句敵の顔さやけしやテレ画面 | せいじ |
福祉自動車行く先々の木犀香 | うつぎ |
蜘蛛の子のとことこ歩む秋灯下 | なおこ |
煤光りせる古民家の秋灯 | うつぎ |
知己と酌む秋灯ひとつ共にして | みのる |
清けしや筆伸びやかに納経帳 | よう子 |
配達のレシピを添へて今年米 | かかし |
一つ熟る朱欒の重き苗木かな | なつき |
秋灯し連子格子の塗師の家 | よう子 |
一叢の露草みんな日に向ける | うつぎ |
血管の浮き出た手撫づ秋灯下 | なつき |
ハイキング女子に囲まれ秋の蝶 | 小袖 |
秋の灯にエンジン休め路線バス | 小袖 |
秋灯や研究棟の窓の松 | 豊実 |
ズームもて祈りを繋ぐ秋灯下 | せいじ |
窯変のうねりをなぞる秋灯下 | 素秀 |
2020年9月 | |
慰霊碑に額づきをれば秋の声 | みのる |
猪除けの扉軋むも秋の声 | せいじ |
辻々に頭を下げて秋遍路 | 素秀 |
草衣路傍の石に秋の声 | よう子 |
秋晴の一湾われの小手のうち | みのる |
源流のさざ波の音に秋の声 | かかし |
干しかごに落花生干す島の宿 | なつき |
新米の一箸に笑む夕餉かな | 豊実 |
秋日差し届かぬ洞の無縁仏 | よう子 |
盆の月照らす実家に母ひとり | 更紗 |
乳吸ひしまま嬰ねむり秋の声 | 更紗 |
片耳のイヤホン拾ふ秋の声 | 素秀 |
かしぎたる案山子深々野球帽 | 素秀 |
五時に鳴る島のカリヨン秋の声 | うつぎ |
顔払う婚活アプリ秋の声 | 豊実 |
風と波無限の中の秋の声 | なつき |
渾身の力瘤にて鳳仙花 | かかし |
盆栽の林の一葉紅葉づれり | よう子 |
秋の声学園祭の後始末 | 豊実 |
ダム湖へと続く岨道秋の声 | せいじ |
秋の声石燈籠に灯の点り | うつぎ |
天高く叫ぶやガッツポーズして | みのる |
砦跡葉擦れにまじる秋の声 | なつき |
広縁に足投げ出せば秋の声 | せいじ |
どこかよりピアノのワルツ涼新た | 更紗 |
生家へは海沿ひの道秋の声 | うつぎ |
新米に卵を添へて神棚に | かかし |
2020年4月 | |
落花また落花や我に句敵に | うつぎ |
春雨の静かに濡らす礁かな | わかば |
チューリップ園撤去されたる案内板 | こすもす |
緊急宣言聞く静かなる花の昼 | なつき |
海風やつつじの寺は人疎ら | こすもす |
著莪の咲く竹工房の出入口 | せいじ |
落椿ダム湖に秘めし物語 | うつぎ |
春塵にあらず火葬のうす煙 | みのる |
鶴翼の陣形めきし若楓 | せいじ |
徒長枝の負けじと花の十輪や | かかし |
タンポポに埋る土橋やな渡りそ | よう子 |
重き世にピンクムーンてふやさしき名 | もとこ |
春の空山路喘ぎつ陶の里 | わかば |
塩田の跡に遍路の鈴進む | 素秀 |
青空ももう夕空に遠さくら | よし子 |
黒き幹園を統ぶる楠若葉 | ぽんこ |
旧家並む村の細道遅さくら | はく子 |
街なかに残る里山夏うぐひす | 菜々 |
川幅にいつしか広がる花の塵 | ぽんこ |
ランタンとせる竹筒に花の屑 | せいじ |
初蝶来野面スキップするごとく | みのる |
神域に品良くつつじ咲きにけり | 宏虎 |
みつばつつじに染まる山寺鐘響く | こすもす |
飛花落花真つ只中の余生かな | よし子 |
春雨のけぶれる古都の一日旅 | わかば |
滑り台勢いしりもち山笑ふ | 菜々 |
菜の花や水ぎわせめて大河如 | もとこ |
夕桜白く崩るる砂の城 | なつき |
夜桜へ光届けと星一つ | 満天 |
山つつじコロナ避難の能勢路かな | よう子 |
幼馴染マスクをつけて声かける | ぽんこ |
畦塗って柏手を打つ農夫たち | かかし |
春の土手網の向こうに馬疾走 | もとこ |
書淫の目庭に遊べば初蝶来 | みのる |
山寺の難所遍路をころがせり | 素秀 |
朝桜樹間にまみへる立観音 | ぽんこ |
躑躅山中で聞こゆる女声 | 宏虎 |
川普請於大城址へ響きけり | なつき |
遍路笠二つ舳先に渡し舟 | 素秀 |
里山の裾辺あかるめ今年竹 | 菜々 |
養生の桜はらはら散り継げり | なつき |
新入生施錠の門でブイサイン | かかし |
春昼や釣り人に添ふ猫の居て | わかば |
園児らの手植えの花壇初蝶来 | みのる |
鼻息で落花飛ばせりレトリバー | なつき |
雪洞のなき川沿ひの桜かな | 満天 |
磯遊びかかるしぶきも何のその | こすもす |
犬吠へて桜散るらん夜の道 | 満天 |
園庭の花の中から滑り台 | 菜々 |
一陣の風にてつつじなびきけり | 宏虎 |
わが町をゆるゆるめぐり春惜しむ | 菜々 |
花筏風に吹かれてもどり来し | よし子 |
花吹雪湖底の村の望郷碑 | よし子 |
文豪の碑へさめざめと桜散る | せいじ |
対岸のけぶる島影春の雨 | わかば |
のんびりと稜線連ね山笑ふ | よし子 |
満目のつつじ咲きゐて仰ぎけり | 宏虎 |
たんぽぽの黄の連なりて野の小道 | よし子 |
応援のポップ背を押す花遍路 | 素秀 |
普段着の写真送るる春の門 | もとこ |
白雲を飛ばし山々大笑ひ | はく子 |
名水に合掌したる遍路かな | 素秀 |
木登りの樟の老い木や風光る | なつき |
空中に留めおきたき花吹雪 | よう子 |
坂に咲くひとかたまりの山躑躅 | 宏虎 |
犬吠える石楠花の寺訪ねけり | こすもす |
ボランティアの背ナに屋号の桜守 | かかし |
夕日差す桜祭りの雪洞に | せいじ |
昨夜雨に銀杏若葉の出そろひぬ | はく子 |
晩春の竹林深くショベルカー | せいじ |
花惜しむ離れ離れや土手堤 | もとこ |
花吹雪少し遅れて風の音 | よう子 |
吸い殻の落ちしベンチや花の冷え | なつき |
息合はせ夫婦の野良仕里桜 | うつぎ |
みつばつつじなぞえの径はジグザグに | こすもす |
普段着の写真送るる春の門 | もとこ |
雨に浮く落花に歩道華やげる | はく子 |
実演の蕗味噌試食道の駅 | かかし |
沖のカヌー色とりどりや磯遊び | こすもす |
飛機降りて迎えけるかな土手桜 | もとこ |
曇天に金縷梅いよよ赤く染め | ぽんこ |
仄暗き裏参道の落椿 | せいじ |
山寺の応答のなき春障子 | よし子 |
小さき葉芽いずれいてふの形して | はく子 |
山寺に春告げる楽耕運機 | よう子 |
花吹雪浴びんと次の風を待つ | うつぎ |
島陰の汽笛くぐもる春の暮れ | もとこ |
木喰の一木彫や雪柳 | かかし |
一樹にして広前埋む落花かな | みのる |
花吹雪スローシャッターの眼となりぬ | よう子 |
無住寺の扉の堅し紫木蓮 | よう子 |
沿線の風圧耐へる桜並木 | ぽんこ |
山荘で句会はならず山躑躅 | 宏虎 |
春愁伝言板の中止札 | かかし |
夕空へかすかに揺れて花淡し | 満天 |
散る花に水玉模様の遊歩道 | はく子 |
背を向けてバスの春塵やり過ごす | みのる |
一渓へ迫り出す花のカフェテラス | みのる |
広田山薄紅色の山つつじ | 宏虎 |
チューリップ十万本といふ開花 | わかば |
発進す車の行く手花の塵 | ぽんこ |
水底に影を落とせり花筏 | うつぎ |
汐風に松の香混じる遍路道 | 素秀 |
おおどかに鳶の輪数ふ春の空 | わかば |
声低く懺悔聞こゆる遍路宿 | 素秀 |
尻振りて競歩の夫婦たんぽぽ黄 | うつぎ |
糸柳鯉の背びれをなづるまで | はく子 |
老桜幹の虚ろを覗き見る | うつぎ |
2020年3月 | |
この時季と探す川原の土筆かな | わかば |
蜷の道人生急ぐこと勿れ | うつぎ |
春雨や山々の色薄みどり | わかば |
子ら集ふ狭き駄菓子屋あたたかし | なつき |
水松の気根にょきにょき春の泥 | うつぎ |
万霊を祀る碑に梅芳しき | みのる |
大手門額縁にして春の城 | たか子 |
千の梅八重波なして丘埋む | みのる |
廃屋の軒に顔出す雀の子 | 素秀 |
登山口の左手に桑の芽吹きをり | こすもす |
淀川の湾処を今に囀れる | はく子 |
馬酔木咲く絵馬清明の五芒星 | よう子 |
畔道は春の七草花盛り | はく子 |
天守背に風の意のまま雪柳 | ぽんこ |
小雀のまろび遊べる庭の端 | 素秀 |
老農夫夕日に春耕余念なし | はく子 |
モニュメントは鳥の形や春の空 | こすもす |
思ひ思ひに飛び立ちさうや辛夷の芽 | うつぎ |
つんつんと出て柔らかし菖蒲の芽 | うつぎ |
見はるかす淀の岬鼻風光る | 菜々 |
春の雨香燻らせて書に籠る | わかば |
風渡るとき煌めける春の池 | せいじ |
豆の花貸農園のつるに舞ふ | はく子 |
ここだよと小さい尖り菖蒲の芽 | 小袖 |
故郷は懐かしきかな春怒涛 | こすもす |
起伏野に点在したる野梅かな | せいじ |
小雀や乾いた砂に潜りたる | 素秀 |
梅散りて青天へ枝駆けのぼる | たか子 |
マスクして手持ちぶさたの香具師立てり | なつき |
五輪マークかたどる園の春落葉 | ぽんこ |
コンビニの屋根は墨色雛の町 | なつき |
東風吹けど狛犬の尾なびかざる | よう子 |
水温む水面に青き空写し | 満天 |
嬰抱いて中山詣で梅日和 | みのる |
又一人春のベンチは入れ替わり | 小袖 |
ミキサー車について蛇行す笑ふ山 | なつき |
マスクへと香煙扇ぐご縁日 | なつき |
鐘楼より見るゴルフ場霞越し | こすもす |
黄信号は点滅中や青麦田 | こすもす |
くず米を拾ふ小雀親雀 | 素秀 |
育めんのパパ等は若し園うらら | 小袖 |
大木にしがみつきたる花豌豆 | ぽんこ |
初花を見上る母の車椅子 | わかば |
休校の子ら平日の梅見かな | せいじ |
なぞり読む蕪村が句碑の暖かし | 菜々 |
土筆摘む夫の指先灰汁に染む | わかば |
雉啼いて道はこれより奥院へ | みのる |
城門の漆黒の鋲春寒し | たか子 |
梅見には遅きに訪うて城めぐる | たか子 |
梅林に入るや否や匂ひけり | せいじ |
自転車でふたり遠出す梅林へ | せいじ |
休校と鎖されし鉄扉初ざくら | みのる |
友好の蘇州庭園芽の柳 | うつぎ |
車椅子母と見上ぐる初桜 | わかば |
うららかや厠に隣る弁財天 | うつぎ |
声のして仕事の手止む雀の子 | 素秀 |
信号待つ揺れどほしなる雪柳 | 満天 |
真新しい横断歩道に春の泥 | こすもす |
囀の野外の椅子でミニ句会 | ぽんこ |
菖蒲の芽残し園丁にじりゆく | よう子 |
顔出して猫の在知る雀の子 | 素秀 |
岬鼻をたたく白波春浅し | 菜々 |
お出ましはアヒルの三羽水温む | 小袖 |
日矢さして羨道しるき梅の影 | みのる |
潮風に半眼座する雀の子 | 素秀 |
茎立ちの黄花明るき畑の隅 | はく子 |
春うらら地蔵堂ベンチの媼たち | 満天 |
苑真中のマリア像へと春日燦 | 満天 |
鯱の見上げる天守梅の花 | ぽんこ |
草青む畔をそぞろに産土へ | はく子 |
片側通行の漁火ライン山笑う | こすもす |
観梅や双子のベビーカー押して | せいじ |
梅日和父に抱かれて泣き止みぬ | よう子 |
春泥に屈み園丁手の忙し | うつぎ |
行厨やズボンの蟻を弾きけり | よう子 |
大池の日を呑むごとく春の宵 | せいじ |
残る鴨人目につかぬ濠が好き | たか子 |
土筆野といひたきほどの河原かな | わかば |
百々御所の皇女の愛でし古雛 | よう子 |
藪の黄やスマホで名知る園の春 | よう子 |
あたたかや淀のわんどに跳ねるもの | 菜々 |
青空を冠として梅の丘 | みのる |
春の空何処まで青く大風車 | ぽんこ |
萬屋の帳簿机に明治雛 | なつき |
春風に句碑の白文字流るごと | 菜々 |
曲水の光まとへり梅の花 | なつき |
行き行きて蕪村が長堤青き踏む | 菜々 |
七草を口ずさみつつ春の土手 | はく子 |
蜷の道すんなりいかぬものばかり | 小袖 |
かわたれ時雲の通い路白木蓮 | ぽんこ |
2020年3月 | |
吾も春の野に下り立てば紫に | はく子 |
啓蟄や色とりどりの掲示板 | 満天 |
まどろみのごとくに涅槃したまへる | みのる |
のどけしや石段登る鈴の音 | 素秀 |
指さして児が数えたる残り鴨 | なつき |
スマホから投句してみる | みのる |
記念館黄の花柄の日傘売る | 宏虎 |
幾たびも転居の我が家鳥帰る | たか子 |
新句会へ弥生七日の空晴れて | 菜々 |
屋上の東西南北山笑ふ | こすもす |
涅槃寺絵解きの僧のカンニング | よう子 |
アフガンにいのちを捧げ紅葉散る | せいじ |
春の雪見上げる高さより生るる | たか子 |
春風裡高虚子の碑に対しけり | みのる |
朧月掴めば雫垂れるごと | 素秀 |
春寒しそよりともせず竹林 | 菜々 |
三月の空の巣となる部屋一つ | よう子 |
固まりて咲きし菫の自己主張 | よう子 |
水を蹴り助走の鴨は飛機のごと | ぽんこ |
漣に揉まれ散りたる落花かな | こすもす |
往く道に菜の花植ゆるプランター | 宏虎 |
復活の摂理大地の草萌ゆる | みのる |
春耕や残る一枚休耕田 | 素秀 |
格子窓斜に貫きて冬日さす | せいじ |
城早春お濠は碧き水湛へ | 菜々 |
初雛や一升餅の筆えらぶ | なつき |
山道の雪間雪間を辿りけり | こすもす |
春風にからんころんと祈願絵馬 | 満天 |
梅の丘太陽の塔微睡みぬ | よう子 |
御代らんまん畑の菜くづも花つけて | 菜々 |
啓蟄の大地漫画の描かれけり | みのる |
編隊の足長蜂の唸りたる | 素秀 |
産土に紅白梅の盛りなる | はく子 |
春寒をホットレモンで癒やしけり | 満天 |
主亡き書斎のソファー春愁 | 宏虎 |
さよ更けてオリオン星座冴かへる | はく子 |
花の寺若き作務衣は下足番 | こすもす |
鳥獣花を差しのべ涅槃絵図 | うつぎ |
倒木は倒木のまま山眠る | せいじ |
涅槃図のアーナンダに似し絵解僧 | うつぎ |
離陸機の引きも切らずよ風光る | はく子 |
雨戸なき新居の窓や春日燦 | なつき |
ものの芽に素十のこころ通ひけり | みのる |
ろうそくを兄が吹き消す初雛 | なつき |
倒木の逆立つダム湖山眠る | せいじ |
福福とみな粧ひて四囲の山 | せいじ |
雪山に春の夕焼け滝をなす | はく子 |
春なれや名も無き山のうすがすみ | はく子 |
姿見の慣れぬスーツや春の朝 | よう子 |
ぼんぼりの灯りてよりの夕桜 | こすもす |
亡き母といつか来た丘よもぎ摘む | 菜々 |
里のどか槌音のどか棟上がる | 菜々 |
春寒の庭にまみえしマリア像 | 菜々 |
リハビリの患者まばらや春寒し | 満天 |
せせらぎに和してこでまり揺れやまず | 満天 |
盆梅の枝越し探るキープ札 | 素秀 |
春寒し学び舎よりの声もなし | 満天 |
大水菜畑に残るは奔放に | うつぎ |
行き帰り春のあられに見舞われて | はく子 |
街路樹につづく華やぎ花水木 | 満天 |
渓流を滑り落ちたる山椿 | 素秀 |
司馬邸の花菜明かりに昏れなずむ | 宏虎 |
梅林を離れても風匂ひけり | うつぎ |
賑わっていて静かなる梅見かな | たか子 |
賀状書き終へて安堵の仕舞風呂 | せいじ |
深海魚漂着の浜風花す | こすもす |
うまごやし鳩も雀もくつろぎて | ぽんこ |
寒禽の鋭声に覚むる山泊り | せいじ |
もごもごとマスクの動くつまみ食ひ | なつき |
司馬邸の枝さし交し春日和 | 宏虎 |
兄妹の取り合ふ雛の砂糖菓子 | なつき |
春遊木立の中の独演会 | ぽんこ |
つちぐもり海の青色失せにけり | こすもす |
梅香や揺れるピアスの老婦人 | よう子 |
祖母の忌に紅梅ほのか匂ひたる | 素秀 |
菜の花忌蔵書二万と感心す | 宏虎 |
咳こぼつ電車の客の視線浴ぶ | よう子 |
ブランデーグラスはレンズ水中花 | みのる |
病癒ゆ父を待ちけり雛納 | なつき |
文豪の書斎明るく菜の花忌 | 宏虎 |