みのる選:2011年4月度

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2011年4月25日(月)

4月17日~23日

[選評]

俳句の修練の中で最も大切なことは、「素直な感性を育む」ことだと思います。 少し俳句になれてきたり、ベテランの作家が陥りやすいのは、 少しうがった見方、変わったいいまわしで表現することが、あたかも上手な作品であるかのような勘違いをすることです。 選をするときにもそうした表現に惹かれていくことが多く、結局はスランプへの道をたどることになります。

素直な感性・表現であること、具体的であること、今週は特にこのことに力点を置いて添削しました。 もう一度、今週のみのる選を通して復習してみて下さい。

[みのる選]

2011年04月23日
選挙カー必死の叫び春時雨     つくし
花こぶしマナの如くに降りこぼれ  とろうち
雨傘に触れて残花のこぼれけり   かれん
セラピーの気分万朶の花に来て   花茗荷
花の寺若き作務衣は下足番     こすもす
花の山より一筋の飛行雲      有香
こもれびに笑まふ羅漢や竹の秋   雅流
春眠の揺れにまかせて帰途のバス  よし子
お薬師の朽木に根差しすみれ草   うつぎ
暮れかぬる街に絶叫選挙カー    よう子
2011年04月22日
参道の隈なく落花だたみかな    あさこ
碁会所へ花びら付けし男傘     うつぎ
2011年04月21日
暮れなずむ山の裾野の花あかり   ともえ
夕日影げんげ浄土の田をつつむ   きづな
緑立つここら芦屋の屋敷街     きづな
飛行雲春の夕日に突進す      はく子
うららかや遠山影にアドバルーン  とろうち
鳥帰る白砂の浜に影落し      よし女
青天に楽を奏でる雲雀かな     百合
山霧を纏ふ一樹の花辛夷      花茗荷
花の下天使のごとく嬰眠る     せいじ
左右に飛ぶ連翹の黄や高速路    わかば
高虚子の句碑に落花のとどまらず  菜々
読書人若葉明かりにリュック置き  なつき
露天湯に浸りて至福朧月      英子
2011年04月20日
老木の芽吹きに力もらひけり    明日香
帰るさの旅の余韻や花の雨     うつぎ
春麗ガイドの声に誘はれ      英子
鍵盤のごと堰を打ついしたたき   菜々
風入れすビニールハウス麦青む   なつき
春昼や針の失せたる花時計     菜々
山笑ふ大和盆地をとり囲み     明日香
池鏡覆ひつくして花吹雪      あさこ
花影を縫ひては進む稚魚の列    とろうち
2011年04月19日
山笑ふ猫の欠伸がうつりけり    宏虎
海の藻の染まりて揺るる海月かな  よし女
三千院の広き寺領に春惜しむ    こすもす
蝶の昼達筆すぎて読めぬ歌碑    百合
春の園ガラスの箱のレストラン   満天
春塵にあがる拳はタッチアウト   とろうち
遅速組はや足組や花の土手     せいじ
蛇穴を出づ世の大事汝は知らず   よし子
2011年04月18日
吊革に全身ゆだね花疲れ      満天
家事放棄したき気分や春の風邪   明日香
鯉のぼり機嫌の尾ひれ振りにけり  よし女
暗雲や花に嵐の来る気配      わかば
老われも綿菓子を買ふ花の下    わかば
2011年04月17日
花吹雪避けるすべなし庭巡る    あさこ
花疲れ片方失せしイヤリング    うつぎ
花見終へ家苞もとめデパ地下に   満天
山笑ふよちよち歩きし子に     ぽんこ
花屑を乗せたるままに鯉進む    こすもす
花に酔ひ人に酔ひたる一日かな   わかば

2011年4月18日(月)

4月10日〜16日

[選評]

今週は、季語そのものの説明に終わっている作品が多い気がしました。 昔先生から、出来るだけ季語からはなれた詠みかたをしなさいといわれたことがあります。 離れすぎても季語が動きますが、ぜひ季語の説明をしないという詠み方にも挑戦して見てください。 今週の作品の中から具体的な作品の例を挙げてみましょう。 いずれ作品も季語そのものを説明していない点に注目してください。

  • 誰彼に手を振りあひて花見舟     はく子
  • かくれんぼ菜の花畑に帽子見ゆ    有香
  • ケーブルカー行き交ふ花の雲の上   うつぎ
  • 昭和組平成組や花莚         なつき
  • 舫ひ舟虜としたる落花かな      菜々
  • 文に付く落花一吹き投函す      三刀
  • 満開の花下に小さき道祖神      ぽんこ
  • 空濠の風吹き上げ来花の門      雅流
  • 花吹雪禊ぎのごとく立ち尽くす    かれん
  • 円陣を解き散る徒らに風光る     とろうち

    [みのる選]

    2011年04月16日
    暮れなづむ路地の奥なる雪柳     よし子
    落ち合いにきて花筏乱れけり     きづな
    蟇鳴いて弁天池の昏れにけり     とろうち
    拾ひきて玻璃の器に落椿       ぽんこ
    2011年04月15日
    誰彼に手を振りあひて花見舟     はく子
    かくれんぼ菜の花畑に帽子見ゆ    有香
    春愁や女性専用車と知らず      せいじ
    2011年04月14日
    泥神楽たてて四散す蝌蚪の群れ    宏虎
    花筏分けて水上バス進む       雅流
    絨毯のごと堆く花筏         明日香
    吾子のどか小さくたってお兄ちゃん  とろうち
    ベビーカー族らぺちゃくちゃ花の下  なつき
    一日を花に浮かれて恙なし      かれん
    橋あまたくぐり水都の花見船     菜々
    走り根の小径にここだ落椿      わかば
    2011年04月13日
    大小の靴の散らばる花筵       宏虎
    ケーブルカー行き交ふ花の雲の上   うつぎ
    春愁や原発事故の目処たたず     花茗荷
    通勤の電車傾く花堤         こすもす
    花の上に尖るは塔のクロスかな    かれん
    遠足のリュツクに下がる守り札    ともえ
    チャイム鳴りわたるは花の学舎かな  明日香
    昭和組平成組や花莚         なつき
    2011年04月12日
    佇つ吾を洗礼せむと花吹雪      はく子
    犬伏して待つ耕人の傍らに      とろうち
    夕闇にいよいよ白き桜かな      こすもす
    舫ひ舟虜としたる落花かな      菜々
    文に付く落花一吹き投函す      三刀
    芝居はね桜小路を帰りけり      よう子
    満開の花下に小さき道祖神      ぽんこ
    鈴のごと囀る主の名は知らず     なつき
    谷底へ錐もみ落つる桜かな      明日香
    花堤映して池の華やぎぬ       ひかり
    空濠の風吹き上げ来花の門      雅流
    花の道夫が押し行く車椅子      うつぎ
    2011年04月11日
    映画館出て春宵のアーケード     雅流
    観覧車廻るともなく花の雲      よし女
    車窓いま万朶の花を右左       満天
    春愁や自動改札吾を拒む       雅流
    花吹雪禊ぎのごとく立ち尽くす    かれん
    膝枕して四阿に花の酔        なつき
    佛頂面饒舌となる花筵        宏虎
    2011年04月10日
    篝火の届かぬ闇の桜かな       わかば
    輝ける近江平野の代田かな      きづな
    玉の日に花は煌めき散りにけり    三刀
    円陣を解き散る徒らに風光る     とろうち
    

    2011年4月11日(月)

    4月3日~9日

    [選評]

  • 沖朧ふり向き仰ぐ嶺々もまた   わかば

    季語を重ねてはいけない・・・ということはありませんが、いろいろ推敲してみると より具体的になります。

  • 老犬の歩みに合はせ青き踏む   ひかり

    飼い主のやさしさが伝わってきます。飼い主もまた老いのもどかしさがわかるからでしょうかね。

  • 崖椿入水の平家思ひけり     宏虎

    季語のあっせんがうまくはまると、説明は不要になります。

  • 春帽子押さえて渡る橋の上    なつき

    何でもない句ですが春帽子の季語がうまいです。

  • 再会を果たせぬままに花は葉に  うつぎ

    再会の約束が叶わないままに時が過ぎてしまったという解釈と花時にまた会いましょうと約束した相手が叶わず召された・・・とも解釈されます。いろいろと連想の広がりがあるのが佳句の条件です。

  • のどけしや臍丸出しの逆上がり  花茗荷

    これも上手に季語がはまりました。うまいですね。

  • 碧天を占むる薄墨桜かな     満天

    大木の薄墨桜を連想させますね。大木と言わずに連想させるのがテクニックです。

  • 堵列する兵士の墓に草芳し    ぽんこ

    四季の移ろいが繰り返されて時代が流れ、いまでは戦争体験を知っている人も少なくなりました。

    [みのる選]

    2011年04月09日
    花頭窓開けて仏へ花明り     菜々
    娘の髪の簪ともなる落花かな   ともえ
    降り注ぐ枝垂れ桜の中に佇つ   わかば
    いかるがの三塔めぐる花日和   雅流
    磐石の眼下に瀬戸の風光る    あさこ
    2011年04月08日
    風見鶏まむく四方山笑ひけり   とろうち
    沖朧ふり向き仰ぐ嶺々もまた   わかば
    灌仏へ雨が洗ひし石畳      菜々
    2011年04月07日
    池の面に雫と散れる糸桜     満天
    魚釣りと見紛ふ竿はわかめ採り  明日香
    裸婦像の肩に落花のとどまらず  宏虎
    風光る復興なりし橋の上     こすもす
    花筵ままごと遊びに招かるる   有香
    老犬の歩みに合はせ青き踏む   ひかり
    2011年04月06日
    抽んでし仏舎利塔や花の坂    菜々
    崖椿入水の平家思ひけり     宏虎
    春帽子押さえて渡る橋の上    なつき
    くべ足してひと時暗し花篝    ともえ
    喪に籠る友を誘ひて花堤     つくし
    青空へ枝を重ねる大桜      ひかり
    2011年04月05日
    再会を果たせぬままに花は葉に  うつぎ
    一穢なき空斯く青き桜かな    宏虎
    春昼や生け簀の蟹は口ごもる   とろうち
    ミサの鐘万朶の花の彼方より   かれん
    車椅子組ら集ひて花下に笑む   満天
    菜の花に立ちて尽きなき立ち話  せいじ
    御手洗に一輪浮ぶ紅椿      満天
    春眠のうつつを過ぎる選挙カー  うつぎ
    のどけしや臍丸出しの逆上がり  花茗荷
    大和路の石仏巡る花の旅     治男
    2011年04月04日
    蹲ひの春光の綺羅掬ひけり    わかば
    碧天を占むる薄墨桜かな     満天
    神苑の小流れここだ椿落つ    雅流
    2011年04月03日
    芽吹きいま五彩輝く雑木山    明日香
    堵列する兵士の墓に草芳し    ぽんこ
    

    2011年4月5日

    3月27日~4月2日

    季語の説明ではなく、伝統ではぐくまれた季語の雰囲気を借りて、作者の言いたいことを季語に託す。 これが佳句か否かの分かれ道になります。取り上げた作品をもう一度よく味わってみてください。

    [選評]

  • 落椿陸軍墓地のそこここに    ぽんこ

    一世紀近く過ぎてもなお痛ましい追憶は消えないですね。 落椿が作者のその気持ちを代弁しています。

  • 四月馬鹿回転ドアと息合わず   菜々

    とても季語がよく聞いていて滑稽な作品ですね。

  • 春愁や知友の訃報うべなへず   せいじ

    あんなに元気だったのにと納得できない。我が身と重ねるとなおさら・・・

  • 鳴きすぎる鶯張りや万愚節    かれん

    小さい驚きをうまく一句に仕上げました。かれんさんの作風が変わってきたと思います。

  • 被災地の春は遅しと祈りけり   明日香

    遠く離れた被災地にせめて一刻も早く温かい春が来て欲しいと祈る。 東日本大震災を踏まえた作品ですが、それに限定しない作風になるように心がけましょう。

  • 露天湯へ母の手を引く朧かな   うつぎ

    これも季語がよい働きをして佳句となりました。

  • 道祖神みそなはす野に遊びけり  雅流

    里山ののどかな一点景を連想させています。作者の個性を感じますね。

    [みのる選]

    2011年04月02日
    門入れば花のトンネル校舎へと  菜々
    枝々を鳥の揺らせる花の径    ひかり
    しろがねに光る遠嶺や桃の花   うつぎ
    落椿陸軍墓地のそこここに    ぽんこ
    門川に春泥落とす農夫かな    雅流
    青空へ喝采のごと白木蓮     三刀
    茶室より洛北一望風光る     満天
    校門の聖母の像に春日燦     菜々
    花の下吹奏楽の高らかに     はく子
    2011年04月01日
    四月馬鹿回転ドアと息合わず   菜々
    春疾風売地の旗を倒しけり    英子
    馬柵の吾に馬近づき来春の風   とろうち
    花の宮白木の柄杓真新し     つくし
    書肆なべて立ち読みの客万愚節  きづな
    碧天へ辛夷華燭のごときかな   かれん
    四月馬鹿襖の虎と睨めっこ    はく子
    捨て舟を虜としたる黄水仙    花茗荷
    卒業式終へうち仰ぐ空青し    百合
    大空へ大笑したる白木蓮     こすもす
    憚らぬ鳩の求愛法うらら     ひかり
    2011年03月31日
    春愁や知友の訃報うべなへず   せいじ
    白木蓮飛礫のごとく散りにけり  治男
    濡れ干潟潮噴く穴もありにけり  よし女
    彩豊かなる里山の春景色     美咲
    鳴きすぎる鶯張りや万愚節    かれん
    縁結び絵馬鈴なりや春深む    菜々
    回転すとんぼのオブジェ春の風  三刀
    酒風呂の足湯に酔ひし四月馬鹿  なつき
    2011年03月30日
    夕かすみ丹波は低き山重ね    菜々
    あるなしの風に芽柳揺れやまず  満天
    落椿幸うすき妣偲びけり     宏虎
    2011年03月29日
    春陰の千体観音静もれる     かれん
    柵越ゆるキリンの首に山笑ふ   有香
    啓蟄や極楽橋を修復す      よう子
    うららかやスニーカー履く童巫女 うつぎ
    梅の園どの道とるも香満つ    ともえ
    2011年03月28日
    被災地の春は遅しと祈りけり   明日香
    朱の鳥居ぬけて広ごる春の池   満天
    露天湯へ母の手を引く朧かな   うつぎ
    春愁や母似の人をふり返り    花茗荷
    道祖神みそなはす野に遊びけり  雅流
    サイレンは血液輸送車春愁ふ   よし女
    春惜しむ五百羅漢の在す山に   ひかり
    2011年03月27日
    春寒し廻る水車の音もまた    あさこ
    水神を祭る汀に初音聞く     有香
    渦潮の間に立ち揺らぐ若布かな  小袖
    池のどか釣り人動くとも見えず  うつぎ
    色ガラス洩るる朝日に御開帳   菜々
    末黒野の跡形もなく草青む    よし女
    

     

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