みのる選:2013年4月度
みのる選:2013年4月度
2013年04月26日 | |
航跡の一直線に風光る | たえこ |
若葉風緇衣ひるがへし帰山僧 | 菜々 |
桜鯛みごと包丁さばきまた | 満天 |
春惜しむ観音堂の広縁に | きづな |
投句箱みな素通りす花は葉に | つくし |
ジャズ流れゐて酒蔵の春灯 | さつき |
2013年04月25日 | |
苔むして翁の句碑は下闇に | よし子 |
ハイキングコースも寺領山若葉 | つくし |
富士を背に茶摘女の笠並びけり | かかし |
風の道知つてをるやに柳絮飛ぶ | さつき |
緋毛氈床几に古寺の春惜しむ | せいじ |
若楓日の斑を落とす石畳 | ぽんこ |
余花にあふ塞の神坐す棚田道 | 雅流 |
2013年04月24日 | |
木下闇お染久松塚此所に | 満天 |
若葉雨慈母観音の御衣に | 菜々 |
たんぽぽや大盤石の忠魂碑 | ぽんこ |
藤房に手の届きけり車椅子 | 宏虎 |
2013年04月23日 | |
囀れる磨崖仏の寧かれと | 宏虎 |
田の神さあ在す里道たんぽぽ黄 | よし子 |
リュックの背伸ばして仰ぐかかり藤 | きづな |
老鶯やヨガ教室の窓の外に | よし女 |
2013年04月22日 | |
石仏の里の軒々燕来る | うつぎ |
大仰な釣り師の談義桜鯛 | 三刀 |
雨晴れて襞きはやかな青嶺かな | はく子 |
2013年04月21日 | |
百千鳥課外授業の墳丘に | 雅流 |
2013年04月20日 | |
湖の風通ひ棚藤揺れやまず | よし女 |
春の川縮緬波をたたみけり | さつき |
[選評]
高点句の多くを添削しました。月並みな措辞は使わず写生の力によって鑑賞する側の連想に委ねます。 「一枚の絵が連想できるように具体的に写生しなさい」というのが青畝先生の教えです。
藤揺るる湖の夕風巻き込んで → 湖の風通ひ棚藤揺れやまず
「藤」だけで棚を連想させるのは無理。夕風である必然性なし。巻き込んでは大げさ。
墳丘に課外授業や百千鳥 → 百千鳥課外授業の墳丘に
この句の場合はやで切ってはいけない。切ってしまうと季語が動きます。
燕来る石仏の村知り尽くし → 石仏の里の軒々燕来る
「村知り尽くし」は理屈。たくさんの軒に巣作りしている様子を写生した方が良い。
たんぽぽや能勢の石仏田に御座す → 田の神さあ在す里道蒲公英黄
能勢という固有名詞に必然性がない。田ほとりに祀られている石仏は「田の神(かん)さあ」という。
慈母観音の御衣をすすぐ若葉雨 → 若葉雨慈母観音の御衣に
「すすぐ」は大げさ。正調に整えるのだという強い意志を持って推敲して欲しい。
毛氈の床几にひとり春惜しむ → 緋毛氈床几に古寺の春惜しむ
「ひとり春惜しむ」のフレーズは月並み。緋の字は入れたいし場所も具象化して欲しい。
2013年04月19日 | |
車座に犬も加はる花筵 | さつき |
風光る大吊り橋の揺れに揺れ | 菜々 |
門川の涼し比叡の水なれば | うつぎ |
囀れる苑のベンチに憩ふ吾に | わかば |
参道の八百屋の芋に花の塵 | ぽんこ |
綿菓子のごと蒼天の春の雲 | 宏虎 |
小旋毛に藤房の虻ゐずなんぬ | よし女 |
2013年04月18日 | |
石畳割れ目に立ちし花すみれ | ともえ |
赤提灯屋台は花の客で混む | 満天 |
大粒の涙で拒む入園児 | ぽんこ |
春惜しむベンチに一人づつ座り | せいじ |
花吹雪造幣局の鉄格子 | 雅流 |
2013年04月17日 | |
大津絵の鬼が出迎え春灯 | うつぎ |
こうのとり宝と守る里の春 | こすもす |
兵士墓桜吹雪のその中に | ぽんこ |
2013年04月16日 | |
内海は波の子もなし春うらら | たえこ |
行厨のわれらに落花また落花 | きづな |
2013年04月15日 | |
塚なせる無縁仏や花は葉に | ぽんこ |
街灯の涙目となる朧かな | 宏虎 |
一末社参道埋む春落葉 | きづな |
放たれし風船風に乗らんとす | 三刀 |
2013年04月14日 | |
園児らの声に包まれ花御堂 | なつき |
補助輪のとれたる吾子に山笑ふ | さつき |
八十路吾もちょっとお洒落の春帽子 | 宏虎 |
2013年04月13日 | |
行列の稚児の武者ぶり花の道 | 雅流 |
移り気の風力計や街うらら | ぽんこ |
2013年04月12日 | |
畔立つる春の日差しを鋤きこんで | たえこ |
奥院へ残花の径を辿りけり | 雅流 |
省エネの自転車通勤山笑ふ | うつぎ |
老鶯の一声に覚む宿の朝 | こすもす |
花屑を吐き出す鯉の大吐息 | なつき |
春愁やルオーの描きしイエスの顔 | せいじ |
禅寺の畳に庭の緑さす | さつき |
2013年04月11日 | |
謎秘めし蝦夷の塚や鳥曇り | 菜々 |
入学式親子で歌ふ校歌かな | なつき |
桜東風お礼の絵馬の響きあふ | かかし |
一塔の風鐸高し風光る | たえこ |
2013年04月10日 | |
美容師に髪をゆだねて春眠し | はく子 |
風通ふ畦春耕の土匂ふ | よし女 |
竹筒に百円落とし春菜買ふ | 有香 |
たもとほる琵琶の湖畔や花吹雪 | 雅流 |
2013年04月09日 | |
投函すポストの口に花吹雪 | 菜々 |
橋向ふ陽炎ふ大社遙拝す | たえこ |
野遊びやボールを子らに蹴り返す | はく子 |
子ら去にてより春愁の憑きにけり | あさこ |
花吹雪納骨堂を出でてより | よし女 |
芽柳の揺れて鴨川艶めける | 満天 |
堀川の花屑わけて屋形船 | たえこ |
2013年04月08日 | |
薄墨に烟る湖北や花の雨 | ひかり |
挨拶の出来る子となり山笑ふ | 満天 |
甘茶仏一滴宿す指の先 | なつき |
2013年04月07日 | |
和太鼓のひびき広場の落花急 | はく子 |
うららかや参道に買ふ焼きおかき | 菜々 |
深山道そよ吹く風も早春賦 | 百合 |
募金箱もて花下にたつサリーの子 | なつき |
剥落の仁王の脚や春寒し | つくし |
聖堂へ風の誘ふ落花かな | せいじ |
2013年04月06日 | |
うぐひすの四方にしば啼く廃校舎 | よし子 |
花屑の帯の綾なす疎水かな | 満天 |
離陸せし機影呑み込む霾ぐもり | さつき |
2013年04月05日 | |
花烏賊の墨の狼藉糶の土間 | よし女 |
万歩計記録更新花疲れ | よし子 |
ビル風に落花逆巻く交差点 | うつぎ |
出勤の廻り道して花堤 | さつき |
春昼や振子時計の刻む音 | ひかり |
2013年04月04日 | |
おぼろ夜の話尽きざる老姉妹 | きづな |
観潮や渦に呑まるる木の葉見よ | はく子 |
間延びせる出船の汽笛春の昼 | せいじ |
爛漫の花のダム湖の水鏡 | 雅流 |
老い母の苞にと畦の土筆摘む | 有香 |
大いなる弧を描き曲がる花堤 | ひかり |
迷子告ぐ桜吹雪の動物園 | なつき |
2013年04月03日 | |
湖風にタクト振りゐる花ポピー | よし女 |
峡おぼろバスの尾灯の左右に揺れ | 雅流 |
新しき青竹組まれ上り簗 | ともえ |
空谷の桜隠れに一山家 | うつぎ |
2013年04月02日 | |
咲き揃ふムスカリの葉を散髪す | あさこ |
検診終え帰るさの道花吹雪 | よし女 |
二度三度露天湯に春惜しみけり | はく子 |
遊山舟眺めの茶屋や花堤 | ひかり |
谷戸の駅沈む万朶の花の中 | うつぎ |
楓芽吹く樹下に石臼ごところぶ | わかば |
陽を吸ひて炎とならむ牡丹の芽 | たえこ |
浄瑠璃のさらふ声洩るおぼろかな | 雅流 |
2013年04月01日 | |
廃校と決まりし花の母校訪ふ | つくし |
冗談にしらけたる座や四月馬鹿 | 宏虎 |
花万朶華燭に点るレストラン | はく子 |
帰り鴨陣組むほどに揃はざる | たえこ |
2013年03月31日 | |
花筵守る社員証首に提げ | なつき |
途中下車して存問す花の須磨 | わかば |
囀りに元気をもらふ朝かな | よし子 |
検査また検査の日々に春愁ふ | あさこ |
生かされて白寿を祝ふイースター | わかば |
学舎いま祈りの時間白椿 | 菜々 |
2013年03月30日 | |
花堤行き交ふ人のみな笑顔 | 菜々 |
女生徒の開ける茶室の春障子 | よし子 |
天守閣見下ろす四囲の花の雲 | 百合 |
2013年03月29日 | |
沖うらら浮灯台のたゆたへり | はく子 |
母の歩に合せて愛づる花の道 | 百合 |
2013年03月28日 | |
花の門我に来たれとイエス像 | よし子 |
真白なる聖母子像や風光る | わかば |
谷戸の田の一隅蝌蚪の水となる | よし女 |
屋台まだ柱組みなる花の昼 | なつき |
2013年03月27日 | |
鳥帰る千手を翳す楠の空 | よし女 |
シスターと会釈を交はす春の道 | 満天 |
2013年03月26日 | |
献茶祭宮居はいまし花万朶 | わかば |
踏青子陸軍墓地を訪ねけり | ぽんこ |
尼寺の庫裡にいかなご煮る匂ひ | よし子 |
2013年03月25日 | |
風光る湖へ開きし浮御堂 | 雅流 |
春昼のベンチ座れば鳩寄り来 | 満天 |
2013年03月24日 | |
宵闇にひろがる花の白さかな | 宏虎 |
鶯のもう一声を待ちにけり | さつき |