2019年度のみのる選
俳句 | 作者 |
しだらくに過ごす一と日や神の留守 | みづき |
祈願絵馬からから鳴りて留守の宮 | はく子 |
雨晴れて綺羅を纏ひし冬菜畑 | せいじ |
境内に市のにぎはふ神の留守 | もとこ |
上賀茂や大樽並べ冬菜漬け | みづき |
萎れては日に立ち上がる冬菜かな | よう子 |
峡の里寸土寸土に冬菜畑 | はく子 |
一汁となす到来の冬菜かな | わかば |
色濃きが自慢や夫の冬菜畑 | うつぎ |
菰巻の松に電飾神の留守 | なつき |
泉水の鯉身じろがぬ神の留守 | ぽんこ |
杜の木々風にざわめく神の留守 | うつぎ |
留守宮の風に撃ち合ふ恋の絵馬 | 満天 |
狛犬の阿吽でまもる神の留守 | よし子 |
扁額の龍の眼にらむ神の留守 | よし子 |
留守宮を守りて大楠仁王立つ | はく子 |
神の留守なれど参道一穢なし | こすもす |
手作りの料金箱や冬菜売 | かかし |
虫喰いの屑散らかりし冬菜市 | たか子 |
神の留守なれど手術の無事祈る | 明日香 |
神の留守一燈ともるご本殿 | 菜々 |
神鶏と猫睨みあふ神の留守 | なつき |
缶蹴りの子ら留守宮の広前に | 素秀 |
御手洗の竜口しずる神の留守 | 董雨 |
俳句 | 作者 |
身に入むや大磐座に鑿のあと | 菜々 |
また増へし診察券や身にぞ入む | 満天 |
母の字の葬儀メモあり身にぞ入む | 明日香 |
野仏の円座となりて草もみぢ | 菜々 |
身に入むや施設に友を見舞ふとは | うつぎ |
銀杏黄葉一直線の御堂筋 | よし子 |
紅葉して洞だらけなる老桜 | ぽんこ |
人口の右肩下がり身にぞ入む | 小袖 |
願掛けに紅葉明りの磴のぼる | 明日香 |
紅葉寺みんな笑顔で撮られけり | みづき |
袖合はす山々いよよ紅葉濃し | みづき |
病棟の窓に遊べる蔦紅葉 | 素秀 |
石積みし武将の墓や蔦紅葉 | なつき |
身にぞ入む水禍のニュース尽きるなし | はく子 |
下校子の歩きスマホや身にぞ入む | なおこ |
深き谷より燃え上がる紅葉かな | 董雨 |
採石の絶壁見せて紅葉渓 | 素秀 |
黄葉して宮の要の大公孫樹 | わかば |
旅名残り機窓に今日の紅葉山 | たか子 |
身に入むや高齢車事故聞くにつけ | はく子 |
身に沁むやお顔だけなる磨崖仏 | もとこ |
身に入むや古本市に虚子句集 | よう子 |
海底に眠る空母や身にぞ入む | うつぎ |
せせらぎの水草紅葉ネオンめく | 智恵子 |
身に入むや磨きて愛車との別れ | うつぎ |
中腹に地肌の見ゆる紅葉山 | せいじ |
源流は確かこの辺紅葉峡 | かかし |
広げたる句帳へ一葉散紅葉 | 満天 |
異国語で賑はふロビー紅葉宿 | 素秀 |
老舗さえ消ゆる街並身にぞ入む | 宏虎 |
日を浴びし散居の里の冬もみじ | たか子 |
俳句 | 作者 |
長き夜や術後の麻酔覚めてより | 素秀 |
ご無沙汰の文綴りをる夜長かな | 明日香 |
碧落に鷲を放ちし大花野 | 智恵子 |
露地奥に古書肆の点る夜長かな | よし子 |
老い母の話し相手となる夜長 | わかば |
集合の笛の吹かるる花野かな | たか子 |
古戦場跡と碑の立つ大花野 | 隆松 |
夕餉終へ独り暮しの夜の長し | はく子 |
晩学の一人の夜長愉しめり | はく子 |
獣道抜ければ突と大花野 | うつぎ |
誰からとなく唄ひ出す花野道 | うつぎ |
旅夜長一会の人と杯重ね | 菜々 |
音のせぬ電波時計や夜の長し | よう子 |
古日記読み返しをる夜長かな | たか子 |
俳句 | 作者 |
車窓いま伴走のごと鰯雲 | 董雨 |
朝顔の格子に絡む古都の路地 | 智恵子 |
朝窓のカーテン繰ればいわし雲 | はく子 |
海峡はタンカー銀座鰯雲 | よう子 |
古戦場跡に大の字鰯雲 | 隆松 |
朝顔や明日咲く花のねじ緩む | はく子 |
いわし雲高々と打つサーブ球 | ぽんこ |
発電の風車ゆるりといわし雲 | やよい |
パラボラが押出してをる鰯雲 | うつぎ |
故郷の空へと続く鰯雲 | せいじ |
鰯雲見て落ち着かぬ旅心 | もとこ |
広々と城址の遺構いわし雲 | なつき |
退院日窓いつぱいに鰯雲 | 素秀 |
さながらに鹿の子絞りや鱗雲 | 菜々 |
鰯雲背伸びして干すシーツかな | よう子 |
三輪山を越え大宇陀へ鰯雲 | 明日香 |
俳句 | 作者 |
溶接の火花炎暑へ撒き散らし | やよい |
坂の果て揺らぐかと見ゆ空炎暑 | 隆松 |
さるすべり白々とある夕間暮 | よし子 |
街炎暑なれど稚児らの鉾凛と | せいじ |
人影のなき校庭に百日紅 | 満天 |
迂回路も陸橋も嫌街炎暑 | うつぎ |
百日紅根づく被爆の石垣に | なつき |
大き洞もつ禅林の百日紅 | うつぎ |
谷川に足冷やしゐる炎暑かな | よう子 |
炎暑来てラヂオ体操老い元気 | もとこ |
下山して街の炎暑を纏ひけり | やよい |
仁王立つ古刹の門の百日紅 | 董雨 |
球歪む炎暑のテニスコートかな | 素秀 |
夫逝きし日々思ひ出す炎暑かな | はく子 |
復員の父の手植えの百日紅 | 明日香 |
寺炎暑怒髪逆立つ仁王像 | 菜々 |
街炎暑靴に吸い付くアスファルト | ぽんこ |
寄り道す炎暑の街の深庇 | たか子 |
炎暑中百寿の葬に参じけり | こすもす |
ビル街の路地に迷ひし炎暑かな | わかば |
俳句 | 作者 |
風孕み噴水昇り龍と化す | 素秀 |
黴の堂覗けば光る閻魔の眼 | 菜々 |
黴びたれど定年の靴捨てがたし | よう子 |
噴水の背山貫き高々と | はく子 |
噴水に神々集ふローマかな | もとこ |
黴匂ふ青春の日の写真帖 | わかば |
臍の緒の小箱箪笥の黴にほふ | 小袖 |
気まぐれな噴水出たり出なんだり | ぽんこ |
歳時記は恩師の形見黴匂ふ | 明日香 |
本棚を陣取る黴の広辞苑 | こすもす |
洞窟の古りし神棚黴にほふ | たか子 |
ふつふつと醤の育つ黴の蔵 | はく子 |
駅頭の噴水上下繰り返し | 董雨 |
堂に満つ五百羅漢の黴の息 | うつぎ |
ほほえみをたたへて黴の菩薩像 | よし子 |
山小屋の雑魚寝の布団黴匂ふ | うつぎ |
噴水に真向き背きて人を待つ | うつぎ |
と見る間に消ゆ噴水の小さき虹 | 素秀 |
百年を経してふ黴の醤油蔵 | やよい |
噴水のもぐらたたきに子等遊ぶ | 満天 |
俳句 | 作者 |
小湊を出てゆく漁船明易し | 智恵子 |
旅の夜の語らひつきず明易し | わかば |
明易や外湯めぐりの下駄の音 | 菜々 |
跡継ぎの生れて父祖の地麦の秋 | 菜々 |
気にかかる夢の顛末明易し | たか子 |
麦秋を一瞬に過ぐ新幹線 | 三刀 |
明易やしきりに鯉の跳ねる音 | 満天 |
明易や看取りの母の手を握り | よう子 |
麦の秋札所詣での鈴つづく | 菜々 |
コンバイン幾何模様描く麦の秋 | よう子 |
枕辺に旅鞄おき明易し | 董雨 |
麦を踏むみな後ろ手にひと並び | たか子 |
母に会ふ夢の途中や明易し | よし子 |
寝返りのできず看護の明易し | うつぎ |
明易や沖にちらば漁船の灯 | やよい |
麦秋を通過す貨車のなほ続く | よし女 |
露天の湯いま我独り明易し | 宏虎 |
ほつほつと残る門灯明易し | 明日香 |
麦秋の空高く舞ふこうのとり | こすもす |
明易の舟屋は何処もがらんどう | うつぎ |
明易しおしゃべり止まぬ軒雀 | 満天 |
俳句 | 作者 |
那智黒の径の一歩に庭若葉 | ぽんこ |
濃き若葉奈落を埋む一の谷 | わかば |
菩提樹の若葉あかりに大仏殿 | なつき |
春惜しむ比叡を望む寺庭に | はく子 |
春惜しむ海一望の高館に | うつぎ |
小流れへ若葉洩る日のシャワーかな | 明日香 |
目に染むや直哉旧居の窓若葉 | せいじ |
清流の天蓋なせる溪若葉 | 宏虎 |
打ち返す波に渚の春惜しむ | 三刀 |
隊列にロードバイクや若葉風 | うつぎ |
まほろばの古都の小径に春惜しむ | もとこ |
惜春の灯を洩らしゐる浮見堂 | うつぎ |
若葉雨空のどこかが明るくて | 菜々 |
惜春や母の句帳の薄き文字 | たか子 |
柿若葉少年の声よくとほる | やよい |
厨窓おはやうと射す若葉光 | 明日香 |
百年を生きし母校の楠若葉 | 菜々 |
子規居士の文机に座し春惜しむ | なつき |
丁寧に鍬を洗ひて春惜しむ | よう子 |
俳句 | 作者 |
白髪染めやめると決めて山笑ふ | なつき |
水温む娘の来るといふ知らせ | 須磨子 |
吊り橋に繋がる両の山笑ふ | はく子 |
水温む鳥の集まる手水鉢 | 明日香 |
と見る間に日照雨の過ぎて山笑ふ | ぽんこ |
飛行船追ひかける子に山笑ふ | 智恵子 |
山笑ふ大吊橋の揺れに揺れ | 菜々 |
迷路なるジャンクション抜け山笑ふ | よう子 |
嬰児の公園デビュー水温む | 菜々 |
山彦の呼べば応えて山笑ふ | よし子 |
雨晴れてうふふおほほと山笑ふ | 明日香 |
山笑ふ課外授業の子らの声 | うつぎ |
間伐を終へて明るし山笑ふ | よし女 |
御朱印帳満願となり山笑ふ | 素秀 |
鍬杖に腰を伸ばせば山笑ふ | 智恵子 |
蒼穹へ鳶を放ちて山笑ふ | 素秀 |
噛み合はぬ媼の会話山笑ふ | やよい |
俳句 | 作者 |
あたたかや十年を経し癌術後 | やよい |
啓蟄や菰取り外す園の松 | 董雨 |
啓蟄や通院もまた試歩なりし | せいじ |
啓蟄や地べたで遊ぶ子らのゐて | よし子 |
暖かやよちよち歩き出来し子に | 満天 |
啓蟄や散歩まだかと媚びる犬 | よし女 |
一輪車乗れたと破顔暖かし | たか子 |
啓蟄や走り出したら止まらぬ子 | なつき |
啓蟄や農機具並べ点検す | こすもす |
風呂上り母の手編みを着てぬくし | 董雨 |
暖かやそろそろ庭の手入れでも | 宏虎 |
暖かやレジャーシートに犬も居り | 更紗 |
地虫出て道草する子ランドセル | 菜々 |
杖ついて来る回覧板暖かし | うつぎ |
あひたがい久闊を叙しあたたかし | ぽんこ |
暖かや母の瞳に児ら遊ぶ | よう子 |
列島はあちこち揺れて地虫いづ | たか子 |
暖かき日差しに母の髪を梳く | わかば |
偕老の笑顔の会話あたたかし | よう子 |
胎の子に話しかけもしあたたかし | なつき |
あたたかや異国語で満つ旅のバス | もとこ |
啓蟄に誘はれてまた旅支度 | もとこ |
啓蟄の畦道の土匂ひけり | 明日香 |
暖かや水子地蔵に供華あふれ | 満天 |
触角を大きく回し地虫出づ | うつぎ |
啓蟄や土と親しむ暮らしして | 明日香 |
風ぬくしデッキに立ちて島巡り | 隆松 |
いやいやをおぼへたる子やあたたかし | はく子 |
暖かやうたた寝の手にクリスティー | もとこ |
啓蟄や城の砦は野面積み | たか子 |
啓蟄や雨に傾く売地札 | 素秀 |
啓蟄の戸口に試歩の松葉杖 | 菜々 |
俳句 | 作者 |
抱つこして吊革持たす初電車 | なつき |
変顔を比べあひして初笑 | なおこ |
初天神絵馬は有名校ばかり | たか子 |
水鳥の沖にたゆたふ初景色 | はく子 |
髪切つてうなじ艶めく初手前 | なつき |
孫が来て初ドライブや誕生日 | 董雨 |
初乗や夫の運転変わりなく | ぽんこ |
正信偈誦すが私の読初め | こすもす |
車椅子玉の日射しに初散歩 | 智恵子 |
初護摩供転読をもて終はりけり | 菜々 |
子ら去にて静心なる初硯 | やよい |
子らの泣く声もめでたし初電話 | うつぎ |
みどりごの一挙一動初笑 | もとこ |
初電話息災告ぐる郷訛り | 満天 |
初句会今年こそはの顔並ぶ | 明日香 |
唯一の己が句集を読み初めに | 菜々 |
法螺貝の高音が合図糶始め | 三刀 |
声高に指差喚呼して初電車 | よう子 |
夫に添ふ散歩初めや白砂浜 | よし女 |
初大師押すな押すなの人波に | 宏虎 |
蒼天へ千木の輝く初戎 | ぽんこ |
初凪の一湾よぎる物もなし | やよい |
初茜千年欅泰然と | うつぎ |
沸々と伏流の湧く初山河 | 三刀 |
初日の出海展けゆく須磨の浦 | わかば |
子の苞に畑の幸掘る鍬初め | よし女 |
床の間に虚子の一幅初句会 | よし子 |
俳句 | 作者 |
日向ぼこ聖歌洩れくる木のベンチ | 菜々 |
鈍色の空と溶け合ふ枯野かな | かつみ |
日向ぼこして極楽にゐる心地 | よし子 |
世界観へと話とぶ日向ぼこ | たか子 |
恙なく百三歳の日向ぼこ | わかば |
存分に紫外線浴び日向ぼこ | うつぎ |
石垣に鍬抱き凭れ日向ぼこ | よう子 |
歳時記を友とし縁に日向ぼこ | やよい |
孫の婚まで生きたしと日向ぼこ | あさこ |
連山のパノラマとなる大枯野 | よし子 |
徘徊の母を枯野に探しけり | 素秀 |
行き暮れてお風呂が馳走枯野宿 | もとこ |
日向ぼこ生命線を見せ合ひて | うつぎ |
横に居るはずの人居ぬ日向ぼこ | はく子 |
大欅見えゐて遠し枯野みち | 菜々 |
どこまでも真つ平なる大枯野 | 明日香 |
煙立つ枯野の果の一軒屋 | 三刀 |
日向ぼこ子守爺やは船をこぐ | なつき |
SLの煙ひろごる枯野かな | 小袖 |
同じ席同じ顔触れ日向ぼこ | 宏虎 |
マウンテンバイク疾駆す枯野原 | ぽんこ |
色褪せし地酒看板立つ枯野 | こすもす |
鳶の笛枯野の果ての間遠より | よし女 |
落暉今銀となる大枯野 | わかば |
猫に愚痴聞いてもらひつ日向ぼこ | 満天 |
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