幾山川越へし旅路の渡り鳥 | かかし |
丈余の萩天蓋のごと子規の句碑 | かかし |
冬服のリボン手間どる朝支度 | むべ |
アトリエの窓より富士の初雪や | むべ |
あだ名書く名前シールや体育の日 | なつき |
コウノトリ羽根休めをり薄原 | こすもす |
眠らねど夜霧に沈むコンビナート | 素秀 |
好きなもの合はせ夜寒のワインティー | なつき |
久々の京都吟行秋晴るる | はく子 |
柘榴爆ぜ地にいく粒か赤い星 | 素秀 |
長き夜や首輪を失くす猫のゐて | 素秀 |
朝戸風甘き匂ひの金木犀 | 愛正 |
池面の亀の息継ぎ秋の雲 | ぽんこ |
新蕎麦を刻むリズムや道の駅 | かかし |
秋天や須磨に直筆師弟句碑 | わかば |
紅玉の散らばる路地裏梅擬き | 愛正 |
巴里よりのビデオ通話や長き夜 | むべ |
農家カフェランチの窓辺小鳥来る | かかし |
子規虚子の句碑に佇み秋惜しむ | わかば |
山の秋これからと言ふ彩を待つ | わかば |
初鴨に亀も鯉もと餌に群るる | はく子 |
野の錦屏風絵ごとき外輪山 | 愛正 |
神池へ恥らひの枝の薄もみぢ | はく子 |
子の愚痴の楽しくもあり長き夜 | なつき |
歌碑あまた樹影連なり小鳥来る | ぽんこ |
秋の海寿永の悲話を思ひみて | わかば |
焼栗の店主軽口蚤の市 | ぽんこ |
秋霖に身を濡つまでひよの黙 | むべ |
心臓に似たる瓢の実そつと吹き | なつき |
秋祭り籤券手にし寄付集め | 愛正 |
眺望の展望台や秋澄める | わかば |
木犀の漂ふ香り雲流る | 愛正 |
秋を咲くま白き睡蓮神の池 | はく子 |
卒寿てふコンバインにて稲を刈る | かかし |
橋殿に座して聞きをり秋の声 | はく子 |
家包となり靴下のゐのこづち | 素秀 |
秋日濃し砂紋の庭の野草かな | ぽんこ |
赤い羽根つけて広報配布せり | こすもす |
美容院の隣接の田は稲刈中 | こすもす |
踏切を後の村雨待ちゐたる | むべ |
たわわなる重みに残照銀杏の実 | ぽんこ |
弁当はおにぎりだけよ豊の秋 | なつき |
2022年10月8日 | |
海に向く敦盛塚や竹の春 | わかば |
三日月の顎にしたたる一つ星 | 素秀 |
銀木犀ならではの香のやはらかし | むべ |
我が影が前行く彼岸花の土手 | なつき |
コロナ禍や町内静か秋の月 | 宏虎 |
爽やかや何処から見ても姫路城 | 宏虎 |
卓上に寂びた一輪曼珠沙華 | ぽんこ |
雑木林ゆけば団栗共和国 | むべ |
満面の笑みに刈田を駈ける犬 | 素秀 |
秋の空旗振山の尾根伝ひ | わかば |
芋を焼き戦後を語る老一人 | 宏虎 |
余生猶綺麗な緑秋澄めリ | 宏虎 |
名水にもぎたて檸檬ひと搾り | むべ |
仰ぎ見る秋の白雲広ごりぬ | わかば |
音も無く夕霧つつむ白川村 | 宏虎 |
豪華列車とすれ違う駅ススキ揺る | こすもす |
菊の香や押入れにあるお仏壇 | 素秀 |
古民家や律の風入る通し土間 | 愛正 |
彼岸花青き遠嶺の見ゆる土手 | なつき |
秋闌くる山麓過疎の漏れ灯り | 愛正 |
野仏の供花に誘われしじみ蝶 | ぽんこ |
カラス鳴き雀飛び立つ刈田かな | 愛正 |
細き紐伝ひに彼岸花の土手 | なつき |
うつすらとたて縞残る烏瓜 | むべ |
天空に描く線画や渡り鳥 | 愛正 |
和菓子屋の母家栃の実天日干し | こすもす |
溶岩流跡の清流の音風は秋 | こすもす |
芒原声遠ざかるつづら坂 | 素秀 |
秋の雲三角点の国境 | わかば |
露の世を銀髪の修道女行く | むべ |
人吞みし井戸に蓋あり紫雲英蒔く | 素秀 |
並列の陸墓に手向け花芙蓉 | ぽんこ |
樟大樹埋もる落葉に力石 | ぽんこ |
下り梁川音高き利根秘境 | 愛正 |
堅く閉づ廃墟の扉蔦かずら | ぽんこ |
走り根の多き尾根道木の実落つ | わかば |
彼岸花の赤に溶けたる人の影 | なつき |
住職の鐘楼に吊る柿すだれ | なつき |
2022年10月1日 | |
敬老日四人付き添ふ車椅子 | なつき |
秋の蚊を払ひ動かぬ荷物番 | なつき |
敗荷と言へど葉のまだ瑞々し | こすもす |
魔女の爪の如伸びをりぬオクラかな | こすもす |
新しき城建つ砂場台風過 | なつき |
病院の庭に団栗拾ふ児ら | むべ |
獺祭忌台風列島通過中 | はく子 |
熟すまで毎日チェック木通かな | こすもす |
秋の燈や友へ見舞いの筆を取る | わかば |
曼珠沙華脚絆を隠し揺れる紅 | 素秀 |
くつろぎの昔の話秋彼岸 | 宏虎 |
壱岐つつむ島の奥まで鰯雲 | 宏虎 |
秋色になりつつメタセコイヤ立つ | はく子 |
野にありてまばらに結ぶ実紫 | むべ |
赤とんぼ結界の縄ぴんと張り | なつき |
曼珠沙華必ずこの地この所 | ぽんこ |
街覆ふ水の匂ひや秋の雷 | むべ |
夕映への棚田百選稲穂波 | かかし |
秋簾木屋町川の水の音 | 宏虎 |
秋の海荒れて小波の尖るなり | わかば |
この土手の一番花の曼珠沙華 | 素秀 |
田仕舞や案山子に礼の老夫婦 | かかし |
好き候鳴きて何時しか蟲時雨 | 宏虎 |
曼珠沙華暮行く先の黒き帯 | 素秀 |
棟越に月出て浮かぶ参拝道 | 愛正 |
螽斯腹も震はせ愛の歌 | むべ |
古戦場跡地の史跡虫時雨 | かかし |
歴史持つ灯台今も秋岬 | わかば |
刈りとられ畦を枕の曼珠沙華 | 素秀 |
稲架掛けの地に這う影や夕日脚 | 愛正 |
割烹着の走り蕎麦打つ道の駅 | かかし |
六甲の著き稜線秋澄みぬ | わかば |
黒き蝶ひたすら吸ふは曼珠沙華 | むべ |
稲架襖声はすれども子は見えず | 愛正 |
雨吸い込むマンホールより秋の声 | ぽんこ |
里芋の大葉の露の光り合ふ | はく子 |
秋雨や仁王の視線太柱 | ぽんこ |
色帯し良夜なりけり風もなく | 宏虎 |
黒雲に台風予報刻々と | はく子 |
梵鐘の響く明日香路曼珠沙華 | かかし |
秋の浜歩めば沖に汽笛かな | わかば |
秋うらら子ら渋滞の滑り台 | なつき |
いわし雲過ぎ行く月日のいや早し | はく子 |
大雨に鹿も木陰で膝を折る | ぽんこ |
五能線波濤をかくす烏賊襖 | 愛正 |
野分まだどこかにいるよ宿根草 | ぽんこ |
休耕の畦に一列彼岸花 | 愛正 |
山育ち野育ちのまま曼珠沙華 | 素秀 |
2022年9月24日 | |
傍らに犬の寝息や夜仕事す | むべ |
秋耕の畝影長き夕陽かな | 愛正 |
突堤に足投げ出して鶯を待つ | 宏虎 |
台風を避けて繰りあげ電車移動 | こすもす |
香煙が百度石へと千灯祭 | なつき |
大道芸野分の風に踏ん張れり | なつき |
十字架の道行たどる秋の声 | むべ |
首筋を撫ずる爽涼沢登り | 愛正 |
山路来て樹々の梢の薄紅葉 | わかば |
秋雨のクレッシェンドに降りつのる | むべ |
大使館半旗掲げし秋思かな | むべ |
ハンモックの父の裸足をくすぐれり | なつき |
丹波路の稲穂黄金にうねりをり | わかば |
阿蘇五岳スツポリ消えぬ霧立ちぬ | 宏虎 |
鶏頭の赤くふッくら花三つ | 宏虎 |
萩の縁寺の浄土と申し上ぐ | 宏虎 |
奥の院の日の班踏みしめ秋遍路 | なつき |
丹波路に梢の秋を見つけたり | わかば |
青空をバックに菊を作りけり | 宏虎 |
畦道の泥土にのろり秋蛙 | 愛正 |
逆バンジージャンプに割れり群れとんぼ | なつき |
四方山に静まる心爽やかに | わかば |
みぞはぎの咲き乱れし水の影 | ぽんこ |
しろがねの打てば響くか今日の月 | はく子 |
布袋草大甕の口塞ぎけり | よう子 |
廃軌道単線走る秋の風 | 愛正 |
葉隠れに木瓜の青き実露けしや | むべ |
蜻蛉の翔びたつ草に風の声 | 素秀 |
ゆっくりと朝顔開くおちょぼ口 | ぽんこ |
抜穴の格子を染める楓かな | ぽんこ |
厚雲よりとく出でよかし居待月 | はく子 |
いたずらを繰り返す猫障子はる | こすもす |
仏坐す古木の洞へ稲穂風 | よう子 |
しみじみと昭和歌謡や秋の宵 | 素秀 |
落日に染まり紅葉しつらへし | 素秀 |
ラリックの工芸展や秋の雲 | わかば |
滑走路跡を連ねる大花野 | 素秀 |
盆栽の小さきお山も紅葉づれる | よう子 |
観音の豊かな頬に秋日差 | ぽんこ |
工事止める遺跡調査や秋あかね | よう子 |
陋屋に華やぎ添える灸花 | ぽんこ |
露けしや土に埋もるわれ茶碗 | 素秀 |
大窓に刻々変はる秋夕焼 | はく子 |
皓々と今宵の月の白銀に | はく子 |
十六夜の白雲染めつ漂へり | はく子 |
榛名富士草原波立つ松虫草 | 愛正 |
高速の鬼やんま地に平行に | こすもす |
巫女デビュー父は神主秋祭り | よう子 |
手放せぬものの一つや秋団扇 | こすもす |
2022年9月17日 | |
萩枝垂れ波の皺立つ水辺かな | 愛正 |
廃城の傾げし標虫時雨 | かかし |
花野道抱き上ぐる子に日の匂ひ | なつき |
破蓮や日暮れて池に水の泡 | 素秀 |
秋の雲農具手入れの老農夫 | かかし |
雨雲のレーダ―見つつテニスの秋 | ぽんこ |
花野道子は髪ゴムの鈴鳴らし | なつき |
杖つきて足鈍くさし敬老日 | 宏虎 |
通帳に利息は付かず敬老日 | 宏虎 |
市主催の観月会やお茶席も | こすもす |
木犀や夕べの雨に香の沈む | わかば |
参道に火照り残れる万灯会 | なつき |
街灯の切れし小路や月今宵 | なつき |
重なり合ふ絵馬に無風の残暑かな | ぽんこ |
月光のふとふりむきぬべートベン | 宏虎 |
苔むした墓石濡らす朝の露 | ぽんこ |
山門の枝折戸の奥吾亦紅 | かかし |
夕映への濁世を隔つ秋桜 | かかし |
ガード下暗き溝より昼の虫 | ぽんこ |
里山の裾野に広ぐ秋桜 | わかば |
長き夜や句作数独読書かな | こすもす |
リフォームの絣の上着秋の旅 | こすもす |
カリヨンの鳴る音優し朝澄めリ | 宏虎 |
プラタナス並木往き交ふ秋の昼 | むべ |
木犀に旗を預けて警備員 | 素秀 |
いちじくの皮をむく子とむかぬ子と | 素秀 |
紅白の風に解け合ふ秋桜 | わかば |
小雨止みて束の間見えし芋名月 | こすもす |
宵闇や人の繋がる里灯り | 愛正 |
朝顔の今朝の空色もらいたる | はく子 |
廃校の低き蛇口や芒原 | かかし |
墓石に戦死を刻む秋思かな | ぽんこ |
ポストほどのちさき図書館小鳥来る | むべ |
草に浮き草に静もる秋の蝶 | 宏虎 |
軒低き納屋を賑わす小鳥かな | 愛正 |
三日月や堰落つ水の音清か | わかば |
穴まどひ行列できる検診車 | 素秀 |
亀甲のめくれる田面落し水 | 愛正 |
坪庭に木賊直立くずさざる | はく子 |
平らかな街を流るる秋の川 | むべ |
この世をばあまねく照らす月今宵 | はく子 |
大阪と奈良より満月写真来る | こすもす |
萩の風茶室の木戸の見え隠れ | 愛正 |
稲の香や風車の回る遊園地 | なつき |
かなかなや柴を踏みしむ杣の背に | 素秀 |
山湖澄む空と脊山の影映す | わかば |
父居らぬ父の家なり昼の虫 | むべ |
大空に雲一つなき月今宵 | はく子 |
ベランダにくらわんか花火堪能す | はく子 |
まっすぐな光の筋や月今宵 | むべ |
2022年9月10日 | |
杖借りて高枝引き寄せ柘榴採る | はく子 |
無住寺の棟門狭し大毛蓼 | 愛正 |
赤とんぼ座布団干せる大師茶屋 | なつき |
登り来て霧が隠せし登山バス | 宏虎 |
散歩終へ犬と飛蝗の家に入る | むべ |
海峡を潮の行きつく果ての秋 | 素秀 |
授乳中の猫と目の合う秋の昼 | こすもす |
隠沼に蜉蝣立ちぬ青き水 | 素秀 |
鉦叩真闇に音の澄みまさる | はく子 |
数独や繰り返すミス秋の雷 | こすもす |
子等遊ぶ休耕田の赤まんま | 愛正 |
摘まれても良くぞ生きたり楤の花 | 愛正 |
昨夜の雨苑の芝はら露深く | わかば |
大道芸拍手まばらな秋の昼 | むべ |
虫集く窓辺に寝床しつらへり | むべ |
迷走の台風海の濤尖る | わかば |
萩日和友の杖引く音かろし | はく子 |
秋桜休耕田を独り占め | 愛正 |
苑を統ぶ大樹に憩ふ蔭涼し | わかば |
秋陰や墓を尋ぬる電話あり | むべ |
露けしや草にまみれし酒地蔵 | 宏虎 |
夕潮のふくらみ空に鯔のはね | 素秀 |
ガード下暗き溝より昼の虫 | ぽんこ |
墓石に戦死を刻む秋思かな | ぽんこ |
谷風にうねり起こすや萩の花 | 愛正 |
赤梨の口に果報の酸味かな | 素秀 |
カンナ咲く赤ポスト有る小学校 | 宏虎 |
鐘楼の前にハーレー秋遍路 | なつき |
寺めしにいつも来る子や休暇明け | なつき |
心づく信号待ちの虫の声 | 素秀 |
重なり合ふ絵馬に無風の残暑かな | ぽんこ |
水澄みて心休まる湖畔かな | わかば |
葛の蔓やさしく肩を叩かれぬ | むべ |
傘立てに亡夫の杖や虫集く | はく子 |
雨雲のレーダー見つつテニスの秋 | ぽんこ |
野ぶだうの色の美しきは食ならず | はく子 |
稚児大師像に集へり赤とんぼ | なつき |
パソコンの御機嫌悪るし夜半の秋 | 宏虎 |
色帯びし良夜なりけり風も無く | 宏虎 |
廃業の仏壇屋跡身に入むや | なつき |
広芝の朝露玉となり光る | わかば |
稲の香や体操教室週一回 | こすもす |
苔むした墓石濡らす朝の露 | ぽんこ |
2022年9月3日 | |
盆の市長蛇の列の赤飯屋 | ぽんこ |
鬼灯の鉢をはみ出す艶姿 | 素秀 |
列島の傷跡深き秋出水 | わかば |
夜の更け鈴虫を聴く静寂かな | わかば |
額縁に影のありたる秋思かな | 更紗 |
絵に詩に心遊ばせ秋の雲 | はく子 |
駐輪場飛蝗動かぬサドルかな | 愛正 |
秋空へつひ手を伸ばす尾根の道 | むべ |
山里の水の手柄や新豆腐 | 素秀 |
なぜなぜに答えて汗の子を撫づる | なつき |
野外演奏昼の部の法師蝉 | 愛正 |
蒼天や伽藍静かに萩の花 | ぽんこ |
保護犬の募金呼びかく残暑かな | むべ |
友待つ間眺む噴水伸び縮み | こすもす |
指折りに虫の名浮かべ虫すだく | 更紗 |
尼寺に夕べ赤らむ酔芙蓉 | はく子 |
秋愉し誕生祝にフラフープ | こすもす |
千枚田をちこち響く威銃 | かかし |
涼新た京の露地裏旅気分 | かかし |
奔放な朝顔の蔓種採りす | なつき |
別荘地木の間ちらちら秋日傘 | 愛正 |
時に吹く風に秋かと覚ゆなり | わかば |
標本になりて鍬形全うす | なつき |
鳳仙花猫のパンチで弾けをり | かかし |
髪洗ふチタンの埋もる手術跡 | なつき |
切る音に良しとオクラの茹で加減 | 素秀 |
水澄むや鯉の緋色踊りくる | ぽんこ |
慈しむ母との会話虫の秋 | わかば |
てつぺんに黄葉きざす銀杏巨樹 | 素秀 |
子ら帰り二人の卓に虫の声 | かかし |
朝顔の空色包んでしまひけり | はく子 |
小灰蝶翅をたたみて小休止 | むべ |
整髪や鏡の奥に涼新た | かかし |
ヒマラヤの石家にある秋思かな | むべ |
賽銭が跳ねて飛び立つ法師蝉 | 愛正 |
鉦叩闇の黙を打ち続く | わかば |
クリームの皿舐むる子や八月尽 | なつき |
無人駅軽トラに乗る秋日傘 | 愛正 |
母ぶりの天晴な猫秋うらら | こすもす |
すれ違ふ他人の空似墓参り | むべ |
どこにでも雑草生へる鰯雲 | ぽんこ |
朝顔をフェンスに這わせ保育園 | はく子 |
初秋や楠を天蓋石灯籠 | ぽんこ |
行きはバス帰りは徒歩や草の花 | こすもす |
一穢なき空にキの字の赤蜻蛉 | 素秀 |
念入りに米を洗いて終戦日 | はく子 |
明日まで置くなと助言オクラ採る | こすもす |
2022年8月27日 | |
天ノ川指呼の句会の先師達 | 宏虎 |
コロナ禍の孫の退院秋高し | ぽんこ |
予後の身の三人寄りて墓掃除 | なつき |
のうのうとフランスベットの竹婦人 | よし子 |
坪庭の秋めく日差し野鳥舞ふ | 愛正 |
灘越える漁船の影や秋夕焼 | 素秀 |
走り根の大きな瘤に秋気配 | ぽんこ |
老いてなほ父母恋し虫時雨 | よし子 |
ご町内一瞬照らす稲光 | 宏虎 |
散りしひて机に秋の薔薇名残 | 素秀 |
高峰に一の矢二の矢流れ星 | 愛正 |
強風に炎傾く万灯会 | ぽんこ |
かんばせを花火明かりをとりこめり | 宏虎 |
朝まだき水路に律の調べあり | むべ |
天高し青鷺渉る尾瀬ヶ沼 | 愛正 |
秋晴れや線路流るる先頭車 | ぽんこ |
台風の眼のただならぬ静寂かな | むべ |
蜩の声に間のあり夕まぐれ | 素秀 |
洋館の灯のいる窓辺蔦かずら | ぽんこ |
止まるとも飛ぶとも蜻蛉とどまらず | はく子 |
刻まれし夫の行年秋曇 | むべ |
茶畑の緑まぶしき帰省かな | 更紗 |
秋夕焼文豪愛でし跨線橋 | むべ |
病む姉の話相手に盆帰省 | なつき |
赤とんぼ山の頂カフェテラス | はく子 |
草庵へ通ずる林道法師蝉 | 愛正 |
知られざる尊き生命終戦忌 | わかば |
夕山河法師蝉ゐぬいと淋し | 宏虎 |
菅笠にあの娘の涙風の盆 | よし子 |
鎮魂と核なき世をと終戦忌 | わかば |
幾山河辿りて谷の水澄めり | わかば |
献立に亡夫の好きな茗荷汁 | むべ |
揚花火昔語りに夫と見し | なつき |
実梅落つ天女のごとき梅古木 | なつき |
シャワー音の合間に微か虫の声 | こすもす |
遠雷にまじり救急車走る | こすもす |
谷川の響き変わらぬ墓参 | わかば |
なめらかに進むペン先涼新た | 更紗 |
甲子園に母校の校歌秋暑し | 更紗 |
露天風呂手で掬ひたる上り月 | 愛正 |
正論を述べたばかりの生身魂 | 宏虎 |
蜻蛉つがひ法の池にも関はらず | はく子 |
面影を偲ぶこの日や墓洗ふ | わかば |
旧姓の文字なでいづる墓参かな | 更紗 |
水郷をめぐる小舟や行々子 | よし子 |
秋光を両手いつぱい大いなる | 素秀 |
秋立つやさざなみ岸に寄せる音 | 素秀 |
とんぼうと共に揺れをり土手の草 | はく子 |
映画会終わりし途端の雷雨かな | こすもす |
鉄葎軍手を刺の突き通す | なつき |
蜩や吾子の帰りを待ちてふと | 更紗 |
噴水の垂直力や五メートル | よし子 |
2022年8月20日 | |
秋気満つ渓谷を断ちロープウェイ | 素秀 |
盆帰省またねと子らの笑顔かな | なつき |
盆波に舳先を浮かす手漕ぎ舟 | 素秀 |
子の逝きて五十年なる墓洗ふ | はく子 |
秋色の尾根を急げる旅衣 | 素秀 |
糠床の馴染みて茄子の紺清か | わかば |
老夫婦頬摺りをせん初穂かな | かかし |
孫先に迎へ進まぬ盆用意 | なつき |
遠雷や乗降手間どる病院前 | 愛正 |
浮気心てふ驚きの名のダリア | こすもす |
セピア色若き父親敗戦日 | ぽんこ |
手入れ良き臥龍の松の大門かな | ぽんこ |
盆過ぎてブロックの街壊しけり | なつき |
盆灯籠たこ足配線一つ足す | なつき |
滑り落つ斑葉の栞ハンモック | 愛正 |
街灯に負けぬ明るさ盆の月 | こすもす |
休みたる噴水に立つさざ波や | むべ |
保育士の見送り終へて法師蟬 | かかし |
剣玉を競ひし園児汗涼し | かかし |
雲去りし中天孤高の盆の月 | はく子 |
あれこれと仏花を選ぶ盆支度 | ぽんこ |
ゴアテツクス纏ひ出でたる台風裡 | むべ |
年別の梅酒の並ぶ水屋かな | 愛正 |
日帰りのみな日を合はせ盆帰省 | なつき |
赤子抱く如く店主の新豆腐 | かかし |
無縁塚を墓守のごと夾竹桃 | ぽんこ |
秋句会欠席三人花いっぱい | こすもす |
扇風機水を引き込みミスト吹く | ぽんこ |
南瓜熟るあらぬ藪中蔓伸ばす | わかば |
立秋の石の十字架止り木に | むべ |
洗ひたるご先祖様の墓の五基 | はく子 |
川原に競ふ草丈秋暑し | わかば |
念仏の時間短し暑気中り | 愛正 |
洋館に衛兵のごと夏木立 | むべ |
をちこちに案山子を立てし千枚田 | かかし |
語られぬ悲劇次々終戦日 | こすもす |
照り返す海に白帆や秋暑し | わかば |
露草の空をゆずらぬ姿かな | 素秀 |
なんきんの下がるに任せ塀の外 | わかば |
空襲を逃れし洋館敗戦忌 | むべ |
碑の文字の読めぬ先祖の墓洗ふ | はく子 |
夕立風薬両手の停車場 | 愛正 |
盆の月雲間にふはりと出でませり | はく子 |
洗濯バサミ全て取替涼新た | こすもす |
天窓を早足に行く秋の雲 | 素秀 |
2022年8月13日 | |
刃を入れて弾ける音や西瓜切る | わかば |
手作りの夜店焼きそば大はやり | はく子 |
黒塀より数個顔出す柘榴の実 | ぽんこ |
ドーム映す昏き川面や原爆忌 | むべ |
刈草を巻き上げ散らすローカル線 | 愛正 |
床の間の射干の辺に納経す | よう子 |
久方のラジオ体操花むくげ | ぽんこ |
背番号無くも球児の汗涼し | かかし |
鐘楼を半分隠す百日紅 | よう子 |
朝顔や出立を急く旅衣 | 素秀 |
とりどりの毛色の猫や夕焼雲 | こすもす |
農家カフェ鈴虫聴きつランチ食 | かかし |
お泊りの子が竹刀振る汗涼し | なつき |
酒の借りその場で返す草相撲 | 素秀 |
駅前の赤のポストや星流がる | 宏虎 |
旅の途次萌ゆるカンナに迎えられ | 宏虎 |
倒影の山に釣り舟夏の暁 | 愛正 |
一刀を待ちかね西瓜裂けゐたる | 素秀 |
楽団員はにかみて立つ夏の夜 | むべ |
露の世や遠き記憶の父の事 | わかば |
敗戦忌心高ぶる流る音 | 宏虎 |
スプーンを箸の記念日涼新た | かかし |
崖の上ぽつんと百日紅の家 | むべ |
山門の大瓶三つ蓮の花 | こすもす |
初秋や痛める肌へサラダ食む | わかば |
朝顔や学級日誌懐かしく | 宏虎 |
浮子ひとつ波に洗はれ夏の果 | むべ |
馬の背を辿る人影秋初め | わかば |
酔いどれの照らす足元夏の月 | 愛正 |
はぐれ咲く高砂百合の背筋かな | よう子 |
ひと時の老いのお喋り百日紅 | ぽんこ |
鞘堂の褪せし鈴の緒夏深し | よう子 |
原爆忌核なき世をと祈るのみ | わかば |
入らるる施設にも慣れ夏の逝く | はく子 |
映画一本エンドロールに昼寝起 | なつき |
街角の無事を見守る向日葵群 | ぽんこ |
字の滲む一升瓶の梅酒かな | 愛正 |
僧の来ぬ初盆なりしコロナまた | なつき |
絵に詩に心遊ばせ夏の雲 | はく子 |
高く低く風に乗り来る踊り唄 | はく子 |
晩夏光逆さ灯籠揺るぎなし | よう子 |
子と父のメモで買ひ物夏休 | かかし |
ペディキュアの下駄軽やかに盆踊り | はく子 |
遠き鳥威し耳そば立てる猫 | 素秀 |
呼ばれたる夢の返事す昼寝起 | なつき |
カリヨンの涼し校舎は煉瓦色 | むべ |
草いきれ分け入る先の飼畜小屋 | 愛正 |
母となりし猫に声掛け夏の朝 | こすもす |
図書館の前庭に咲くカンナは黄 | こすもす |
城跡の崩れし土塁虫の声 | かかし |
路地裏の格子に掛掛かる百日草 | ぽんこ |
卆寿とは第三の春カンナ燃ゆ | 宏虎 |
父母の遺影の笑みし盆用意 | なつき |
田の色を吹き揃へるや秋の風 | 素秀 |
2022年8月6日 | |
児の口を種弾けとぶミニトマト | なつき |
宇治金の少し無理して註文す | 宏虎 |
帰省子や盛りだくさんの三日間 | こすもす |
写経終へ膝を崩すや花芙蓉 | かかし |
天窓のわづかに開き蝉時雨 | むべ |
鯖子干す網の斜めに釣りの宿 | むべ |
秋を待つ気候変動いかにかと | わかば |
金蛇の卵の白し草むしり | むべ |
炎暑中煙吐きたる桜島 | はく子 |
一週間ハワイ帰りの日焼け顔 | よし子 |
薄め飲む黒酢つーんと暑に耐ふる | なつき |
影絵なす楠大樹の黒揚羽 | ぽんこ |
ネイルアート爪に同化の天道虫 | 愛正 |
滴りの音に合わせる呼吸の間 | 素秀 |
墓守が片隅に植うミニトマト | なつき |
桟橋に頭預ける蓮かな | 素秀 |
メトロノーム揺らぐ葉先の川蜻蛉 | 愛正 |
川に沿ふ草丈延びて夏深し | わかば |
風蘭の香り待たるる今宵かな | わかば |
相輪の塔の輝き晩夏光 | ぽんこ |
盛りいつ来たかわからぬ百日紅 | 素秀 |
真夜中の蝉ぶつかりし壁の音 | むべ |