みのる選:2011年4月度
みのる選:2011年4月度
[選評]
俳句の修練の中で最も大切なことは、「素直な感性を育む」ことだと思います。 少し俳句になれてきたり、ベテランの作家が陥りやすいのは、 少しうがった見方、変わったいいまわしで表現することが、あたかも上手な作品であるかのような勘違いをすることです。 選をするときにもそうした表現に惹かれていくことが多く、結局はスランプへの道をたどることになります。
素直な感性・表現であること、具体的であること、今週は特にこのことに力点を置いて添削しました。 もう一度、今週のみのる選を通して復習してみて下さい。
[みのる選]
2011年04月23日 選挙カー必死の叫び春時雨 つくし 花こぶしマナの如くに降りこぼれ とろうち 雨傘に触れて残花のこぼれけり かれん セラピーの気分万朶の花に来て 花茗荷 花の寺若き作務衣は下足番 こすもす 花の山より一筋の飛行雲 有香 こもれびに笑まふ羅漢や竹の秋 雅流 春眠の揺れにまかせて帰途のバス よし子 お薬師の朽木に根差しすみれ草 うつぎ 暮れかぬる街に絶叫選挙カー よう子 2011年04月22日 参道の隈なく落花だたみかな あさこ 碁会所へ花びら付けし男傘 うつぎ 2011年04月21日 暮れなずむ山の裾野の花あかり ともえ 夕日影げんげ浄土の田をつつむ きづな 緑立つここら芦屋の屋敷街 きづな 飛行雲春の夕日に突進す はく子 うららかや遠山影にアドバルーン とろうち 鳥帰る白砂の浜に影落し よし女 青天に楽を奏でる雲雀かな 百合 山霧を纏ふ一樹の花辛夷 花茗荷 花の下天使のごとく嬰眠る せいじ 左右に飛ぶ連翹の黄や高速路 わかば 高虚子の句碑に落花のとどまらず 菜々 読書人若葉明かりにリュック置き なつき 露天湯に浸りて至福朧月 英子 2011年04月20日 老木の芽吹きに力もらひけり 明日香 帰るさの旅の余韻や花の雨 うつぎ 春麗ガイドの声に誘はれ 英子 鍵盤のごと堰を打ついしたたき 菜々 風入れすビニールハウス麦青む なつき 春昼や針の失せたる花時計 菜々 山笑ふ大和盆地をとり囲み 明日香 池鏡覆ひつくして花吹雪 あさこ 花影を縫ひては進む稚魚の列 とろうち 2011年04月19日 山笑ふ猫の欠伸がうつりけり 宏虎 海の藻の染まりて揺るる海月かな よし女 三千院の広き寺領に春惜しむ こすもす 蝶の昼達筆すぎて読めぬ歌碑 百合 春の園ガラスの箱のレストラン 満天 春塵にあがる拳はタッチアウト とろうち 遅速組はや足組や花の土手 せいじ 蛇穴を出づ世の大事汝は知らず よし子 2011年04月18日 吊革に全身ゆだね花疲れ 満天 家事放棄したき気分や春の風邪 明日香 鯉のぼり機嫌の尾ひれ振りにけり よし女 暗雲や花に嵐の来る気配 わかば 老われも綿菓子を買ふ花の下 わかば 2011年04月17日 花吹雪避けるすべなし庭巡る あさこ 花疲れ片方失せしイヤリング うつぎ 花見終へ家苞もとめデパ地下に 満天 山笑ふよちよち歩きし子に ぽんこ 花屑を乗せたるままに鯉進む こすもす 花に酔ひ人に酔ひたる一日かな わかば
[選評]
今週は、季語そのものの説明に終わっている作品が多い気がしました。 昔先生から、出来るだけ季語からはなれた詠みかたをしなさいといわれたことがあります。 離れすぎても季語が動きますが、ぜひ季語の説明をしないという詠み方にも挑戦して見てください。 今週の作品の中から具体的な作品の例を挙げてみましょう。 いずれ作品も季語そのものを説明していない点に注目してください。
[みのる選]
2011年04月16日 暮れなづむ路地の奥なる雪柳 よし子 落ち合いにきて花筏乱れけり きづな 蟇鳴いて弁天池の昏れにけり とろうち 拾ひきて玻璃の器に落椿 ぽんこ 2011年04月15日 誰彼に手を振りあひて花見舟 はく子 かくれんぼ菜の花畑に帽子見ゆ 有香 春愁や女性専用車と知らず せいじ 2011年04月14日 泥神楽たてて四散す蝌蚪の群れ 宏虎 花筏分けて水上バス進む 雅流 絨毯のごと堆く花筏 明日香 吾子のどか小さくたってお兄ちゃん とろうち ベビーカー族らぺちゃくちゃ花の下 なつき 一日を花に浮かれて恙なし かれん 橋あまたくぐり水都の花見船 菜々 走り根の小径にここだ落椿 わかば 2011年04月13日 大小の靴の散らばる花筵 宏虎 ケーブルカー行き交ふ花の雲の上 うつぎ 春愁や原発事故の目処たたず 花茗荷 通勤の電車傾く花堤 こすもす 花の上に尖るは塔のクロスかな かれん 遠足のリュツクに下がる守り札 ともえ チャイム鳴りわたるは花の学舎かな 明日香 昭和組平成組や花莚 なつき 2011年04月12日 佇つ吾を洗礼せむと花吹雪 はく子 犬伏して待つ耕人の傍らに とろうち 夕闇にいよいよ白き桜かな こすもす 舫ひ舟虜としたる落花かな 菜々 文に付く落花一吹き投函す 三刀 芝居はね桜小路を帰りけり よう子 満開の花下に小さき道祖神 ぽんこ 鈴のごと囀る主の名は知らず なつき 谷底へ錐もみ落つる桜かな 明日香 花堤映して池の華やぎぬ ひかり 空濠の風吹き上げ来花の門 雅流 花の道夫が押し行く車椅子 うつぎ 2011年04月11日 映画館出て春宵のアーケード 雅流 観覧車廻るともなく花の雲 よし女 車窓いま万朶の花を右左 満天 春愁や自動改札吾を拒む 雅流 花吹雪禊ぎのごとく立ち尽くす かれん 膝枕して四阿に花の酔 なつき 佛頂面饒舌となる花筵 宏虎 2011年04月10日 篝火の届かぬ闇の桜かな わかば 輝ける近江平野の代田かな きづな 玉の日に花は煌めき散りにけり 三刀 円陣を解き散る徒らに風光る とろうち
[選評]
季語を重ねてはいけない・・・ということはありませんが、いろいろ推敲してみると より具体的になります。
飼い主のやさしさが伝わってきます。飼い主もまた老いのもどかしさがわかるからでしょうかね。
季語のあっせんがうまくはまると、説明は不要になります。
何でもない句ですが春帽子の季語がうまいです。
再会の約束が叶わないままに時が過ぎてしまったという解釈と花時にまた会いましょうと約束した相手が叶わず召された・・・とも解釈されます。いろいろと連想の広がりがあるのが佳句の条件です。
これも上手に季語がはまりました。うまいですね。
大木の薄墨桜を連想させますね。大木と言わずに連想させるのがテクニックです。
四季の移ろいが繰り返されて時代が流れ、いまでは戦争体験を知っている人も少なくなりました。
[みのる選]
2011年04月09日 花頭窓開けて仏へ花明り 菜々 娘の髪の簪ともなる落花かな ともえ 降り注ぐ枝垂れ桜の中に佇つ わかば いかるがの三塔めぐる花日和 雅流 磐石の眼下に瀬戸の風光る あさこ 2011年04月08日 風見鶏まむく四方山笑ひけり とろうち 沖朧ふり向き仰ぐ嶺々もまた わかば 灌仏へ雨が洗ひし石畳 菜々 2011年04月07日 池の面に雫と散れる糸桜 満天 魚釣りと見紛ふ竿はわかめ採り 明日香 裸婦像の肩に落花のとどまらず 宏虎 風光る復興なりし橋の上 こすもす 花筵ままごと遊びに招かるる 有香 老犬の歩みに合はせ青き踏む ひかり 2011年04月06日 抽んでし仏舎利塔や花の坂 菜々 崖椿入水の平家思ひけり 宏虎 春帽子押さえて渡る橋の上 なつき くべ足してひと時暗し花篝 ともえ 喪に籠る友を誘ひて花堤 つくし 青空へ枝を重ねる大桜 ひかり 2011年04月05日 再会を果たせぬままに花は葉に うつぎ 一穢なき空斯く青き桜かな 宏虎 春昼や生け簀の蟹は口ごもる とろうち ミサの鐘万朶の花の彼方より かれん 車椅子組ら集ひて花下に笑む 満天 菜の花に立ちて尽きなき立ち話 せいじ 御手洗に一輪浮ぶ紅椿 満天 春眠のうつつを過ぎる選挙カー うつぎ のどけしや臍丸出しの逆上がり 花茗荷 大和路の石仏巡る花の旅 治男 2011年04月04日 蹲ひの春光の綺羅掬ひけり わかば 碧天を占むる薄墨桜かな 満天 神苑の小流れここだ椿落つ 雅流 2011年04月03日 芽吹きいま五彩輝く雑木山 明日香 堵列する兵士の墓に草芳し ぽんこ
季語の説明ではなく、伝統ではぐくまれた季語の雰囲気を借りて、作者の言いたいことを季語に託す。 これが佳句か否かの分かれ道になります。取り上げた作品をもう一度よく味わってみてください。
[選評]
一世紀近く過ぎてもなお痛ましい追憶は消えないですね。 落椿が作者のその気持ちを代弁しています。
とても季語がよく聞いていて滑稽な作品ですね。
あんなに元気だったのにと納得できない。我が身と重ねるとなおさら・・・
小さい驚きをうまく一句に仕上げました。かれんさんの作風が変わってきたと思います。
遠く離れた被災地にせめて一刻も早く温かい春が来て欲しいと祈る。 東日本大震災を踏まえた作品ですが、それに限定しない作風になるように心がけましょう。
これも季語がよい働きをして佳句となりました。
里山ののどかな一点景を連想させています。作者の個性を感じますね。
[みのる選]
2011年04月02日 門入れば花のトンネル校舎へと 菜々 枝々を鳥の揺らせる花の径 ひかり しろがねに光る遠嶺や桃の花 うつぎ 落椿陸軍墓地のそこここに ぽんこ 門川に春泥落とす農夫かな 雅流 青空へ喝采のごと白木蓮 三刀 茶室より洛北一望風光る 満天 校門の聖母の像に春日燦 菜々 花の下吹奏楽の高らかに はく子 2011年04月01日 四月馬鹿回転ドアと息合わず 菜々 春疾風売地の旗を倒しけり 英子 馬柵の吾に馬近づき来春の風 とろうち 花の宮白木の柄杓真新し つくし 書肆なべて立ち読みの客万愚節 きづな 碧天へ辛夷華燭のごときかな かれん 四月馬鹿襖の虎と睨めっこ はく子 捨て舟を虜としたる黄水仙 花茗荷 卒業式終へうち仰ぐ空青し 百合 大空へ大笑したる白木蓮 こすもす 憚らぬ鳩の求愛法うらら ひかり 2011年03月31日 春愁や知友の訃報うべなへず せいじ 白木蓮飛礫のごとく散りにけり 治男 濡れ干潟潮噴く穴もありにけり よし女 彩豊かなる里山の春景色 美咲 鳴きすぎる鶯張りや万愚節 かれん 縁結び絵馬鈴なりや春深む 菜々 回転すとんぼのオブジェ春の風 三刀 酒風呂の足湯に酔ひし四月馬鹿 なつき 2011年03月30日 夕かすみ丹波は低き山重ね 菜々 あるなしの風に芽柳揺れやまず 満天 落椿幸うすき妣偲びけり 宏虎 2011年03月29日 春陰の千体観音静もれる かれん 柵越ゆるキリンの首に山笑ふ 有香 啓蟄や極楽橋を修復す よう子 うららかやスニーカー履く童巫女 うつぎ 梅の園どの道とるも香満つ ともえ 2011年03月28日 被災地の春は遅しと祈りけり 明日香 朱の鳥居ぬけて広ごる春の池 満天 露天湯へ母の手を引く朧かな うつぎ 春愁や母似の人をふり返り 花茗荷 道祖神みそなはす野に遊びけり 雅流 サイレンは血液輸送車春愁ふ よし女 春惜しむ五百羅漢の在す山に ひかり 2011年03月27日 春寒し廻る水車の音もまた あさこ 水神を祭る汀に初音聞く 有香 渦潮の間に立ち揺らぐ若布かな 小袖 池のどか釣り人動くとも見えず うつぎ 色ガラス洩るる朝日に御開帳 菜々 末黒野の跡形もなく草青む よし女