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兜煮の目玉嬉しや桜鯛 宏虎
渦潮の透き通る青桜鯛 豊実
桜鯛チラ見したあとショッピング こすもす
藤原宮跡に望む香久山霾れり やよい
紀ノ川の長き鉄橋黄砂降る よう子
あら炊きのごぼうの匂ふ桜鯛 ぽんこ
霾風や泥雨予感の匂いせり 隆松
霾れる河原に佇てば黄泉路めく みのる
桜鯛かしら丸ごと潮汁 やよい
大陸の砂と思へば黄砂また 明日香
噛み合はぬ言葉一つよ黄砂降る もとこ
つちふるや砂漠の民の夢紛れ もとこ
ご飯用に焦げ目をつける桜鯛 こすもす
距離感の狂ふ大路や黄砂降る せいじ
卒業を祝うてつつく桜鯛 せいじ
桜鯛明石産とて売れゆけり わかば
ミサイルも黄砂も来たる海越へて もとこ
機窓いま下界は深き黄塵裡 みのる
霾ぐもり大橋歩く開通式 素秀
足早に下る尾根道霾晦 豊実

2022年2月28日

野の辛夷花の香りや立ちこめる 宏虎
外つ国の避難の老女冴返り もとこ
冴返る抜きそこなひし指の刺 なつき
力込めニ礼二拍手冴返る うつぎ
風通る礼拝堂の冴返る せいじ
円空仏裂けし木目の冴返る かかし
和蝋燭ちりちり揺らぎ冴返る うつぎ
父母眠る故郷の丘花辛夷 かかし
玻璃越しの星の数多や冴返る こすもす
よそ行きの下着一枚冴返る 宏虎
長谷寺の登廊下や冴返る 明日香
夜半覚めラヂオの笑ひ冴返る もとこ
湖畔駅ホームを覆ふ花辛夷 みづき
食い渋る鮒はまだ底冴返る 豊実
物見めく鴉の鋭声冴返る せいじ
参道の風に乗る香は辛夷らし こすもす
看取りさへままならぬ世ぞ冴返る みのる
花辛夷離陸見下ろす展望台 豊実
朝一番ハイヒールの音冴返る 満天
道連れは己が影だけ冴返る うつぎ
冴返るシャッター街となり果てて みのる
蒼天へ真白き城の冴返る 満天
検査室十ある廊下冴返る なつき
早暁の車スリップ冴返る かかし
子のいない六畳ひと間冴返る 明日香
仏壇の蝋燭の火や冴返る 明日香
ネオンの字一つ抜けたり冴返る 宏虎
シャッターに貼り紙ありて冴返る みづき
辛夷咲く歌思い出し熱唱す 宏虎
冴返り血中酸素下がるほど 素秀
投入れしごと辛夷咲く雑木山 みのる
冴返る朝刊落とす音もまた せいじ
公園に笑ひ声あり花辛夷 隆松
冴返り易者動かぬ街灯下 素秀
冴え返る畳廊下の大書院 やよい
辛夷咲く十年越しの登山靴 豊実
靴先の指の感覚冴え返る ぽんこ
引きこもる日々の何時まで冴え返る やよい
山坂の頂上過ぎて花辛夷 素秀
学び舎の一つ残る灯冴返る 満天
香を放ち野の肌覆う花辛夷 隆松
峡谷の祈る容の辛夷かな 明日香
冴返るロイヤルティを熱くして みづき
代々の村役の家辛夷咲く うつぎ
凍返る売り地看板立つ生家 やよい
遠嶺の近くとなるや冴返る 隆松
花辛夷つつかへ棒の旧校舎 なつき
冴返る互ひの言葉すれ違ひ  もとこ
街路行く人を和ませ花辛夷 わかば
おしまるる命の別れ冴返る わかば
街路樹の天へ一斉辛夷の芽 満天
休みつつ延ばす杖の歩花こぶし やよい
廃寺に残りし句碑や冴返る なつき
花辛夷開いて空に疵の無し 素秀
友の家ぬきんでてをり辛夷の木 こすもす
こぞり咲く無垢なる白や花辛夷 わかば
冴返るまだ手放せぬ厚手もの こすもす
冴返る突然に訃の知らせ来て わかば
青空に明日の予想辛夷の芽 もとこ
無住寺の猫出入り口花辛夷 かかし
冴返る血圧計の乱れをり かかし
駅頭に電車待つ間や冴返る 宏虎
冴返る星の王子の小さき星 もとこ
片頬を夕日に染めし辛夷の芽 うつぎ
冴返るオープン戦の初ヒット 豊実
朝刊を配るバイクや冴え返る ぽんこ
冴返る古き映画の録画撮り こすもす
冴返りつつ崩れゆく民主主義 素秀
残雪と見紛ふ比良の花辛夷 せいじ
何処までも辛夷の花の並木路 ぽんこ
おみくじを結びしごとき幣辛夷 せいじ
咳堪へ座禅くむ堂冴え返る やよい
ままごとの赤ちゃん役よ姫辛夷 なつき
冴返る月や西向くトイレ窓 隆松
試合合間熱きコーヒー冴え返る ぽんこ
花辛夷若草色のデイパック 豊実
辛夷咲くロータリーゆくベビーカー 隆松
三輪山の背に暁の冴返る 明日香
冴返る防犯灯のLED 満天
三輪車表札ふたつ辛夷咲く みづき
辛夷咲く夕べの読経つづく中 みづき
あえかなる遠銀嶺や花辛夷 みのる
街路樹の辛夷に遅速ありにけり わかば
山辛夷咲いてほつほつ棚田人 みのる

2022年1月31日

戸締まりに触れしもの皆底冷えて みづき
籠る日々慣れてものぐさ蜜柑剥く 智恵子
底冷えに運転試験震てをり 小袖
眠られぬ夜行列車や蜜柑食ぶ わかば
大漁の熨斗掛けられて蜜柑箱 ひのと
底冷えの夜明けの厨湯を沸かす ぽんこ
風呂上がり咽が渇きて蜜柑むく 宏虎
箱底の最後のみかん痣つけて せいじ
昭和の子蜜柑の汁であぶり出し 明日香
手触りで甘みを探る蜜柑かな 豊実
底冷えの堂の真中に止まる靴 よう子
雨戸開け底冷えのする大地かな 満天
箱みかん六人家族だつた頃 明日香
底冷えの古書店出でてコーヒーどき なつき
底冷えの部屋に遺影の父母並ぶ なつき
日表の色の宜しきみかん捥ぐ はく子
こぼれても蜜柑押し込む詰放題 隆松
今日の投句終えてほっとの蜜柑食ぶ ぽんこ
参道の左右みかん畑宮ひそか やよい
夜の更けて蜜柑に爪の色変はる 素秀
底冷えの朝を開いて自動ドア 素秀
底冷の星空高く美しく わかば
筋取らぬ取ると談義の蜜柑剥き 隆松
これよりは熊野古道やみかん畑 やよい
道売りの蜜柑のバケツ大中小 よう子
美味しくて手指黄色に蜜柑かな 明日香
米出来ぬ地なれば蜜柑育てしと はく子
土佐分担寝かせて食べよ母の文字 よう子
底冷えの納骨堂や鈴を打つ 豊実
底冷えの夜明けの道をペダル漕ぐ ぽんこ
底冷や疫禍治まる気配無く はく子
底冷えの鍵穴探るもどかしさ たか子
底冷えのどっぷりつかる長風呂に 満天
皺の手の祖母かへしける焼蜜柑 もとこ
夕食のデザート蜜柑部屋匂ふ 満天
底冷えや寝間入る前の足湯かな 智恵子
催事ありみかん畑にも万国旗 やよい
底冷えに足踏みしたるビラ配り なつき
膝痛む広き本堂底冷えす うつぎ
底冷えの渡り廊下や延暦寺 明日香
底冷えの父母いぬ家や鍵硬く もとこ
思ひ出す蜜柑丸ごと食べし父 せいじ
燧灘凪ぎて明るし蜜柑畑 小袖
底冷えの欄間に竜の透かし彫り みづき
早暁の汽笛を欲す密柑山 宏虎
底冷えの京の小路を人力車 せいじ
婦人部のバスツアーなり蜜柑の香 よう子
リハビリの蜜柑剥けし日忘れまじ かかし
底冷や歩哨の壕に膝の音 隆松
底冷や八方睨みの龍仰ぐ うつぎ
痩せし夫底冷えを言ひ起き来たり やよい
籠の盛る蜜柑のすぐに皮の山 わかば
みかん山生涯継がず父の逝く やよい
底冷や地団駄踏んでバスを待つ うつぎ
底冷えの夜に鴉の遠き声 素秀
焼き蜜柑安眠剤となりにけり 智恵子
海近く午後のしじまや蜜柑畑 みづき
左見右見して底冷えの二年坂 せいじ
底冷に仮眠の覚める演習場 隆松
結界を超える底冷え堂の闇 よう子
嫁してより此処がふるさと蜜柑剥く ひのと
父に似て左手で剥く蜜柑かな 豊実
ワクチンの接種の知らせ蜜柑剥く たか子
一人ずつ蜜柑配られ会議果つ ひのと
永平寺廊下靴下げ底冷えす 宏虎
紀の国の日をたっぷりとみかん熟る はく子
すくすくと潮風受けて蜜柑山 智恵子
袋分け並べて吾子の蜜柑食ぶ なつき
底冷や屋台ラーメン替へ玉を かかし
喪心の渇き止まざり蜜柑食ぶ なつき
底冷えに指ひきつれる廊下かな もとこ
底冷えや村里の灯の疎らなり こすもす
熱の日の額にみかん当てゐたり たか子
魚の血に汚れし漁港底冷す ひのと
鈴生りの蜜柑畑や空真青 かかし
吟行の手指の冷たさ息を吹く ぽんこ
蜜柑三つ入れ鈍行の旅鞄 うつぎ
シャトル打ち込む底冷えの体育館 豊実
蜜柑届く天地返しの部屋の隅 たか子
底冷えの足裏にある体重計 素秀
蜜柑剥き返事代はりのあくびかな ひのと
デザートの捥ぎたて蜜柑農家カフェ かかし
露座仏の大きな陰や底冷えて みづき
底冷えの廊下の奥の離れの間 豊実
病院の夜の廊下や底冷す わかば
癖となるお口直しの蜜柑かな こすもす
トランプと蜜柑と四人姉妹かな 小袖
花びらの形に蜜柑むけと吾子 素秀
底冷の待合席に大火鉢 わかば
蜜柑剥くエアークリーンが即感知 うつぎ
山の辺の蜜柑山盛り無人店 明日香
底冷えの堂に伐折羅の髪立ちぬ もとこ
弁当に輪切りの蜜柑なつかしき せいじ
底冷えや古刹の廊下塵もなし 宏虎
団欒の昭和は消えて蜜柑むく もとこ
底冷えの献立決まる鍋物に 満天
すりすりと足こするなり底冷え日 智恵子
底冷えの昭和の廊下外厠 たか子
底冷や鴬張りの長廊下 はく子
底冷えや闇にさぐりし鍵の穴 こすもす
底冷や手掘りの間歩の鑿の跡 かかし
登り窯底冷え厳し五条坂 みづき
風呂上がり火照るおでこに蜜柑当て 小袖
店頭の産地確かめ蜜柑買ふ 満天
瀬戸内の島全体が蜜柑色 宏虎
底冷えに始動の古車の喘ぐ音 隆松
お手玉の小粒蜜柑の転がれリ 小袖

2021年12月

九条葱たつぷり入る鍋うどん わかば
葱匂ふ車塾へと子を送る なつき
脚痛める孫の来訪根深汁 ぽんこ
スマホには収めきらずや冬銀河 なつき
故郷へ帰れぬ今や冬銀河 満天
葱剥きの女の放つ香の調べ 隆松
冬銀河歩巾を合わす散歩道 みづき
襟立てて絆ぐ会話や冬銀河 小袖
就農は五年目と葱貰ひけり 素秀
山盛りの葱のラーメン農家カフェ かかし
葱ぬたや胡麻と酢加減母伝授 もとこ
葱買うてはみ出す匂ひ持ち帰る はく子
坪庭や悠久無限冬銀河 よう子
自転車の前籠に立つ葱の剣 せいじ
畑帰り門に置かれし葱に土 よう子
友の訃の葉書一枚冬銀河 うつぎ
葱の香に目覚めし朝や父母の居て 明日香
職人の弁当に出す根深汁 うつぎ
黙祷の訃報の便り冬銀河 かかし
葱の無き納豆なんて蕎麦なんて はく子
藁屋根の谷の上なり冬銀河 隆松
猫が嫌うハンドクリーム冬銀河 こすもす
葱焼きが大好物でありし夫 はく子
自家産の葱が土産や友来たる こすもす
宿場跡の一つ灯りや冬銀河 隆松
父いつも根深と呼びし茶の間かな こすもす
鍋溢る分葱湯がかば一握り よう子
休田を転じ葱畑老農夫 かかし
冬銀河青春時代忘れけり 宏虎
エコバッグの根深艶やか帰り道 なおこ
長葱の通勤鞄をはみ出せリ うつぎ
朝の厨白きエプロン葱刻む 智恵子
悪いことしたのだろうか冬銀河 明日香
風邪気味や葱たつぷりの鍋料理 せいじ
焼き葱の長さに揉める二人かな 素秀
漆黒の低き山の端冬銀河 豊実
葱好きの夫の植えしか庭に葱 明日香
焼葱や葱間と違う主役なり 隆松
農園の葱畑真っ直ぐ天を差す 満天
酷使する目を休ませて冬銀河 小袖
露天風呂星となる身や冬銀河 よう子
岬へと青き小山や葱畑 智恵子
深谷葱待たるる暮の届け物 わかば
葱なくば代用品の見つからず うつぎ
岬果つ海空となる冬銀河 よう子
網焼きに舌づつみする下仁田葱 ぽんこ
葱一把壁に凭れて枯葉先 ぽんこ
靴音の遠くなりゆく冬銀河 満天
薬味とは思へぬほどの葱を乗せ 明日香
下宿屋の窓にもありし冬銀河 せいじ
葱きざむ夫の包丁リズム良し もとこ
土付きの葱いっぱいの箱届く 豊実
車止め浜辺に見上ぐ冬銀河 智恵子
葱ひとつ持て余したるエコバッグ せいじ
子には子の別の旅あり冬銀河 もとこ
冬銀河寝つかれぬまま旅の宿 わかば
葱ひとつ買物籠をはみ出しぬ せいじ
冬銀河一つを夫の星と決め みづき
カーテンは閉めないままや冬銀河 こすもす
葱多きお好み焼きや豊げに 宏虎
白葱や選ぶ一本絹びかり 小袖
父のこと遠い記憶や冬銀河 わかば
冬銀河繰り返し聞くオルゴール みづき
刻み葱何時でも準備の必需品 満天
夜食にと葱雑炊を作る母 明日香
冬銀河モールス信号ははからと 宏虎
冬銀河遊子鞄に双眼鏡 素秀
妻の皿時かけ除ける刻み葱 隆松
冬銀河飛機点滅の無音界 素秀
水平線分けて離島の冬銀河 素秀
欠礼の多きこの年冬銀河 満天
ぼけしらずてふ根深の白と緑濃し なおこ
卒業公演見し高ぶりや冬銀河 はく子
下仁田葱太ぶと鍋に柔らかし はく子
葱植ゑて鋤焼きの日を待つてをり なつき
手製てふ葱汁自慢母百歳 かかし
ポケットを手で押し下げて冬銀河 豊実
愛犬の生まれ変わりか冬銀河 ぽんこ
冬銀河も一度逢ひたかった人 みづき
大原の入り日に染まる葱畑 みづき
厄神参り葱の日向に青々と 宏虎
炊くほどに葱は甘くて熱きもの 小袖
根深汁すする古民家薄明かり 智恵子
青青ととがり積まれし九条ネギ もとこ
父母の星の寄り添ふ冬銀河 なつき
死といふ未知なる世界冬銀河 宏虎
ジョバンニの旅は続きし冬銀河 もとこ
冬銀河宇宙種族と交信中 豊実
薬味てふ葱を刻みてハミングす かかし
にゆるりつと舌に熱しや葱の芯 豊実
冬銀河ふるさと遠く五十年 小袖
指差して妻にささやく冬銀河 智恵子
高原のヒュッテに仰ぐ冬銀河 わかば
つつかけで庭へ夕餉の葱引けり なつき
大阪の辺境に住み冬銀河 うつぎ

2021年11月

古代色のどの色当てむ冬夕焼 うつぎ
晴ひと日壁の温もり冬夕焼 智恵子
ベビーカーに沈み込む顔冬帽子 豊実
香具師の児の赤き冬帽歩き初む なつき
飛行機雲吸ひ込まれゆく冬夕焼 かかし
冬夕焼人悲しますこと言ひて 明日香
舟券を突き上げおらぶ冬帽子 素秀
四時半のお帰りチャイム冬夕焼 隆松
玄関の冬帽子取り杖を取り よう子
くじ引きのおまけ手編みの冬帽子 こすもす
冬帽子カナダ土産を配りけり 宏虎
病む友のサーモンピンク冬帽子 もとこ
父の部屋まだ冬帽子掛かりいて 明日香
ガラス屋の冬夕焼が濃かりけり 宏虎
朝市の新鮮野菜冬帽子 豊実
学び舎を包むごとくに冬夕焼 満天
西山を瞬時染め抜く冬夕焼 せいじ
さよならと遠ざかる人冬夕焼け みづき
冬帽子薄毛も皺も半分に 明日香
冬帽子派手にす妻の久の旅 隆松
スクールバスまたあしたねと冬帽子 よう子
一湾にすべり入る船冬夕焼 もとこ
凛として千年欅冬夕焼 かかし
デイケアへ母はニットの冬帽子 せいじ
乱反射窓に射しこむ寒夕焼 ぽんこ
白髪増ゆ頭すつぽり冬帽子 なつき
日和もて二者択一の冬帽子 せいじ
甦る父母との日々や冬夕焼 明日香
冬夕焼たちまち闇へ木立影 隆松
冬帽を脱ぎ遠海の操舵室 素秀
汽笛鳴る明石大橋冬夕焼 豊実
初めて見し施設の父の冬帽子 うつぎ
パスボート並び冬帽脱いで見せ 宏虎
ロカ岬冬夕焼が燃やす如 宏虎
乱れ髪すっぽり隠す冬帽子 満天
墨絵めく八重の遠山冬夕焼 智恵子
家並のたつき其々冬夕焼 うつぎ
稜線の茜に映える冬夕焼 かかし
冬帽の市の売り子の頬紅し 隆松
二上の際やかに映え冬夕焼 明日香
東寺の塔冬夕焼をふた分けす せいじ
躊躇なく繰るは呑屋か冬夕焼 隆松
捨てきれず数を増やして冬帽子 わかば
母いつも茶色選べり冬帽子 なつき
係留のロープ解くや冬帽子 豊実
冬帽子被る漁師の耳ピアス もとこ
居酒屋に忘れし冬帽探しをり よう子
フロントの冬の夕焼百八十度 ぽんこ
鶏の羽ばたく小屋や冬茜 よう子
通院の母へ目深く冬帽子 わかば
恙なきひと日終へるや冬夕焼 満天
ぷくぷくのクマになりけり冬帽子 もとこ
冬帽子目深に被り父似なる みづき
夕餉時母の呼ぶ声冬夕焼け みづき
我さきに暖簾をくぐり冬帽子 素秀
錫杖の山門を出で冬夕焼 素秀
窓少し開けて直ぐ閉ず冬夕焼 こすもす
ひび割れし石の地蔵の冬帽子 ぽんこ
ゆくりなく冬夕焼の海染める わかば
年隠す少しお洒落な冬帽子 満天
黒雲の一筋かかる冬夕焼 ぽんこ
オブジェめく高層マンション冬夕焼 満天
鴟尾の屋根影黒々と冬夕焼 うつぎ
晩鐘と重なるチャイム冬夕焼 こすもす
ファッションの冬帽揃へ老夫婦 かかし
名刹にて吟行をする冬帽子 宏虎
納竿の指先揉むや冬夕焼 豊実
冬帽子駅中ピアノ演奏す みづき
冬帽子青が目印爺の畑 智恵子
冬夕焼寄航の船のシルエット 智恵子
フリーマーケットに買ひし若めの冬帽子 なつき
コンサート舟漕いでをる冬帽子 うつぎ
三階の火のつく手摺寒夕焼 ぽんこ
茜雲屋根に顔出す冬夕焼 智恵子
冬夕焼沖へタンカー影を引く わかば
お賽銭乗する地蔵の毛糸帽 なつき
帰りには冬夕焼けのはや消へて みづき
山の端を染めて束の間冬夕焼 菜々
冬夕焼火焔山の霊沈めんと よう子
土手走る人を影絵に冬夕焼 素秀
国生みの神彩りて冬夕焼 もとこ
駅降りて冬夕焼に染まるなり わかば
狛犬に巫女の手編みの冬帽子 かかし
子ら去りし彼方ににじむ冬夕焼 せいじ

2021年10月

秋刀魚には大根おろしたっぷりと 満天
網焼きに次第に白く秋刀魚の目 素秀
秋暮るやバケツで落とす鋸の脂 豊実
被爆地に孫何思ふ暮の秋 せいじ
このために取り置きし炭秋刀魚焼く うつぎ
力石見る人もなき秋の暮 よう子
初秋刀魚食せば皆で窓全開 智恵子
焼き上がる今年の秋刀魚痩せしこと ぽんこ
山を背に塔聳へ立つ暮の秋 ぽんこ
茜空今日は秋刀魚と思ひけり もとこ
千年の大樹の杜に秋暮るる もとこ
古女房辛口好きや秋刀魚焼く よう子
秋刀魚食ぶ残るは頭ひとつのみ こすもす
溜息の多き一日や秋暮るる 智恵子
海原の色そのままの秋刀魚の目 豊実
生涯を同じ地に住み秋の逝く はく子
洗濯を急きて取り込む暮れの秋 智恵子
乳張りし牛の闊歩す暮の秋 なつき
秋刀魚とて高値となりて素通りす 満天
拝めば地蔵の顔の秋暮るる 素秀
夕鐘の淋しき遠音秋暮るる わかば
頭ごと背骨を剥がす焼き秋刀魚 豊実
八十は目出度かりしか痩せ秋刀魚 よう子
秋暮るる廃屋並ぶや旧街道 もとこ
吾の出でし校舎併合暮の秋 かかし
路地よりの煮物の匂ひ秋暮るる 満天
リハビリの師に文残し秋の暮 董雨
高瀬川舫い舟ある秋の暮 宏虎
久に点く隣家の灯し暮の秋 うつぎ
お隣も煙を立てて秋刀魚焼く 宏虎
不動明に黄葉降り注ぐ暮の秋 ぽんこ
亡き母も詠みし古刹や秋暮るる たか子
九十翁より届く句集や暮の秋 やよい
秋刀魚食ぶ子の残せしが美味なりと 智恵子
秋暮るる遠き電車の聞こえけり 明日香
慌たゞしく退院支度暮れの秋 董雨
次々と検査受けたり秋暮るる もとこ
今はもう七輪も無く秋刀魚焼く たか子
暮れの秋長き土塀に夕日落つ みづき
秋暮るる静まり返る阿弥陀堂 みづき
さんま二尾けふ恙無く暮れなんと 小袖
障害者マーク杖に付けをり秋暮るる やよい
秋暮れて灰色と化す湖の波 隆松
たっぷりと尾にも塩して初秋刀魚 たか子
頭は夫に一尾分けたる秋刀魚かな なつき
生よりも開き目に付く秋刀魚かな 明日香
暮れの秋沖に漁火瞬きぬ わかば
遠き日の父懐かしき秋刀魚食ぶ わかば
暮れの秋眺む雑踏人恋し 智恵子
秋暮るる山へ誘ひし父卒寿 豊実
紀州沖下る秋刀魚や干物とす よう子
一病の夫と分け合ふ秋刀魚かな もとこ
海の色深まり行きて秋暮るる わかば
仏舎利塔白際立たせ暮の秋 はく子
秋暮るる旅の計画なきままに 満天
己が膝抱えてをりし暮の秋 素秀
見るだけの高級魚なる秋刀魚かな やよい
気忙しき秋暮る る日の小さき旅 みづき
お漏らしの布団とパジャマ秋の暮 なつき
淀川の流れ常しえ秋の逝く はく子
好物の秋刀魚骨まで食べ尽くす はく子
巨木樹天を塞ぎて秋暮るる ぽんこ
炊きたての飯と焼きたて秋刀魚かな 宏虎
秋暮るる街頭演説絶えてより こすもす
脂垂れ炭火弾けり秋刀魚焼く 隆松
秋の暮背中摩り行く座敷三間 董雨
緑地公園出口の迷ふ暮秋かな やよい
鉢花のだんだん減って秋暮るる 明日香
切り炭や父母懐かしみ秋刀魚焼く みづき
秋暮るや秘密基地めく石舞台 かかし
秋暮るる大楠の洞供物無く たか子
グリルには不向きなりしや秋刀魚焼く せいじ
秋刀魚焼く煙吐き出す換気扇 うつぎ
秋暮る る影長くして友来たる みづき
チェーンソー響く里山暮の秋 かかし
留守の間に木斛開花秋の暮 董雨
焼きたての秋刀魚を買ひて午餐とす せいじ
わざわざに秋刀魚買へたと電話せし 素秀
混群のわつと飛び去る秋の暮 小袖
秋刀魚の身ほぐし易さよ尾の切身 隆松
どっちが綺麗秋刀魚の骨の残し具合 こすもす
鑿跡の粗き間歩出で暮の秋 かかし
ラップされ二尾で安売り痩せ秋刀魚 豊実
島影の滲む湖面や暮の秋 隆松
靴下を履いて老犬暮の秋 やよい
秋暮るる訃報の友に写経せん かかし
新物と表示の秋刀魚小ぶりなり ぽんこ
洗濯物頬で確かむ秋の暮 明日香
リビングに入り来る日差し暮の秋 はく子
父の顔忘れたと母秋刀魚食ぶ わかば
耳病みて目で話聞く暮の秋 なつき
秋暮るや湖岸ベンチを抜くる風 隆松
トンネルを出れば金星秋の暮 よう子
四冠を望むは早し秋の暮 せいじ
宴会は秋刀魚にしてと帰国の子 うつぎ
旬なりと秋刀魚小さき猫の餌 宏虎
人のごと猫を探して秋の暮 素秀
病院の夕食に食ぶはつ秋刀魚 董雨
スーパーの外で煙りと秋刀魚焼く 満天
日が落ちて何か淋しき秋の暮 宏虎
田の神の裏は捨て畑秋暮るる うつぎ
一万歩出来た日にマル秋の暮 小袖
猫カフェに保護猫撫づる暮の秋 なつき
熱ある子おんぶした坂秋の暮 小袖
兄姉の召天続く暮の秋 せいじ



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