正月厨の夫を垣間見る | かかし |
福寿草鉢の白砂の零れをり | よう子 |
風花や神馬はいつも伏し目がち | よし子 |
鱈汁や海鳴り冥き親不知 | 凡士 |
水鳥の着水滑り込む如し | こすもす |
しんしんと流るる夕べ冬の川 | はく子 |
ハイヒールあふれる玄関女正月 | よし子 |
小正月造花の百合の白さかな | なつき |
寒林に出会ふ郵便配達夫 | うつぎ |
大粒の苺供へり父忌日 | なつき |
初売や抽選会の外れなし | かかし |
懐手解かず聴きゐし訃報かな | うつぎ |
空つ風都庁展望室を打ち | むべ |
見送らる寒夕焼けの残る町 | 小袖 |
寒林や鳥語ゆたかに宮の森 | わかば |
板を割る小さな拳寒稽古 | 小袖 |
深々と朝湯に浸かる寒九郎 | はく子 |
寒牡丹小間の暗きへ緋を点す | わかば |
襟を抜く和装の加減初稽古 | 小袖 |
降る雪や丹後に古し天主堂 | 凡士 |
福詣坂ゆらゆらと下る吾子 | 素秀 |
投げ入れし庭の千両灰かぶり | むべ |
大鳥居くぐりてよりの淑気かな | こすもす |
三寒や打ち寄す怒濤岬端 | わかば |
鰭酒の熱きを吹きて香に酔ひぬ | よう子 |
書初に「きぼう」「希望」や姉妹笑む | よう子 |
骨壷を抱きて寒さの募りけり | なつき |
三振の戒しむ言葉去年今年 | 宏虎 |
寒月や幹にくつきり枝の影 | うつぎ |
竹割るる音谺せり夜の雪 | 凡士 |
老松や広縁に濃き初日陰 | 愛正 |
2022年1月15日 | |
追伸に雪の深さを知らす文 | 素秀 |
竜の玉葉越しにあまた隠れけり | むべ |
晴れてまた曇る枯野の鐘の声 | よし子 |
買ひだめの食材残る四日かな | なつき |
紙漉の伝統文化異邦人 | かかし |
沈みゆく寒九の夕陽日本海 | よし子 |
マスクしてみな同じ顔福娘 | 凡士 |
山際の茜広ごる初景色 | はく子 |
風花の触れては消ゆる辻地藏 | うつぎ |
冬木の芽まだ本性を現さず | うつぎ |
老妻へ感謝の御慶大声で | 宏虎 |
一風の向かふ庵や年賀便 | 愛正 |
朝抜いて検査着着たる4日はや | なつき |
法螺貝に続く僧列淑気満つ | はく子 |
氏神の神馬嘶く初詣 | かかし |
御神籤を結びし枝の冬芽かな | 素秀 |
門松や銀行デパートどんと据え | 宏虎 |
修正会の法鼓御堂を震はしむ | はく子 |
修正会の法鼓に稚児すやすやと | はく子 |
穏やかに明くる感謝のお元日 | わかば |
泳跡や楕円広がるつがい鴨 | 愛正 |
ごわごわのノーマルタイヤ雪催 | こすもす |
熊笹を脛でかき分け冬遍路 | 素秀 |
花よりも名のめでたさよ福寿草 | よし子 |
初暦明るき日々を重ねたく | わかば |
高枝に身を寄せあひて初烏 | 小袖 |
生き急ぐことをうらやむ老の春 | なつき |
コンビニの灯の煌々と枯野道 | 凡士 |
コンサート一週間後の初句会 | こすもす |
停泊船マストは高し冬銀河 | よし子 |
羽子板で遊びし庭の狭さかな | よう子 |
虛子の名は今も敬ふ去年今年 | 宏虎 |
冬ざれの畦を耕転機の一騎 | 素秀 |
羽子板をラケットに替ふ本気かな | よう子 |
冬灯に飛ばした爪の見つからず | 素秀 |
大津絵の寒念仏に芭蕉の句 | 凡士 |
虎落笛いつしか寝入る能登の宿 | 凡士 |
触れないで棘に隠れて冬木の芽 | うつぎ |
去年今年削除の多し住所録 | 愛正 |
天を行く青きリゲルや去年今年 | むべ |
看護師の心配りの四温かな | かかし |
七草粥深層水の塩を振る | よう子 |
気に入りの服の毛玉を取る七日 | なつき |
吾が上を大き羽音や初御空 | むべ |
遠吠へに浅き目覚めの霜夜かな | 小袖 |
法螺貝と法鼓に始まる修正会 | はく子 |
寅吠ゆる喪中に来たる年賀状 | なつき |
キッチンに集ふ朋友女正月 | 小袖 |
湯治場の炉辺に溢るる国訛り | 凡士 |
一病の息災なりし去年今年 | 宏虎 |
贔屓にす餅屋のありて雑煮椀 | むべ |
景品付イベント数多初打ち会 | こすもす |
生かされて初風呂に酔ふ卒寿かな | 宏虎 |
夫眠る西の方より風花す | むべ |
息白く何はともあれ産土神へ | うつぎ |
いそいそと初コンサート「新世界」 | よう子 |
人日やサラダ山盛り休肝日 | よう子 |
初硯稚拙な虎の墨の香 | 愛正 |
藁苞に開く勢の寒牡丹 | わかば |
廃校の低き下駄箱初講座 | かかし |
土手沿いの遠のく影や鴨の列 | 愛正 |
句敵の今日は仲良し女正月 | うつぎ |
今日からは一人暮らしや葱きざむ | よし子 |
元日や疫の無き世を願ふなり | わかば |
温むる思ひ様々初湯殿 | わかば |
果樹園の木々を撫でつつ寒肥を | かかし |
七草の七種を食す安堵かな | 小袖 |
玄関の別れに仰ぐ寒の月 | 小袖 |
2022年1月8日 | |
買初の福銭付きの財布かな | なつき |
餅食べて戦後を語る老夫婦 | 宏虎 |
御神酒かけ菊炭窯の焚初め | 凡士 |
片肌を脱いで弓射る初稽古 | 凡士 |
歳末やパズルの様な駐車場 | よう子 |
藪巻を済みて這松横臥龍 | 愛正 |
二人卓お疲れさまと晦日蕎麦 | かかし |
葉牡丹の干支の時計や休耕田 | かかし |
竜の玉地球は青いと宇宙より | はく子 |
初鏡くるりと伸ぶる子のまつげ | なつき |
菰巻かれ老松凛と参拝道 | 愛正 |
娘と孫の和服に祝気覚えけり | こすもす |
行きつけの古本屋あり年惜しむ | むべ |
団欒の蜜柑の皮のエコ堆肥 | かかし |
河豚を酌む酒も忙し鍋奉行 | 宏虎 |
真珠湾冬日そぞろに慰霊塔 | 宏虎 |
色の無き夢より醒めて雪明り | うつぎ |
雪しまく棚田の上に棚田あり | うつぎ |
ダイエットのサラダ俎始かな | なつき |
数え日や買い出しメモを忘れけり | よう子 |
竜の玉花は真白よ小さくて | はく子 |
木星をめざす寒暮の家路かな | むべ |
髪切つたうなじ撫で行く雪女郎 | うつぎ |
紅白を見つつ数独大晦日 | こすもす |
ゴールして倒る走者の毛布かな | 凡士 |
元旦や傘寿の扉開きけり | 凡士 |
金屏の虎に影なす月明り | 素秀 |
竜の玉海の真青に勝るとも | はく子 |
玄関の香りも白し水仙花 | 愛正 |
歳毎に光陰早し年の暮 | 宏虎 |
大掃除三和土のビー玉傷だらけ | よう子 |
ねんねこの母のうなじの涎かな | よう子 |
毛糸玉捨てられぬままニ十年 | うつぎ |
賀状来る百寿の義母に美容室 | 凡士 |
信楽の狸も首に門飾 | 素秀 |
手袋し家路を急ぐ余寒かな | 宏虎 |
指示棒の気象予報士御慶より | うつぎ |
藪巻に横臥の龍か古寺の松 | 愛正 |
注連飾雀の一家小躍りす | かかし |
除夜の鐘今年は撞けると寺だより | はく子 |
乗初や夫が洗車を済ませたり | なつき |
葉牡丹を紅白揃え床の間に | こすもす |
シクラメン前ボケにして彼の人を | よう子 |
髭もじゃにかくれんぼうの竜の玉 | はく子 |
菰巻きの男結びや紙垂のごと | 愛正 |
寄す波を磐に堪える夕千鳥 | 素秀 |
黒鳥もかふと鳴きたる赤き嘴 | 素秀 |
捨てられぬ手紙の束や年の暮 | むべ |
花鋏研ぐところから年用意 | むべ |
初鶏を聞きて二度寝の枕かな | 素秀 |
入院に備へパジャマを買ひはじめ | なつき |
ひねくれて裏番組と晦日蕎麦 | むべ |
投句日の花丸印暦果つ | かかし |
新聞の重さ二日は休刊日 | こすもす |
2022年1月1日 | |
風呂洗ふフェイスパックの大晦日 | よう子 |
ぼろ市の売る風呂敷を風除けに | うつぎ |
果大師とんと見かけぬ香具師思ふ | なつき |
土に鋤く農家総出の落葉掻 | かかし |
財布抱き買ふ気の客や果大師 | なつき |
流木を井桁に組んで磯焚火 | 凡士 |
見え隠れ川辺に光る浮寝鳥 | 愛正 |
パソコンに風呂敷かける煤払い | よう子 |
ぼろ市の刀商ふお姉さん | うつぎ |
年輪と思ふこの皺去年今年 | 凡士 |
冬麗や楠に背伸びす鬼瓦 | うつぎ |
農の手のどれも無骨や衣被 | うつぎ |
つがい鴨見え隠れする葦の中 | 愛正 |
極楽門の内外賑はふ年の市 | はく子 |
冬月の煌々照らし無音かな | 素秀 |
柏手を打ちていただく飾り松 | 素秀 |
着ぶくれて水の地球に浮くやうな | 凡士 |
静かなる老い三人の聖夜かな | わかば |
緋毛氈敷きしベンチや果大師 | なつき |
爺さんを急かす婆さん年の市 | かかし |
歳晩や輪廻信じる人のいて | 素秀 |
冬紅葉残して渓の岩襖 | 素秀 |
どう見てもガラクタばかり年の市 | はく子 |
人気なき校舎も木々も時雨けり | むべ |
シクラメン抱へ気になる別の色 | よう子 |
凛然と五重の塔や古都の冬 | 小袖 |
革ジャンの混じる蕎麦屋や霙降る | よう子 |
チェーンソー響く山小屋年用意 | かかし |
赤い実の目立つ庭先まず南天 | こすもす |
終ひ湯の柚子の重さや冬至風呂 | むべ |
冬霞宙に浮いたる八ヶ岳 | 愛正 |
ご近所のサイレン忙し師走の夜 | わかば |
終弘法のぞき込むかに鬼瓦 | 小袖 |
鰐口の音のやさしき朝しぐれ | 素秀 |
冬日燦七堂伽藍整然と | はく子 |
一盌の茶席の招き日短か | わかば |
冬霞突き抜く煙突白煙 | 愛正 |
鯛焼を差し入れてゐる楽屋口 | 凡士 |
湯に入れてまだ残りたる柚子数多 | こすもす |
太子会の読経しり目に年の市 | はく子 |
町家かと見れば交番京小春 | うつぎ |
いきいきと京の外れの九条葱 | 小袖 |
ふかぶかと口閉じつかる柚子湯かな | むべ |
クリスマス錆びし機関車走らせる | かかし |
ぼろ市の堀端までも人の波 | 小袖 |
病む口に赤豆の粥のほろほろと | むべ |
パンジーや黄がちの鉢の並ぶ家 | よう子 |
予報的中音もなく雪降り続く | こすもす |
盲導犬吐く息太し今朝の霜 | 凡士 |
笹鳴やこれより奥は獣道 | かかし |
一輪挿し居間でふくらむ冬至梅 | 愛正 |
里いづこ軒に大根割り干せり | むべ |
無人家の花壇彩る石蕗の花 | こすもす |
果大師一節うなる女香具師 | なつき |
ぼろ市の古布に秘めたる雅かな | 小袖 |
相輪の眩しき程や冬の日に | はく子 |
老い母に頼られてをり日短か | わかば |
病む耳にひびく賑ひ果大師 | なつき |
電飾の華やぐ街の師走かな | わかば |
2021年12月25日 | |
パソコンで贈るカードやクリスマス | 凡士 |
箱火鉢京の町家の袋小路 | かかし |
鳩すずめ鴨も加わり野の小春 | はく子 |
昭和の世爺の名指しの甘藷かな | 宏虎 |
銀杏落葉千手の枝の祈るごと | かかし |
予報はずれ積雪ほんの一センチ | こすもす |
容赦なき冬将軍を迎ふ朝 | 素秀 |
鏡池染めてセコイヤ剣競ふ | はく子 |
霜の庭踏めば地球の啼くごとし | よし子 |
後継ぎの会話尽きぬや大根洗ふ | かかし |
冬凪やいざなぎいざなみ島に訪ふ | うつぎ |
セコイヤの錆朱極めて散初むる | はく子 |
不器用に五人家族の聖菓分く | なつき |
ひと時は穢れなき世や昨夜の雪 | よう子 |
焚火果て空一面の星瞬く | 宏虎 |
電飾の昼は侘びしむ冬木立 | わかば |
鴨可笑し雄はピーピー雌グァグァと | はく子 |
繚乱の蘭の室咲き眼鏡拭く | 凡士 |
柊の花父家を離るる日 | むべ |
粥啜るほかに音なき冬至の夜 | 凡士 |
伝統技村童見入るえり簀編み | 愛正 |
着ぶくれて長き行列レジ遠し | よう子 |
膝に猫何度も鳴るや雪起こし | こすもす |
黄落やいちよう並木は真っ裸 | よし子 |
青空へ精一杯に冬桜 | はく子 |
初挑戦次の試合へ冬帽子 | こすもす |
からからと吾を追い越せり朴落葉 | むべ |
吹かれ来て溝に嵌まりし落葉かな | うつぎ |
冬帽の手帖を睨む吟行子 | 素秀 |
夜の雪をこびりつかせてボンネツト | 素秀 |
冬の月冬の月冬の月 | よし子 |
独走のラガーに歓声わき上がる | よし子 |
石積みを登る棚田や冬至梅 | 愛正 |
冬菫寂し公園彩りぬ | わかば |
蔵壁の揺るる水面や濠の鴨 | 愛正 |
歳晩の鎮まりおはす仏達 | うつぎ |
冬木とて朱の膨らむ夢を付け | 宏虎 |
うらにしの丹後に游ぶ蕪村の忌 | 凡士 |
百歳の無我の境地や冬帽子 | うつぎ |
枯芝を踏んで公園彷徨へる | わかば |
風呂吹に一本つけて老の膳 | うつぎ |
色変へぬ檜葉のリースや降誕節 | むべ |
不揃いの水輪光るや浮寝鳥 | 愛正 |
聖樹立つ大三角を冠として | 凡士 |
病院の窓の人影冬銀河 | よう子 |
枯野星最終電車揺れどほし | よし子 |
さよならと事務員の声冬ぬくし | こすもす |
手渡しの郵便物に初霙 | むべ |
黒猫の横に蒟蒻玉並び | むべ |
刈り込まれ薔薇の小径の養生期 | わかば |
鉢隠る縺れ垂れたる蟹さぼてん | 愛正 |
気分変え夫婦茶碗や年の市 | 宏虎 |
教会へ慈善のコート届きたり | なつき |
相応に選ぶセーターモノトーン | 素秀 |
小春日和魚鼓の一打に写経せん | かかし |
ビロードの光る日差しや冬木の芽 | わかば |
暖房のリモコン探り朝まだき | 素秀 |
冬よもぎ絞りの町の一里塚 | なつき |
線香と菊の香に咽す初七日 | なつき |
行く年や寄り来る子供新紙幣 | 宏虎 |
黒門の上座を占める虎河豚や | かかし |
立ち読みの旅本戻す師走人 | なつき |
2021年12月18日 | |
セーターのどれも思ひ出秘めてをり | うつぎ |
結びたる口に寒紅死化粧 | 素秀 |
思ひ出し笑ひ飛び出す衣被 | よう子 |
冬日燦眩しき銀杏大樹かな | わかば |
己が囲に縋りしままや冬の蜘蛛 | うつぎ |
寒禽の賑はひ森に一頻り | わかば |
招き揚げ京の師走の幕上がる | 凡士 |
土の香のまだ新しき猪の跡 | うつぎ |
雪吊つて背筋伸びたる兼六園 | 凡士 |
打ち寄する波に浮き寝の都鳥 | 凡士 |
モノトーンの里の夕日や懸大根 | かかし |
クリスマスからくり時計踊りだす | うつぎ |
仏壇をいびつな蜜柑転がれり | なつき |
あかあかと冬の夕日は海へ落つ | よし子 |
いただきし鰤一本に思案かな | 凡士 |
魞水底龍宮有るらしく | 宏虎 |
黒雲を一刷毛で燦冬夕焼 | かかし |
向かひ家の出窓に垂るる蝦蛄仙人掌 | 愛正 |
雀どち入れては吐きて大冬木 | はく子 |
隙間風電波時計の狂ひなし | かかし |
病得て最後と決めし賀状書く | なつき |
鴨浮き寝メタセコイヤは錆重ね | はく子 |
箸先の浅漬白し朝日陰 | 愛正 |
白菜の食べ方数多ネットメニュー | こすもす |
マスクして声なき葬や灯の冴ゆる | なつき |
手足閉じ半眼の亀虎落笛 | かかし |
板戸ひく白南天の鄙の家 | むべ |
家計簿に一言添へし日記果つ | なつき |
忘れたるものの数とや冬銀河 | よし子 |
黄落す淀川見下ろす大公孫樹 | はく子 |
読経終えヒーター唸る葬儀場 | なつき |
日記買ふ無駄な事書く未だあり | 宏虎 |
触れもせで柊の花ほろほろと | よう子 |
川沿ひに切土の道や冬苺 | むべ |
恙なく夫婦揃いて齢惜しむ | 宏虎 |
学僧のゆらす藁束冬構 | 愛正 |
柞山里人いづこ冬ざるる | よう子 |
塀越に花柊の真白きを | はく子 |
冬ざれや岬の下の火葬場 | 素秀 |
冬山路つひにあらはる湯宿かな | むべ |
冬雲の覆ふ海峡濤高く | わかば |
湯豆腐の鍋に残りし出汁昆布 | 宏虎 |
水鳥を湾処にとじ込む川嵐 | 愛正 |
白菜料理工夫重ねて食卓へ | こすもす |
熱燗や尽きぬ獣害話かな | よう子 |
寺庭を埋め尽くして黄落す | はく子 |
煤逃に混み合ふ午後の神谷バー | 凡士 |
昔日の渡し場跡に枯尾花 | むべ |
寺隠す裸公孫樹の仁王立ち | うつぎ |
境内に並ぶ落葉の袋詰め | こすもす |
廃校の子らの声無く枯れすすき | よし子 |
着膨れて母の手握る救急車 | 素秀 |
枯木立どうにもならん身軽なり | 宏虎 |
冬帽に校名刺繍予備校生 | かかし |
模糊として水平線や冬の朝 | わかば |
星凍る手枕の母眠るごと | 素秀 |
猪の晩餐あとや通学路 | よう子 |
竜田川紅葉みだれて流れけり | よし子 |
言い訳の言葉のをかし息白し | よし子 |
涙染みひとつ蒲団に寝ずの番 | 素秀 |
冬晴や建てつけわろき窓の鍵 | むべ |
山門に寄り添ふ一枝冬至梅 | 愛正 |
散り残る木の葉に意地といふものを | わかば |
2021年12月11日 | |
水鳥や水尾広げつつ夕日影 | わかば |
宅配の夜を小走り十二月 | 小袖 |
陽を享受して干柿の朱を極む | はく子 |
日曜の工場群や冬日和 | むべ |
蕭条と引揚桟橋霙降る | 凡士 |
ピースするサンタのシェフに見送られ | よう子 |
宿木の緑際立つ冬木立 | はく子 |
渾身の力ひめたる冬木かな | わかば |
冬木立世界遺産の宮の杜 | はく子 |