みのる選:2022年3月度
2022年3月26日 | |
虫出しの雷に犬飛び出せり | むべ |
春眠に乗り越す駅や一人旅 | はく子 |
パドックに熱き眼差しマスク越し | よう子 |
彼岸時化ビニールハウスただならず | 素秀 |
離陸機を見送る猪名の春堤 | せいじ |
白梅の一と枝挿頭す無縁塚 | なつき |
風光る女の騎手の結び髪 | よう子 |
海の風通ふ菜の花畑かな | わかば |
囀とせせらぎ供に山路かな | はく子 |
春燈やジャズの洩れくる北野坂 | 凡士 |
故郷の名入りで売られ干鰈 | こすもす |
苗床となる軒下の林檎箱 | 愛正 |
小走りに春雨傘の僧一人 | 素秀 |
眩しかり常盤木襖なる桜 | はく子 |
斑鳩の相輪はるか棚霞 | 凡士 |
城跡の土塁になだれ落椿 | かかし |
2022年3月19日 | |
春田打つ彼方一引く新幹線 | なつき |
白山を水面に残し鴨帰る | 凡士 |
裏門の地蔵に供花や卒業子 | 愛正 |
童歌口遊みつつ青き踏む | わかば |
息づきのとまり初蝶翔ちにけり | 素秀 |
家苞に諸子を買ひぬ膳所の旅 | よし子 |
青き踏む双子の靴の色違ひ | なつき |
落椿踏みとどまりし池塘かな | 宏虎 |
SLの黒煙たかく山笑ふ | はく子 |
鶯の声聞き分けて里暮し | よう子 |
農家カフェBGMは百千鳥 | かかし |
黄水仙香るベンチをひとりじめ | むべ |
発掘の欠片のどけし刷毛かくる | かかし |
思惟仏の指先にある春愁かな | よし子 |
離陸機のJALと読めたる春霞 | よう子 |
遠霞富士の天辺浮ぶ見ゆ | むべ |
八十路なほ夢のありけり雛飾る | よし子 |
2022年3月12日 | |
フリスビーナイスキャッチや草青む | かかし |
春山路谷水楽を奏でけり | わかば |
庵の戸を開けるやいなや梅香る | なつき |
水温む年号読めぬ決壊碑 | むべ |
大いなるうねりに浮沈浮寝鳥 | こすもす |
百相の納めだるまや梅の宮 | なつき |
川風にほつれては梳く猫柳 | 愛正 |
地下通路ヒールの靴音冴返る | よう子 |
囀りや鴉の地鳴き混じりをり | 凡士 |
春風裡消防団の銀しころ | むべ |
岬鼻の砲台跡やすみれ咲く | よう子 |
啓蟄や蟻巣のやうな路線地図 | 凡士 |
朝東風に汐の香るや倉庫街 | 素秀 |
たんぽぽの絮そよ風に旅立てる | はく子 |
2022年3月5日 | |
テノールに酔ふ春宵のコンサート | よう子 |
余寒なほ足湯の混みし道の駅 | 愛正 |
翅ぴたと閉ぢて初蝶線となる | なつき |
ざく切りの刃先に香る根芹かな | むべ |
小面の笑み妖しかり春の燭 | 凡士 |
早春の風和らげる日和かな | わかば |
首筋に喝と雪解の雫落つ | こすもす |
静かなる絢爛梅の床二月 | 素秀 |
雛飾る笑顔に覗く二本の歯 | はく子 |
病院の検査に一日日脚のぶ | なつき |
ドラム缶榾のはみ出す焚火かな | よう子 |
早春のさざ波駈くる山湖かな | よし子 |
梅寒し拍手まばらに大道芸 | なつき |
吊るし雛部屋埋め尽くす旅の宿 | はく子 |
春霞湯屋の煙突消へし街 | 凡士 |