みのる選:2022年8月度

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2022年8月28日

8月20日~8月26日

2022年08月26日
虫の夜の独り寝の杯重ねけりうつぎ
秋風や筆立てに挿す竹とんぼひのと
すり減りし点字ブロック秋時雨みきお
蟷螂の大見得きつて固まりぬ明日香
種無しを舌で合点巨峰食むあられ
うち返す秋の渚や誰も居らずこすもす
幼帝の眠る墳丘ちちろ鳴く明日香
穂芒の生糸のごとく日をはじく素秀
体重をかけて切り分く南瓜かな満天
長き夜のレコードへ針落としけりひのと
2022年08月25日
海鳴りのほかに音無く星月夜かえる
忘却と戦ふ母の夜長かなもとこ
新しき墓加はりて山澄めりひのと
余情もて鳴きおほしけり法師蝉せいじ
転ぶ児の傷のかさぶた夏の果なつき
闘病も武勇伝とす生身魂なつき
黄金田となりて湧き立つ匂ひかなみきお
2022年08月24日
星月夜ぐらり傾き着陸すひのと
蒲の穂のさざ波となる池広しそうけい
夏逝くや履かずに小さくなりし靴ひのと
秋の蝶草から草へジプシーすむべ
民宿の外厠へと虫すだく智恵子
蜩や羊歯群落となる山路豊実
細筆で描きし如くに今朝の月明日香
2022年08月23日
共白髪偕老願ふ夜長かなたか子
ほ句の秋自由に動く足が欲し宏虎
畳目の指に冷たき庵の秋素秀
裏路地の微風を捉ふ猫じゃらしそうけい
針箱に娘の釦小鳥来るひのと
海峡の巨船呑み込む秋没日うつぎ
夏雲と秋雲空に隣りあふたか子
2022年08月22日
朝靄の晴れし牧場鬼やんま智恵子
蔵に積む新米袋ほの温しみきお
水うてば土の匂ひも涼新たかえる
納骨を終へたる背ナに法師蝉素秀
受付けに忘れ物なる秋扇あひる
朝顔の芯に夜明けの色ひそむひのと
2022年08月21日
みささぎの御前で昼餉野路の秋明日香
軋みては閉づる門扉や虫の夜ひのと
二学期の少女が隠すピアスかなひのと
2022年08月20日
過ぎし日を老いたる姉と秋の盆たか子
もろこしにかぶりつく子の歯は真白もとこ
旅人の吾により来る蜻蛉かなうつぎ
しもつけの花の淡さよ霧の山あひる
駅の椅子背中合はせや秋暑しうつぎ
数行の吾子の返信日々草あひる

2022年8月21日

8月13日~8月19日

2022年08月19日
一日を包みて木槿落ちにけりうつぎ
新涼や肌にしみこむ化粧水満天
飛行雲大夕焼を二分けすきよえ
カーテンを押しのけてくる秋気かな満天
二階へとのぼる糸瓜の青簾智恵子
朝顔の蔓ととのへて出勤すひのと
己が影と追いかけつこの蜻蛉かなはく子
去る船の水脈いつまでも秋入日ひのと
大文字消えてかそけき山の影せいじ
2022年08月18日
石畳たたら踏ませし蝸牛こすもす
雷鳴に小走りとなる帰り道かえる
追伸に店畳むこと秋燈ひのと
和箪笥のひきだし重き秋湿りむべ
最後まで話聞いてよ法師蝉もとこ
投網うちひろげしごとく鰯雲あひる
月さして水槽の魚ひるがへるひのと
朗吟の声響かせて星月夜千鶴
2022年08月17日
つくばひの杓を離るゝ蜻蛉かなひのと
灯下親し古りし机の輪染みかなたか子
登山帽脱いで一礼磨崖仏みきお
白萩や遠流の島の能舞台澄子
大文字ビルのあはひに現るるあひる
肩車せし子の指呼に大文字せいじ
大いなる夜の帳に大文字あひる
船を出す父の背中へ秋日燦ひのと
生身魂むかしむかしは三人娘宏虎
2022年08月16日
好物の珈琲飲ませ送り盆うつぎ
驟雨急善意の傘に助けられみきえ
流灯の橋裏の闇照らしつつ素秀
老いてなほお洒落忘れぬ生身魂明日香
帰省の子自分の部屋を断捨離すぽんこ
這う如くぞめきの中を阿波踊りたか子
2022年08月15日
初盆や父の座椅子のでんとありなつき
吾子の手に余る鈴緒や秋湿りひのと
書きだしに迷ふ手紙や秋暑しむべ
風船葛遊んでゐたる風の精うつぎ
初盆や父知らぬ嬰加はれりなつき
電話ボックスまず蜘蛛の囲を払はねばよう子
闇に浮く五重の塔や万灯会ぽんこ
直立の脚絆の父や終戦忌素秀
2022年08月14日
朝採れの秋茄子母の仏前に豊実
金にゆれ銀にそよげり芒の穂むべ
ふるさとの青田に風のあそびけりひのと
2022年08月13日
連獅子のごと草煽ち台風来むべ
小さきシャツ物干しにゆれ盆休みもとこ
寝惜しみて亡夫と明かす盆の月うつぎ

2022年8月14日

8月6日~8月12日

2022年08月12日
登山靴並ぶ山小屋星月夜みきお
高野槙香る仏間の涼新たたか子
法螺貝の谺に拝す山開き智恵子
星月夜先師先輩天の句座宏虎
下駄履きで庭に見上げる盆の月こすもす
初耳ぞそのエピソード盂蘭盆会そうけい
秋思憑く息子の罹患聞きしよりせいじ
朝月の残る港を船出づるひのと
2022年08月11日
落蝉のころころ掃かれ竹箒あひる
川風を蹴上げて進む盆踊素秀
子ら去にてぬ静けさ余す盆の月なつき
田水見る散歩が日課生身魂みきお
ひとふくろ残る手花火子ら去りぬもとこ
2022年08月10日
検査終へ安堵のビールほしにけりもとこ
草刈りを済ませ安堵や風は秋千鶴
くろぐろと山迫りくる良夜かな澄子
理髪店鏡が刎ねる晩夏光あひる
乾パンの味懐かしき敗戦忌宏虎
ゆつくりと汐汲坂を白日傘むべ
2022年08月09日
火の匂ふ祭衣を畳みけりひのと
富士臨み悠々自適生身魂澄子
花火果てさゝやき残る堤かなひのと
郭公の声の谺すログハウス智恵子
2022年08月08日
甘樫の丘にのぼれば秋津群れ明日香
棚経や前列占めてひ孫どちうつぎ
空咳をしておもむろに盆の僧宏虎
2022年08月07日
球児らの立礼涼し声もまたうつぎ
船腹を染むる最後の大花火ひのと
酔ひどれのごと片陰をなぞり行くせいじ
慈雨とおり過ごして秋の出水かなたか子
言ひすぎし言葉戻らず法師蟬明日香
次を待つ闇こそよけれ揚花火澄子
2022年08月06日
指出せば秋津のとまる明日香路明日香
マンホール打ち上ぐ力秋出水みきお
かなかなや朝靄かかる峠口うつぎ
目瞑りてカリヨンを聞く原爆忌せいじ
夕堤ボート逆さに運ばるるひのと

2022年8月7日

7月30日~8月5日

2022年08月05日
葛刈りて渓の奈落のたしかなる澄子
高跳びを競ふかのごと沖の鯔きよえ
島山の海へなだるる青田かなもとこ
激戦のかの地は如何に星月夜たか子
夕焼空煽つ岬の大風車素秀
夕星を吾子と探せる涼みかなひのと
あらくさと片すは惜しき葛の花澄子
冬瓜の転げ落ちたる猫車智恵子
滝壺に浮き沈みせる桐一葉千鶴
古団扇手に手に村の集会所うつぎ
2022年08月04日
遠雷のひびけど雨の恵み無したか子
戦死せし二十歳の御魂墓洗ふ千鶴
錆び癖のある包丁や鱧を切るひのと
舌だして色競べあふかき氷ふさこ
ほつほつと漁火灯る沖の秋はく子
菩提寺の大瓶に咲く蓮の花こすもす
2022年08月03日
鉄板の灼けしごとくにアスファルト満天
独り身となりたる家や蝉を聴くたかを
新雪を崩すが如くかき氷うつぎ
蓮池の大和三山そびらとす明日香
空蝉をとらんとすれば抗ひぬせいじ
2022年08月02日
はまなすの島へ水脈引く舟ひとつひのと
大胆にこぼしつつ盛るかき氷うつぎ
甲板に小さき酒宴や星涼しひのと
父母の墓石を洗ふ白雨かな素秀
水打てばミントの香る夜の庭あひる
こめかみに卍マークやかき氷隆松
打つ水に鉢のトマトの武者震ひそうけい
沖遥か沼島に土用波高し千鶴
2022年08月01日
氷嚢のくたりと温き晩夏かなひのと
手花火の庭に聞こゆる遠花火なつき
マンションの百灯それぞれ夜の秋満天
五百歩に満たぬ歩数や酷暑今日こすもす
畑仕事終へきし夫にまづ麦茶明日香
熱の子の遠き眼差し祭笛ひのと
漕ぎいでて湖上花火につつまれぬもとこ
大空を飛び交ふ森の蝉つぶてせいじ
2022年07月31日
袖口の濡るるにまかせ金魚追ふ素秀
ただいまに返事の無くて昼寝中あひる
伊吹峰を見下ろして立つ雲の峰隆松
銀輪を先導するは赤とんぼせいじ
軽鳧の子の吹き飛びさうに走りけりあひる
岩肌に紙垂震はせて清水湧くひのと
パノラマに大湖とり巻く雲の峰隆松
土用干使ふあてなき旅鞄なつき
共白髪相労わりつ暑に耐ふるたか子
2022年07月30日
朝蝉のライブ果てたる静寂かなうつぎ
梳いてやるお泊りの子の洗ひ髪なつき
履かれしは蚯蚓のミイラ日向道隆松
家を守るやに門柱の蝉の殻せいじ
噴水の緩みたる時我もまたうつぎ
亡夫の座右としたる書を曝すむべ
膝痛を忘れてしまふ踊り好きはく子
余生なほ多忙の日あり夕端居千鶴
銀輪を乗り捨ててゆく夏野かなひのと
水櫛をあてし老妓の所作涼し澄子
百歳の母へ桔梗の母首飾りそうけい
雲梯を掴む右手や夏の空ひのと
残業のビル窓にみる花火かなもとこ

 

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