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ふと思ふあの日の空は五月晴 よし子
薫風や塔頭の屋根光り合ふ なつき

2022年6月4日

おおばこの花埋め尽くす山の寺 よう子
重なれる葉の隙に咲き朴の花 わかば
緑陰の深きにいつか和みをり わかば
堂縁に猫の餌皿梅雨の寺 なつき
車前草踏んで車のすれ違い よう子
茅花流し大淀川は蕩々と はく子
菖蒲園江戸系伊勢系お国柄 たか子
羅の駅中ピアノ音大生 かかし
作り滝都塵まみれの身にしぶく むべ
緑陰の中の伽藍や鐘響く わかば
豪雨来てわが庭泳ぐ蚯蚓かな むべ
麻酔覚め壁に曼荼羅舞ふ短夜 素秀
病廊に病気自慢の端居かな 素秀
蚕豆のこの淡白な乙な味 たか子
葉桜に堤の売店暇なこと 宏虎
海凪しおのころ島や夏霞 わかば
苜蓿キャッチボールを隠しけり ぽんこ
小満やビル街映す川明かり たか子
作り滝しぶきたばしる磊磊に ぽんこ
ハンカチの木の花まぶし古書店街 むべ
いささ川草生を浸す走り梅雨 愛正
羅でリハビリ散歩ハミングす かかし
ダブルダッチ大縄廻す薔薇広場 たか子
薔薇園と浪速の川とオムライス たか子
豌豆の卵とじ食む晩ご飯 宏虎
目高飼ふ鉢の並べり花街跡 なつき
ポスターの一隅はがれ走り梅雨 なつき
土手なぞえ埋めて紅白うまごやし はく子
冷房の顔のみ冷やす術後かな 素秀
植えたのはいつのことやら薔薇咲きぬ こすもす
旬の蕗小皿に盛りて舌鼓 宏虎
夏霞水脈引く沖の船の影 わかば
柔和なる石仏ならぶ青葉影 なつき
野薔薇咲く学校裏の秘密基地 愛正
藤房の見事に揺れて藤の棚 宏虎
ががんぼを追ふ老犬をさらに追ふ むべ
病院食慣れし頃には土用東風 素秀
石灯籠池の真中の花菖蒲 ぽんこ
迎へ梅雨土の匂いの田舎路 愛正
芦部銅山緑に染まり祠初夏 宏虎
カサブランカ滴る蜜の透きとほる むべ
池の端に小鴨つぎつぎ泳ぎいる ぽんこ
ヤマボウシ十個に満たぬ咲具合 こすもす
新米の教師立ちこぐ麦の波 愛正
山峡の早苗の水も大海へ よう子
翡翠に望遠レンズ魚キャッチ かかし
人影のごとき秘仏やご開帳 なつき
茶柱の新茶に笑まふ老夫婦 かかし
まつ毛にも扇にも似て合歓の花 こすもす
迎へ梅雨黄傘波うつ通学路 愛正
蝸牛フレーフレーと囃す子ら かかし
緑さす子はすくすくと歩み初む はく子
マンションや隣の田植えいつの間に よう子
茅葺の大屋根の千木夏の雲 よう子
ケアホームへ兄を見送る梅雨走り はく子
見渡せる菖蒲鉢の圧巻かな ぽんこ
術台に機械揃へる音涼し 素秀

2022年5月28日

並々と古茶をピカソのマグカップ なつき
閼伽桶の闇に舟虫好み入る 素秀
葯摘めば百合ゆつくりと開きたる むべ
カーネーシヨン暫くぶりと飾り窓 宏虎
アイスカフェ推敲したる句の幾度 たか子
茄子植うる使ひきれるか支柱丈 愛正
揚羽越ゆ国を上下に分ける河 素秀
雨意の風に百花若葉のざわめきぬ はく子
幹よじれ古木なれども藤若葉 ぽんこ
滝見茶屋座り直して深呼吸 かかし
グランドの黄昏染める金糸梅 ぽんこ
ひなげしの折りとるまでも無く儚な たか子
農家カフェランチを終へてハンモック かかし
実桜の赤に遅速や朝の風 むべ
苺捥ぐ屋根の雀の首傾ぐ かかし
抜け穴の固く錠閉づ若楓 ぽんこ
湯の郷で艶を光らす柿若葉 宏虎
無住寺の墓石を縫へり夏の蝶 なつき
田舎道信号守り遠足児 なつき
アトリエに緑雨と絵の具匂ひたる むべ
惜しげなく山肌見せし皐月富士 むべ
泥んこの砂場遊びや鯉のぼり こすもす
見あぐ目に突と落ち来る花あふち たか子
空青し代田に子等の声跳ぬる 愛正
沢登り岩肌撫づる谷若葉 愛正
畦沿いに水溢れでる堰浚へ 愛正
茅花みな呆けて海へ靡きけり こすもす
椋青葉翼のやうに広げたり なつき
大橋を宙に浮かべて夏霞 わかば
亀の池覗き込むごと花樗 ぽんこ
芍薬の牡丹と見紛ふばかりなり はく子
何はとも我が家に戻り新茶汲む たか子
ばら苑に隣る陶板美術館 はく子
籬より笑顔覗くや柿若葉 わかば
目に見えて樟の若葉の青さかな 宏虎
大き羽広げ青鷺突と飛ぶ はく子
壁落つる滝水浴びて陶板画 はく子
放課後のピアノ音わたる麦の波 愛正
ラヂオから緊急速報籐寝椅子 素秀
朴の花天に佳き香を放つなり わかば
母の日の似顔絵の口紅赤し なつき
かたつむり夜来の雨に軽やかに かかし
ぬくぬくの筍飯や旬のもの 宏虎
ランタンに影の震へる著莪の花 素秀
夏めきてビル街映す川明かり たか子
デザートに捥ぎたて苺白磁皿 かかし
大南風沖白波の異国船 素秀
公園の一角散らし松落葉 宏虎
弔いの煙ひとすぢ若葉冷 むべ
絹糸の細き花柄の小判草 ぽんこ
薔薇咲かせ招いてくれし友偲ぶ わかば
千両箱幾つ出来るや小判草 こすもす
苑は今木々の青葉に染まるなり わかば

2022年5月21日

頬杖の推敲いつか三尺寝 素秀
雨の中なぞへに添いて姫卯木 わかば
ウォーキング雨の上がりし柿若葉 こすもす
川下る棹の捌きや新樹光 かかし
木漏れ日と鳥語に和む夏料理 たか子
卯の花や雨の中ゆく美容室 わかば
囀りの木霊となりぬ夏木立 よう子
夏鶯県境越への谷渡り よう子
夏木立鍬を休めて鳥語聴く かかし
苔庭に影打ち重ね若楓 わかば
若葉して楠の大樹の軽くなる はく子
どこからか飛び来て庭に芥子の花 こすもす
句座真なかペットボトルの金魚舞ふ たか子
新緑や笑顔抱いて宮参り ぽんこ
葛餅や宇治十帖の和歌の皿 なつき
私にも色々有りて更衣 宏虎
刺さして月命日の薔薇切れり なつき
見あぐれば今年も咲きし泰山木 宏虎
髪あらふ卯の花腐し白じらと たか子
歩板より手の届きそうあやめ草 ぽんこ
式部かと思ふ影あり青簾 素秀
検査終へ医師の笑顔に新樹光 かかし
寡黙なる夫婦足早菖蒲園 なつき
夏雲と浅間噴煙入り交じる 愛正
若葉風亡夫の郷の無人駅 むべ
蝶柄の日傘歩けり菖蒲園 なつき
花は葉に展望きかぬ遊歩道 愛正
夏の灯にひらくホテルの聖書かな むべ
葉桜や影踏み遊ぶ紅白帽 愛正
街路樹の膨らむ緑輝けり ぽんこ
神苑の杜を和ます若葉雨 愛正
目と心癒やす若葉と家の猫 こすもす
古茶新茶昔馴染みの輪のほぐれ たか子
雨兆す雲に芍薬首伸ばす はく子
桐の花紫淡き城址かな わかば
アンテナてふ定席につく四十雀 むべ
野良着にて木陰で新茶卒寿翁 かかし
時ならぬ紅色もあり若楓 たか子
木下闇森なすヒマラヤ杉大樹 はく子
トンネルの青葉の出口疎水船 よう子
絶景かな南禅寺の青楓 よう子
綾目持つ花をあやめと教はりぬ はく子
若葉風そよと地蔵のよだれ掛け 愛正
祠へと続く小道や竹の秋 わかば
鳥語降る下闇深き義士の墓 ぽんこ
蔵前に曳かねど山車の試し組み なつき
大木の根本の崩れ木下闇 ぽんこ
義母も吾も五月に夫を亡くしけり むべ
最果の菜の花畑無人駅 宏虎
時鳥鳴きて山路に豆腐買ふ 素秀
比叡を目路ばら咲き誇る香の中に はく子
若葉風老人会のフラダンス かかし
退院や人手足りぬと新茶摘む よう子
甲山夏霧降リて所在なし 宏虎
陰る雲に風を見せ行く夏の月 素秀
月涼し夜より黒き喪服かな むべ
水際に松風の来て青田かな 素秀
戦前の我われがいて昭和の日 宏虎

2022年5月14日

新社員動く歩道を駆けてをり かかし
鶯や鳴きつぐ寺の奥の院 わかば
新緑の道幅広き御所通り ぽんこ
桜桃や太宰ゆかりの散歩道 むべ
ひらがなのスコアボードやこどもの日 かかし
退院の家居のうれし夏初め たか子
こどもの日料理手伝ふ一年生 かかし
初鰹焙る藁の火美味そうな 宏虎
太陽の軌道正しく夏の海 宏虎
ご開帳合はす手解かぬ媼かな なつき
夏木立ぼっちキャンプの花ざかり たか子
玻璃越しの初夏の日差しや縁の猫 こすもす
寺門を入りて十歩や花御堂 なつき
御所の門しかと守りぬ犬ふぐり ぽんこ
薔薇アーチ華やぐ飲み屋夜よりも ぽんこ
漣の代田や山と白い雲 こすもす
若葉風バスはゆっくり苑巡る はく子
苑内のあふれんばかり若葉萌ゆ はく子
夏手袋取りて甘茶の柄杓受く なつき
行厨は風車の丘の花の園 はく子
若楓彩深めつつ日を返す わかば
孫とライン算数遊びやこどもの日 こすもす
夏近し水陽炎の大玻璃戸 よう子
通し鴨ここと決めたる水の辺に たか子
猫寿を飼ひし昔や若葉風 宏虎
万緑にお告げの鐘の鳴り渡る むべ
暮れなずむ道に浮かぶは鉄線花 むべ
吾の捥ぎし苺をジュース農家カフェ かかし
配達夫来て子燕のへの字口 素秀
東山京の町々五月来る ぽんこ
三叉路を過ぎし山道若葉雨 愛正
菖蒲挿す軒なき家や子三人 よう子
御田植えの水に伏する氏子かな 素秀
丘膨らむ斑模様の若葉かな 愛正
宇治駅舎しばしは燕のアパートに はく子
薫風や野外授業の黄色帽 愛正
母の日や宅配便は弟より よう子
心字池囲む躑躅の色競ふ わかば
若葉風ひと揺れわっと鳥騒ぐ たか子
高層ビル隙間に射しこむ新樹光 ぽんこ
花御堂過ぐるスタンプラリーの子 なつき
編み込みの子の大人びて新樹の夜 素秀
青銅の伽藍覗かせ新樹かな わかば
癒えてゆく日にち薬や花水木 たか子
ケア施設一本道の花は葉に 愛正
山藤を揺らし入線無人駅 愛正
花は葉に休み堤防散歩する 宏虎
建屋内ガラス製品夏めきぬ 宏虎
ミルトスの梢切らるるみどりの日 むべ
ビロードの如き薔薇の名バーグマン はく子
石段のしり取り遊び柿若葉 よう子
画学生遠近法の渓若葉 かかし
堂守の木魚打ち継ぐ花まつり なつき
なだらかな川に逆さの若葉山 こすもす
文豪の入水場所とや草茂る むべ
杜若鏡池へと影深く わかば
陰影にかたち成したる白牡丹 素秀
白壁の土蔵を揺らす代田寒 よう子
足早にゆく葉桜の遊歩道 素秀

2022年5月7日

手に数ふ向日葵の種乾きたる 素秀
雨上がり耀ふ樟の若葉かな わかば
意外なるところにひそと藤の花 こすもす
山肌を領し石楠花盛りなる わかば
棚田保全園児も入りて田植笠 かかし
真新し如雨露の色の浅緑 むべ
丹沢の山並みに雲清和かな むべ
囀の途切れぬ森のミュージアム わかば
野地蔵の台座は厚し花筵 愛正
参拝道薄日にけぶる杉の花 愛正
蚕豆の鞘逞しき自由かな 素秀
水底に犇く命蝌蚪の紐 わかば
耳立てて主待つ犬青葉風 なつき
橋上のいつしか消えた道おしえ ぽんこ
園児らの小鮎放流村起し かかし
新緑や魚板一打に若き僧 よう子
野遊びや小さき木橋を一跨ぎ なつき
本読みて開きしままや明易し むべ
青空へ光返して若楓 わかば
若葉風メタセコイヤの整列す はく子
藤棚の下に集合ゲームの子 たか子
クローバーの花冠の忘れ物 はく子
紫外線避けて二重の春ショール こすもす
遠目にも大きく膨らむ楠若葉 ぽんこ
一面のしろつめ草を踏み行けり はく子
街路樹の従者のごとくに芥子の花 ぽんこ
水すまし水輪重ねし心字池 よう子
縁側で鶏遊ぶや田打どき 愛正
麦の風隣部落の選挙カー 愛正
撫で蛇の光る頭や青葉闇 なつき
田水張る目の輝やける老夫婦 かかし
猫の目線追へばヒラヒラ舞ふ蝶々 こすもす
足生えし蝌蚪二筋の土煙 なつき
長閑なる縁にくの字の老婆かな 愛正
辻占がラジオ聞きゐる春の昼 なつき
更衣出して鞄へ旅支度 むべ
開き直る検査結果や芥子の花 ぽんこ
絡み合ふ実沢山の野えんどう よう子
黒猫が宮の主や著莪の花 ぽんこ
我が影を蟻は引きゆく羽根骸 素秀
木喰仏満願の寺初あやめ よう子
碧環と言い当てし友得意顔 こすもす
隧道を山のものとし蔦茂る 素秀
造り滝ながら豪快苑若葉 はく子
と見る間に一気呵成や田水張る かかし
水口に堪えてをりぬ余り苗 素秀
新玉葱香りも添へて農家カフェ かかし
退院日決まりてよりの穀雨かな たか子
新樹光メタセコイヤの並木道 はく子
見下ろせばパセリの林立夏木立 たか子
青蘆のそよぐ中洲はサンクチュアリ むべ
牡丹や檀家少なき寺を守る よう子
衣替え身を出す事に馴れずゐる たか子
何層も紅のぼうたん濃き薄き たか子

2022年4月30日

せせらぎの羽化したばかり蜻蛉飛ぶ ぽんこ
青葉影研ぎ師の軽き音立てて なつき
樟大樹園の一水蝌蚪の池 ぽんこ
画材屋の日除け斜めに燕来る むべ
田鼠化して親指ほどのうづら雛 素秀
名も知らぬ木々に咲きたる懸り藤 愛正
山つつじ杣を彩る日脚かな ぽんこ
庭のどか裸地を啄ばむ雀舞う 愛正
小手毬の垣根を揺らしすれ違ふ よう子
病窓に街動き出す音おぼろ たか子
庭石を覆ひて垂る藤の花 わかば
グランドは蒲公英だらけキックオフ こすもす
針を刺す血管青く春眠し たか子
幹と皮捩れ万朶の藤の花 よう子
コウノトリ翔る城下や八重桜 こすもす
松風の届く庭園藤垂る わかば
造幣局通り抜けはも予約制 はく子
亀鳴くやナースをオイと呼ぶ輩 たか子
運動場子等の背に背に散る桜 愛正
藤の花雫とどめて雨の後 わかば
入りてすぐ出る藤棚の雨宿り よう子
男どち野球論戦躑躅燃ゆ よう子
遠足の象の長鼻揺れにけり 宏虎
石楠花や静寂やぶる園ブロアー ぽんこ
濁世てふ閂外し目借時 かかし
一本に紅白咲かせ桜花 わかば
穀雨てふ農道駆ける耕運機 かかし
理髪師の剃刀頬に目借り時 素秀
新緑や朝日のまぶし谷向かふ よう子
ゴリラ前歯を剝き胸手遠足兕 宏虎
花筵四隅を占むる車いす 愛正
鳥影に見上ぐ真青や復活祭 むべ
応答はクレッシェンドに囀り むべ
杜若ひそと咲き初む神の池 なつき
天地に倦みて菜の花蝶と化す 素秀
蝶追ひて母の呼ぶ声聞こえざる なつき
朧なる世界へ深く麻酔吸う たか子
金縷梅や池のほとりの亀の首 ぽんこ
藤の香に寄り来る虫も酔ひたるか はく子
山吹の垣を隠して盛りかな わかば
濃淡の緑様々山笑う こすもす
城山の雨に佐保姫門を出づ 素秀
うたた寝の膝にリモコン春日和 愛正
城目路のビジネスパーク芽木の道 はく子
大巾にアップの歩数若葉風 かかし
濃き淡き長き短かき苑の藤 はく子
赤黄白百万本のチューリップ かかし
終電の無人駅村朧月 宏虎
四阿にかそけき葉擦れ目借時 かかし
志賀直哉旧宅今や菜の花忌 宏虎
コートブラシ使う生徒へ綿毛かな こすもす
緑摘む脚立の上の大あくび 素秀
贔屓歌手の色紙に夢や山笑う こすもす
仔猫生まる住宅街の理髪店 宏虎
青葉風二歳児乗らぬベビーカー なつき
神名備の大樹捉へて懸り藤 はく子
春愁と言ふまい吾の経験値 たか子
灌仏の肩はや乾き夏兆す なつき
朝ドラのダイジェストみる霾ぐもり むべ
古民家に語り部の来て春の宵 むべ

2022年4月23日

寿老神光背に侍る白躑躅 ぽんこ
湯煙の露天に浸かり春惜しむ 宏虎
気紛れな気圧配置や春暑し こすもす
参列を許さるる葬花の塵 むべ
山吹や石の窪みの水に散る 愛正
筍の鍬傷うすく落としたり なつき
川に沿ひ歩を進めるや春の闇 わかば
渾身の鍬に筍飛び出せり よう子
桜蕊降る地を染める神の庭 ぽんこ
花冷えの雨に鎮もる城址跡 素秀
新緑に日の斑揺れる神の森 ぽんこ
配る顔浮かべ筍茹でこぼす なつき
助手席の差し込む光目借時 愛正
万葉の歌碑公園や春の逝く はく子
春惜しむ卒寿の早し瞬く間 宏虎
泥こぼし届く筍まだ温し なつき
桜蕊石燈籠に観音像 よう子
匍匐して膝の冷たきれんげ草 素秀
幼子の遊びはやまず蛙の子 愛正
ネクタイを幾度も直す新社員 かかし
夕間暮れて落花浮き立つ山の風 よし子
卒業生羅針盤無き船出せん かかし
春愁ひと言ひつ幸せそうな女 よし子
花屑の溢る托鉢親鸞像 かかし
悲喜語る婚五十年花の膳 たか子
大枝垂る花も馳走の宿の膳 はく子
環状線三周廻る目借時 かかし
霾晦おのころ島の影薄く わかば
たんぽぽの頭抜けてひとつ大き絮 素秀
黄水仙あるじホームに入居せり むべ
下校子の筍飯と言い当てり なつき
チューリップまつり三年振りに開園す こすもす
初燕土だけ残し廃れ窯 よし子
父母訪わむ墓石にすみれ開く頃 素秀
取り合うて鞦韆ついに揺れやまず たか子
城下町ぎっしり牡丹桜かな こすもす
土の香を立てて過ぎゆく春驟雨 愛正
鐘朧身の引き締まる永平寺 宏虎
惜春や吾娘きかせたるビブラート むべ
微睡ろまぬ蝌蚪の泳ぎに希望あり 宏虎
抜きんでて生家の椿千灯す はく子
ヘルメット脱ぐ長髪に花の風 よし子
水草の揺れにいざなう蝌蚪の群れ 愛正
定休日と吊り橋閉され山笑ふ はく子
少しずつ違う色合い新若葉 こすもす
おほらかに生きて逝かれり花の冷え わかば
筍の皮剝く夫のどこまでと なつき
休耕田園児手植へのチューリップ かかし
つれづれに古書店覗く日永かな わかば
虎杖はリュックに刺され下山せり よう子
亀の鳴く声の聞こえて来し八十路 よし子
家籠もりコロナの次の菜種梅雨 こすもす
邸宅は美術館へと花蘇芳 よう子
チャンバラごっこ捨て虎杖の無残かな よう子
宮の森籬に混じる躑躅かな ぽんこ
うなだれて黒き土見るチューリツプ 素秀
ひと夜さの窓に松籟春の宵 たか子
亀鳴くや山城険し男坂 たか子
受洗せし笑顔の友と青き踏む むべ
野も山も彩を重ねて春深む わかば
桜散る真っ青の空拡がれリ 宏虎
サイレンに震へる夜の朧かな むべ
コロナ禍も三歳となりぬ花は葉に ぽんこ
花鳥のほつ枝しず枝と忙し気に はく子
これしきに何故気を揉むか春の宵 たか子

2022年4月16日

用水のせせらぐ音色春終る 愛正
春愁や母校の名前消滅す こすもす
鴨のこる池広々と薬草園 よし子
遠き目の犬は落花のただなかに 素秀
風の来て掃けども掃けど春落ち葉 宏虎
ベランダに豌豆の花良く育ち こすもす
緑立つ巽櫓の美しく わかば
燕翔ぶ神戸にハラール専門店 凡士
縁側に猫の百態春日向 宏虎
花に来ておほらかなりし友のこと わかば
早暁の木々に耳当て桜守 かかし
三世帯入学式のハイチーズ かかし
花つぼみ香具師は屋台の場所取りす よう子
ポットの湯飲んでベンチに落花浴ぶ なつき
近づくと見えて離るや花見船 よう子
小暗さや出土の古墳涅槃西風 たか子
大仏堂遠足兕をば呑みこめり 宏虎
海神の声ぞ知覧の桜かな 素秀
囀りやおのころ島の花の丘 たか子
囀りに朝のはじまる庵かな 愛正
帰宅後に名を思い出し花ミモザ こすもす
千木の家家紋高だか花の村 よう子
春落葉掃かれぬままに茶室閉づ なつき
ゆっくりと肩の濡れ行く芽吹き雨 よし子
鍬に顎預けし農夫花吹雪 かかし
マラソンに挑む卒寿や風光る かかし
花吹雪総身に浴びて浄土とも はく子
木瓜の花朱色の濃さや生き生きと 宏虎
燕来て糞落とすなり無人駅 愛正
花万朶人を酔わせて鳥もまた わかば
大き絵を離れ眺むる春の昼 むべ
新入生来たり廃部の危機脱す むべ
蘖や校舎に耐震補強あり 凡士
チューリップ開ききつたる花時計 むべ
菜の花に色揃ひたる電車かな むべ
村と村繋いで桜屑の道 素秀
検眼のCのいろいろ燕来る 凡士
讃美歌を口ずさみつつ種選 むべ
四つんばひ這へば立てよの永き日や かかし
十二単母の好みし花なりき こすもす
暮春の旅沖の小島の細きこと 愛正
行き合うも一会でありし花の下 よし子
花吹雪くグランドゴルフの音にかな はく子
ばらばらも番は伴に春の鴨 凡士
旧陸軍庁舎茶房に春惜しむ はく子
花吹雪大玻璃窓に鄙の膳 はく子
花吹雪山寺の鈴風に鳴る よう子
カーテンを引きその向こうの初夏の風 よし子
花爛漫の里山を訪うバスの旅 はく子
松の花波寄せ返す幾年ぞ たか子
貝寄風に乗る松籟や宿の朝 たか子
野生牛の絶えず草食む春牧場 宏虎
春の海潮の流れの濃く薄く わかば
枝垂れては揺れるさくらの城下町 よし子
落花ごとざりがに捕りの網早し なつき
走り根に座す人もおり花筵 よう子
城池に満ちて色褪す花筏 なつき
実りよき僧のほまち田豆の花 なつき
囀や潮目くつきり二分す わかば
句仇は華道師範や源平桃 こすもす
がふがふと滝のごとくに飛花落花 素秀
小刻みに小枝揺るがす百千鳥 愛正
寄り道は夜桜灯りにいざなはれ 素秀
苔岩を散り敷きにけり落椿 凡士
花万朶孤高に聳ゆ天守閣 たか子

2022年4月9日

大津絵の猫も鼠も春愁ひ 凡士
人もなし川辺を滑る風光る 愛正
花の土手ゆっくり歩く至福かな こすもす
花の城へツインビル中通り抜け はく子
葺替への屋根に群れゐる結ひの人 凡士
鯖街道京への径を春時雨 凡士
早暁や誦経かきけす春疾風 愛正
手をつなぎ名札読み合ふ新入児 なつき
川面への明るき日差し水温む わかば
チューリップ背比べする歩道かな むべ
気がつかばいつか峠の蕨狩 愛正
越境の軍靴離さぬ春の泥 素秀
故郷は同じと納め四月馬鹿 よう子
満開の花のトンネル海青し こすもす
暫くは花を愛でつつウォーキング こすもす
いつの間にかポピーに変わる辻花壇 素秀
囀のこぼるる中や樟大樹 わかば
一両車屋根に桜を散らしくる 素秀



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