声低く懺悔聞こゆる遍路宿 | 素秀 |
尻振りて競歩の夫婦たんぽぽ黄 | うつぎ |
糸柳鯉の背びれをなづるまで | はく子 |
老桜幹の虚ろを覗き見る | うつぎ |
2020年3月 | |
この時季と探す川原の土筆かな | わかば |
蜷の道人生急ぐこと勿れ | うつぎ |
春雨や山々の色薄みどり | わかば |
子ら集ふ狭き駄菓子屋あたたかし | なつき |
水松の気根にょきにょき春の泥 | うつぎ |
万霊を祀る碑に梅芳しき | みのる |
大手門額縁にして春の城 | たか子 |
千の梅八重波なして丘埋む | みのる |
廃屋の軒に顔出す雀の子 | 素秀 |
登山口の左手に桑の芽吹きをり | こすもす |
淀川の湾処を今に囀れる | はく子 |
馬酔木咲く絵馬清明の五芒星 | よう子 |
畔道は春の七草花盛り | はく子 |
天守背に風の意のまま雪柳 | ぽんこ |
小雀のまろび遊べる庭の端 | 素秀 |
老農夫夕日に春耕余念なし | はく子 |
モニュメントは鳥の形や春の空 | こすもす |
思ひ思ひに飛び立ちさうや辛夷の芽 | うつぎ |
つんつんと出て柔らかし菖蒲の芽 | うつぎ |
見はるかす淀の岬鼻風光る | 菜々 |
春の雨香燻らせて書に籠る | わかば |
風渡るとき煌めける春の池 | せいじ |
豆の花貸農園のつるに舞ふ | はく子 |
ここだよと小さい尖り菖蒲の芽 | 小袖 |
故郷は懐かしきかな春怒涛 | こすもす |
起伏野に点在したる野梅かな | せいじ |
小雀や乾いた砂に潜りたる | 素秀 |
梅散りて青天へ枝駆けのぼる | たか子 |
マスクして手持ちぶさたの香具師立てり | なつき |
五輪マークかたどる園の春落葉 | ぽんこ |
コンビニの屋根は墨色雛の町 | なつき |
東風吹けど狛犬の尾なびかざる | よう子 |
水温む水面に青き空写し | 満天 |
嬰抱いて中山詣で梅日和 | みのる |
又一人春のベンチは入れ替わり | 小袖 |
ミキサー車について蛇行す笑ふ山 | なつき |
マスクへと香煙扇ぐご縁日 | なつき |
鐘楼より見るゴルフ場霞越し | こすもす |
黄信号は点滅中や青麦田 | こすもす |
くず米を拾ふ小雀親雀 | 素秀 |
育めんのパパ等は若し園うらら | 小袖 |
大木にしがみつきたる花豌豆 | ぽんこ |
初花を見上る母の車椅子 | わかば |
休校の子ら平日の梅見かな | せいじ |
なぞり読む蕪村が句碑の暖かし | 菜々 |
土筆摘む夫の指先灰汁に染む | わかば |
雉啼いて道はこれより奥院へ | みのる |
城門の漆黒の鋲春寒し | たか子 |
梅見には遅きに訪うて城めぐる | たか子 |
梅林に入るや否や匂ひけり | せいじ |
自転車でふたり遠出す梅林へ | せいじ |
休校と鎖されし鉄扉初ざくら | みのる |
友好の蘇州庭園芽の柳 | うつぎ |
車椅子母と見上ぐる初桜 | わかば |
うららかや厠に隣る弁財天 | うつぎ |
声のして仕事の手止む雀の子 | 素秀 |
信号待つ揺れどほしなる雪柳 | 満天 |
真新しい横断歩道に春の泥 | こすもす |
囀の野外の椅子でミニ句会 | ぽんこ |
菖蒲の芽残し園丁にじりゆく | よう子 |
顔出して猫の在知る雀の子 | 素秀 |
岬鼻をたたく白波春浅し | 菜々 |
お出ましはアヒルの三羽水温む | 小袖 |
日矢さして羨道しるき梅の影 | みのる |
潮風に半眼座する雀の子 | 素秀 |
茎立ちの黄花明るき畑の隅 | はく子 |
春うらら地蔵堂ベンチの媼たち | 満天 |
苑真中のマリア像へと春日燦 | 満天 |
鯱の見上げる天守梅の花 | ぽんこ |
草青む畔をそぞろに産土へ | はく子 |
片側通行の漁火ライン山笑う | こすもす |
観梅や双子のベビーカー押して | せいじ |
梅日和父に抱かれて泣き止みぬ | よう子 |
春泥に屈み園丁手の忙し | うつぎ |
行厨やズボンの蟻を弾きけり | よう子 |
大池の日を呑むごとく春の宵 | せいじ |
残る鴨人目につかぬ濠が好き | たか子 |
土筆野といひたきほどの河原かな | わかば |
百々御所の皇女の愛でし古雛 | よう子 |
藪の黄やスマホで名知る園の春 | よう子 |
あたたかや淀のわんどに跳ねるもの | 菜々 |
青空を冠として梅の丘 | みのる |
春の空何処まで青く大風車 | ぽんこ |
萬屋の帳簿机に明治雛 | なつき |
春風に句碑の白文字流るごと | 菜々 |
曲水の光まとへり梅の花 | なつき |
行き行きて蕪村が長堤青き踏む | 菜々 |
七草を口ずさみつつ春の土手 | はく子 |
蜷の道すんなりいかぬものばかり | 小袖 |
かわたれ時雲の通い路白木蓮 | ぽんこ |
2020年3月 | |
吾も春の野に下り立てば紫に | はく子 |
啓蟄や色とりどりの掲示板 | 満天 |
まどろみのごとくに涅槃したまへる | みのる |
のどけしや石段登る鈴の音 | 素秀 |
指さして児が数えたる残り鴨 | なつき |
スマホから投句してみる | みのる |
記念館黄の花柄の日傘売る | 宏虎 |
幾たびも転居の我が家鳥帰る | たか子 |
新句会へ弥生七日の空晴れて | 菜々 |
屋上の東西南北山笑ふ | こすもす |
涅槃寺絵解きの僧のカンニング | よう子 |
アフガンにいのちを捧げ紅葉散る | せいじ |
春の雪見上げる高さより生るる | たか子 |
春風裡高虚子の碑に対しけり | みのる |
朧月掴めば雫垂れるごと | 素秀 |
春寒しそよりともせず竹林 | 菜々 |
三月の空の巣となる部屋一つ | よう子 |
固まりて咲きし菫の自己主張 | よう子 |
水を蹴り助走の鴨は飛機のごと | ぽんこ |
漣に揉まれ散りたる落花かな | こすもす |
往く道に菜の花植ゆるプランター | 宏虎 |
復活の摂理大地の草萌ゆる | みのる |
春耕や残る一枚休耕田 | 素秀 |
格子窓斜に貫きて冬日さす | せいじ |
城早春お濠は碧き水湛へ | 菜々 |
初雛や一升餅の筆えらぶ | なつき |
山道の雪間雪間を辿りけり | こすもす |
春風にからんころんと祈願絵馬 | 満天 |
梅の丘太陽の塔微睡みぬ | よう子 |
御代らんまん畑の菜くづも花つけて | 菜々 |
啓蟄の大地漫画の描かれけり | みのる |
編隊の足長蜂の唸りたる | 素秀 |
産土に紅白梅の盛りなる | はく子 |
春寒をホットレモンで癒やしけり | 満天 |
主亡き書斎のソファー春愁 | 宏虎 |
さよ更けてオリオン星座冴かへる | はく子 |
花の寺若き作務衣は下足番 | こすもす |
鳥獣花を差しのべ涅槃絵図 | うつぎ |
倒木は倒木のまま山眠る | せいじ |
涅槃図のアーナンダに似し絵解僧 | うつぎ |
離陸機の引きも切らずよ風光る | はく子 |
雨戸なき新居の窓や春日燦 | なつき |
ものの芽に素十のこころ通ひけり | みのる |
ろうそくを兄が吹き消す初雛 | なつき |
倒木の逆立つダム湖山眠る | せいじ |
福福とみな粧ひて四囲の山 | せいじ |
雪山に春の夕焼け滝をなす | はく子 |
春なれや名も無き山のうすがすみ | はく子 |
姿見の慣れぬスーツや春の朝 | よう子 |
ぼんぼりの灯りてよりの夕桜 | こすもす |
亡き母といつか来た丘よもぎ摘む | 菜々 |
里のどか槌音のどか棟上がる | 菜々 |
春寒の庭にまみえしマリア像 | 菜々 |
リハビリの患者まばらや春寒し | 満天 |
せせらぎに和してこでまり揺れやまず | 満天 |
盆梅の枝越し探るキープ札 | 素秀 |
春寒し学び舎よりの声もなし | 満天 |
大水菜畑に残るは奔放に | うつぎ |
行き帰り春のあられに見舞われて | はく子 |
街路樹につづく華やぎ花水木 | 満天 |
渓流を滑り落ちたる山椿 | 素秀 |
司馬邸の花菜明かりに昏れなずむ | 宏虎 |
梅林を離れても風匂ひけり | うつぎ |
賑わっていて静かなる梅見かな | たか子 |
賀状書き終へて安堵の仕舞風呂 | せいじ |
深海魚漂着の浜風花す | こすもす |
うまごやし鳩も雀もくつろぎて | ぽんこ |
寒禽の鋭声に覚むる山泊り | せいじ |
もごもごとマスクの動くつまみ食ひ | なつき |
司馬邸の枝さし交し春日和 | 宏虎 |
兄妹の取り合ふ雛の砂糖菓子 | なつき |
春遊木立の中の独演会 | ぽんこ |
つちぐもり海の青色失せにけり | こすもす |
梅香や揺れるピアスの老婦人 | よう子 |
祖母の忌に紅梅ほのか匂ひたる | 素秀 |
菜の花忌蔵書二万と感心す | 宏虎 |
咳こぼつ電車の客の視線浴ぶ | よう子 |
ブランデーグラスはレンズ水中花 | みのる |
病癒ゆ父を待ちけり雛納 | なつき |
文豪の書斎明るく菜の花忌 | 宏虎 |