梅の香に会話はずみし句友どち | むべ |
そこはかとなき香の中の春満月 | 素秀 |
見上ぐれば観音岩や山笑ふ | こすもす |
花馬酔木存問すればさざれ石 | ぽんこ |
一番の客は男や雛の家 | うつぎ |
2023年2月25日 | |
梅探る立ち話にも梅が咲く | なおこ |
山門で切取って嗅ぐ梅の風 | 隆松 |
残雪や寺苑の岩に在りし苔 | 隆松 |
雪解けに階段濡るる里の寺 | 隆松 |
眺望はあと一段や梅の丘 | よう子 |
春雲の日矢の後光や観音像 | 素秀 |
枝垂るるや瑞枝にあまた梅含む | わかば |
五重塔今頃に出る蕗の薹 | 宏虎 |
前掛けも百なり雪の石地蔵 | せいじ |
涅槃会の嘆きの老婆縋りつく | ぽんこ |
木目肌の荒き枝ぶり濃紅梅 | ぽんこ |
石室を出れば風花音もなく | せいじ |
ゆくりなく句友と出会ひ梅の園 | わかば |
蠟涙も嘆きにそひて涅槃寺 | もとこ |
師を頼り杖を頼りや梅探る | よう子 |
甲山焚火の煙るなかにあり | なおこ |
大伽藍抱き一山風花す | わかば |
風葬を諾ふやうに蓮骸 | うつぎ |
薬袋を取ってやれかし涅槃会図 | うつぎ |
筋塀を背に雨こぼす椿かな | ぽんこ |
また一人来ては涅槃図見入りけり | 小袖 |
梅固し人語さびしき山路かな | もとこ |
物の芽の脇ちんまりと鹿のまり | こすもす |
散る梅を受けてくるりと透ける傘 | 素秀 |
観音の指さす前方梅の丘 | ぽんこ |
境内の撒かれし如き落花かな | こすもす |
涅槃図の迦陵頻伽は唄ふやに | みのる |
のどけしやウインカー無きトラクター | よう子 |
覗き込むなぞえに一つ蕗の薹 | こすもす |
嘆きても鷹は鋭き目や涅槃変 | うつぎ |
先生に幼いやいや涅槃寺 | 小袖 |
野地散歩今朝は吉日初音聴く | 智恵子 |
生き生きと梅の枝間に宿り木が | ぽんこ |
香煙に風花まじる札所かな | せいじ |
一木の梅に魅せられ吟行子 | 小袖 |
訪ひし庫裡の白梅寡黙なり | もとこ |
室町と江戸の涅槃会図並ぶ | なおこ |
鋏手に房総の春摘み取りぬ | 智恵子 |
飛梅や「縁」の柄杓で願ひ水 | なつき |
塗り忘れかも涅槃図の象真白 | みのる |
梅園やリュックの柄に友と知る | せいじ |
涅槃会の鴉狼藉はばからず | うつぎ |
探梅や傘回しゆく天気雨 | なつき |
饅頭に合格印や梅見茶屋 | なつき |
浮寝鳥微動だにせず湾静か | こすもす |
春雨に濡れども笑顔礼参り | 素秀 |
冴返る塔は群青際立たせ | 小袖 |
涅槃図の末席に吾も連なりし | せいじ |
願かけし小さき草鞋に春願ふ | ふさこ |
余寒なり古刹の庭の苔の色 | 隆松 |
月まどか涅槃の釈迦の寧かれと | みのる |
梅日和五百羅漢に友見つけ | ふさこ |
雨晴れて香りに佇む花樒 | 智恵子 |
春雨や掃ききよめられ中山寺 | 宏虎 |
札所寺あまた草鞋に春の風 | ふさこ |
寄進者名並びし裏や涅槃絵図 | よう子 |
春雨や前垂れ透ける地蔵尊 | 素秀 |
涅槃絵の赤を語れり絵解き僧 | なつき |
梅見茶屋梅のししゅうの小座布団 | なつき |
展望台宴にほろ酔ひ梅の里 | 智恵子 |
リュック置き賽銭捜す梅見客 | ふさこ |
金色の褪せぬ涅槃に昼灯す | 小袖 |
沈丁の香り加へて百度石 | 素秀 |
涅槃の図頭北面西教へけり | みのる |
一人とて涅槃絵解きす山の寺 | よう子 |
吟行は食事が楽し梅の花 | 宏虎 |
涅槃絵図蟷螂までも蟻までも | なおこ |
一もとの紅梅いよよ咲き極む | わかば |
寝釈迦いままどろむさまに腕枕 | みのる |
梅の香や勝手知ったる寺の中 | 宏虎 |
安らかにと願ふ絵馬に春愁ふ | もとこ |
歯ぎしりの哀しみもあり涅槃絵図 | もとこ |
ぽこぽこと浮かぶ雲の春めくや | 智恵子 |
池の傍波間に見ゆる葦の角 | 宏虎 |
梅の園遥かに望み甲山 | わかば |
大鍋に出汁たつぷりの大根焚 | なおこ |
水引の掛かる大根や閻魔祭 | うつぎ |
梅三分片花開き立つるあり | ふさこ |
対向車の飛沫の洗礼雪解路 | こすもす |
2022年3月19日 | |
暖かや勝馬の首さする騎手 | せいじ |
春うらら馬場に轟くファンファーレ | せいじ |
本日の馬場は良なり春埃 | せいじ |
童顔の騎手の鞭打つ春疾風 | もとこ |
砂煙上げ走り抜く競い馬 | わかば |
行厨はゆくりなく会ふ花のもと | はく子 |
競馬果て夕日に褪せる春日傘 | 素秀 |
勝馬を予想し合うて春日向 | せいじ |
春風とともにひらりと騎手乗馬 | あひる |
勝ち馬へ人馬一体なる走り | わかば |
春おしゃれ耳も足にも装ふ馬 | ふさこ |
春疾風味方につけし競い馬 | 小袖 |
競走馬陽炎のなか駈けてゆく | なおこ |
ギャロップの鬣なびく春光裡 | みのる |
御神水掬へば綺羅と春の水 | 凡士 |
馬十一頭春塵蹴散らすド迫力 | 千鶴 |
様々な色の覆面競い馬 | わかば |
春塵をさらに巻き上げ競ひ馬 | うつぎ |
電光板凝視の赤ペン春競馬 | ぽんこ |
神泉の主かと緋鯉悠然と | 凡士 |
外差しのたてがみ眩し春日燦 | 素秀 |
春風やゲート嫌がる去勢馬 | 豊実 |
強東風や外れ馬券の空走る | もとこ |
勝ち戻る騎手春天へ拳あげ | みのる |
勝馬の栗毛の艶や春の雲 | 豊実 |
勝ち馬へ鞭の一振り駆け抜ける | わかば |
草競馬鴉エールの声を張る | うつぎ |
馬の背よりわが町ながむ春の夢 | ふさこ |
馬券捨て春塵の靴パドックへ | よう子 |
春の馬艶光りする毛並みかな | 千鶴 |
パドックへ背なの人垣春麗ら | 小袖 |
躍動の光る毛並みや春の馬場 | あひる |
応援は五番の馬や草青む | よう子 |
勝ち馬に春空広し騎手凛々し | 小袖 |
中洲なる春を謳歌の草競馬 | たか子 |
鼻筋の白きは血筋春の駒 | みのる |
春光やハナ差勝負に鞭激し | 千鶴 |
颯爽とパドック歩む春駒 | はく子 |
大外の遠心力や風は春 | 豊実 |
春塵に拾ひ確かむ捨て馬券 | みのる |
緑蔭をかすめ滑走する機体 | ぽんこ |
初体験栗毛の尻に惚れる春 | ふさこ |
イヤフォンは競馬中継田螺和 | 素秀 |
春場所の力士息抜き草競馬 | よう子 |
パドックの鬣の艶風光る | なおこ |
春競馬馬券を買ふを禁じらる | はく子 |
逃げ馬の僅差のニ着春疾風 | 小袖 |
馬場うらら暫してこずるゲートイン | せいじ |
馬場均すささらの車陽炎ひぬ | よう子 |
残る鴨寛いでいる馬場の池 | あひる |
かげろひて機首沈む街馬駆くる | もとこ |
均したる馬場に降り来て鴉の子 | うつぎ |
暖かしパドック見つむ車椅子 | たか子 |
髪靡くラプンツェルなる春の駒 | もとこ |
行つたり来たりパドックと馬場春一日 | うつぎ |
パドックの芦毛の歩み麗かな | 豊実 |
書紀に記す広田の杜に春探る | 凡士 |
春塵や馬場に乱れし蹄跡 | あひる |
あたたかや競馬の歴史教はりて | なおこ |
梅東風に高鳴る絵馬やタイガース | 凡士 |
競ひ馬春光まとひ疾走す | はく子 |
鞭一打なく勝馬となれりけり | みのる |
名にし負ふ躑躅芽吹くや廣田山 | 凡士 |
春風に潮の香ありし競馬場 | 素秀 |
疾走する馬の蹄や春埃 | ぽんこ |
麗かやパドック巡る駿馬群 | わかば |
野次暑し鼻の差競ふゲート前 | よう子 |
春塵の騎手の尻上ぐゴールかな | もとこ |
ゴールへと必死の鞭の春駒 | はく子 |
急ぎ足花より団子競馬場へ | ふさこ |
春光に飛沫く鼻息競ひ馬 | うつぎ |
散らかして踏まれて馬券山笑ふ | たか子 |
東風に攻む騎手腰うかせ前傾し | 千鶴 |
春一番ほんのり馬糞うふふふふ | ふさこ |
パドックのおしゃれ鬣春の駒 | ぽんこ |
春風や競馬新聞読む眼鏡 | 豊実 |
春塵にまみれゴールの馬の尻 | たか子 |
パドックとコース行き来す春の昼 | 小袖 |
パドックを軽くステップ競べ馬 | ぽんこ |
逸る馬地団駄を踏む草競馬 | たか子 |
春風のパドック牝馬みな可憐 | あひる |
パドックに澄める馬の瞳初ひばり | 素秀 |
土けたて人馬駆けぬく春怒濤 | 千鶴 |
2022年2月 | |
降りて止み止みて又降る春の雪 | こすもす |
一坪の菜園鋤けば春の土 | 凡士 |
雛飾り機織る部屋の古畳 | なつき |
道の端を縁取るごとく草萌ゆる | わかば |
春愁やお顔それぞれ六地蔵 | ぽんこ |
参道の赤子ぐずるや梅ふふむ | よう子 |
阿難陀ひとり蒼白涅槃変 | みのる |
ひと冬を健気に咲きて菫かな | 凡士 |
手術祈願飛梅一つほころびて | なつき |
しろがねの月下に涅槃したまへり | みのる |
川堰を飛び降りんとす二羽の鴨 | せいじ |
大涅槃絵図は渚のごと余る | みのる |
河越えて通り雨めく春吹雪 | せいじ |
大いなる蕊を持ちたる梅の花 | せいじ |
菩提子の念珠買ひたる年女 | なつき |
囀や森に還りしゴルフ場 | 凡士 |
雛の間や待合席と隣り合ふ | わかば |
獣害の畑を横目に探梅行 | 凡士 |
歳重ねなほ懐かしき雛飾 | わかば |
通り雪去れば明るき陽射しかな | あひる |
梅の間に宝珠の眩し大願塔 | 素秀 |
大涅槃絵図の裏より吟行子 | みのる |
梅ふふむ観音像の御手の上 | よう子 |
紅梅の雨に洗われなほの艶 | 素秀 |
沙羅双樹隠れは魑魅か涅槃変 | みのる |
頭垂れ一礼す脊に春の風 | ふさこ |
禰宜の妻見廻る杜に梅香る | あひる |
奥の院梅と地蔵の道おくに | ふさこ |
鐘楼の裏に菜飯のむすび食ぶ | 素秀 |
梅花節涅槃開帳厳かに | ふさこ |
竹林のさざめく中に笹子鳴く | わかば |
梅探り奥の院まで来たりけり | よう子 |
梅一輪一句捻りて推敲す | ふさこ |
春雨に濡れどもお礼参る母子 | 素秀 |
犬二匹と人の足跡雪の朝 | こすもす |
観音のお顔が映へる菜の花黄 | ぽんこ |
木の股に積もりし雪のハートめく | こすもす |
遠山に柱と見へて通り雪 | あひる |
風鐸も涙の塔や涅槃寺 | よう子 |
下校子の声姦しき春の土手 | せいじ |
石標裳裾を飾る木瓜の花 | ぽんこ |
強東風に白波尖る明石の門 | わかば |
産直の春菜溢れてマルシェ立つ | 凡士 |
枯草の塔婆めき立つ無縁塚 | なつき |
梅の園金色の袈裟厳粛なり | ふさこ |
春雲や観音像の淡き影 | 素秀 |
春泥を踏む母と子のヌートリア | せいじ |
べろ出して遊ぶ仔牛や風光る | なつき |
二の宮の小さき杜に小雪舞ふ | あひる |
園丁に読経届けや梅ふふむ | よう子 |
通り雪いま只中やペダルこぐ | あひる |
一陣の風に震へる花すみれ | ぽんこ |
白梅の蕾は固し吉御籤 | ぽんこ |
2022年2月 | |
キープ札揺るる盆梅枝越しに | 素秀 |
山に咲く里に咲く野にも咲く | せいじ |
かきくけこ今日はお出かけいい天気 | 豊実 |
新海苔や一番海苔と届けらる | わかば |
似顔絵の似すぎて脹る弘法市 | 凡士 |
初花や石垣だけを残す城 | 素秀 |
山に来た里に来た野にも来た | せいじ |
寅一字葉書を埋めて賀状かな | 凡士 |
洋燈のあかり運河に街吹雪く | 凡士 |
除雪車の信号無視をな咎めそ | こすもす |
春が来た春が来たどこに来た | せいじ |
丸四角三角溢るおでん鍋 | 凡士 |
滑り終へ安堵の息やスケーター | うつぎ |
フィギュアの四回転半息を飲む | うつぎ |
スケーター祈る姿に構へたる | うつぎ |
春光の丘を統べたり観覧車 | 素秀 |
閉ざされし門の遠きに桜の芽 | 素秀 |
長き足縺れんばかりスケーター | うつぎ |
休耕田一枚残し春耕す | 素秀 |
ちやんちゃんこ近う近うと玉座より | みのる |
灯を消しておやすみなさいお雛さま | みのる |
さしすせそ鍋を囲んで暖まる | 豊実 |
あいうえおオリンピックの金メダル | 豊実 |
春灯を連ね島々昏にけり | わかば |
受付はAIロボット室の花 | 凡士 |
なにぬねの車検案内届いたよ | 豊実 |
雑巾を縫うて感謝の針供養 | わかば |
おはようとカーテン引けば雪の木々 | こすもす |
風花の乱舞を見よや山襖 | みのる |
海へ降る霰や雑魚の跳ねしごと | みのる |
あかりをつけましょぼんぼりに | せいじ |
朝の日に浮かべ海苔舟数見せて | わかば |
臥すひとと窓越しに見る雪景色 | こすもす |
兵庫津と古りし燈籠針供養 | わかば |
大家なる茅葺き屋根に風花す | こすもす |
湯上がりや一気飲みせし寒の水 | こすもす |
花が咲く花が咲くどこに咲く | せいじ |
たちつてと寒い寒いと手をこする | 豊実 |
工事場の朝の始まる焚火かな | みのる |
2021年3月 | |
児の遊ぶ丘に草の芽犇めけり | よう子 |
打たせ湯に肩の緩まん桜の芽 | 素秀 |
黒ぼこをつけて芍薬芽に出でぬ | みのる |
ショッピングモールの通路木の芽風 | なおこ |
芽柳の蔵壁にシャンデリアめき | せいじ |
木の芽晴れ轍重なるモトクロス | 小袖 |
大欅の芽ぶく力に勇気得し | なおこ |
最終の勤務表閉づ木の芽風 | 豊実 |
じゃが芋の脇目に早も力満つ | よう子 |
芽柳や水上バスは玻璃の箱 | みのる |
遅植の豌豆芽吹く山の畑 | 小袖 |
真青なる空を褥に木の芽張る | せいじ |
翻るとき水面打つ柳の芽 | せいじ |
村に入る馬頭観音芽木の風 | なつき |
杣道の風匂ひたつ芽立ちかな | 素秀 |
蘆の芽や池塘啄む二羽の鳥 | 豊実 |
草の芽やどっかと座る昼休み | よう子 |
芽柳のはんなり垂れ京の路地 | 小袖 |
雨晴れてより芳しき芽木の径 | みのる |
蓮の芽の泥を掴んで天が下 | 素秀 |
はつらつと坂道歩く木の芽時 | なおこ |
ものの芽のささやき合へる六地蔵 | なつき |
石室を出づる実生の芽吹きかな | なつき |
男湯を先に出て待つ柳の芽 | 豊実 |
2021年2月 | |
振り向ひて母を呼ぶ児や風光る | よう子 |
へらぶなの不機嫌な顔風光る | 豊実 |
有馬湯女裾はしよりゆく雪解道 | みのる |
風光るコロナワクチン始まりて | なおこ |
桂馬跳びして子らあそぶ雪解道 | みのる |
学び舎は牧場跡や風光る | 小袖 |
太公望竿を一閃風光る | みのる |
氷河さへ解けているらし雪汁よ | なおこ |
旅の宿雪解しずくの音に覚め | 菜々 |
出漁の船追ふ鴎風光る | うつぎ |
音あふれ光あふれて雪解川 | うつぎ |
風光るダムに朱の橋青い橋 | 小袖 |
風光る灘一望の方位盤 | うつぎ |
訪ぬれば石橋細し雪解川 | よう子 |
雪解けの窓の明るきテレワーク | なつき |
顕なる藁に滴る雪解水 | 豊実 |
雪解水ひそと暗渠を流れけり | 素秀 |
磨崖仏しとどに雪解雫かな | 素秀 |
ボウタイのブラウス白く風光る | なおこ |
風光る園庭駆くる新の靴 | なつき |
大鷺の嘴に小魚風光る | せいじ |
部活生どどど駆け抜け風光る | 小袖 |
北窓の午後より動く雪解かな | よう子 |
不惑なお道多きかな風光る | 豊実 |
風光る宝珠を乗せし八角堂 | せいじ |
鯉跳ねて背けし顔に風光る | せいじ |
山腹に並ぶ石仏雪解風 | なつき |
落ち合ふてしぶきを上げて雪解川 | 菜々 |
風光る鳶海峡をひとまたぎ | 素秀 |
2021年1月 | |
条幅にみ言葉太く筆始 | せいじ |
神神し丸き地球の初日の出 | かかし |
新玉の年頭聖句諾ひぬ | せいじ |
家族増ゆこと願ひたり初詣 | なつき |
一の目に堅実と褒む絵双六 | なつき |
どんど焚く児らに一枚煎餅菓子 | なおこ |
光背の燦と輝く初日の出 | かかし |
寒紅をひきてズームの初句会 | よし子 |
鞘堂に透ける灯明大旦 | 小袖 |
百歳の声に張りある御慶かな | うつぎ |
おだやかな日を賜りし小正月 | 小袖 |
なんとまあ八十回目のお正月 | 菜々 |
御神鏡拍てば光るや初詣 | 豊実 |
門ひとつ隔てて鼓お万歳 | 素秀 |
床の間の赤い実ころがる三日かな | よし子 |
臥龍松幾代へしなん初御空 | みのる |
神送り天へと烟る大とんど | 小袖 |
松飾る芦屋山手の富豪邸 | みのる |
梵鐘や初東雲の時空間 | 豊実 |
牛年の撫牛なでる初詣 | よし子 |
凧糸に力みなぎる初御空 | せいじ |
年玉をもらふ曾孫ら横並び | なつき |
松明の揺らぎに祈る四方拝 | 素秀 |
初茜七福神の船出かな | かかし |
竹爆ぜて木霊を返す大とんど | うつぎ |
老松の秀枝にかかる凧の足 | みのる |
初写経一字一字に仏在す | うつぎ |
初空は飛機ひとすじの真澄かな | 素秀 |
どんど観て帰る児灰をほつぺたに | なおこ |
妻眠る後部座席の破魔矢かな | 豊実 |
2020年12月 | |
聖樹前チェリスト天に弓かざす | 素秀 |
大穴に沸きたる師走競馬かな | みのる |
犬の死に籠もる師走の一日かな | なつき |
開け閉ての雨戸軋むや初氷 | かかし |
走井餅の箱に虚子の句冬ぬくし | せいじ |
アプローチのタイルも洗ひ庭師走 | 菜々 |
庭師らに晴雨不問の師走来る | みのる |
積み上げし書類断捨離師走かな | 豊実 |
駅前のピアノは無音町師走 | せいじ |
まだ雫ふふむ寒天うすみどり | 小袖 |
マッチングアプリの思惑師走かな | 豊実 |
リハビリてふ友の師走の長電話 | なつき |
商談は「年内には」の師走かな | 豊実 |
蹲ひにひと葉閉じ込め初氷 | 菜々 |
粗大ごみとぞ言ひたげな師走妻 | みのる |
振り向けば狛犬の眼や木の実落つ | よう子 |
街師走一等賞の鐘の音 | かかし |
カーナビの諭す運転師走中 | なおこ |
最敬礼されて店出づ師走かな | 小袖 |
極月やビッグイシュー売り立ち尽くす | よう子 |
剪定の鋏忙しや庭師走 | 菜々 |
セロ弾きの大き背急ぐ師走街 | 素秀 |
道塞ぐ普請を愚痴りたき師走 | せいじ |
クリスマスカード南の島より来 | 素秀 |
師走来ぬ母子の指に絆創膏 | なつき |
くるくるくるひらひらひら木の葉散る | なおこ |
近隣に吟の地数多冬うらら | かかし |
絹光り寒天干し の村白く | 小袖 |
櫨紅葉一畝残し廃業す | よう子 |
2020年11月 | |
捨てきれぬ母の遺品や冬支度 | みのる |
黒豆のお茶をいただき店小春 | 更紗 |
瀬戸の海白帆の寄りて小春凪 | 小袖 |
冬支度ドアにリースを飾りては | 更紗 |
穴太積みの城壁のみや石蕗の花 | かかし |
巻き癖の玄関マット冬支度 | みのる |
チェンソーの音遠きより冬支度 | 素秀 |
ワクチンの接種完了冬支度 | せいじ |
渡船の子マスクの中のあくびかな | なつき |
艶やかな黒髪の子や七五三 | 更紗 |
着古しの仕分けに始む冬支度 | せいじ |
人気なき谷戸の民泊冬田道 | 小袖 |
鳥葬の国へ枯野の滑走路 | 素秀 |
挨拶の名前浮かばず駅寒し | かかし |
縁側に日差しの伸びて冬支度 | 豊実 |
柿の木を過ぎゆく二両電車かな | なおこ |
冬支度クローゼットの履かぬ靴 | よう子 |
赤とんぼ連れて走りぬ島のバス | なおこ |
浜小屋に砂吹きだまる隙間風 | 素秀 |
軒下に薪の里山冬支度 | かかし |
牡蠣売りの軍手忙しや解禁日 | よう子 |
改易の天守なき堀浮寝鳥 | よう子 |
冬支度毛布のやうなシーツかな | なつき |
家兎毛を抜きかえて冬支度 | なおこ |
陽だまりに洋蘭集め冬支度 | 小袖 |
鵙日和ベンチで剥きしゆで卵 | なつき |
冬支度円錐形の清め塩 | 豊実 |
境内の砂利掃く巫女や冬支度 | 豊実 |
偕老がパグをバギーに園小春 | せいじ |
リビングウィルなど書きもして冬用意 | みのる |
2020年10月 | |
秋灯や今日の家路は遠回り | 豊実 |
秋高し大般若会の堂震へ | 小袖 |
風吹けば秋薔薇のつる奔放に | なつき |
かりがねの過ぎて夕日の残りけり | 素秀 |
洗濯機の渦に乗りたる木の実かな | よう子 |
誰もゐぬ夜半のコンビニ秋灯 | みのる |
線を引く更の聖書に秋灯下 | せいじ |
紅葉濃し大観の絵を想ひけり | なおこ |
秋ともし夕餉の親子笑みのもれ | かかし |
破れ翅の秋蝶ふらと何処かへ | かかし |
十六夜や山羊の影おく牛舎かな | 素秀 |
ブランデーグラスに宿る秋灯 | みのる |
秋灯や暖簾一つの高架下 | 豊実 |
句敵の顔さやけしやテレ画面 | せいじ |
福祉自動車行く先々の木犀香 | うつぎ |
蜘蛛の子のとことこ歩む秋灯下 | なおこ |
煤光りせる古民家の秋灯 | うつぎ |
知己と酌む秋灯ひとつ共にして | みのる |
清けしや筆伸びやかに納経帳 | よう子 |
配達のレシピを添へて今年米 | かかし |
一つ熟る朱欒の重き苗木かな | なつき |
秋灯し連子格子の塗師の家 | よう子 |
一叢の露草みんな日に向ける | うつぎ |
血管の浮き出た手撫づ秋灯下 | なつき |
ハイキング女子に囲まれ秋の蝶 | 小袖 |
秋の灯にエンジン休め路線バス | 小袖 |
秋灯や研究棟の窓の松 | 豊実 |
ズームもて祈りを繋ぐ秋灯下 | せいじ |
窯変のうねりをなぞる秋灯下 | 素秀 |
2020年9月 | |
慰霊碑に額づきをれば秋の声 | みのる |
猪除けの扉軋むも秋の声 | せいじ |
辻々に頭を下げて秋遍路 | 素秀 |
草衣路傍の石に秋の声 | よう子 |
秋晴の一湾われの小手のうち | みのる |
源流のさざ波の音に秋の声 | かかし |
干しかごに落花生干す島の宿 | なつき |
新米の一箸に笑む夕餉かな | 豊実 |
秋日差し届かぬ洞の無縁仏 | よう子 |
盆の月照らす実家に母ひとり | 更紗 |
乳吸ひしまま嬰ねむり秋の声 | 更紗 |
片耳のイヤホン拾ふ秋の声 | 素秀 |
かしぎたる案山子深々野球帽 | 素秀 |
五時に鳴る島のカリヨン秋の声 | うつぎ |
顔払う婚活アプリ秋の声 | 豊実 |
風と波無限の中の秋の声 | なつき |
渾身の力瘤にて鳳仙花 | かかし |
盆栽の林の一葉紅葉づれり | よう子 |
秋の声学園祭の後始末 | 豊実 |
ダム湖へと続く岨道秋の声 | せいじ |
秋の声石燈籠に灯の点り | うつぎ |
天高く叫ぶやガッツポーズして | みのる |
砦跡葉擦れにまじる秋の声 | なつき |
広縁に足投げ出せば秋の声 | せいじ |
どこかよりピアノのワルツ涼新た | 更紗 |
生家へは海沿ひの道秋の声 | うつぎ |
新米に卵を添へて神棚に | かかし |
2020年4月 | |
落花また落花や我に句敵に | うつぎ |
春雨の静かに濡らす礁かな | わかば |
チューリップ園撤去されたる案内板 | こすもす |
緊急宣言聞く静かなる花の昼 | なつき |
海風やつつじの寺は人疎ら | こすもす |
著莪の咲く竹工房の出入口 | せいじ |
落椿ダム湖に秘めし物語 | うつぎ |
春塵にあらず火葬のうす煙 | みのる |
鶴翼の陣形めきし若楓 | せいじ |
徒長枝の負けじと花の十輪や | かかし |
タンポポに埋る土橋やな渡りそ | よう子 |
重き世にピンクムーンてふやさしき名 | もとこ |
春の空山路喘ぎつ陶の里 | わかば |
塩田の跡に遍路の鈴進む | 素秀 |
青空ももう夕空に遠さくら | よし子 |
黒き幹園を統ぶる楠若葉 | ぽんこ |
旧家並む村の細道遅さくら | はく子 |
街なかに残る里山夏うぐひす | 菜々 |
川幅にいつしか広がる花の塵 | ぽんこ |
ランタンとせる竹筒に花の屑 | せいじ |
初蝶来野面スキップするごとく | みのる |
神域に品良くつつじ咲きにけり | 宏虎 |
みつばつつじに染まる山寺鐘響く | こすもす |
飛花落花真つ只中の余生かな | よし子 |
春雨のけぶれる古都の一日旅 | わかば |
滑り台勢いしりもち山笑ふ | 菜々 |
菜の花や水ぎわせめて大河如 | もとこ |
夕桜白く崩るる砂の城 | なつき |
夜桜へ光届けと星一つ | 満天 |
山つつじコロナ避難の能勢路かな | よう子 |
幼馴染マスクをつけて声かける | ぽんこ |