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梅の香に会話はずみし句友どち むべ
そこはかとなき香の中の春満月 素秀
見上ぐれば観音岩や山笑ふ こすもす
花馬酔木存問すればさざれ石 ぽんこ
一番の客は男や雛の家 うつぎ

2023年2月25日

梅探る立ち話にも梅が咲く なおこ
山門で切取って嗅ぐ梅の風 隆松
残雪や寺苑の岩に在りし苔 隆松
雪解けに階段濡るる里の寺 隆松
眺望はあと一段や梅の丘 よう子
春雲の日矢の後光や観音像 素秀
枝垂るるや瑞枝にあまた梅含む わかば
五重塔今頃に出る蕗の薹 宏虎
前掛けも百なり雪の石地蔵 せいじ
涅槃会の嘆きの老婆縋りつく ぽんこ
木目肌の荒き枝ぶり濃紅梅 ぽんこ
石室を出れば風花音もなく せいじ
ゆくりなく句友と出会ひ梅の園 わかば
蠟涙も嘆きにそひて涅槃寺 もとこ
師を頼り杖を頼りや梅探る よう子
甲山焚火の煙るなかにあり なおこ
大伽藍抱き一山風花す わかば
風葬を諾ふやうに蓮骸 うつぎ
薬袋を取ってやれかし涅槃会図 うつぎ
筋塀を背に雨こぼす椿かな ぽんこ
また一人来ては涅槃図見入りけり 小袖
梅固し人語さびしき山路かな もとこ
物の芽の脇ちんまりと鹿のまり こすもす
散る梅を受けてくるりと透ける傘 素秀
観音の指さす前方梅の丘 ぽんこ
境内の撒かれし如き落花かな こすもす
涅槃図の迦陵頻伽は唄ふやに みのる
のどけしやウインカー無きトラクター よう子
覗き込むなぞえに一つ蕗の薹 こすもす
嘆きても鷹は鋭き目や涅槃変 うつぎ
先生に幼いやいや涅槃寺 小袖
野地散歩今朝は吉日初音聴く 智恵子
生き生きと梅の枝間に宿り木が ぽんこ
香煙に風花まじる札所かな せいじ
一木の梅に魅せられ吟行子 小袖
訪ひし庫裡の白梅寡黙なり もとこ
室町と江戸の涅槃会図並ぶ なおこ
鋏手に房総の春摘み取りぬ 智恵子
飛梅や「縁」の柄杓で願ひ水 なつき
塗り忘れかも涅槃図の象真白 みのる
梅園やリュックの柄に友と知る せいじ
涅槃会の鴉狼藉はばからず うつぎ
探梅や傘回しゆく天気雨 なつき
饅頭に合格印や梅見茶屋 なつき
浮寝鳥微動だにせず湾静か こすもす
春雨に濡れども笑顔礼参り 素秀
冴返る塔は群青際立たせ 小袖
涅槃図の末席に吾も連なりし せいじ
願かけし小さき草鞋に春願ふ ふさこ
余寒なり古刹の庭の苔の色 隆松
月まどか涅槃の釈迦の寧かれと みのる
梅日和五百羅漢に友見つけ ふさこ
雨晴れて香りに佇む花樒 智恵子
春雨や掃ききよめられ中山寺 宏虎
札所寺あまた草鞋に春の風 ふさこ
寄進者名並びし裏や涅槃絵図 よう子
春雨や前垂れ透ける地蔵尊 素秀
涅槃絵の赤を語れり絵解き僧 なつき
梅見茶屋梅のししゅうの小座布団 なつき
展望台宴にほろ酔ひ梅の里 智恵子
リュック置き賽銭捜す梅見客 ふさこ
金色の褪せぬ涅槃に昼灯す 小袖
沈丁の香り加へて百度石 素秀
涅槃の図頭北面西教へけり みのる
一人とて涅槃絵解きす山の寺 よう子
吟行は食事が楽し梅の花 宏虎
涅槃絵図蟷螂までも蟻までも なおこ
一もとの紅梅いよよ咲き極む わかば
寝釈迦いままどろむさまに腕枕 みのる
梅の香や勝手知ったる寺の中 宏虎
安らかにと願ふ絵馬に春愁ふ もとこ
歯ぎしりの哀しみもあり涅槃絵図 もとこ
ぽこぽこと浮かぶ雲の春めくや 智恵子
池の傍波間に見ゆる葦の角 宏虎
梅の園遥かに望み甲山 わかば
大鍋に出汁たつぷりの大根焚 なおこ
水引の掛かる大根や閻魔祭 うつぎ
梅三分片花開き立つるあり ふさこ
対向車の飛沫の洗礼雪解路 こすもす

2022年3月19日

暖かや勝馬の首さする騎手 せいじ
春うらら馬場に轟くファンファーレ せいじ
本日の馬場は良なり春埃 せいじ
童顔の騎手の鞭打つ春疾風 もとこ
砂煙上げ走り抜く競い馬 わかば
行厨はゆくりなく会ふ花のもと はく子
競馬果て夕日に褪せる春日傘 素秀
勝馬を予想し合うて春日向 せいじ
春風とともにひらりと騎手乗馬 あひる
勝ち馬へ人馬一体なる走り わかば
春おしゃれ耳も足にも装ふ馬 ふさこ
春疾風味方につけし競い馬 小袖
競走馬陽炎のなか駈けてゆく なおこ
ギャロップの鬣なびく春光裡 みのる
御神水掬へば綺羅と春の水 凡士
馬十一頭春塵蹴散らすド迫力 千鶴
様々な色の覆面競い馬 わかば
春塵をさらに巻き上げ競ひ馬 うつぎ
電光板凝視の赤ペン春競馬 ぽんこ
神泉の主かと緋鯉悠然と 凡士
外差しのたてがみ眩し春日燦 素秀
春風やゲート嫌がる去勢馬 豊実
強東風や外れ馬券の空走る もとこ
勝ち戻る騎手春天へ拳あげ みのる
勝馬の栗毛の艶や春の雲 豊実
勝ち馬へ鞭の一振り駆け抜ける わかば
草競馬鴉エールの声を張る うつぎ
馬の背よりわが町ながむ春の夢 ふさこ
馬券捨て春塵の靴パドックへ よう子
春の馬艶光りする毛並みかな 千鶴
パドックへ背なの人垣春麗ら 小袖
躍動の光る毛並みや春の馬場 あひる
応援は五番の馬や草青む よう子
勝ち馬に春空広し騎手凛々し 小袖
中洲なる春を謳歌の草競馬 たか子
鼻筋の白きは血筋春の駒 みのる
春光やハナ差勝負に鞭激し 千鶴
颯爽とパドック歩む春駒 はく子
大外の遠心力や風は春 豊実
春塵に拾ひ確かむ捨て馬券 みのる
緑蔭をかすめ滑走する機体 ぽんこ
初体験栗毛の尻に惚れる春 ふさこ
イヤフォンは競馬中継田螺和 素秀
春場所の力士息抜き草競馬 よう子
パドックの鬣の艶風光る なおこ
春競馬馬券を買ふを禁じらる はく子
逃げ馬の僅差のニ着春疾風 小袖
馬場うらら暫してこずるゲートイン せいじ
馬場均すささらの車陽炎ひぬ よう子
残る鴨寛いでいる馬場の池 あひる
かげろひて機首沈む街馬駆くる もとこ
均したる馬場に降り来て鴉の子 うつぎ
暖かしパドック見つむ車椅子 たか子
髪靡くラプンツェルなる春の駒 もとこ
行つたり来たりパドックと馬場春一日 うつぎ
パドックの芦毛の歩み麗かな 豊実
書紀に記す広田の杜に春探る 凡士
春塵や馬場に乱れし蹄跡 あひる
あたたかや競馬の歴史教はりて なおこ
梅東風に高鳴る絵馬やタイガース 凡士
競ひ馬春光まとひ疾走す はく子
鞭一打なく勝馬となれりけり みのる
名にし負ふ躑躅芽吹くや廣田山 凡士
春風に潮の香ありし競馬場 素秀
疾走する馬の蹄や春埃 ぽんこ
麗かやパドック巡る駿馬群 わかば
野次暑し鼻の差競ふゲート前 よう子
春塵の騎手の尻上ぐゴールかな もとこ
ゴールへと必死の鞭の春駒 はく子
急ぎ足花より団子競馬場へ ふさこ
春光に飛沫く鼻息競ひ馬 うつぎ
散らかして踏まれて馬券山笑ふ たか子
東風に攻む騎手腰うかせ前傾し 千鶴
春一番ほんのり馬糞うふふふふ ふさこ
パドックのおしゃれ鬣春の駒 ぽんこ
春風や競馬新聞読む眼鏡 豊実
春塵にまみれゴールの馬の尻 たか子
パドックとコース行き来す春の昼 小袖
パドックを軽くステップ競べ馬 ぽんこ
逸る馬地団駄を踏む草競馬 たか子
春風のパドック牝馬みな可憐 あひる
パドックに澄める馬の瞳初ひばり 素秀
土けたて人馬駆けぬく春怒濤 千鶴

2022年2月

降りて止み止みて又降る春の雪 こすもす
一坪の菜園鋤けば春の土 凡士
雛飾り機織る部屋の古畳 なつき
道の端を縁取るごとく草萌ゆる わかば
春愁やお顔それぞれ六地蔵 ぽんこ
参道の赤子ぐずるや梅ふふむ よう子
阿難陀ひとり蒼白涅槃変 みのる
ひと冬を健気に咲きて菫かな 凡士
手術祈願飛梅一つほころびて なつき
しろがねの月下に涅槃したまへり みのる
川堰を飛び降りんとす二羽の鴨 せいじ
大涅槃絵図は渚のごと余る みのる
河越えて通り雨めく春吹雪 せいじ
大いなる蕊を持ちたる梅の花 せいじ
菩提子の念珠買ひたる年女 なつき
囀や森に還りしゴルフ場 凡士
雛の間や待合席と隣り合ふ わかば
獣害の畑を横目に探梅行 凡士
歳重ねなほ懐かしき雛飾 わかば
通り雪去れば明るき陽射しかな あひる
梅の間に宝珠の眩し大願塔 素秀
大涅槃絵図の裏より吟行子 みのる
梅ふふむ観音像の御手の上 よう子
紅梅の雨に洗われなほの艶 素秀
沙羅双樹隠れは魑魅か涅槃変 みのる
頭垂れ一礼す脊に春の風 ふさこ
禰宜の妻見廻る杜に梅香る あひる
奥の院梅と地蔵の道おくに ふさこ
鐘楼の裏に菜飯のむすび食ぶ 素秀
梅花節涅槃開帳厳かに ふさこ
竹林のさざめく中に笹子鳴く わかば
梅探り奥の院まで来たりけり よう子
梅一輪一句捻りて推敲す ふさこ
春雨に濡れどもお礼参る母子 素秀
犬二匹と人の足跡雪の朝 こすもす
観音のお顔が映へる菜の花黄 ぽんこ
木の股に積もりし雪のハートめく こすもす
遠山に柱と見へて通り雪 あひる
風鐸も涙の塔や涅槃寺 よう子
下校子の声姦しき春の土手 せいじ
石標裳裾を飾る木瓜の花 ぽんこ
強東風に白波尖る明石の門 わかば
産直の春菜溢れてマルシェ立つ 凡士
枯草の塔婆めき立つ無縁塚 なつき
梅の園金色の袈裟厳粛なり ふさこ
春雲や観音像の淡き影 素秀
春泥を踏む母と子のヌートリア せいじ
べろ出して遊ぶ仔牛や風光る なつき
二の宮の小さき杜に小雪舞ふ あひる
園丁に読経届けや梅ふふむ よう子
通り雪いま只中やペダルこぐ あひる
一陣の風に震へる花すみれ ぽんこ
白梅の蕾は固し吉御籤 ぽんこ

2022年2月

キープ札揺るる盆梅枝越しに 素秀
山に咲く里に咲く野にも咲く せいじ
かきくけこ今日はお出かけいい天気 豊実
新海苔や一番海苔と届けらる わかば
似顔絵の似すぎて脹る弘法市 凡士
初花や石垣だけを残す城 素秀
山に来た里に来た野にも来た せいじ
寅一字葉書を埋めて賀状かな 凡士
洋燈のあかり運河に街吹雪く 凡士
除雪車の信号無視をな咎めそ こすもす
春が来た春が来たどこに来た せいじ
丸四角三角溢るおでん鍋 凡士
滑り終へ安堵の息やスケーター うつぎ
フィギュアの四回転半息を飲む うつぎ
スケーター祈る姿に構へたる うつぎ
春光の丘を統べたり観覧車 素秀
閉ざされし門の遠きに桜の芽 素秀
長き足縺れんばかりスケーター うつぎ
休耕田一枚残し春耕す 素秀
ちやんちゃんこ近う近うと玉座より みのる
灯を消しておやすみなさいお雛さま みのる
さしすせそ鍋を囲んで暖まる 豊実
あいうえおオリンピックの金メダル 豊実
春灯を連ね島々昏にけり わかば
受付はAIロボット室の花 凡士
なにぬねの車検案内届いたよ 豊実
雑巾を縫うて感謝の針供養 わかば
おはようとカーテン引けば雪の木々 こすもす
風花の乱舞を見よや山襖 みのる
海へ降る霰や雑魚の跳ねしごと みのる
あかりをつけましょぼんぼりに せいじ
朝の日に浮かべ海苔舟数見せて わかば
臥すひとと窓越しに見る雪景色 こすもす
兵庫津と古りし燈籠針供養 わかば
大家なる茅葺き屋根に風花す こすもす
湯上がりや一気飲みせし寒の水 こすもす
花が咲く花が咲くどこに咲く せいじ
たちつてと寒い寒いと手をこする 豊実
工事場の朝の始まる焚火かな みのる

2021年3月

児の遊ぶ丘に草の芽犇めけり よう子
打たせ湯に肩の緩まん桜の芽 素秀
黒ぼこをつけて芍薬芽に出でぬ みのる
ショッピングモールの通路木の芽風 なおこ
芽柳の蔵壁にシャンデリアめき せいじ
木の芽晴れ轍重なるモトクロス 小袖
大欅の芽ぶく力に勇気得し なおこ
最終の勤務表閉づ木の芽風 豊実
じゃが芋の脇目に早も力満つ よう子
芽柳や水上バスは玻璃の箱 みのる
遅植の豌豆芽吹く山の畑 小袖
真青なる空を褥に木の芽張る せいじ
翻るとき水面打つ柳の芽 せいじ
村に入る馬頭観音芽木の風 なつき
杣道の風匂ひたつ芽立ちかな 素秀
蘆の芽や池塘啄む二羽の鳥 豊実
草の芽やどっかと座る昼休み よう子
芽柳のはんなり垂れ京の路地 小袖
雨晴れてより芳しき芽木の径 みのる
蓮の芽の泥を掴んで天が下 素秀
はつらつと坂道歩く木の芽時 なおこ
ものの芽のささやき合へる六地蔵 なつき
石室を出づる実生の芽吹きかな なつき
男湯を先に出て待つ柳の芽 豊実

2021年2月

振り向ひて母を呼ぶ児や風光る よう子
へらぶなの不機嫌な顔風光る 豊実
有馬湯女裾はしよりゆく雪解道 みのる
風光るコロナワクチン始まりて なおこ
桂馬跳びして子らあそぶ雪解道 みのる
学び舎は牧場跡や風光る 小袖
太公望竿を一閃風光る みのる
氷河さへ解けているらし雪汁よ なおこ
旅の宿雪解しずくの音に覚め 菜々
出漁の船追ふ鴎風光る うつぎ
音あふれ光あふれて雪解川 うつぎ
風光るダムに朱の橋青い橋 小袖
風光る灘一望の方位盤 うつぎ
訪ぬれば石橋細し雪解川 よう子
雪解けの窓の明るきテレワーク なつき
顕なる藁に滴る雪解水 豊実
雪解水ひそと暗渠を流れけり 素秀
磨崖仏しとどに雪解雫かな 素秀
ボウタイのブラウス白く風光る なおこ
風光る園庭駆くる新の靴 なつき
大鷺の嘴に小魚風光る せいじ
部活生どどど駆け抜け風光る 小袖
北窓の午後より動く雪解かな よう子
不惑なお道多きかな風光る 豊実
風光る宝珠を乗せし八角堂 せいじ
鯉跳ねて背けし顔に風光る せいじ
山腹に並ぶ石仏雪解風 なつき
落ち合ふてしぶきを上げて雪解川 菜々
風光る鳶海峡をひとまたぎ 素秀

2021年1月

条幅にみ言葉太く筆始 せいじ
神神し丸き地球の初日の出 かかし
新玉の年頭聖句諾ひぬ せいじ
家族増ゆこと願ひたり初詣 なつき
一の目に堅実と褒む絵双六 なつき
どんど焚く児らに一枚煎餅菓子 なおこ
光背の燦と輝く初日の出 かかし
寒紅をひきてズームの初句会 よし子
鞘堂に透ける灯明大旦 小袖
百歳の声に張りある御慶かな うつぎ
おだやかな日を賜りし小正月 小袖
なんとまあ八十回目のお正月 菜々
御神鏡拍てば光るや初詣 豊実
門ひとつ隔てて鼓お万歳 素秀
床の間の赤い実ころがる三日かな よし子
臥龍松幾代へしなん初御空 みのる
神送り天へと烟る大とんど 小袖
松飾る芦屋山手の富豪邸 みのる
梵鐘や初東雲の時空間 豊実
牛年の撫牛なでる初詣 よし子
凧糸に力みなぎる初御空 せいじ
年玉をもらふ曾孫ら横並び なつき
松明の揺らぎに祈る四方拝 素秀
初茜七福神の船出かな かかし
竹爆ぜて木霊を返す大とんど うつぎ
老松の秀枝にかかる凧の足 みのる
初写経一字一字に仏在す うつぎ
初空は飛機ひとすじの真澄かな 素秀
どんど観て帰る児灰をほつぺたに なおこ
妻眠る後部座席の破魔矢かな 豊実

2020年12月

聖樹前チェリスト天に弓かざす 素秀
大穴に沸きたる師走競馬かな みのる
犬の死に籠もる師走の一日かな なつき
開け閉ての雨戸軋むや初氷 かかし
走井餅の箱に虚子の句冬ぬくし せいじ
アプローチのタイルも洗ひ庭師走 菜々
庭師らに晴雨不問の師走来る みのる
積み上げし書類断捨離師走かな 豊実
駅前のピアノは無音町師走 せいじ
まだ雫ふふむ寒天うすみどり 小袖
マッチングアプリの思惑師走かな 豊実
リハビリてふ友の師走の長電話 なつき
商談は「年内には」の師走かな 豊実
蹲ひにひと葉閉じ込め初氷 菜々
粗大ごみとぞ言ひたげな師走妻 みのる
振り向けば狛犬の眼や木の実落つ よう子
街師走一等賞の鐘の音 かかし
カーナビの諭す運転師走中 なおこ
最敬礼されて店出づ師走かな 小袖
極月やビッグイシュー売り立ち尽くす よう子
剪定の鋏忙しや庭師走 菜々
セロ弾きの大き背急ぐ師走街 素秀
道塞ぐ普請を愚痴りたき師走 せいじ
クリスマスカード南の島より来 素秀
師走来ぬ母子の指に絆創膏 なつき
くるくるくるひらひらひら木の葉散る なおこ
近隣に吟の地数多冬うらら かかし
絹光り寒天干し の村白く 小袖
櫨紅葉一畝残し廃業す よう子

2020年11月

捨てきれぬ母の遺品や冬支度 みのる
黒豆のお茶をいただき店小春 更紗
瀬戸の海白帆の寄りて小春凪 小袖
冬支度ドアにリースを飾りては 更紗
穴太積みの城壁のみや石蕗の花 かかし
巻き癖の玄関マット冬支度 みのる
チェンソーの音遠きより冬支度 素秀
ワクチンの接種完了冬支度 せいじ
渡船の子マスクの中のあくびかな なつき
艶やかな黒髪の子や七五三 更紗
着古しの仕分けに始む冬支度 せいじ
人気なき谷戸の民泊冬田道 小袖
鳥葬の国へ枯野の滑走路 素秀
挨拶の名前浮かばず駅寒し かかし
縁側に日差しの伸びて冬支度 豊実
柿の木を過ぎゆく二両電車かな なおこ
冬支度クローゼットの履かぬ靴 よう子
赤とんぼ連れて走りぬ島のバス なおこ
浜小屋に砂吹きだまる隙間風 素秀
軒下に薪の里山冬支度 かかし
牡蠣売りの軍手忙しや解禁日 よう子
改易の天守なき堀浮寝鳥 よう子
冬支度毛布のやうなシーツかな なつき
家兎毛を抜きかえて冬支度 なおこ
陽だまりに洋蘭集め冬支度 小袖
鵙日和ベンチで剥きしゆで卵 なつき
冬支度円錐形の清め塩 豊実
境内の砂利掃く巫女や冬支度 豊実
偕老がパグをバギーに園小春 せいじ
リビングウィルなど書きもして冬用意 みのる

2020年10月

秋灯や今日の家路は遠回り 豊実
秋高し大般若会の堂震へ 小袖
風吹けば秋薔薇のつる奔放に なつき
かりがねの過ぎて夕日の残りけり 素秀
洗濯機の渦に乗りたる木の実かな よう子
誰もゐぬ夜半のコンビニ秋灯 みのる
線を引く更の聖書に秋灯下 せいじ
紅葉濃し大観の絵を想ひけり なおこ
秋ともし夕餉の親子笑みのもれ かかし
破れ翅の秋蝶ふらと何処かへ かかし
十六夜や山羊の影おく牛舎かな 素秀
ブランデーグラスに宿る秋灯 みのる
秋灯や暖簾一つの高架下 豊実
句敵の顔さやけしやテレ画面 せいじ
福祉自動車行く先々の木犀香 うつぎ
蜘蛛の子のとことこ歩む秋灯下 なおこ
煤光りせる古民家の秋灯 うつぎ
知己と酌む秋灯ひとつ共にして みのる
清けしや筆伸びやかに納経帳 よう子
配達のレシピを添へて今年米 かかし
一つ熟る朱欒の重き苗木かな なつき
秋灯し連子格子の塗師の家 よう子
一叢の露草みんな日に向ける うつぎ
血管の浮き出た手撫づ秋灯下 なつき
ハイキング女子に囲まれ秋の蝶 小袖
秋の灯にエンジン休め路線バス 小袖
秋灯や研究棟の窓の松 豊実
ズームもて祈りを繋ぐ秋灯下 せいじ
窯変のうねりをなぞる秋灯下 素秀

2020年9月

慰霊碑に額づきをれば秋の声 みのる
猪除けの扉軋むも秋の声 せいじ
辻々に頭を下げて秋遍路 素秀
草衣路傍の石に秋の声 よう子
秋晴の一湾われの小手のうち みのる
源流のさざ波の音に秋の声 かかし
干しかごに落花生干す島の宿 なつき
新米の一箸に笑む夕餉かな 豊実
秋日差し届かぬ洞の無縁仏 よう子
盆の月照らす実家に母ひとり 更紗
乳吸ひしまま嬰ねむり秋の声 更紗
片耳のイヤホン拾ふ秋の声 素秀
かしぎたる案山子深々野球帽 素秀
五時に鳴る島のカリヨン秋の声 うつぎ
顔払う婚活アプリ秋の声 豊実
風と波無限の中の秋の声 なつき
渾身の力瘤にて鳳仙花 かかし
盆栽の林の一葉紅葉づれり よう子
秋の声学園祭の後始末 豊実
ダム湖へと続く岨道秋の声 せいじ
秋の声石燈籠に灯の点り うつぎ
天高く叫ぶやガッツポーズして みのる
砦跡葉擦れにまじる秋の声 なつき
広縁に足投げ出せば秋の声 せいじ
どこかよりピアノのワルツ涼新た 更紗
生家へは海沿ひの道秋の声 うつぎ
新米に卵を添へて神棚に かかし

2020年4月

落花また落花や我に句敵に うつぎ
春雨の静かに濡らす礁かな わかば
チューリップ園撤去されたる案内板 こすもす
緊急宣言聞く静かなる花の昼 なつき
海風やつつじの寺は人疎ら こすもす
著莪の咲く竹工房の出入口 せいじ
落椿ダム湖に秘めし物語 うつぎ
春塵にあらず火葬のうす煙 みのる
鶴翼の陣形めきし若楓 せいじ
徒長枝の負けじと花の十輪や かかし
タンポポに埋る土橋やな渡りそ よう子
重き世にピンクムーンてふやさしき名 もとこ
春の空山路喘ぎつ陶の里 わかば
塩田の跡に遍路の鈴進む 素秀
青空ももう夕空に遠さくら よし子
黒き幹園を統ぶる楠若葉 ぽんこ
旧家並む村の細道遅さくら はく子
街なかに残る里山夏うぐひす 菜々
川幅にいつしか広がる花の塵 ぽんこ
ランタンとせる竹筒に花の屑 せいじ
初蝶来野面スキップするごとく みのる
神域に品良くつつじ咲きにけり 宏虎
みつばつつじに染まる山寺鐘響く こすもす
飛花落花真つ只中の余生かな よし子
春雨のけぶれる古都の一日旅 わかば
滑り台勢いしりもち山笑ふ 菜々
菜の花や水ぎわせめて大河如 もとこ
夕桜白く崩るる砂の城 なつき
夜桜へ光届けと星一つ 満天
山つつじコロナ避難の能勢路かな よう子
幼馴染マスクをつけて声かける ぽんこ



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