2020年度のみのる選
俳句 | 作者 |
冬ざれの風情また良しわが狭庭 | 明日香 |
店訪へばシャッター閉ざし冬ざるる | たか子 |
灯台にしぶく白波冬ざるる | かかし |
湯たんぽのカバーのパンダ抱き寝る子 | うつぎ |
なぞなぞの姉妹一つの湯たんぽに | よう子 |
冬ざるる倒れしままの売地札 | 満天 |
冬ざれの庭にころがる如雨露かな | なつき |
湯たんぽはペットボトルにタオル巻 | こすもす |
湯たんぽを抱けば母の温みあり | みづき |
冬ざるる宮址といへど礎石のみ | はく子 |
冬ざれや漂着缶のハングル語 | やよい |
滝跡の黒々として冬ざるる | たか子 |
墨うすれ読めぬ扁額冬ざるる | 明日香 |
冬ざれや錆にさびたる廃線路 | 智恵子 |
湯たんぽや昭和の薄き敷布団 | 小袖 |
丁目石朽葉に埋もれ冬ざるる | わかば |
湯たんぽの栓確かむる二度三度 | うつぎ |
流木や広き河原の冬ざれて | 明日香 |
湯婆を抱く児を抱きて添ひ寝かな | なつき |
気遣ひの湯たんぽ嬉し里泊り | よう子 |
俳句 | 作者 |
解体の跡広びろとうそ寒し | たか子 |
木の実独楽舞はす器用も不器用も | 満天 |
うそ寒し乗り換へ電車間に合はず | よう子 |
夕散歩木の実と分かる足裏かな | よう子 |
うそ寒や視線合はせぬ羅漢像 | 素秀 |
抽斗に夫の残せし木の実独楽 | みづき |
陵へ磴三百や木の実降る | はく子 |
不意打ちの木の実に犬の絶叫す | よう子 |
木道に音たて消えし木の実かな | よう子 |
ヤシャブシの木の実集めてストラップ | 明日香 |
おしゃべり楽し寺のぎんなん皆で剥く | はく子 |
木の実独楽つつつと斜め走りかな | 小袖 |
父親を本気にさせて木の実独楽 | うつぎ |
木の実落ち鯉の水輪に紛れけり | かかし |
農小屋は朽ちて屋根なし木の実降る | 素秀 |
鍵明けて独りの暮らしそぞろ寒 | 宏虎 |
うそ寒や刃物六本研ぎに出す | わかば |
二つ三つ苔玉用に木の実埋め | 明日香 |
銀杏の実を踏むまじとたたら踏む | たか子 |
目に見えぬコロナウィルスうそ寒し | うつぎ |
どんぐりの釣り合ひよろしやじろべえ | はく子 |
パソコンの指示に騙されうそ寒し | たか子 |
木の実落つ音に振り向く山路かな | 宏虎 |
俳句 | 作者 |
吊るされてくの字しの字の唐辛子 | 明日香 |
峠道霧を抜ければ小京都 | 満天 |
箸置きは唐辛子なる焼肉屋 | 智恵子 |
枝豆は霧に育つと丹波人 | うつぎ |
霧を出て霧へ入りゆくケーブルカー | やよい |
海峡の霧笛しきりの朝かな | わかば |
里ひとつ隠す速さや霧流る | たか子 |
後で効く母の小言や唐辛子 | よう子 |
霧の道テールランプを頼みとす | ぽんこ |
唐辛子辛さ爆発までの時差 | 豊実 |
縦走の先を行く人霧の中 | うつぎ |
霧晴れてあがる歓声河童橋 | はく子 |
霧深し養鱒場へ続く渓 | せいじ |
芋育つ丹波日ぐせの朝霧に | 菜々 |
朝霧にまつげ濡らして通学子 | 菜々 |
と見る間に釧路湿原霧襖 | かかし |
天を突く架橋の主塔霧の中 | よう子 |
霧襖踏んまへて立つ大鳥居 | 素秀 |
高牧の霧の奥より牛の声 | 智恵子 |
俳句 | 作者 |
秋暑し今は使はぬ二階部屋 | 素秀 |
天気予報期待はずれや秋暑し | たか子 |
撒く餌に犇めく鯉や秋暑し | ぽんこ |
豆腐屋のラッパ気怠き残暑かな | 小袖 |
スケジュール目白押しなり秋暑し | こすもす |
立ち話途切れがちなる残暑かな | たか子 |
駐車場マイカーは何処秋暑し | うつぎ |
秋暑し民生委員忙しく | 明日香 |
飛鳥仏おはす御寺の白芙蓉 | はく子 |
たつぷりと雨降つてほし街残暑 | 満天 |
地下街を出で大都市の秋暑し | かかし |
ビル陰を拾ひつつゆく街残暑 | わかば |
手にあまる腕白の孫秋暑し | もとこ |
ひとつ買ひ忘れて戻る秋暑し | せいじ |
ジーンズのボタン止まらず秋暑し | よし子 |
酔芙蓉閉ぢて花街夕さるる | 菜々 |
近道の筈が渋滞秋暑し | うつぎ |
GOTOキャンペーンと言へどこの残暑 | たか子 |
秋暑しまさか難病指定とは | やよい |
視力弱りしは残暑のせいならむ | 明日香 |
いつ終はる夜間工事よ秋暑し | ぽんこ |
雨雫抱きしままに芙蓉閉づ | 小袖 |
声嗄らしては香具師叫ぶ残暑かな | なつき |
秋暑しどこまで続く護岸壁 | 小袖 |
尼寺の庭に咲かせて酔芙蓉 | はく子 |
芙蓉咲く路地分入れば行き止まり | 智恵子 |
俳句 | 作者 |
黙礼す日傘の似合ふ老紳士 | うつぎ |
畳むとき日傘吐息のごと熱気 | たか子 |
そこまでと日傘持たぬを悔いにけり | わかば |
眠れぬと言ひつつ寝息熱帯夜 | 宏虎 |
渡月橋日傘を肩にモデル嬢 | かかし |
待ち合わせ日傘高々会釈かな | やよい |
前をゆく祇園舞妓の日傘かな | 小袖 |
手庇の汝れに差し掛く白日傘 | たか子 |
宮の鳩杜にくぐもる熱帯夜 | よう子 |
白日傘傾げて笑顔見せにけり | わかば |
写経堂座右にたたむ白日傘 | みづき |
喜寿の吾に男日傘のプレゼント | かかし |
棚経の女住職白日傘 | 素秀 |
絵日傘は母のお下がり雅号入り | わかば |
熱帯夜吾は窓開け夫クーラー | 明日香 |
熱帯夜オンザロックのからと鳴り | もとこ |
南座へ裾さばき美し白日傘 | 満天 |
回覧板隣家といへど日傘さし | こすもす |
ギブスの足寝返り幾度熱帯夜 | やよい |
急坂を休みやすみの日傘かな | 素秀 |
お泊まりの子らに蹴らるる熱帯夜 | なつき |
ぬくもりももろとも畳む日傘かな | 満天 |
川の字の崩れつぱなし熱帯夜 | うつぎ |
俳句 | 作者 |
祝ひ膳百寿の母もビール干す | かかし |
ぽんぽん船きく明易の旅枕 | やよい |
夜を通す工事の音や明易し | ぽんこ |
両の手にジョッキ四五杯ビヤガーデン | はく子 |
どれからにしよか地ビール詰合せ | うつぎ |
タイガース勝つも負けるもビール酌む | 小袖 |
救急車の音に起こされ明易し | はく子 |
明易し亡き友と会ふ老の夢 | 董雨 |
母の忌やビール少しで酔ひし父 | なつき |
短夜の漁火見んと窓あけて | やよい |
下戸夫婦ミニ缶ビール分け合ひて | はく子 |
丈あまる異国のベッド明易し | たか子 |
短夜や目覚まし要らぬ余生われ | 宏虎 |
短夜やまた書き直す詫びの文 | 明日香 |
母寝息穏やかとなり明易し | わかば |
仏壇に供へるためのビール買ふ | みづき |
短夜や間遠にひびく救急車 | 満天 |
老集ひ不眠談義や明易し | もとこ |
俳句 | 作者 |
新緑の山近づけよ遠眼鏡 | よし子 |
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新緑へ飛び込んで行く滑り台 | うつぎ |
喪の旅を終へし車窓へ緑さす | やよい |
地下街を出て新緑の遊歩道 | 満天 |
新緑の庭キッチンを明るうす | 菜々 |
ベビーカー寝顔は双児聖五月 | 満天 |
島と島つなぐ大橋五月晴 | はく子 |
錦鯉群れて新緑揺らしけり | やよい |
旅衣決めかねてゐる五月かな | みづき |
廃校舎のこりし松の緑かな | よし子 |
新緑に足取り軽き山路かな | はく子 |
緑さす土塁の残る一揆寺 | なつき |
濃淡のグラデーションや山若葉 | 董雨 |
翠黛のいよいよ著き五月かな | みづき |
風五月丘に登れば海と空 | うつぎ |
新緑や万古不易の石舞台 | 明日香 |
新緑の山まろび落つ夫婦滝 | 菜々 |
箸使ふこともリハビリ五月来る | かかし |
手に掬ふ能勢の湧水新樹光 | うつぎ |
風五月セーラー服の一団に | うつぎ |
俳句 | 作者 |
窯出でし素焼きの狸陽炎へる | 宏虎 |
森なせる陸軍墓地や百千鳥 | ぽんこ |
園児らのお散歩時間百千鳥 | 菜々 |
百千鳥石段登りつめしより | 満天 |
海に向く砲台の跡かげろへる | わかば |
かぎろひの沖にたゆたふ巨船かな | こすもす |
人け無き奥の院なり百千鳥 | はく子 |
陽炎や荷造り小さく町を出づ | なつき |
百千鳥声の一つに聞き覚え | 董雨 |
陽炎や高層マンション傾ぐかに | 満天 |
子らのゐぬ園の遊具のかげろへる | もとこ |
百千鳥写経の筆を休めけり | かかし |
陽炎ひを肩ゆすりくる路線バス | よし子 |
ジェット機の陽炎ひながらいま離陸 | はく子 |
陽炎の沖に行き交ふ船の影 | わかば |
百千鳥鳴いて里山膨らます | 菜々 |
鐘一打あとの余韻に百千鳥 | 小袖 |
人影のありて陽炎ふ歩道橋 | せいじ |
このダムに沈みし村や百千鳥 | たか子 |
住み古りし能勢の山里百千鳥 | うつぎ |
かぎろひの野を浮かみくる一輌車 | 菜々 |
ダム湖へと渓谷の道百千鳥 | よう子 |
山門を潜るや否や百千鳥 | みづき |
どの木にも樹名札あり百千鳥 | うつぎ |
まほろばにかぎろひ見ゆる御陵かな | 明日香 |
甘樫より明日香一望百千鳥 | 明日香 |
俳句 | 作者 |
春塵を撒き散らし犬尾を振りぬ | 智恵子 |
目刺焼く煙の出ないオーブンで | 明日香 |
目刺焼く七輪囲みコップ酒 | よう子 |
目刺焼く単身時代懐かしき | かかし |
春塵や並ぶ宮居の道具市 | わかば |
道の駅目刺振る舞ふ割烹着 | よう子 |
一連の目刺の顔のみな同じ | うつぎ |
春埃夫の遺せし地球儀に | みづき |
煙たいと文句言ひつつ目刺焼く | 明日香 |
黒潮の風に痩せゆく目刺かな | やよい |
今風にレモン汁掛け目刺喰ふ | せいじ |
見開ける眼にも春塵仁王像 | はく子 |
春塵や造花の供花の色褪せて | 素秀 |
料亭のシメに目刺と釜飯と | もとこ |
櫓門手斧の痕の春埃 | うつぎ |
戻りきし猫のお髭に春埃 | こすもす |
門仁王力こぶにも春埃 | 菜々 |
風に乗るタクラマカンの春の塵 | よし子 |
船旅や浜の土産に買ふ目刺 | みづき |
晩酌は薩摩白波目刺焼く | うつぎ |
春埃置きつぱなしの子規全集 | よし子 |
目刺し焼く尻尾は焦げてなくなりぬ | はく子 |
昨今は目刺しといへど高級魚 | ぽんこ |
ワイパーに涙走りすの春埃 | 隆松 |
春塵のアルバム繰れば懐かしき | 満天 |
目刺し焼く私は頭食べない派 | 董雨 |
俳句 | 作者 |
下萌えてはやいと小さき花掲ぐ | はく子 |
涅槃図に座して嘆きの声聞かむ | 満天 |
車座に自己紹介や下萌ゆる | うつぎ |
端つこの破れし寺宝の涅槃絵図 | よし子 |
涅槃会や指し棒使ひ絵解僧 | うつぎ |
姦しき三人の来て涅槃絵図 | うつぎ |
安らかや母の寝顔に似し寝釈迦 | 智恵子 |
下萌えて若草山の空ま青 | かかし |
涅槃図の四百年の金褪せず | うつぎ |
駐車場混む下萌の河川敷 | こすもす |
カラフルなジャングルジムや下萌ゆる | せいじ |
下萌に花鉢並べ露天商 | 董雨 |
下萌に紙飛行機の着陸す | 菜々 |
下萌に刺さる三脚測量器 | 素秀 |
下萌や子ら軽々と逆上がり | せいじ |
大幅の余り裾引く涅槃寺 | よう子 |
涅槃図の老女涙で足拭ふ | ぽんこ |
よちよちのファーストシューズ下萌ゆる | やよい |
一寸の虫も嘆かふ涅槃絵図 | 小袖 |
下萌に雀躍やまぬ日和かな | 明日香 |
下萌や赤子の靴のすぐ脱げて | なつき |
海望む丘のなぞへの草萌ゆる | わかば |
下萌や小女リュックの鈴鳴らし | みづき |
廃線の錆びし鉄路や下萌ゆる | たか子 |
俳句 | 作者 |
寒雀わつと翔たたせし大樹かな | たか子 |
日溜りに押しくら饅頭寒雀 | かかし |
縁側と云ふ心地良さ日脚伸ぶ | たか子 |
枝先に寄り添ふふくら雀かな | わかば |
入相の鐘の余韻や日脚伸ぶ | 菜々 |
もう一周増やす散歩や日脚伸ぶ | こすもす |
棟上げの槌音続き日脚伸ぶ | 宏虎 |
電波時計正しく刻み日脚伸ぶ | うつぎ |
リハビリの写経の字数日脚伸ぶ | かかし |
寒雀翔ちたる跡の庭虚ろ | よう子 |
千年の楠万朶なる寒雀 | 素秀 |
突風のごと飛び立つは寒すずめ | ぽんこ |
一羽発ち二羽たちどつと寒雀 | やよい |
公園の毬となりたる寒雀 | うつぎ |
ちよい旅のプランあれこれ日脚伸ぶ | たか子 |
ほろほろと樹より零れて寒すずめ | はく子 |
容赦なく埃目立たせ日脚伸ぶ | 明日香 |
好好爺昼餉分け合ふ寒すずめ | もとこ |
日脚伸ぶラジオ窓辺に針仕事 | やよい |
野の草を隠れ蓑とす寒雀 | せいじ |
日脚伸ぶ子ら道草すにはたづみ | 菜々 |
大空に観覧車置き日脚伸ぶ | みづき |
ベビーカー連ねママ友日脚伸ぶ | はく子 |
主留守の犬小屋統ぶる寒雀 | やよい |
絵筆持つ窓辺の机日脚伸ぶ | わかば |
舫ひ綱ゆりかごとなる寒雀 | 素秀 |
車窓より旅の名残の日脚伸ぶ | 董雨 |
子らの声届く高階日脚伸ぶ | はく子 |
放課後の吹奏楽や日脚伸ぶ | みづき |
笊の飯少し裾分け寒雀 | よう子 |
夕刊のまだ来ぬポスト日脚伸ぶ | ぽんこ |
海に向くオープンカフェ日脚伸ぶ | うつぎ |
俳句 | 作者 |
山眠る灯ともりゐたる間歩の奥 | よう子 |
頂に老人ホーム山眠る | 董雨 |
背の高き孫が頼みや煤払 | はく子 |
贋作の応挙の軸の煤払ふ | よし子 |
襞かさね重ね吉野の山眠る | 菜々 |
煤払ひ木喰仏の指の反り | かかし |
炭窯を抱きクヌギの山眠る | 小袖 |
朝靄に溺るる如く山眠る | たか子 |
夫をりしままの調度や煤払ふ | うつぎ |
天辺は城の石垣山眠る | こすもす |
煤逃げの夫に買物頼みけり | もとこ |
地崩れの瑕癒えぬまま山眠る | ぽんこ |
神棚は長子の役目煤払ひ | 菜々 |
煤逃げの夫に家苞頼みけり | うつぎ |
煤払ひ電波時計は狂ひなし | かかし |
住職の姉さんかぶり煤払い | よう子 |
槍のごと煤竹構ふ武将隊 | なつき |
煤払い几帳面さは夫に勝てず | 明日香 |
一日に一本のバス山眠る | うつぎ |
煤払ひ御堂千畳開け放ち | 菜々 |
命綱頼みにビルの煤払 | なつき |
腰痛をなだめなだめて煤払 | やよい |
墨池のごとき隠沼山眠る | せいじ |
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