二歳児の吹き方講義しゃぼん玉 | もとこ |
しゃぼん玉置き去りにして鬼ごっこ | やよい |
魔女のごと母吹き出せりしやぼん玉 | あひる |
長持ちのキーは液なりしやぼん玉 | せいじ |
予定なき長期休暇や春深し | 豊実 |
春深むチェロの音朝のラジオより | はく子 |
調律の弾む音色やシャボン玉 | みづき |
見上げいる銀杏の木目春深む | ぽんこ |
遠眼差し狛犬の鹿春深し | よう子 |
三輪山を拜し山の辺春深し | 明日香 |
両手あげしゃぎまわる子しゃぼん玉 | こすもす |
いつまでも手摺に座るしゃぼん玉 | ぽんこ |
風の吹くのらりくらりとしゃぼん玉 | 宏虎 |
しゃぼん玉吹く子の澄みし瞳かな | うつぎ |
小さき手を抜けて空へとシャボン玉 | みづき |
春深し通勤電車にも慣れて | 更紗 |
2022年3月31日 | |
食初めの子を睨みつけ桜鯛 | うつぎ |
桜鯛渦潮くぐり骨に瘤 | ぽんこ |
作りたきメニューは桜鯛の飯 | こすもす |
糶台の尾を打ち止まぬ桜鯛 | うつぎ |
口元の誰ぞに似たり桜鯛 | 素秀 |
潮の香の小さき平和桜鯛 | みづき |
空色の夫の新車や黄砂降る | なつき |
霾風やお顔変わらぬ大観音 | 隆松 |
青空の翳みてひと日黄砂降る | 智恵子 |
垂直にのぼるエレベーター霾晦 | よし子 |
対岸の山々模糊と霾れる | はく子 |
噴く山も海を除いて黄砂降る | 宏虎 |
如何にせんまことみごとな桜鯛 | みづき |
昼網の真先に糶られ桜鯛 | うつぎ |
霾やタクラマカンの砂と云ふ | よし子 |
行き暮れて黄砂日本の土となる | よう子 |
到来の桜鯛なり婿料る | はく子 |
桜鯛さばく女の腕の艶 | 隆松 |
つちふるや投函口をそっと拭き | かかし |
スモッグにあらず京師は霾ぐもり | せいじ |
鷲掴みされてあらがふ桜鯛 | みのる |
霾やぼんやり山のシルエット | こすもす |
霾やワイパー百三十五度 | よう子 |
桜鯛どこの漁村を出で来たる | 素秀 |
霾天に警笛連呼観光船 | かかし |
桜鯛鳴門の渦にきらめけり | 満天 |
霾るや空は真白きドームめき | せいじ |
霾天の爆音追ふも飛機見えず | 隆松 |
黄砂降る時の流れの音の無く | 満天 |
嬉しさう優勝握る桜鯛 | 宏虎 |
ぴくぴくと尾ひれ船盛さくら鯛 | やよい |
桜鯛でんと主役のお食い初め | もとこ |
つちふるや艶消しとなる愛車かな | 智恵子 |
霾や砲台の跡影薄く | わかば |
明石鯛味も姿も日本一 | よし子 |
黄砂降る大和三山もやの中 | 明日香 |
風葬の国を越えきし黄砂かな | 素秀 |
霾や日に一便の赤ポスト | なつき |
黄砂降る水に流してケセラセラ | せいじ |
豊漁に賑わふ明石桜鯛 | 明日香 |
門出の子桜鯛にて祝福す | かかし |
霾や干し物躊躇室内干し | ぽんこ |
天然の販促シール桜鯛 | 豊実 |
桜鯛跳ねて糶声高まりぬ | わかば |
右近像石のクルスに黄砂降る | よう子 |
キッチンを鱗まみれに桜鯛 | やよい |
加太の門に犇めく漁船桜鯛 | やよい |
しゃぶしゃぶは友の釣果の桜鯛 | はく子 |
桜鯛料るうろこの光跳ね飛ばし | はく子 |
招かざる海越えて来る黄砂かな | 満天 |
問題の遠くて近し黄砂降る | 宏虎 |
塩焼のピンと尾の跳ね桜鯛 | よし子 |
黄砂降るコンクリートの大観音 | なつき |
笑む母の白寿を院ふ花見鯛 | 智恵子 |
かの国の焦都も斯くや黄砂降る | みのる |
また一つ入る訃報や霾ぐもり | うつぎ |
ワイパーが黄砂の窓をくり抜けり | なつき |
黄砂くる通天閣に赤い灯が | よし子 |
浦風や糶に跳ねおる桜鯛 | 明日香 |
婚礼の皿鉢に対の桜鯛 | よう子 |
タンカーの影模糊として黄砂降る | わかば |
桜鯛変はりていたるお品書 | みづき |
数字みな忘るる人よ霾ぐもり | なつき |
釣果ゼロ魚屋で買ふ桜鯛 | みのる |
そんな目で見るんじゃないよ桜鯛 | 隆松 |
桜鯛大漁旗にて入港す | かかし |
桜鯛触れなば跳ねん魚の棚 | 明日香 |
透くほどの桜鯛には酒祝ひ | もとこ |
おもてなし桜鯛をと決めにけり | みづき |
田園をベールに包む霾ぐもり | かかし |
石人の顔は哀しげ黄砂降る | うつぎ |
黄砂来る乾燥室となる風呂場 | 豊実 |
夜行にて釣りに行けども桜鯛 | 宏虎 |
桜鯛鯛大好きの誕生日 | 豊実 |
桜鯛出刃の刃先のかたき骨 | ぽんこ |
大渦にもまれて来たり桜鯛 | 素秀 |
あちこちに鱗飛ばして桜鯛 | 智恵子 |
結納の膳に華やぐ桜鯛 | 智恵子 |
大阪城鈍色に染め黄砂来る | ぽんこ |
黄砂降る四方の山山模糊として | 満天 |
民宿の店の生け簀や桜鯛 | みづき |
一本釣りと高値呼ぶ桜鯛 | わかば |
霾れる夕べの街のよそよそし | はく子 |
兜煮の目玉嬉しや桜鯛 | 宏虎 |
渦潮の透き通る青桜鯛 | 豊実 |
桜鯛チラ見したあとショッピング | こすもす |
藤原宮跡に望む香久山霾れり | やよい |
紀ノ川の長き鉄橋黄砂降る | よう子 |
あら炊きのごぼうの匂ふ桜鯛 | ぽんこ |
霾風や泥雨予感の匂いせり | 隆松 |
霾れる河原に佇てば黄泉路めく | みのる |
桜鯛かしら丸ごと潮汁 | やよい |
大陸の砂と思へば黄砂また | 明日香 |
噛み合はぬ言葉一つよ黄砂降る | もとこ |
つちふるや砂漠の民の夢紛れ | もとこ |
ご飯用に焦げ目をつける桜鯛 | こすもす |
距離感の狂ふ大路や黄砂降る | せいじ |
卒業を祝うてつつく桜鯛 | せいじ |
桜鯛明石産とて売れゆけり | わかば |
ミサイルも黄砂も来たる海越へて | もとこ |
機窓いま下界は深き黄塵裡 | みのる |
霾ぐもり大橋歩く開通式 | 素秀 |
足早に下る尾根道霾晦 | 豊実 |
2022年2月28日 | |
野の辛夷花の香りや立ちこめる | 宏虎 |
外つ国の避難の老女冴返り | もとこ |
冴返る抜きそこなひし指の刺 | なつき |
力込めニ礼二拍手冴返る | うつぎ |
風通る礼拝堂の冴返る | せいじ |
円空仏裂けし木目の冴返る | かかし |
和蝋燭ちりちり揺らぎ冴返る | うつぎ |
父母眠る故郷の丘花辛夷 | かかし |
玻璃越しの星の数多や冴返る | こすもす |
よそ行きの下着一枚冴返る | 宏虎 |
長谷寺の登廊下や冴返る | 明日香 |
夜半覚めラヂオの笑ひ冴返る | もとこ |
湖畔駅ホームを覆ふ花辛夷 | みづき |
食い渋る鮒はまだ底冴返る | 豊実 |
物見めく鴉の鋭声冴返る | せいじ |
参道の風に乗る香は辛夷らし | こすもす |
看取りさへままならぬ世ぞ冴返る | みのる |
花辛夷離陸見下ろす展望台 | 豊実 |
朝一番ハイヒールの音冴返る | 満天 |
道連れは己が影だけ冴返る | うつぎ |
冴返るシャッター街となり果てて | みのる |
蒼天へ真白き城の冴返る | 満天 |
検査室十ある廊下冴返る | なつき |
早暁の車スリップ冴返る | かかし |
子のいない六畳ひと間冴返る | 明日香 |
仏壇の蝋燭の火や冴返る | 明日香 |
ネオンの字一つ抜けたり冴返る | 宏虎 |
シャッターに貼り紙ありて冴返る | みづき |
辛夷咲く歌思い出し熱唱す | 宏虎 |
冴返り血中酸素下がるほど | 素秀 |
投入れしごと辛夷咲く雑木山 | みのる |
冴返る朝刊落とす音もまた | せいじ |
公園に笑ひ声あり花辛夷 | 隆松 |
冴返り易者動かぬ街灯下 | 素秀 |
冴え返る畳廊下の大書院 | やよい |
辛夷咲く十年越しの登山靴 | 豊実 |
靴先の指の感覚冴え返る | ぽんこ |
引きこもる日々の何時まで冴え返る | やよい |
山坂の頂上過ぎて花辛夷 | 素秀 |
学び舎の一つ残る灯冴返る | 満天 |
香を放ち野の肌覆う花辛夷 | 隆松 |
峡谷の祈る容の辛夷かな | 明日香 |
冴返るロイヤルティを熱くして | みづき |
代々の村役の家辛夷咲く | うつぎ |
凍返る売り地看板立つ生家 | やよい |
遠嶺の近くとなるや冴返る | 隆松 |
花辛夷つつかへ棒の旧校舎 | なつき |
冴返る互ひの言葉すれ違ひ | もとこ |
街路行く人を和ませ花辛夷 | わかば |
おしまるる命の別れ冴返る | わかば |
街路樹の天へ一斉辛夷の芽 | 満天 |
休みつつ延ばす杖の歩花こぶし | やよい |
廃寺に残りし句碑や冴返る | なつき |
花辛夷開いて空に疵の無し | 素秀 |
友の家ぬきんでてをり辛夷の木 | こすもす |
こぞり咲く無垢なる白や花辛夷 | わかば |
冴返るまだ手放せぬ厚手もの | こすもす |
冴返る突然に訃の知らせ来て | わかば |
青空に明日の予想辛夷の芽 | もとこ |
無住寺の猫出入り口花辛夷 | かかし |
冴返る血圧計の乱れをり | かかし |
駅頭に電車待つ間や冴返る | 宏虎 |
冴返る星の王子の小さき星 | もとこ |
片頬を夕日に染めし辛夷の芽 | うつぎ |
冴返るオープン戦の初ヒット | 豊実 |
朝刊を配るバイクや冴え返る | ぽんこ |
冴返る古き映画の録画撮り | こすもす |
冴返りつつ崩れゆく民主主義 | 素秀 |
残雪と見紛ふ比良の花辛夷 | せいじ |
何処までも辛夷の花の並木路 | ぽんこ |
おみくじを結びしごとき幣辛夷 | せいじ |
咳堪へ座禅くむ堂冴え返る | やよい |
ままごとの赤ちゃん役よ姫辛夷 | なつき |
冴返る月や西向くトイレ窓 | 隆松 |
試合合間熱きコーヒー冴え返る | ぽんこ |
花辛夷若草色のデイパック | 豊実 |
辛夷咲くロータリーゆくベビーカー | 隆松 |
三輪山の背に暁の冴返る | 明日香 |
冴返る防犯灯のLED | 満天 |
三輪車表札ふたつ辛夷咲く | みづき |
辛夷咲く夕べの読経つづく中 | みづき |
あえかなる遠銀嶺や花辛夷 | みのる |
街路樹の辛夷に遅速ありにけり | わかば |
山辛夷咲いてほつほつ棚田人 | みのる |
2022年1月31日 | |
戸締まりに触れしもの皆底冷えて | みづき |
籠る日々慣れてものぐさ蜜柑剥く | 智恵子 |
底冷えに運転試験震てをり | 小袖 |
眠られぬ夜行列車や蜜柑食ぶ | わかば |
大漁の熨斗掛けられて蜜柑箱 | ひのと |
底冷えの夜明けの厨湯を沸かす | ぽんこ |
風呂上がり咽が渇きて蜜柑むく | 宏虎 |
箱底の最後のみかん痣つけて | せいじ |
昭和の子蜜柑の汁であぶり出し | 明日香 |
手触りで甘みを探る蜜柑かな | 豊実 |
底冷えの堂の真中に止まる靴 | よう子 |
雨戸開け底冷えのする大地かな | 満天 |
箱みかん六人家族だつた頃 | 明日香 |
底冷えの古書店出でてコーヒーどき | なつき |
底冷えの部屋に遺影の父母並ぶ | なつき |
日表の色の宜しきみかん捥ぐ | はく子 |
こぼれても蜜柑押し込む詰放題 | 隆松 |
今日の投句終えてほっとの蜜柑食ぶ | ぽんこ |
参道の左右みかん畑宮ひそか | やよい |
夜の更けて蜜柑に爪の色変はる | 素秀 |
底冷えの朝を開いて自動ドア | 素秀 |
底冷の星空高く美しく | わかば |
筋取らぬ取ると談義の蜜柑剥き | 隆松 |
これよりは熊野古道やみかん畑 | やよい |
道売りの蜜柑のバケツ大中小 | よう子 |
美味しくて手指黄色に蜜柑かな | 明日香 |
米出来ぬ地なれば蜜柑育てしと | はく子 |
土佐分担寝かせて食べよ母の文字 | よう子 |
底冷えの納骨堂や鈴を打つ | 豊実 |
底冷えの夜明けの道をペダル漕ぐ | ぽんこ |
底冷や疫禍治まる気配無く | はく子 |
底冷えの鍵穴探るもどかしさ | たか子 |
底冷えのどっぷりつかる長風呂に | 満天 |
皺の手の祖母かへしける焼蜜柑 | もとこ |
夕食のデザート蜜柑部屋匂ふ | 満天 |
底冷えや寝間入る前の足湯かな | 智恵子 |
催事ありみかん畑にも万国旗 | やよい |
底冷えに足踏みしたるビラ配り | なつき |
膝痛む広き本堂底冷えす | うつぎ |
底冷えの渡り廊下や延暦寺 | 明日香 |
底冷えの父母いぬ家や鍵硬く | もとこ |
思ひ出す蜜柑丸ごと食べし父 | せいじ |
燧灘凪ぎて明るし蜜柑畑 | 小袖 |
底冷えの欄間に竜の透かし彫り | みづき |
早暁の汽笛を欲す密柑山 | 宏虎 |
底冷えの京の小路を人力車 | せいじ |
婦人部のバスツアーなり蜜柑の香 | よう子 |
リハビリの蜜柑剥けし日忘れまじ | かかし |
底冷や歩哨の壕に膝の音 | 隆松 |
底冷や八方睨みの龍仰ぐ | うつぎ |
痩せし夫底冷えを言ひ起き来たり | やよい |
籠の盛る蜜柑のすぐに皮の山 | わかば |
みかん山生涯継がず父の逝く | やよい |
底冷や地団駄踏んでバスを待つ | うつぎ |
底冷えの夜に鴉の遠き声 | 素秀 |
焼き蜜柑安眠剤となりにけり | 智恵子 |
海近く午後のしじまや蜜柑畑 | みづき |
左見右見して底冷えの二年坂 | せいじ |
底冷に仮眠の覚める演習場 | 隆松 |
結界を超える底冷え堂の闇 | よう子 |
嫁してより此処がふるさと蜜柑剥く | ひのと |
父に似て左手で剥く蜜柑かな | 豊実 |
ワクチンの接種の知らせ蜜柑剥く | たか子 |
一人ずつ蜜柑配られ会議果つ | ひのと |
永平寺廊下靴下げ底冷えす | 宏虎 |
紀の国の日をたっぷりとみかん熟る | はく子 |
すくすくと潮風受けて蜜柑山 | 智恵子 |
袋分け並べて吾子の蜜柑食ぶ | なつき |
底冷や屋台ラーメン替へ玉を | かかし |
喪心の渇き止まざり蜜柑食ぶ | なつき |
底冷えに指ひきつれる廊下かな | もとこ |
底冷えや村里の灯の疎らなり | こすもす |
熱の日の額にみかん当てゐたり | たか子 |
魚の血に汚れし漁港底冷す | ひのと |
鈴生りの蜜柑畑や空真青 | かかし |
吟行の手指の冷たさ息を吹く | ぽんこ |
蜜柑三つ入れ鈍行の旅鞄 | うつぎ |
シャトル打ち込む底冷えの体育館 | 豊実 |
蜜柑届く天地返しの部屋の隅 | たか子 |
底冷えの足裏にある体重計 | 素秀 |
蜜柑剥き返事代はりのあくびかな | ひのと |
デザートの捥ぎたて蜜柑農家カフェ | かかし |
露座仏の大きな陰や底冷えて | みづき |
底冷えの廊下の奥の離れの間 | 豊実 |
病院の夜の廊下や底冷す | わかば |
癖となるお口直しの蜜柑かな | こすもす |
トランプと蜜柑と四人姉妹かな | 小袖 |
花びらの形に蜜柑むけと吾子 | 素秀 |
底冷の待合席に大火鉢 | わかば |
蜜柑剥くエアークリーンが即感知 | うつぎ |
山の辺の蜜柑山盛り無人店 | 明日香 |
底冷えの堂に伐折羅の髪立ちぬ | もとこ |
弁当に輪切りの蜜柑なつかしき | せいじ |
底冷えや古刹の廊下塵もなし | 宏虎 |
団欒の昭和は消えて蜜柑むく | もとこ |
底冷えの献立決まる鍋物に | 満天 |
すりすりと足こするなり底冷え日 | 智恵子 |
底冷えの昭和の廊下外厠 | たか子 |
底冷や鴬張りの長廊下 | はく子 |
底冷えや闇にさぐりし鍵の穴 | こすもす |
底冷や手掘りの間歩の鑿の跡 | かかし |
登り窯底冷え厳し五条坂 | みづき |
風呂上がり火照るおでこに蜜柑当て | 小袖 |
店頭の産地確かめ蜜柑買ふ | 満天 |
瀬戸内の島全体が蜜柑色 | 宏虎 |
底冷えに始動の古車の喘ぐ音 | 隆松 |
お手玉の小粒蜜柑の転がれリ | 小袖 |
2021年12月 | |
九条葱たつぷり入る鍋うどん | わかば |
葱匂ふ車塾へと子を送る | なつき |
脚痛める孫の来訪根深汁 | ぽんこ |
スマホには収めきらずや冬銀河 | なつき |
故郷へ帰れぬ今や冬銀河 | 満天 |
葱剥きの女の放つ香の調べ | 隆松 |
冬銀河歩巾を合わす散歩道 | みづき |
襟立てて絆ぐ会話や冬銀河 | 小袖 |
就農は五年目と葱貰ひけり | 素秀 |
山盛りの葱のラーメン農家カフェ | かかし |
葱ぬたや胡麻と酢加減母伝授 | もとこ |
葱買うてはみ出す匂ひ持ち帰る | はく子 |
坪庭や悠久無限冬銀河 | よう子 |
自転車の前籠に立つ葱の剣 | せいじ |
畑帰り門に置かれし葱に土 | よう子 |
友の訃の葉書一枚冬銀河 | うつぎ |
葱の香に目覚めし朝や父母の居て | 明日香 |
職人の弁当に出す根深汁 | うつぎ |
黙祷の訃報の便り冬銀河 | かかし |
葱の無き納豆なんて蕎麦なんて | はく子 |
藁屋根の谷の上なり冬銀河 | 隆松 |
猫が嫌うハンドクリーム冬銀河 | こすもす |
葱焼きが大好物でありし夫 | はく子 |
自家産の葱が土産や友来たる | こすもす |
宿場跡の一つ灯りや冬銀河 | 隆松 |
父いつも根深と呼びし茶の間かな | こすもす |
鍋溢る分葱湯がかば一握り | よう子 |
休田を転じ葱畑老農夫 | かかし |
冬銀河青春時代忘れけり | 宏虎 |
エコバッグの根深艶やか帰り道 | なおこ |
長葱の通勤鞄をはみ出せリ | うつぎ |
朝の厨白きエプロン葱刻む | 智恵子 |
悪いことしたのだろうか冬銀河 | 明日香 |
風邪気味や葱たつぷりの鍋料理 | せいじ |
焼き葱の長さに揉める二人かな | 素秀 |
漆黒の低き山の端冬銀河 | 豊実 |
葱好きの夫の植えしか庭に葱 | 明日香 |
焼葱や葱間と違う主役なり | 隆松 |
農園の葱畑真っ直ぐ天を差す | 満天 |
酷使する目を休ませて冬銀河 | 小袖 |
露天風呂星となる身や冬銀河 | よう子 |
岬へと青き小山や葱畑 | 智恵子 |
深谷葱待たるる暮の届け物 | わかば |
葱なくば代用品の見つからず | うつぎ |
岬果つ海空となる冬銀河 | よう子 |
網焼きに舌づつみする下仁田葱 | ぽんこ |
葱一把壁に凭れて枯葉先 | ぽんこ |
靴音の遠くなりゆく冬銀河 | 満天 |
薬味とは思へぬほどの葱を乗せ | 明日香 |
下宿屋の窓にもありし冬銀河 | せいじ |
葱きざむ夫の包丁リズム良し | もとこ |
土付きの葱いっぱいの箱届く | 豊実 |
車止め浜辺に見上ぐ冬銀河 | 智恵子 |
葱ひとつ持て余したるエコバッグ | せいじ |
子には子の別の旅あり冬銀河 | もとこ |
冬銀河寝つかれぬまま旅の宿 | わかば |
葱ひとつ買物籠をはみ出しぬ | せいじ |
冬銀河一つを夫の星と決め | みづき |
カーテンは閉めないままや冬銀河 | こすもす |
葱多きお好み焼きや豊げに | 宏虎 |
白葱や選ぶ一本絹びかり | 小袖 |
父のこと遠い記憶や冬銀河 | わかば |
冬銀河繰り返し聞くオルゴール | みづき |
刻み葱何時でも準備の必需品 | 満天 |
夜食にと葱雑炊を作る母 | 明日香 |
冬銀河モールス信号ははからと | 宏虎 |
冬銀河遊子鞄に双眼鏡 | 素秀 |
妻の皿時かけ除ける刻み葱 | 隆松 |
冬銀河飛機点滅の無音界 | 素秀 |
水平線分けて離島の冬銀河 | 素秀 |
欠礼の多きこの年冬銀河 | 満天 |
ぼけしらずてふ根深の白と緑濃し | なおこ |
卒業公演見し高ぶりや冬銀河 | はく子 |
下仁田葱太ぶと鍋に柔らかし | はく子 |
葱植ゑて鋤焼きの日を待つてをり | なつき |
手製てふ葱汁自慢母百歳 | かかし |
ポケットを手で押し下げて冬銀河 | 豊実 |
愛犬の生まれ変わりか冬銀河 | ぽんこ |
冬銀河も一度逢ひたかった人 | みづき |
大原の入り日に染まる葱畑 | みづき |
厄神参り葱の日向に青々と | 宏虎 |
炊くほどに葱は甘くて熱きもの | 小袖 |
根深汁すする古民家薄明かり | 智恵子 |
青青ととがり積まれし九条ネギ | もとこ |
父母の星の寄り添ふ冬銀河 | なつき |
死といふ未知なる世界冬銀河 | 宏虎 |
ジョバンニの旅は続きし冬銀河 | もとこ |
冬銀河宇宙種族と交信中 | 豊実 |
薬味てふ葱を刻みてハミングす | かかし |
にゆるりつと舌に熱しや葱の芯 | 豊実 |
冬銀河ふるさと遠く五十年 | 小袖 |
指差して妻にささやく冬銀河 | 智恵子 |
高原のヒュッテに仰ぐ冬銀河 | わかば |
つつかけで庭へ夕餉の葱引けり | なつき |
大阪の辺境に住み冬銀河 | うつぎ |
2021年11月 | |
古代色のどの色当てむ冬夕焼 | うつぎ |
晴ひと日壁の温もり冬夕焼 | 智恵子 |
ベビーカーに沈み込む顔冬帽子 | 豊実 |
香具師の児の赤き冬帽歩き初む | なつき |
飛行機雲吸ひ込まれゆく冬夕焼 | かかし |
冬夕焼人悲しますこと言ひて | 明日香 |
舟券を突き上げおらぶ冬帽子 | 素秀 |
四時半のお帰りチャイム冬夕焼 | 隆松 |
玄関の冬帽子取り杖を取り | よう子 |
くじ引きのおまけ手編みの冬帽子 | こすもす |
冬帽子カナダ土産を配りけり | 宏虎 |
病む友のサーモンピンク冬帽子 | もとこ |
父の部屋まだ冬帽子掛かりいて | 明日香 |
ガラス屋の冬夕焼が濃かりけり | 宏虎 |
朝市の新鮮野菜冬帽子 | 豊実 |
学び舎を包むごとくに冬夕焼 | 満天 |
西山を瞬時染め抜く冬夕焼 | せいじ |
さよならと遠ざかる人冬夕焼け | みづき |
冬帽子薄毛も皺も半分に | 明日香 |
冬帽子派手にす妻の久の旅 | 隆松 |
スクールバスまたあしたねと冬帽子 | よう子 |
一湾にすべり入る船冬夕焼 | もとこ |
凛として千年欅冬夕焼 | かかし |
デイケアへ母はニットの冬帽子 | せいじ |
乱反射窓に射しこむ寒夕焼 | ぽんこ |
白髪増ゆ頭すつぽり冬帽子 | なつき |
日和もて二者択一の冬帽子 | せいじ |
甦る父母との日々や冬夕焼 | 明日香 |
冬夕焼たちまち闇へ木立影 | 隆松 |
冬帽を脱ぎ遠海の操舵室 | 素秀 |
汽笛鳴る明石大橋冬夕焼 | 豊実 |
初めて見し施設の父の冬帽子 | うつぎ |
パスボート並び冬帽脱いで見せ | 宏虎 |
ロカ岬冬夕焼が燃やす如 | 宏虎 |
乱れ髪すっぽり隠す冬帽子 | 満天 |
墨絵めく八重の遠山冬夕焼 | 智恵子 |
家並のたつき其々冬夕焼 | うつぎ |
稜線の茜に映える冬夕焼 | かかし |
冬帽の市の売り子の頬紅し | 隆松 |
二上の際やかに映え冬夕焼 | 明日香 |
東寺の塔冬夕焼をふた分けす | せいじ |
躊躇なく繰るは呑屋か冬夕焼 | 隆松 |
捨てきれず数を増やして冬帽子 | わかば |
母いつも茶色選べり冬帽子 | なつき |
係留のロープ解くや冬帽子 | 豊実 |
冬帽子被る漁師の耳ピアス | もとこ |
居酒屋に忘れし冬帽探しをり | よう子 |
フロントの冬の夕焼百八十度 | ぽんこ |
鶏の羽ばたく小屋や冬茜 | よう子 |
通院の母へ目深く冬帽子 | わかば |
恙なきひと日終へるや冬夕焼 | 満天 |
ぷくぷくのクマになりけり冬帽子 | もとこ |
冬帽子目深に被り父似なる | みづき |
夕餉時母の呼ぶ声冬夕焼け | みづき |
我さきに暖簾をくぐり冬帽子 | 素秀 |
錫杖の山門を出で冬夕焼 | 素秀 |
窓少し開けて直ぐ閉ず冬夕焼 | こすもす |
ひび割れし石の地蔵の冬帽子 | ぽんこ |
ゆくりなく冬夕焼の海染める | わかば |
年隠す少しお洒落な冬帽子 | 満天 |
黒雲の一筋かかる冬夕焼 | ぽんこ |
オブジェめく高層マンション冬夕焼 | 満天 |
鴟尾の屋根影黒々と冬夕焼 | うつぎ |
晩鐘と重なるチャイム冬夕焼 | こすもす |
ファッションの冬帽揃へ老夫婦 | かかし |
名刹にて吟行をする冬帽子 | 宏虎 |
納竿の指先揉むや冬夕焼 | 豊実 |
冬帽子駅中ピアノ演奏す | みづき |
冬帽子青が目印爺の畑 | 智恵子 |
冬夕焼寄航の船のシルエット | 智恵子 |
フリーマーケットに買ひし若めの冬帽子 | なつき |
コンサート舟漕いでをる冬帽子 | うつぎ |
三階の火のつく手摺寒夕焼 | ぽんこ |
茜雲屋根に顔出す冬夕焼 | 智恵子 |
冬夕焼沖へタンカー影を引く | わかば |
お賽銭乗する地蔵の毛糸帽 | なつき |
帰りには冬夕焼けのはや消へて | みづき |
山の端を染めて束の間冬夕焼 | 菜々 |
冬夕焼火焔山の霊沈めんと | よう子 |
土手走る人を影絵に冬夕焼 | 素秀 |
国生みの神彩りて冬夕焼 | もとこ |
駅降りて冬夕焼に染まるなり | わかば |
狛犬に巫女の手編みの冬帽子 | かかし |
子ら去りし彼方ににじむ冬夕焼 | せいじ |
2021年10月 | |
秋刀魚には大根おろしたっぷりと | 満天 |
網焼きに次第に白く秋刀魚の目 | 素秀 |
秋暮るやバケツで落とす鋸の脂 | 豊実 |
被爆地に孫何思ふ暮の秋 | せいじ |
このために取り置きし炭秋刀魚焼く | うつぎ |