ふと思ふあの日の空は五月晴 | よし子 |
薫風や塔頭の屋根光り合ふ | なつき |
2022年6月4日 | |
おおばこの花埋め尽くす山の寺 | よう子 |
重なれる葉の隙に咲き朴の花 | わかば |
緑陰の深きにいつか和みをり | わかば |
堂縁に猫の餌皿梅雨の寺 | なつき |
車前草踏んで車のすれ違い | よう子 |
茅花流し大淀川は蕩々と | はく子 |
菖蒲園江戸系伊勢系お国柄 | たか子 |
羅の駅中ピアノ音大生 | かかし |
作り滝都塵まみれの身にしぶく | むべ |
緑陰の中の伽藍や鐘響く | わかば |
豪雨来てわが庭泳ぐ蚯蚓かな | むべ |
麻酔覚め壁に曼荼羅舞ふ短夜 | 素秀 |
病廊に病気自慢の端居かな | 素秀 |
蚕豆のこの淡白な乙な味 | たか子 |
葉桜に堤の売店暇なこと | 宏虎 |
海凪しおのころ島や夏霞 | わかば |
苜蓿キャッチボールを隠しけり | ぽんこ |
小満やビル街映す川明かり | たか子 |
作り滝しぶきたばしる磊磊に | ぽんこ |
ハンカチの木の花まぶし古書店街 | むべ |
いささ川草生を浸す走り梅雨 | 愛正 |
羅でリハビリ散歩ハミングす | かかし |
ダブルダッチ大縄廻す薔薇広場 | たか子 |
薔薇園と浪速の川とオムライス | たか子 |
豌豆の卵とじ食む晩ご飯 | 宏虎 |
目高飼ふ鉢の並べり花街跡 | なつき |
ポスターの一隅はがれ走り梅雨 | なつき |
土手なぞえ埋めて紅白うまごやし | はく子 |
冷房の顔のみ冷やす術後かな | 素秀 |
植えたのはいつのことやら薔薇咲きぬ | こすもす |
旬の蕗小皿に盛りて舌鼓 | 宏虎 |
夏霞水脈引く沖の船の影 | わかば |
柔和なる石仏ならぶ青葉影 | なつき |
野薔薇咲く学校裏の秘密基地 | 愛正 |
藤房の見事に揺れて藤の棚 | 宏虎 |
ががんぼを追ふ老犬をさらに追ふ | むべ |
病院食慣れし頃には土用東風 | 素秀 |
石灯籠池の真中の花菖蒲 | ぽんこ |
迎へ梅雨土の匂いの田舎路 | 愛正 |
芦部銅山緑に染まり祠初夏 | 宏虎 |
カサブランカ滴る蜜の透きとほる | むべ |
池の端に小鴨つぎつぎ泳ぎいる | ぽんこ |
ヤマボウシ十個に満たぬ咲具合 | こすもす |
新米の教師立ちこぐ麦の波 | 愛正 |
山峡の早苗の水も大海へ | よう子 |
翡翠に望遠レンズ魚キャッチ | かかし |
人影のごとき秘仏やご開帳 | なつき |
茶柱の新茶に笑まふ老夫婦 | かかし |
まつ毛にも扇にも似て合歓の花 | こすもす |
迎へ梅雨黄傘波うつ通学路 | 愛正 |
蝸牛フレーフレーと囃す子ら | かかし |
緑さす子はすくすくと歩み初む | はく子 |
マンションや隣の田植えいつの間に | よう子 |
茅葺の大屋根の千木夏の雲 | よう子 |
ケアホームへ兄を見送る梅雨走り | はく子 |
見渡せる菖蒲鉢の圧巻かな | ぽんこ |
術台に機械揃へる音涼し | 素秀 |
2022年5月28日 | |
並々と古茶をピカソのマグカップ | なつき |
閼伽桶の闇に舟虫好み入る | 素秀 |
葯摘めば百合ゆつくりと開きたる | むべ |
カーネーシヨン暫くぶりと飾り窓 | 宏虎 |
アイスカフェ推敲したる句の幾度 | たか子 |
茄子植うる使ひきれるか支柱丈 | 愛正 |
揚羽越ゆ国を上下に分ける河 | 素秀 |
雨意の風に百花若葉のざわめきぬ | はく子 |
幹よじれ古木なれども藤若葉 | ぽんこ |
滝見茶屋座り直して深呼吸 | かかし |
グランドの黄昏染める金糸梅 | ぽんこ |
ひなげしの折りとるまでも無く儚な | たか子 |
農家カフェランチを終へてハンモック | かかし |
実桜の赤に遅速や朝の風 | むべ |
苺捥ぐ屋根の雀の首傾ぐ | かかし |
抜け穴の固く錠閉づ若楓 | ぽんこ |
湯の郷で艶を光らす柿若葉 | 宏虎 |
無住寺の墓石を縫へり夏の蝶 | なつき |
田舎道信号守り遠足児 | なつき |
アトリエに緑雨と絵の具匂ひたる | むべ |
惜しげなく山肌見せし皐月富士 | むべ |
泥んこの砂場遊びや鯉のぼり | こすもす |
見あぐ目に突と落ち来る花あふち | たか子 |
空青し代田に子等の声跳ぬる | 愛正 |
沢登り岩肌撫づる谷若葉 | 愛正 |
畦沿いに水溢れでる堰浚へ | 愛正 |
茅花みな呆けて海へ靡きけり | こすもす |
椋青葉翼のやうに広げたり | なつき |
大橋を宙に浮かべて夏霞 | わかば |
亀の池覗き込むごと花樗 | ぽんこ |
芍薬の牡丹と見紛ふばかりなり | はく子 |
何はとも我が家に戻り新茶汲む | たか子 |
ばら苑に隣る陶板美術館 | はく子 |
籬より笑顔覗くや柿若葉 | わかば |
目に見えて樟の若葉の青さかな | 宏虎 |
大き羽広げ青鷺突と飛ぶ | はく子 |
壁落つる滝水浴びて陶板画 | はく子 |
放課後のピアノ音わたる麦の波 | 愛正 |
ラヂオから緊急速報籐寝椅子 | 素秀 |
朴の花天に佳き香を放つなり | わかば |
母の日の似顔絵の口紅赤し | なつき |
かたつむり夜来の雨に軽やかに | かかし |
ぬくぬくの筍飯や旬のもの | 宏虎 |
ランタンに影の震へる著莪の花 | 素秀 |
夏めきてビル街映す川明かり | たか子 |
デザートに捥ぎたて苺白磁皿 | かかし |
大南風沖白波の異国船 | 素秀 |
公園の一角散らし松落葉 | 宏虎 |
弔いの煙ひとすぢ若葉冷 | むべ |
絹糸の細き花柄の小判草 | ぽんこ |
薔薇咲かせ招いてくれし友偲ぶ | わかば |
千両箱幾つ出来るや小判草 | こすもす |
苑は今木々の青葉に染まるなり | わかば |
2022年5月21日 | |
頬杖の推敲いつか三尺寝 | 素秀 |
雨の中なぞへに添いて姫卯木 | わかば |
ウォーキング雨の上がりし柿若葉 | こすもす |
川下る棹の捌きや新樹光 | かかし |
木漏れ日と鳥語に和む夏料理 | たか子 |
卯の花や雨の中ゆく美容室 | わかば |
囀りの木霊となりぬ夏木立 | よう子 |
夏鶯県境越への谷渡り | よう子 |
夏木立鍬を休めて鳥語聴く | かかし |
苔庭に影打ち重ね若楓 | わかば |
若葉して楠の大樹の軽くなる | はく子 |
どこからか飛び来て庭に芥子の花 | こすもす |
句座真なかペットボトルの金魚舞ふ | たか子 |
新緑や笑顔抱いて宮参り | ぽんこ |
葛餅や宇治十帖の和歌の皿 | なつき |
私にも色々有りて更衣 | 宏虎 |
刺さして月命日の薔薇切れり | なつき |
見あぐれば今年も咲きし泰山木 | 宏虎 |
髪あらふ卯の花腐し白じらと | たか子 |
歩板より手の届きそうあやめ草 | ぽんこ |
式部かと思ふ影あり青簾 | 素秀 |
検査終へ医師の笑顔に新樹光 | かかし |
寡黙なる夫婦足早菖蒲園 | なつき |
夏雲と浅間噴煙入り交じる | 愛正 |
若葉風亡夫の郷の無人駅 | むべ |
蝶柄の日傘歩けり菖蒲園 | なつき |
花は葉に展望きかぬ遊歩道 | 愛正 |
夏の灯にひらくホテルの聖書かな | むべ |
葉桜や影踏み遊ぶ紅白帽 | 愛正 |
街路樹の膨らむ緑輝けり | ぽんこ |
神苑の杜を和ます若葉雨 | 愛正 |
目と心癒やす若葉と家の猫 | こすもす |
古茶新茶昔馴染みの輪のほぐれ | たか子 |
雨兆す雲に芍薬首伸ばす | はく子 |
桐の花紫淡き城址かな | わかば |
アンテナてふ定席につく四十雀 | むべ |
野良着にて木陰で新茶卒寿翁 | かかし |
時ならぬ紅色もあり若楓 | たか子 |
木下闇森なすヒマラヤ杉大樹 | はく子 |
トンネルの青葉の出口疎水船 | よう子 |
絶景かな南禅寺の青楓 | よう子 |
綾目持つ花をあやめと教はりぬ | はく子 |
若葉風そよと地蔵のよだれ掛け | 愛正 |
祠へと続く小道や竹の秋 | わかば |
鳥語降る下闇深き義士の墓 | ぽんこ |
蔵前に曳かねど山車の試し組み | なつき |
大木の根本の崩れ木下闇 | ぽんこ |
義母も吾も五月に夫を亡くしけり | むべ |
最果の菜の花畑無人駅 | 宏虎 |
時鳥鳴きて山路に豆腐買ふ | 素秀 |
比叡を目路ばら咲き誇る香の中に | はく子 |
若葉風老人会のフラダンス | かかし |
退院や人手足りぬと新茶摘む | よう子 |
甲山夏霧降リて所在なし | 宏虎 |
陰る雲に風を見せ行く夏の月 | 素秀 |
月涼し夜より黒き喪服かな | むべ |
水際に松風の来て青田かな | 素秀 |
戦前の我われがいて昭和の日 | 宏虎 |
2022年5月14日 | |
新社員動く歩道を駆けてをり | かかし |
鶯や鳴きつぐ寺の奥の院 | わかば |
新緑の道幅広き御所通り | ぽんこ |
桜桃や太宰ゆかりの散歩道 | むべ |
ひらがなのスコアボードやこどもの日 | かかし |
退院の家居のうれし夏初め | たか子 |
こどもの日料理手伝ふ一年生 | かかし |
初鰹焙る藁の火美味そうな | 宏虎 |
太陽の軌道正しく夏の海 | 宏虎 |
ご開帳合はす手解かぬ媼かな | なつき |
夏木立ぼっちキャンプの花ざかり | たか子 |
玻璃越しの初夏の日差しや縁の猫 | こすもす |
寺門を入りて十歩や花御堂 | なつき |
御所の門しかと守りぬ犬ふぐり | ぽんこ |
薔薇アーチ華やぐ飲み屋夜よりも | ぽんこ |
漣の代田や山と白い雲 | こすもす |
若葉風バスはゆっくり苑巡る | はく子 |
苑内のあふれんばかり若葉萌ゆ | はく子 |
夏手袋取りて甘茶の柄杓受く | なつき |
行厨は風車の丘の花の園 | はく子 |
若楓彩深めつつ日を返す | わかば |
孫とライン算数遊びやこどもの日 | こすもす |
夏近し水陽炎の大玻璃戸 | よう子 |
通し鴨ここと決めたる水の辺に | たか子 |
猫寿を飼ひし昔や若葉風 | 宏虎 |
万緑にお告げの鐘の鳴り渡る | むべ |
暮れなずむ道に浮かぶは鉄線花 | むべ |
吾の捥ぎし苺をジュース農家カフェ | かかし |
配達夫来て子燕のへの字口 | 素秀 |
東山京の町々五月来る | ぽんこ |
三叉路を過ぎし山道若葉雨 | 愛正 |
菖蒲挿す軒なき家や子三人 | よう子 |
御田植えの水に伏する氏子かな | 素秀 |
丘膨らむ斑模様の若葉かな | 愛正 |
宇治駅舎しばしは燕のアパートに | はく子 |
薫風や野外授業の黄色帽 | 愛正 |
母の日や宅配便は弟より | よう子 |
心字池囲む躑躅の色競ふ | わかば |
若葉風ひと揺れわっと鳥騒ぐ | たか子 |
高層ビル隙間に射しこむ新樹光 | ぽんこ |
花御堂過ぐるスタンプラリーの子 | なつき |
編み込みの子の大人びて新樹の夜 | 素秀 |
青銅の伽藍覗かせ新樹かな | わかば |
癒えてゆく日にち薬や花水木 | たか子 |
ケア施設一本道の花は葉に | 愛正 |
山藤を揺らし入線無人駅 | 愛正 |
花は葉に休み堤防散歩する | 宏虎 |
建屋内ガラス製品夏めきぬ | 宏虎 |
ミルトスの梢切らるるみどりの日 | むべ |
ビロードの如き薔薇の名バーグマン | はく子 |
石段のしり取り遊び柿若葉 | よう子 |
画学生遠近法の渓若葉 | かかし |
堂守の木魚打ち継ぐ花まつり | なつき |
なだらかな川に逆さの若葉山 | こすもす |
文豪の入水場所とや草茂る | むべ |
杜若鏡池へと影深く | わかば |
陰影にかたち成したる白牡丹 | 素秀 |
白壁の土蔵を揺らす代田寒 | よう子 |
足早にゆく葉桜の遊歩道 | 素秀 |
2022年5月7日 | |
手に数ふ向日葵の種乾きたる | 素秀 |
雨上がり耀ふ樟の若葉かな | わかば |
意外なるところにひそと藤の花 | こすもす |
山肌を領し石楠花盛りなる | わかば |
棚田保全園児も入りて田植笠 | かかし |
真新し如雨露の色の浅緑 | むべ |
丹沢の山並みに雲清和かな | むべ |
囀の途切れぬ森のミュージアム | わかば |
野地蔵の台座は厚し花筵 | 愛正 |
参拝道薄日にけぶる杉の花 | 愛正 |
蚕豆の鞘逞しき自由かな | 素秀 |
水底に犇く命蝌蚪の紐 | わかば |
耳立てて主待つ犬青葉風 | なつき |
橋上のいつしか消えた道おしえ | ぽんこ |
園児らの小鮎放流村起し | かかし |
新緑や魚板一打に若き僧 | よう子 |
野遊びや小さき木橋を一跨ぎ | なつき |
本読みて開きしままや明易し | むべ |
青空へ光返して若楓 | わかば |
若葉風メタセコイヤの整列す | はく子 |
藤棚の下に集合ゲームの子 | たか子 |
クローバーの花冠の忘れ物 | はく子 |
紫外線避けて二重の春ショール | こすもす |
遠目にも大きく膨らむ楠若葉 | ぽんこ |
一面のしろつめ草を踏み行けり | はく子 |
街路樹の従者のごとくに芥子の花 | ぽんこ |
水すまし水輪重ねし心字池 | よう子 |
縁側で鶏遊ぶや田打どき | 愛正 |
麦の風隣部落の選挙カー | 愛正 |
撫で蛇の光る頭や青葉闇 | なつき |
田水張る目の輝やける老夫婦 | かかし |
猫の目線追へばヒラヒラ舞ふ蝶々 | こすもす |
足生えし蝌蚪二筋の土煙 | なつき |
長閑なる縁にくの字の老婆かな | 愛正 |
辻占がラジオ聞きゐる春の昼 | なつき |
更衣出して鞄へ旅支度 | むべ |
開き直る検査結果や芥子の花 | ぽんこ |
絡み合ふ実沢山の野えんどう | よう子 |
黒猫が宮の主や著莪の花 | ぽんこ |
我が影を蟻は引きゆく羽根骸 | 素秀 |
木喰仏満願の寺初あやめ | よう子 |
碧環と言い当てし友得意顔 | こすもす |
隧道を山のものとし蔦茂る | 素秀 |
造り滝ながら豪快苑若葉 | はく子 |
と見る間に一気呵成や田水張る | かかし |
水口に堪えてをりぬ余り苗 | 素秀 |
新玉葱香りも添へて農家カフェ | かかし |
退院日決まりてよりの穀雨かな | たか子 |
新樹光メタセコイヤの並木道 | はく子 |
見下ろせばパセリの林立夏木立 | たか子 |
青蘆のそよぐ中洲はサンクチュアリ | むべ |
牡丹や檀家少なき寺を守る | よう子 |
衣替え身を出す事に馴れずゐる | たか子 |
何層も紅のぼうたん濃き薄き | たか子 |
2022年4月30日 | |
せせらぎの羽化したばかり蜻蛉飛ぶ | ぽんこ |
青葉影研ぎ師の軽き音立てて | なつき |
樟大樹園の一水蝌蚪の池 | ぽんこ |
画材屋の日除け斜めに燕来る | むべ |
田鼠化して親指ほどのうづら雛 | 素秀 |
名も知らぬ木々に咲きたる懸り藤 | 愛正 |
山つつじ杣を彩る日脚かな | ぽんこ |
庭のどか裸地を啄ばむ雀舞う | 愛正 |
小手毬の垣根を揺らしすれ違ふ | よう子 |
病窓に街動き出す音おぼろ | たか子 |
庭石を覆ひて垂る藤の花 | わかば |
グランドは蒲公英だらけキックオフ | こすもす |
針を刺す血管青く春眠し | たか子 |
幹と皮捩れ万朶の藤の花 | よう子 |
コウノトリ翔る城下や八重桜 | こすもす |
松風の届く庭園藤垂る | わかば |
造幣局通り抜けはも予約制 | はく子 |
亀鳴くやナースをオイと呼ぶ輩 | たか子 |
運動場子等の背に背に散る桜 | 愛正 |
藤の花雫とどめて雨の後 | わかば |
入りてすぐ出る藤棚の雨宿り | よう子 |
男どち野球論戦躑躅燃ゆ | よう子 |
遠足の象の長鼻揺れにけり | 宏虎 |
石楠花や静寂やぶる園ブロアー | ぽんこ |
濁世てふ閂外し目借時 | かかし |
一本に紅白咲かせ桜花 | わかば |
穀雨てふ農道駆ける耕運機 | かかし |
理髪師の剃刀頬に目借り時 | 素秀 |
新緑や朝日のまぶし谷向かふ | よう子 |
ゴリラ前歯を剝き胸手遠足兕 | 宏虎 |
花筵四隅を占むる車いす | 愛正 |
鳥影に見上ぐ真青や復活祭 | むべ |
応答はクレッシェンドに囀り | むべ |
杜若ひそと咲き初む神の池 | なつき |
天地に倦みて菜の花蝶と化す | 素秀 |
蝶追ひて母の呼ぶ声聞こえざる | なつき |
朧なる世界へ深く麻酔吸う | たか子 |
金縷梅や池のほとりの亀の首 | ぽんこ |
藤の香に寄り来る虫も酔ひたるか | はく子 |
山吹の垣を隠して盛りかな | わかば |
濃淡の緑様々山笑う | こすもす |
城山の雨に佐保姫門を出づ | 素秀 |
うたた寝の膝にリモコン春日和 | 愛正 |
城目路のビジネスパーク芽木の道 | はく子 |
大巾にアップの歩数若葉風 | かかし |
濃き淡き長き短かき苑の藤 | はく子 |
赤黄白百万本のチューリップ | かかし |
終電の無人駅村朧月 | 宏虎 |
四阿にかそけき葉擦れ目借時 | かかし |
志賀直哉旧宅今や菜の花忌 | 宏虎 |
コートブラシ使う生徒へ綿毛かな | こすもす |
緑摘む脚立の上の大あくび | 素秀 |
贔屓歌手の色紙に夢や山笑う | こすもす |
仔猫生まる住宅街の理髪店 | 宏虎 |
青葉風二歳児乗らぬベビーカー | なつき |
神名備の大樹捉へて懸り藤 | はく子 |
春愁と言ふまい吾の経験値 | たか子 |
灌仏の肩はや乾き夏兆す | なつき |
朝ドラのダイジェストみる霾ぐもり | むべ |
古民家に語り部の来て春の宵 | むべ |
2022年4月23日 | |
寿老神光背に侍る白躑躅 | ぽんこ |
湯煙の露天に浸かり春惜しむ | 宏虎 |
気紛れな気圧配置や春暑し | こすもす |
参列を許さるる葬花の塵 | むべ |
山吹や石の窪みの水に散る | 愛正 |
筍の鍬傷うすく落としたり | なつき |
川に沿ひ歩を進めるや春の闇 | わかば |
渾身の鍬に筍飛び出せり | よう子 |
桜蕊降る地を染める神の庭 | ぽんこ |
花冷えの雨に鎮もる城址跡 | 素秀 |
新緑に日の斑揺れる神の森 | ぽんこ |
配る顔浮かべ筍茹でこぼす | なつき |
助手席の差し込む光目借時 | 愛正 |
万葉の歌碑公園や春の逝く | はく子 |
春惜しむ卒寿の早し瞬く間 | 宏虎 |
泥こぼし届く筍まだ温し | なつき |
桜蕊石燈籠に観音像 | よう子 |
匍匐して膝の冷たきれんげ草 | 素秀 |
幼子の遊びはやまず蛙の子 | 愛正 |
ネクタイを幾度も直す新社員 | かかし |
夕間暮れて落花浮き立つ山の風 | よし子 |
卒業生羅針盤無き船出せん | かかし |
春愁ひと言ひつ幸せそうな女 | よし子 |
花屑の溢る托鉢親鸞像 | かかし |
悲喜語る婚五十年花の膳 | たか子 |
大枝垂る花も馳走の宿の膳 | はく子 |
環状線三周廻る目借時 | かかし |
霾晦おのころ島の影薄く | わかば |
たんぽぽの頭抜けてひとつ大き絮 | 素秀 |
黄水仙あるじホームに入居せり | むべ |
下校子の筍飯と言い当てり | なつき |
チューリップまつり三年振りに開園す | こすもす |
初燕土だけ残し廃れ窯 | よし子 |
父母訪わむ墓石にすみれ開く頃 | 素秀 |
取り合うて鞦韆ついに揺れやまず | たか子 |
城下町ぎっしり牡丹桜かな | こすもす |
土の香を立てて過ぎゆく春驟雨 | 愛正 |
鐘朧身の引き締まる永平寺 | 宏虎 |
惜春や吾娘きかせたるビブラート | むべ |
微睡ろまぬ蝌蚪の泳ぎに希望あり | 宏虎 |
抜きんでて生家の椿千灯す | はく子 |
ヘルメット脱ぐ長髪に花の風 | よし子 |
水草の揺れにいざなう蝌蚪の群れ | 愛正 |
定休日と吊り橋閉され山笑ふ | はく子 |
少しずつ違う色合い新若葉 | こすもす |
おほらかに生きて逝かれり花の冷え | わかば |
筍の皮剝く夫のどこまでと | なつき |
休耕田園児手植へのチューリップ | かかし |
つれづれに古書店覗く日永かな | わかば |
虎杖はリュックに刺され下山せり | よう子 |
亀の鳴く声の聞こえて来し八十路 | よし子 |
家籠もりコロナの次の菜種梅雨 | こすもす |
邸宅は美術館へと花蘇芳 | よう子 |
チャンバラごっこ捨て虎杖の無残かな | よう子 |
宮の森籬に混じる躑躅かな | ぽんこ |
うなだれて黒き土見るチューリツプ | 素秀 |
ひと夜さの窓に松籟春の宵 | たか子 |
亀鳴くや山城険し男坂 | たか子 |
受洗せし笑顔の友と青き踏む | むべ |
野も山も彩を重ねて春深む | わかば |
桜散る真っ青の空拡がれリ | 宏虎 |
サイレンに震へる夜の朧かな | むべ |
コロナ禍も三歳となりぬ花は葉に | ぽんこ |
花鳥のほつ枝しず枝と忙し気に | はく子 |
これしきに何故気を揉むか春の宵 | たか子 |
2022年4月16日 | |
用水のせせらぐ音色春終る | 愛正 |
春愁や母校の名前消滅す | こすもす |
鴨のこる池広々と薬草園 | よし子 |
遠き目の犬は落花のただなかに | 素秀 |
風の来て掃けども掃けど春落ち葉 | 宏虎 |
ベランダに豌豆の花良く育ち | こすもす |
緑立つ巽櫓の美しく | わかば |
燕翔ぶ神戸にハラール専門店 | 凡士 |
縁側に猫の百態春日向 | 宏虎 |
花に来ておほらかなりし友のこと | わかば |
早暁の木々に耳当て桜守 | かかし |
三世帯入学式のハイチーズ | かかし |
花つぼみ香具師は屋台の場所取りす | よう子 |
ポットの湯飲んでベンチに落花浴ぶ | なつき |
近づくと見えて離るや花見船 | よう子 |
小暗さや出土の古墳涅槃西風 | たか子 |
大仏堂遠足兕をば呑みこめり | 宏虎 |
海神の声ぞ知覧の桜かな | 素秀 |
囀りやおのころ島の花の丘 | たか子 |
囀りに朝のはじまる庵かな | 愛正 |
帰宅後に名を思い出し花ミモザ | こすもす |
千木の家家紋高だか花の村 | よう子 |
春落葉掃かれぬままに茶室閉づ | なつき |
ゆっくりと肩の濡れ行く芽吹き雨 | よし子 |
鍬に顎預けし農夫花吹雪 | かかし |
マラソンに挑む卒寿や風光る | かかし |
花吹雪総身に浴びて浄土とも | はく子 |
木瓜の花朱色の濃さや生き生きと | 宏虎 |
燕来て糞落とすなり無人駅 | 愛正 |
花万朶人を酔わせて鳥もまた | わかば |
大き絵を離れ眺むる春の昼 | むべ |
新入生来たり廃部の危機脱す | むべ |
蘖や校舎に耐震補強あり | 凡士 |
チューリップ開ききつたる花時計 | むべ |
菜の花に色揃ひたる電車かな | むべ |
村と村繋いで桜屑の道 | 素秀 |
検眼のCのいろいろ燕来る | 凡士 |
讃美歌を口ずさみつつ種選 | むべ |
四つんばひ這へば立てよの永き日や | かかし |
十二単母の好みし花なりき | こすもす |
暮春の旅沖の小島の細きこと | 愛正 |
行き合うも一会でありし花の下 | よし子 |
花吹雪くグランドゴルフの音にかな | はく子 |
ばらばらも番は伴に春の鴨 | 凡士 |
旧陸軍庁舎茶房に春惜しむ | はく子 |
花吹雪大玻璃窓に鄙の膳 | はく子 |
花吹雪山寺の鈴風に鳴る | よう子 |
カーテンを引きその向こうの初夏の風 | よし子 |
花爛漫の里山を訪うバスの旅 | はく子 |
松の花波寄せ返す幾年ぞ | たか子 |
貝寄風に乗る松籟や宿の朝 | たか子 |
野生牛の絶えず草食む春牧場 | 宏虎 |
春の海潮の流れの濃く薄く | わかば |
枝垂れては揺れるさくらの城下町 | よし子 |
落花ごとざりがに捕りの網早し | なつき |
走り根に座す人もおり花筵 | よう子 |
城池に満ちて色褪す花筏 | なつき |
実りよき僧のほまち田豆の花 | なつき |
囀や潮目くつきり二分す | わかば |
句仇は華道師範や源平桃 | こすもす |
がふがふと滝のごとくに飛花落花 | 素秀 |
小刻みに小枝揺るがす百千鳥 | 愛正 |
寄り道は夜桜灯りにいざなはれ | 素秀 |
苔岩を散り敷きにけり落椿 | 凡士 |
花万朶孤高に聳ゆ天守閣 | たか子 |
2022年4月9日 | |
大津絵の猫も鼠も春愁ひ | 凡士 |
人もなし川辺を滑る風光る | 愛正 |
花の土手ゆっくり歩く至福かな | こすもす |
花の城へツインビル中通り抜け | はく子 |
葺替への屋根に群れゐる結ひの人 | 凡士 |
鯖街道京への径を春時雨 | 凡士 |
早暁や誦経かきけす春疾風 | 愛正 |
手をつなぎ名札読み合ふ新入児 | なつき |
川面への明るき日差し水温む | わかば |
チューリップ背比べする歩道かな | むべ |
気がつかばいつか峠の蕨狩 | 愛正 |
越境の軍靴離さぬ春の泥 | 素秀 |
故郷は同じと納め四月馬鹿 | よう子 |
満開の花のトンネル海青し | こすもす |
暫くは花を愛でつつウォーキング | こすもす |
いつの間にかポピーに変わる辻花壇 | 素秀 |
囀のこぼるる中や樟大樹 | わかば |
一両車屋根に桜を散らしくる | 素秀 |